第9話 この世界にも神様がいるようです(2025.02.24修正)
洞窟の中でセレスティアルと名乗ったドラゴンに遭遇した私は、聖獣である彼から創世神について話を聞くことができた。
「この世界を作った創造神様は、この世界の魔法属性である氷・水・火・風・土・雷・光・闇のそれぞれを冠する神々で8柱いらっしゃる。我々が使える魔法はこの神々によって生み出され使えるようになった」
「なるほど…それでこの世界の私たちは魔法が使えるのですか?」
「その通り。しかし今から遠い昔、8柱の創造神様はこの世界を見守ることに飽きてしまわれてな…。神の代行者として生み出された我ら聖獣とこの世界を構成するために必要な精霊たちに世界を見守る使命を与え、別の世界へと旅立って終われたのだ」
(いや、飽きたんか〜い!)
なんだか…自分勝手で自由気ままな感じの神なんだなこの世界の神様…。神様とかいうからもっと神々しい感じかと思ったんだけど。まぁ私もすぐ飽きるし、好きにやってきている人間なのでよそ様のことを悪くは言えないんだが。
「では、なぜ私はお会いしたこともない神々のお気に入りなのでしょうか…?」
「それは我らにもわからんが、お主は面白い魂をしておる。別の世界へ旅立たれた神々に会っている可能性もあるのではないかな?」
「面白い魂…それは私に前世の記憶があるからでしょうか?」
「ほう…前世の記憶か。なるほどな…だからお主はこの世界の子らとは魂が違うのだな」
「自分で言ってなんですが、私の話を信じてくださるのですか?」
「神々がお認めになられた子の言うことを信じない神獣はおらぬよ」
「そう、ですか」
別の世界ってどこにいったんだろう。そして正直、転生したなんて信じてもらえるとは思わなかったのだけれど、謎に納得してもらったようだ。この世界には現在存在しない神々に気に入られているということは、確かにもし遭遇しているのだとしたら前世の私なのかもしれない。あの世界に神様いたとしたらそれはそれで面白いかも。現状思い当たる人物はいない。そもそも私の生きていた時代の神はみな神話のお話の中だし…。私の中の神といえば、推し一択だったしなぁ。sevensのみんなは本当に神のごとく神々しかったし美しかったからね。
わからないことを考えていても始まらないから、私は神々以外で気になっていたことを聞いてみることにした。
「それでは聖獣様と精霊とは、どのような存在なのですか?そもそも精霊という存在がこの世界には存在しているのでしょうか?」
「ふむ、我ら聖獣は先ほど言ったように創造神様の代行者として作られた存在だな。我々も全部で8体じゃ。わしは風の神の代行者なのだぞ。そしてここの主人は氷の九尾じゃな。同じく氷の神の代行者になる。あと精霊についてはもちろん存在しておるよ。そら、丁度お主の周りにもいるぞ?」
「えぇ!?」
セレスティアに言われて周りを見渡すが、私には何も見えない。
「見えないのですが…」
「よく目を凝らして魔法を使う時と同じように集中してみるのじゃ。おそらくお主には見えるとおもうがのぅ」
魔法を使う時と同じ集中力と目を凝らすこと…つまりこれもイメージが大事なのだろうか…?精霊…精霊…魔法を使う時と同じようにイメージを繰り返していく。私の中のイメージで言うと小さい小人みたいなのに羽生えた感じ?もしくは光の玉見たいな?色々イメージしつつ、魔力を探る時と同じように周囲に集中する。
すると、ぼんやりと何かが漂っているのが見えてきた。さらに集中すると、その漂っているものは徐々に鮮明になっていき、私の目の前には様々な色の光を放った蝶がひらひらと羽を羽ばたかせて飛んでいるのが見えるようになってきた。
「蝶が見えます!セレスティア様、この蝶が精霊なのですか?」
「その通り。やはりお主は見込みがあるようだのぅ。彼らはこの世界を構成する大事な要素の一つであり、わしら聖獣と同じく神々に生み出された存在なのじゃ。彼らは無属性魔法が凝縮した存在でもあるから、見えるようになった今、お主に積極的に力を貸してくれるじゃろう」
「無属性魔法の凝縮した存在…?」
無属性…つまり特殊スキルということになるが、このスキルには私たちの周りを飛んでいる蝶たちが関わっているということだろうか?
