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第5話 魔法の才能があったようです(2025.02.21修正)


薔薇庭園からの帰り道に異母兄を見かけてから、その後に兄にも皇妃にも会うことはなく、気がつけば私は3歳になっていた。仮にも家族なのだしいつか会うこともあるかと思っていたのだが、グレイシア帝国では5歳に皇族のお披露目があり、それ以降から様々な集まりに参加することになるようだ。そのため、私が生活する区画に彼らが現れない限りは、基本遭遇することはないのだった。


3歳になった私の現在の楽しみは、城内にある図書室だ。図書室というには広すぎる、広大な室内の壁一面天井まで敷き詰められた本棚には、帝国の内外から集められた多くの書物が収められている。この図書室は皇帝が許可した者以外は使うことができないようになっており、私が自由に行動できる区画の一つだった。


ある程度会話することができるようになり、自分の意思で動けるようになった私がおもちゃよりも何よりも興味を示したのが本だった。城の外に出ることができない私が、この世界の仕組みを知るには非常に有効的な方法だったからだ。本を読みたいという私のために用意された本たちをひたすら熱心に読んでいたのを見た父が、私が様々な本を自由に読めるように、もともと城の中にあった図書館とは別にこの図書室を増やしたため、ここは皇族専用(と言ってもほぼ私専用)になっている。母に薔薇庭園を用意した話を聞いていたから、プレゼントのスケールが大きいことは知っていたものの、わざわざ娘のために図書室を作る父というのも嬉しいを通り越してびっくりだった。


だが、私か家族以外が入って来ることがない図書室というのは、様々な本を読むのに非常に便利だったのでありがたく使わせてもらっている。通常3歳児が読む本といえば、普通絵本とかだと思う。しかし中身は大人な私が求めているのは、大陸の文化について書かれた書物や歴史書、魔法関係の書物など3歳児が読むものにしては難しいものばかりだった。そもそも読めるのか、読めるとしてなぜ3歳児が読めるのかという疑問については、周りの大人たちに何か疑われるかと思ったのだが、姫様は天才だったのねという一言でみんな納得していた。普通おかしいと思うはずなんだけれど、私の父や双子の兄と姉も神童と呼ばれて育ったらしく、このような3歳児離れした状況も受け入れられたようだった。我が家族ながら、容姿も淡麗、頭脳も明晰という化け物じみた人たちだ。

この図書館は原則皇帝の許可がなければ入ることはできず、マリーやエディも入ることはできない。完全に私一人で使うことができるのだ。3歳児を大人の目を離して一人にしてもいいのかという問題については、皇帝直々にこの図書館全体に私に害をなすものを排除するようなお手製の魔法が幾重にも組み込まれているらしく、一人でいても大丈夫なようになっているらしい。


(お父様、まじ最高〜!ありがたい!)


そんなわけで、やっと一人になれる空間を手に入れた私は、暇さえあれば図書室に入り浸っていた。そして、今日はついに魔法関係の書物に手を出そうと思っている。図書室を与えてもらってからずっと気になっていた内容の本たちだ。


(楽しみだな〜!)


図書室の前までいつものようにマリーとエディとやってきた。手を繋いでいたマリーは私の手を離し、しゃがみ込んで私と目線を合わせた。


「姫様、本日もこちらでお過ごしとのことですので私どもは外におりますね、何かあれば図書室の中の紐を引っ張って教えてください」

「わかった!」

「外にはエディを残します。私も何かあればすぐに駆けつけますので、くれぐれも危ないことはしないようにお気をつけくださいませ」

「うん!」


ほぼ毎日同じ会話をここでしているのだが、今日も私の返事を聞いて満足そうに頷いたマリーは、エディに「任せたわよ」と一声かけて離れて行った。残ったエディが図書室の扉を開けてくれたので、今日も私は図書室へと足を踏み入れた。


重厚な扉を潜り抜けると、静寂とともに古書の香りが鼻をくすぐった。広々とした図書室の内部には、天井近くまで積み上げられた本棚が連なり、壮観な光景を作り出している。壁一面に並ぶ革張りの背表紙が、歴史の重みを語るように静かに佇んでいた。前世でも本を読むことは好きだった。図書館や本屋に行くとたくさんの本があることに嬉しくなったものだ。毎日通っているけれど、図書室に入るこの瞬間の景色が私はたまらなく大好きだ。

図書室の中は、高窓から差し込む柔らかな陽光が、細かな埃を照らしながら降り注ぎ、室内を温かみのある黄金色に染め上げている。灯されたランプの淡い光と混ざり合い、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。私はウキウキとした足取りで、右手の書棚へと歩み寄る。ここの棚は、魔法関係の書物が置かれたブースだ。指先で木目をなぞりながら、一冊の本を取り出した。背表紙に書かれている題名は【魔法入門の書 第1巻】とあり、前からこの棚を通るたびに魔法関係はこれから読み進めようとピックアップしていた一冊だ。私は取り出した古い本を、開いて読み始めた。書かれている内容を以下にまとめてみる。


