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【連載版】聖女様をお探しでしたら妹で間違いありません。さあどうぞお連れください、今すぐ。【コミカライズ配信中!】  作者: 伊賀海栗
③タルカークにて

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3-9 驚きの連続で


 セレスタン様がさっと周囲を見回し、イドリース殿下は悲鳴のあがった方向へと一目散に走っていきました。

 しばらくして神殿騎士がハラーク公爵を呼びに来たため、私たちは全員で案内されるままについて行くことに。


 到着した先は動物の飼育小屋でしょうか。目の前に広がる光景があまりにも異常で理解が追い付きません。だって真っ白な羽根がそこかしこにたくさん散らばっているんですから。


「これは……?」

「ガチョウだね。古来より神聖な動物として育てられているんだ。豊穣のシンボルだよ。しかしこれは――」


 ハラーク公爵はそこで言葉を切り、厳しい目で神殿騎士に説明を求めました。

 周囲を見回ってきたと思しきイドリース殿下も戻って来て、溜め息をつきながら首を横に振ります。


「え、餌に毒が仕込まれていたものと思われますっ!」

「思われるじゃねぇよ、警備はどうなってんだよ。神獣が殺されるなんて不吉どころの騒ぎじゃねぇぞ」


 神殿騎士が直属の部下ではないからでしょうか、イドリース様の表情は怒りと困惑が半々に見えました。一方、神殿騎士団長であるハラーク公爵は腕を組んで考え込んでいる様子です。


「これは我輩の責任です、殿下。犯人捕縛の報に浮かれて、調査に人員を割きすぎた。ただ、警備が手薄になると知って動いたとしか思えません。騎士団内に内通者がいるようですね」


 内通者、という言葉に反応して「違う」と叫ぶ女性がいました。


「内通なんかしてない! あた、あたしは何も知らないんです! ただいつものように餌をやって、いつものように掃除しようと思ったらこの子たちが!」


 見れば彼女は地に伏して号泣しています。その言葉から推測するに、先ほどの悲鳴の主でしょうか。

 小さく息を吐いたハラーク公爵が近くの神殿騎士に目配せをしました。騎士さんは女性を支えて立たせ、どこかへ連れて行きます。

 ふたりの姿が見えなくなるまで眺めていたセレスタン様は、ぐるっと首をまわしてイドリース殿下を見据えました。


「これは明確な脅迫です」

「だな」

「ジゼル様の身辺警護は引き続き我々聖騎士が担う。神殿騎士団の内部調査と犯人の迅速な検挙はそちらが。よろしいですね」

「ま、しゃーねぇか。つっても聖騎士サンは二、三人ずつの交代だろ。警護には親衛隊も加わる。異存ねぇな?」

「……はい」


 このふたり、ずっと一触即発みたいなピリピリした空気を醸すのなんなんでしょうね。睨み合わないでほしいのですけども。

 そこへソニアがじりじりと身体を寄せ、私の耳元で囁きます。


「セレスタン様はもちろんだけどー、あの体格いい人もお姉ちゃんのこと好きっぽいよね」

「はぁっ?」

「だってアタシに優しくないし」

「それが判断基準なの? てんで見当違いよ」


 全くこんなときに何を言っているんでしょうか、この子は。さっきだって全然似てないってコソコソ言われたばっかりだっていうのに。

 と呆れて肩をすくめる私の手を、セレスタン様が掴みました。びっくりして思わず振り払ってしまって、彼もまた目を丸くして私を見つめます。


「や、ごめんなさい。びっくりして――」

「ああ、俺も配慮が足りなかった。場所を移動しようかと」

「アッハッハ! 仲悪いのかよ、お前ら。そんなんで守れんのかぁ?」


 私とセレスタン様の間の気まずい空気は、イドリース殿下がすぐに蹴散らしてくれました。

 けど、逆に言うとしっかり謝罪する機会を失ったとも言えます。あの傷ついたようなセレスタン様の表情に、掛ける言葉が見つからなくて。


 当初の予定通り応接室へ向かおうとしたところ、ハラーク公爵がそれを止めます。


「我輩は屋敷に戻ります。騎士団内の調査に加えて、祭具の手配を早急に行わなければ」

「そうだな、頼む。それで、ソニアちゃんだけど――」

「公爵家で預かります」

「えー? アタシ公爵さまのとこ行くの?」

「弟の話を聞かせてもらいたいしね。それに、犯人に目を付けられないことが肝要だ。目の届く場所にいてもらいたい」

「目をつけられる?」


 ハラーク公爵の言葉に引っ掛かりを覚えて聞き返すと、ハラーク公爵やイドリース殿下だけでなく、セレスタン様も神妙なお顔で頷きました。私とソニアだけがわかってないみたい。


「ここでいう犯人とは黒幕の話ですね。特定には至らないが、政敵であることは間違いない。ソニア嬢が聖女の妹だという情報も知られているかもしれない。当然にそれを利用されかねないので、そばにいていただきたいということでしょう」

「その通りです。民間人に親衛隊も神殿騎士もつけられないし、当面は公爵家の保護下に入っていただく。……大事な姪に手出しはさせない」


 ソニアはちょっと不満そうでしたが、特に不平を言うでもなくハラーク公爵と一緒に神殿を出て行ったのでした。彼女なりに状況の深刻さはちゃんと理解しているのでしょうね。


 私とセレスタン様もまた、イドリース様と別れて本殿へ向かいます。気が付けばもう夕方。西日が眩しくて額に手をかざさないと前が見られません。

 荷物はブノワさんたちが運んでくれているでしょうか。聖騎士さんの姿が見えないけど……って、もしかして今、セレスタン様とふたりきりなのでは?


「そういえば――」

「ひゃ、ひゃぃっ!」


 心臓が飛び出るかと思った! 意識した瞬間に話しかけるのはやめて欲しいところです。

 ビクッと身体をのけぞらせて驚く私に、セレスタン様が深い溜め息をついて立ち止まりました。そのまま私を真っすぐ見つめ、ゆっくりと、だけど力強く私の手を握ります。


「なんで俺を避けようとするんだ?」

「えっ、や、避けてなんて」


 ちょっと緊張するというか、後ろめたい気持ちになるというか、どんな顔をすればいいのかわからないだけで避けてるつもりはないのですが……。

 かといって正直にそれを伝えるわけにもいかず。だって夢で見知らぬ男性を愛してるって誰が聞いても正気を疑われてしまいますよね。

 けれどセレスタン様が再び何か言おうとしたとき、若い女性の声が私の名を呼びました。


「お待ちしておりました、ジゼル様」

「……え。ベアトリス……さん?」


 そこに立っていたのは、アルカロマを追放されたはずのベアトリスさんだったのです。






以降は基本的に火・金曜日の週2回更新の予定です。

次回は10月3日の金曜日!よろしくお願いします!

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