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第15話 久しぶりに魔物狩りをするようです

「ルーナぁぁ! つまんないぃぃ!」


そんな叫び声とともに、ディアが勢いよく飛びついてきた。その瞬間、私は「ああ、今日はもう予定変更だな」と悟る。


五歳の誕生日を迎えてから数か月。社交にばかり時間を割いていたせいで、ディアとゆっくり過ごす時間がほとんど取れていなかったのだ。それまでは、ディアと一緒に魔法の研究をしたり、レベル上げをしたりと、毎日を楽しく過ごしていた。放っておかれていたディアにとっては、最近の日々はかなり退屈だったのだろう。


「ごめんごめん。今日は一日、ディアの好きなことをしよう」


そう言うと、ディアの表情がぱっと明るくなった。


「ほんと!? じゃあ、スノーグレイスの氷山の方に遊びに行こうよ!」


こうして、久しぶりに、私たちが出会ったあの場所へ向かうことになった。


使い慣れてきた《転移》の魔法を発動し、私たちは森の中へと移動する。ふわりと足元の感覚が切り替わり、次の瞬間、視界には深い緑が広がっていた。風に揺れる木々が、さわさわと静かな音を立てている。


「あ〜、やっぱりいい空気吸いに来ないとねぇ」


大きく伸びをしながら言うディアに、私は苦笑する。


「いや、そんなに“いい空気”って感じの森じゃないでしょ、ここ」


氷山へ続くこの森は、奥へ進むほどに空気が重くなり、二層目に近づくあたりからは、どこか薄気味悪い雰囲気が漂い始めている。


「でも、ここの魔物や動物なんて、今のルーナとディアにとってはもう弱者同然じゃないか」


そう言って、ディアはやる気満々の笑みを浮かべた。


「まあね。でも、油断は禁物よ?」


そう答えながら、私は軽く肩を回し、意識を戦闘モードへと切り替える。


「さあ、行きましょうか」

「うん!」


そうして私たちは顔を見合わせ、小さく頷き合うと、森の奥――二層目へ向かって駆け出した。


◇ ◇ ◇


魔法を使って迫り来る魔物を次々と倒していく。この森での戦いは、今ではすっかり日常の一部になっていた。とはいえ、相手は常に本気で襲いかかってくる魔物だ。どれだけ慣れていても、油断すれば一瞬で形勢は逆転する。


「ディア、そっちに行ったわよ!」

「了解!」


今、私たちが相手にしているのは、私の数倍はある巨体を持つ魔熊の群れだった。黒い毛並みを逆立てながら、地面を震わせるほどの重たい足音で突進してくる。


私は一歩踏み込み、足元に風の魔力を流し込む。身体が軽くなり、そのまま空中へと跳び上がった。木々の枝を越える高さまで舞い上がった瞬間、指先に雷の力を集中させる。空気が震え、次の瞬間、鋭い雷光が地面へと叩き落とされた。轟音とともに一体の魔熊が弾かれ、黒煙を上げて倒れる。


着地する間もなく、別の個体が爪を振り上げて迫ってきた。私は地面に手をかざし、土の魔力を押し上げる。隆起した地面がそのまま拘束具のように変形し、魔熊の脚を絡め取った。動きを封じられた瞬間、今度は炎の魔力を掌に集め、一気に解き放つ。爆ぜる炎が広がり、拘束された巨体を包み込み、熱風が周囲の草を揺らした。


「ルーナ、後ろ!」


ディアの声に反応し、振り向きざまに水の魔力を展開する。透明な水の壁が瞬時に形成され、背後から飛びかかってきた魔熊の衝撃を受け止めた。水面が大きく波打った次の瞬間、そのまま冷気を流し込み、盾全体を氷へと変化させる。砕けた氷片が鋭い刃となって飛び散り、魔熊の動きを止めた。


少し離れた場所では、ディアが周囲一帯に冷気を解き放っていた。白い霧のような冷気が地面を這い、三体の魔熊の足元から瞬時に凍り付かせていく。毛並みに霜が広がり、巨体が完全に停止した。