魔法とは…

▪️氷・水・火・風・土・雷・光・闇の全8属性があり、この大陸に生まれたものは8属性の中から一つまたは複数持っている。

▪️魔法を使用するにはイメージが大切だ。想像力を働かせ、体内にある魔力を使ってうまくコントロールする必要がある。

▪️本人の魔力量に応じて、適性がある魔法を使用可能である。

▪️適性のない系統魔法は基本的に使えないというのが通説だが、例外としては特殊スキルを持つものが稀に生まれることがある。

▪️無属性という名称でも分類される8属性以外の力である特殊スキルは、未だ謎が多く解明されていない点が多々ある。現在確認されているのは【鑑定】【精霊術】などである。

▪️魔法を使用する際にはイメージが大変重要となり、そのサポートとして詠唱や魔法陣、魔道具等を用いて安定的に魔法を使用する方法がある。特に高位魔法については詠唱などが不可欠とされている。詠唱や魔法陣については別巻【魔法詠唱の書 第1巻〜】【魔法陣の書 第1巻〜】に記載。


(ふむ…なるほどなるほど…)


順当に全10巻ある【魔法入門の書】を読み進めていった私だが、5巻あたりで面倒になり、一旦手を止めて実際に魔法を使ってみることにした。本来この大陸では、魔法を習うのは5歳からとなっている。安全面を考慮してということらしい。しかし、あと2年も待っているなんて私には無理だ!だって魔法だよ!?早く使ってみたい!!

そんなわけで【魔法入門の書 第3巻】あたりに『5歳になり魔法適性を確認してから魔法を使用しましょう』と注意書きがあったと思うけれど普通にスルーして、私は独学で実践してみることにしたのだった。


(まずは何から試そうか…)


私の家族たちの魔法適性は、

父は【氷・水・火・雷】

母は【水・風・光】

ルークは【氷・水・風】

ルビーは【氷・雷・火】

だとマリーから教えてもらった記憶がある。

ということは、双子がどちらも適性を持っている氷は私にも適性があるんじゃないだろうか…?

とりあえず、氷から試してみることにした。


(イメージが大事…イメージが大事…)


手のひらに氷の塊が乗るようにイメージしてみる。すると上に向けていた手のひらになんだか暖かいものが集まってきたように感じる。これが私の体内にある魔力だろうか。そのまま手のひらに集中していくと、パキッと音を立ててテニスボールほどの氷が手のひらに出現した。


「やった〜!!できたんだけど!!!すごい!!魔法だ!!!」


誰もいない図書館の中でテンションが上がって叫んでしまった…。中身は大人ではあるものの、たまに子供の精神に引っ張られてしまう。大人であっても物語の世界でしか存在しなかった魔法をまさか現実で使うことができるなんて思わないからやっぱり興奮してしまうのは仕方ない。

とにかく、ひとまず氷の適性は持っていることが証明されたわけだ。じゃあ次は…と全属性試してみることにした。


水は?…ビシャッ!!

火はどうだ!…ボッ!!

ん〜風はこんな感じ?…ブワッ!!

…雷!…バリバリッ!!


(私って結構センスあるんじゃない?)


流石に手のひらで雷が起こった時はびっくりした。水や火が図書室の本に飛び散らないように気をつけて操作する。土の属性はどうしよう…。周囲を見渡すと窓際に観葉植物が置いてあった。結構大きな鉢植えだから、ここの土を使わせてもらおう。観葉植物の生えている土に集中して、魔力を使っていく。すると、ぼこぼこっと土が盛り上がり、小さな土人形が出来上がった。土の属性というと私の中のイメージが物語に出てくるゴーレムみたいなやつだったからだ。土人形を動かしてみる。てくてくと鉢植えの土の上を小さな土人形が歩いていく。


(土も適性あるのか…私すごいんじゃない?)


流石に光はね…ポゥ!!

まじか…


ここまで全属性できてしまったようである。待って!?…そんなチートある?最後は闇なのだけれど、闇のイメージ…闇のイメージ…闇のイメージってなんだ?すると目の前にモヤモヤとした紫がかった紺色のモヤが出現した。これでいいのかわからない。でも一応、闇属性で使用する時に出てくる黒いモヤっぽいので、おそらく闇属性もクリアである。


(え…なんか…全部できちゃったんだけど…)


そんな簡単な感じでいいのか…?魔法さんよ…。

ルーナリア3歳、どうやら私には魔法の才能があったようです。


魔法使い美幼女、爆誕です!


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