「無属性魔法を扱えるものはこの世界でも数少ない。我ら聖獣にもなかなかおなぬのだ。この精霊たちに好かれる存在を昔は精霊使いと人の子らは呼んでいたがな…。時の流れによって精霊が見えるものも減り、無属性魔法という存在だけが今の人の子らの中に残ったのだろうな」
「つまり、無属性魔法が使える者たちは精霊使いで精霊に好かれるからこそ無属性魔法が使えるという仕組みなのですね…」
無属性魔法の謎を図らずもこんなところで知ることになるとは…。確か確認されている無属性魔法の中に、《精霊術》もあったはずだ。精霊が見える者たちが精霊の力を借りることを《精霊術》というくくりにされているということだろうか。しかし蓋を開ければ、《精霊術》以外の《鑑定》など特殊スキルは全て、この精霊たちが力を貸してくれて作られた無属性魔法ということになるのではないだろうか。帰ったらちゃんとその辺の資料も読まなければ…。
「私たち人間はその無属性魔法を特殊スキルと言っています。鑑定魔法や精霊術といったものが確認されていますね。それから…私も新しい無属性魔法作りました…」
「ほぅ!無属性魔法を扱えるとはやはりお主、精霊たちとうまくやれているのではないか」
「いや、私の方は彼らを認識したのが今初めてですからなんとも…」
「こやつらは選り好みが激しいのだよ。だから一握りの者にしか無属性魔法は扱えない。それを現在確認されていないもので新たに生み出したとなれば、お主は素質があるということだろうよ」
「そうなんでしょうか…」
思わぬところで無属性魔法の正体と自分のポテンシャルの高さを知ってしまい、色々考え始めたら止まらない。しかし、それよりも今は目の前のことに集中しよう。精霊に好かれていると素質あり認定されたということで、試しに私は目の前の精霊たちの中でも特に私の近くを舞っている紫色の蝶に話しかけてみることにした。
「精霊さん…?こんにちは。あなたが私の近くにいてくれたから無属性魔法を使うことができたのかしら?ありがとう」
そう話しかけると、美しい光の蝶は嬉しそうに私の顔の前でひらひらと飛び、そして私の耳の上あたりにまるで髪飾りのように止まった。会話はできないようだが、セレスティアルの言うとおり、私のことを気に入ってくれたらしい。そんな私と精霊のやり取りを見ていたセレスティアルは言った。
「その紫のがお主を気に入ってずっと近くにいたんじゃろうなぁ。今後も一緒についていくとでも思っているんじゃろう。こやつらは宝石を好み、宝石の中に普段は入っていることが多い。家に帰ったら何か宝石を与えてやるといい」
「なるほど、わかりました!」
まだまだこの世界の神々について、聖獣や精霊について、魔法について、聞きたいことはたくさんあった。この気のいいドラゴンは色々と教えてくれそうだし、次は何を聞こうか考えていたその時、ドォォォォォォ…と凄まじい音と共にこの洞窟全体が揺れた。洞窟内の氷柱が砕け、周囲に散らばる。
「な、なんですか!?」
「おぉ!代替わりが終わったようじゃ!いってみようではないか!」
なんとも楽しそうなセレスティアルは、そう言ってさらに奥の方へと移動し始めた。聖獣の代替わり…。つまりは氷の九尾の代替わりが終わったらしい。そもそも代替わりってどんな感じなのだろう…?すでに動き出したセレスティアルの後について、私もさらに奥へと進んで行った。
この世界の精霊は蝶々でした。普段は宝石の中にいるのと、自分を認識させる人を選ぶのでなかなか貴重な存在です。精霊術を使う人たちも宝石を持っていたりします。
次回は九尾の聖獣とのご対面です。