「今!」


私は駆け出し、地面へ緑の魔力を流し込む。次の瞬間、硬質化した蔦が地面を破って伸び上がり、凍りついた魔熊たちを一気に貫いた。氷が砕け、同時に巨体が崩れ落ちる。


残った一体が怒り狂ったように咆哮を上げ、一直線に突進してきた。私は深く息を吸い、両手に光と闇、相反する魔力を同時に集める。白い光が弾けたかと思うと、その中心を貫くように漆黒の衝撃が走り、魔熊の体を真横から打ち抜いた。巨体は数歩よろめいた後、そのまま地面へと崩れ落ちる。


静寂が戻った森の中、私は小さく肩を回した。


「……こんなところかしら」


ディアが軽やかに駆け寄り、満足げに周囲を見回す。


「うん、いい感じにレベル上げできたね」


私は木々の奥、さらに深く続く暗い森を見つめる。まだ奥には、より強い魔物の気配が漂っていた。


「もう少し奥まで行ってみる?」

「もちろん。今日は久しぶりの“全力の日”だからね」


私たちは顔を見合わせ、小さく頷き合うと、再び森の奥へと歩き出した。


◇ ◇ ◇


そうしてたどり着いたのは、私とディアが出会った氷の洞窟だった。ドラゴンでさえゆったりとくつろげるほど広大な空間は、相変わらず静寂に包まれている。天井から垂れ下がる氷柱や、地面から伸びる氷の柱が、淡い光を受けて宝石のように輝いていた。


「そういえば、最近ステータス見てなかったな」

「見てみようよ」


ディアが期待に満ちた目でこちらを見上げる。


私は軽く息を整え、目の前に意識を集中させた。


「ステータス……オープン!」


〜ステータス〜

名前:ルーナリア・グレイス(5歳)

性別:女

魔法適性:全属性

無属性:精霊術/鑑定(ステータス表示)/魔力感知/テレパシー/転移/完全回復魔法/夢遊魔法/精神干渉魔法/空間収納魔法/ブースト

└可能性:♾️

魔力量:SSS+♾️(回復速度:異常)

称号:グレイシア帝国皇女/神々のお気に入り/精霊王の契約者/?の神の執着対象者/魔法オタク/美形オタク/転生者/聖獣の友人/モフを愛する者/魔物が恐れ慄く者


「なんか、また増えてるね……」


そう言うディアに、「あはは……」と乾いた笑いを返しながら、私は追加された項目を確認する。


無属性の欄は、二つ増えていた。


空間収納魔法は、異空間に物を保管できる魔法らしい。以前、こんな魔法があったら便利だなとイメージしていたところ、精霊の力が反応する感覚があり、そのまま使えるようになってしまったのだ。


試しに指を軽く鳴らすと、先ほど収納していた小さなナイフが、淡い光とともに手の中へ現れる。


どうやら時間の経過の影響を受けないらしく、食べ物なども鮮度を保ったまま保存できるようだった。温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま維持されるらしい。かなり便利な能力だ。


そしてもう一つが、ブースト。


これは今日、氷山の洞窟へ向かう途中で新しく発現したもののようだ。火属性の魔法だけでは対処しきれない魔物に遭遇したとき、「威力がもう少し上がればいいのに」と思った瞬間、精霊が淡く光り、放った魔法の威力が明らかに増幅された。


どうやら属性魔法を使用する際、「どの程度強化するか」を明確にイメージすると、その倍率に応じて威力が引き上げられるらしい。通常は魔力量に比例して威力が決まるが、この魔法はその上からさらに増幅をかける仕組みのようだった。


(……これ、やりすぎたら本当に一帯を焼け野原にしかねないわね)


そう思い、私は「とりあえず三倍まで」と心の中で上限を決めておくことにした。


「それから……」


続いて称号の欄を確認する。


そこには、見慣れない一文が追加されていた。


魔物が恐れ慄く者


「いや……なんなの、この称号名は……」


思わず小さく呟くと、隣で覗き込んでいたディアが肩を揺らして笑う。


「さっきの戦い見てたら、まあ、そうなるんじゃない?」


「そんなに暴れてたつもりはないんだけどなぁ……」


そう言いながらも、先ほどの魔熊の群れとの戦闘を思い出し、私は少しだけ視線を逸らした。


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