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第17話 異母兄と仲良くできそうです

「ごきげんよう、アル兄様」


そう言って微笑みながら挨拶をすると、アルフレッドは一歩こちらへ近づきかけ、すぐに自分が稽古直後で汗をかいていることに気づいたのか、少し距離を空けて立ち止まった。


「……やあ、ルーナリア。こんなところに来るなんて、珍しいね」


そう答えるアルフレッドに、私はもう一歩近づく。すると彼はわずかに慌てた様子で、


「ぼ、僕、今ちょっと……汚れているから」


と小さく言いながら、半歩後ろへ下がった。

その仕草がどこか可笑しくて、私は思わずくすりと笑う。アルフレッドは不思議そうな顔をしたまま、少し考えるようにしてから言った。


「……ルーク皇太子殿下やルビー皇女殿下に会いに来たの? それなら、もう少し後にここで授業を受けられると思うけど」


まるで、自分に用があるとは考えたこともないかのような口ぶりだった。


(まあ、最初は誰かしらいるかしらと思って来たのは確かだけれど……)


私はアルフレッドを見上げ、にこりと微笑む。


「アル兄様がいらっしゃるかもしれないと思って来たのです。本当にいらっしゃって、よかったです」


そう言うと、アルフレッドはわずかに目を見開いた。


「……僕に、会いに来たの?」


まるで、そんなことを言われたのは初めてだと言いたげな声音だった。


「はい。本日はエディ卿と一緒に中央宮を巡っていたのですが、騎士団のエリアを見たときに、アル兄様のことを思い出したのです。剣がお好きだと教えてくださったでしょう? だから、もしかしたらいらっしゃるかしらと思って、こちらまで足を運びましたの」


そう伝えると、アルフレッドは一瞬視線を落とし、それからほんの少しだけ、はにかむように笑った。


「……そうか。僕の話を覚えていてくれたんだね」


その控えめな笑みは、普段の無表情とは違ってどこか柔らかく、思わず見とれてしまいそうになる。


(やっぱり、すごく綺麗な顔立ちよね……)


心の中でそっと感嘆しながら、私は何事もないように微笑みを保った。ステータスに「美形オタク」と表示されてしまうのも、案外間違いではないのかもしれない、と少しだけ可笑しく思いながら。


◇ ◇ ◇


エディには少し離れた位置で待機してもらい、まだ次の授業まで時間があるというアルフレッドと、二人で話をすることになった。


「アル兄様が剣をお持ちになっているところ、初めて拝見しましたけれど……とてもお上手なのですね」


そう伝えると、アルフレッドはわずかに目を見開き、少し戸惑ったような表情を浮かべた。


「……そう、かな。初めて言われたよ」


その言葉に、私は思わず小さく首を傾げる。ルシウスの近衛騎士を務めていたエディの評価では、アルフレッドの剣技はかなり高い水準にあるはずだった。それなのに、褒められたことがないとはどういうことだろう。


「アデル様や、周囲の方々にもお上手だとおっしゃっていただけるのではありませんか?」


そう問いかけると、アルフレッドは一瞬視線を伏せ、少しだけ寂しげな表情を見せた。


「母上は、剣術にはあまりご興味がないから。それに周りの者たちも……もっと精進しろ、と言うだけだね」


そして小さく、


「僕は、まだまだ頑張らないと」


と呟いた。


(……そういうことだったのね)


私は少しだけ胸の奥がきゅっとするのを感じながら、アルフレッドの方へ柔らかく微笑みかける。


「アル兄様はすごいですよ。一緒に拝見していたエディ卿も、とても驚いていました。ですから、もっと自信をお持ちになってください」


そう言うと、アルフレッドはほんの少し頬を染め、控えめに微笑んだ。


「……ありがとう」


普段は無表情で、言葉数も多くないアルフレッドだが、こうして話してみると、とても素直で優しい人柄なのがよく分かる。


(本当に、良い子よね)


そんなことを思いながら、私はそのままアルフレッドとの穏やかな会話を楽しむのだった。

その後しばらくして、次の授業があるからとアルフレッドは立ち上がった。私はその背を見送りかけ、ふと思い立って声をかける。


「アル兄様。また、ここへ来てもよろしいでしょうか?」


その言葉に、アルフレッドは一度瞬きをし、それから少しだけ嬉しそうに微笑んだ。


「ルーナリアが望むなら、僕は構わないよ」


そう答えたあと、彼の視線がふと私の胸元へ向けられる。


「それ……また、つけてくれているんだね」


彼の視線の先では、以前彼から贈られた赤いブローチが、陽光を受けて小さく輝いていた。私は指先でそっとそれに触れ、微笑む。


「ええ。アル兄様の瞳の色に似ていて、とても気に入っていますの。私、アル兄様の瞳の色が好きですから」


そう言うと、アルフレッドはわずかに目を見開き、無意識のように自分の目元へ手をやった。


「僕の瞳……そんなこと、初めて言われた」


小さく呟いたあと、彼は少し照れたように視線を逸らし、それから改めて私を見つめる。


「……僕は、ルーナリアの瞳の色が好きだよ」


その言葉には、どこか柔らかな、そしてほんの少し羨ましそうな響きが混じっているように感じられた。私は一瞬きょとんとした後、自分の瞳が父――ルシウスと同じ色をそのまま受け継いでいることを思い出し、なるほどと内心で頷く。


「ありがとうございます、アル兄様」


そう返して微笑むと、アルフレッドも小さく頷き、次の授業へ向かって歩き出した。

私はその背を見送ったあと、エディと合流し、自分の宮へ戻ることにした。


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