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3-16 勘違いさせてしまった

もしかして:今日は金曜日

更新失念しておりました!!!すみません!


 ほとんど味わうことなく急いで食事を終え、まずはセレスタン様のところへ。


 ベアトリスさんが言うには、とても心配してくださっていたそうなので。元気ですよってお伝えしておかないといけません。

 それにお水配りももう終わっていて、ソニアは公爵様のお屋敷へ戻ったとか。ソニアにも、次に会ったときにはちゃんとお礼を言っておかないとですね。


 セレスタン様は私の姿を認めるとすぐに稽古を中断し、こちらへ来てくれました。終わるまで待っていようと思ったのに、なんだか申し訳ないです。


「お身体はもう?」


 セレスタン様の手が伸びて私の額に触れました。その手は自然な流れで耳の下あたりの首に触れ、どうやら熱を確認しているみたい……?

 心配させてしまって大変申し訳ないのだけど、でもこの触れ方が親密さを感じさせるというか、ちょっと恥ずかしいんですけど!


「たっ、たたたただの寝不足なので! 少し眠ったらホラもうこの通り!」

「それならいいのですが」

「セレスタン様も、親衛隊の方とのお手合わせが叶ってよかったですね。あ、そういえば、イドリース殿下はどちらに……」


 って聞いた瞬間、すごくわかりやすくセレスタン様の表情が曇りました。え、喧嘩でもしてるんですか?


「イドリース殿下? どんな用事が?」

「え、いえ、たいした用はないんですけど、ちょっと聞きたいことがあって」


 セレスタン様の圧が強い……!

 困惑して視線をさまよわせた先で、親衛隊の方と目が合いました。先ほどまでセレスタン様と手合わせしていた人ですね。


「隊長は調査に出てますね。オレたちは聖騎士の相手しろって言われて置いていかれたけど。夜には戻って来ますよ」

「彼は副隊長で、殿下の片腕です」

「いやいや、しがない中間管理職ですよ。で、夜はここでミーティングの予定なんです」

「なるほど。ありがとうございます。戻っていらしたらお伺いしてみます」

「その際は必ず俺を呼んでください。必ず」


 圧が強いまま、セレスタン様が私の肩を掴みました。なんか今日のセレスタン様、ちょっと様子がおかしくないですか、大丈夫ですか。

 もしかしてさっき私が倒れかけたのをイドリース殿下が助けてくださったの、気にしてるんでしょうか。そうですよね、職務怠慢だとか言われたのかも……?



 長居しても訓練のお邪魔になっちゃうので、おふたりに簡単にご挨拶をして、次は聖樹へ向かいます。

 私だけやれることがなくて手持ち無沙汰です。外へ行こうとすれば聖騎士さんたちをバタバタさせてしまうし、ここには手入れする畑もないし。だから聖樹にお祈りをするくらいしかないというか。


 聖樹は今日もキラキラ輝いて綺麗です。聖樹の前に跪いて胸の前で手を組めば、精霊たちが近づいて来る気配。


「貯水池について詳細がわかりますように」


 最初の聖人様の時代のお話だもの、イドリース殿下さえ何も知らない可能性だってもちろんあります。

 歴史に詳しい人がいたり、あるいはどこかに文献が残っていたりすればいいのだけど……。


『チョスイチ、シラナイ』

『シラナイ』

『シッテル』

『アノコタチ、シッテル』


 ん?

 精霊たちの声が聞こえることはそう多くないのですが、今日はみんな不思議とお喋りです。バルバラ様は精霊の声が聞こえるときは大抵、伝えたいことがあるときだと言っていたけれど。


「貯水池を知ってるの?」

『アッチニイルコタチ、クワシイ』

『イコウ』

『イコウ』


 私の理解が追い付くよりも先に、精霊たちがふよふよと飛び回りながらセレスタン様のほうへと向かって行きました。その動きはまるで「ついて来い」とでも言っているみたい。

 程なくして、私は再びセレスタン様のもとへ戻ってしまったわけですが。


「どうかなさいましたか?」


 運良くセレスタン様は休憩中で、他のみなさんの動きを見ているところでした。


「いえ、その……」

『コノコタチ、チョスイチ、シッテル』

『チョスイチ! シッテル!』


 セレスタン様にいつもまとわりついている精霊たちが、嬉しそうにその場でクルクルっと回りました。なぜ彼の近くにいる精霊が知ってるのでしょう。他の精霊たちと何か違うのかしら?

 ひとまず返事をくれた精霊に質問してみましょうか。海に浮かぶクラゲみたいな形で、セレスタン様の額のあたりをフヨフヨ浮いている子です。


「えと、先に確認しておきたいのだけど、イドリース殿下はこのことご存じ?」

「当然です。先ほどお伝えした通り殿下のおかげで親衛隊の助力が得られ――」

『シラナイ! シッテル ニンゲン イナイ!』


 セレスタン様が何か言っていますが、今は精霊様のお話に集中しましょう。

 貯水池はあるけれどその存在を知っている人はいない、ということだと思うのですが……そうだとすればヌーラ様の時代から今日に至るまでに、貯水池に関する情報が途絶えているわけで。


「使えない? とか?」

「とんでもない! 剣技において大変有用な技術を授けていただき――」


 干上がったり、あるいは埋まったりという可能性もあり得るのかなと思って聞いてみると、セレスタン様が大きな声で否定します。何か誤解を生んでいる気がしないでもないですが、彼にはあとでしっかり説明するとして。


『ワカラナイ! タブン、ダイジョブ』

「それならいいんだけど。ぜひこの目で確認してみたいわ」

「光栄なことです。では、ひとつ手合わせを……」

『アンナイ! デキル!』

「ふたつあるのよね?」


 私の言葉に、セレスタン様は武器を手にしつつ首を傾げました。クラゲの形の精霊はフヨフヨと上下し、きのこの傘のような形の頭がふわりと波打ちます。


「や、ひとつというのは慣用句でして、ふたつはないというか」

『イッコチカイ! イコウ!』

「ううん、すぐじゃなくていいの」

「あの、ジゼル様……?」

「先にセレスタン様や殿下に相談してから――」

「ジゼル様?」


 片方だけでも近いのならよかったと安堵する私の顔を、セレスタン様が覗き込んでいました。すごく近い! 全然気が付かなかった!


「わっ、わっ、な、なんですか?」

「なんですかはこっちのセリフです。全然焦点が合っていないし、微妙に会話が噛み合わないし、もしかしてまだ体調が?」

「いえ、そうではなくて――きゃぁっ!」


 私が否定するより早く、セレスタン様は私をガバっと抱き上げてしまいました。

 や、ちょっと待って。


「違う! 大丈夫、違う、元気です! おろして!」

「だめです!」


 抵抗してもびくともしないんですけど!

 イドリース殿下より細く見えるのに、やっぱりめちゃくちゃ強いんですね、セレスタン様……。

 でもほんと、勘違いなのでおろしてほしい。




お読みいただきありがとうございます!

また火曜日に!忘れないようにしますがんばります!

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