第12話 たくさん注目されているようです
連載再開します⸜( ˶'ᵕ'˶)⸝
すでに公開済みの話も大まかな流れは変わっていませんが、ところどころ加筆修正しておりますので、もしよろしければ改めて序章から読んでいただけたら幸いです。
1章完結までお付き合いお願いいたします( ー̀֊ー́ )✧
シャルロッテと交流を持ったことで、帝国のさまざまな貴族の子どもたちから「皇女と繋がりを持ちたい」との招待状が次々に届くようになった。気づけば、机の上には封蝋の押された手紙が山のように積まれている。
(さすが皇女、帝国中から注目を受けまくっているみたいだ)
このまま何も考えずに応じるわけにもいかない。この貴族子女たちとの交流は、後々の私の側近を決める大きな役割も担っているのだから。
マリーの助言も参考にしつつ、ひとまず家族にも意見を求めてみることにした。ちょうど家族でゆっくり過ごす時間があったため、私はティーカップを置いて口を開く。
「私に、たくさんの招待状が届くようになりました。マリーが、次はプレナイト侯爵家を中心とした皇帝派の家の子たちと交流を持ってみてはどうかと言ってくれたのですが……皆さんはどう思われますか?」
私の問いかけに、ルークとルビー、それからルシウスが顔を見合わせ、順番に答える。
「ルーナが関わってみたいと思った者と関わればいいんじゃない?」
「そうね。別に派閥にこだわらなくてもいいわよ。何かあれば私が蹴散らしてあげる」
「いっそ、すべて無視しても構わないぞ」
――相変わらず、ルシウスを筆頭とした氷の親子は私第一主義すぎる。
あまりにもいつも通りの答えに、私は思わず「あはは」と苦笑を漏らした。すると、シルビアが穏やかに微笑みながら彼らを軽く嗜める。
「だめですよ、あなたたち。ルーナちゃんは皇女として、国のことを考えて相談してくれたのですから。きちんと答えてあげなくては」
そう言ってから、シルビアは改めて私の方へ向き直った。
「でも、そうね。ルーナちゃんは、ルークやルビーほど派閥を強く意識しなくても良いのは事実だわ。すでにルークは皇太子として十分に力を示しているし、ルビーも派閥を意識して、側近や関わる者をしっかり選んでいるでしょう?」
シルビアは紅茶を一口飲み、やわらかな声音で続ける。
「仮に、ルーナちゃんを利用して何かを企てる貴族がいたとしても、今は情勢も安定しているし、並大抵のことでは帝国は揺らがないわ」
そして、優しく微笑んだ。
「だからね――お父様やお兄様、お姉様が言ったように、あなたは自由に、思ったようにやってみても大丈夫よ。きっとルーナちゃんなら、良い人を選べると思うの」
その言葉に、ルシウスもルークも、そしてルビーも穏やかに微笑みながら頷いている。
(私って、本当に家族に恵まれてるわ)
胸の奥がじんわりと温かくなり、私は小さく息をついた。
◇ ◇ ◇
そんなわけで私は家族の助言どおり、派閥を少し意識しつつも、気になった令嬢や令息たちと関わりを持つことに決めた。ここ数日は、山のように積み上がった招待状をマリーとともに選別して過ごしている。
机の上だけでは収まりきらず、サイドテーブルにまで積まれた封書の山を前に、私はつい唸り声を漏らした。
そのすぐそばでは、ディアが丸くなったまま大きなあくびをし、どこか呆れたような目でこちらを眺めている。
「ルーナ、大変そうだね」
「そうよ、大変なのよ。数が多すぎるし、そもそも帝国が広すぎるのよね。だから貴族も多くて、何日経っても終わらないの」
一通手に取り、封蝋の紋章を確認してから、私は再び山の上に置き直した。
「うん……なんか、積み上がってる量、ずっと変わってない気がするもん」
「終わったと思ったら、また届くのよ。ほんと、忌々しいわ」
思わず大げさに肩を落としてみせると、ディアがくすりと小さく笑った。
ある意味、こうした社交も皇族の義務であり、大切な仕事の一つだ。
ルークやルビーも、きっとこうして一つ一つ対応してきたのだろう。
(早く、あの二人みたいに余裕でこなせるようになりたいなぁ)
そう考えていると、マリーが焼き菓子の乗った皿を持って部屋に入ってきた。
「姫様、そろそろ休憩なさってはいかがですか? ずっと頑張っていらっしゃいますし」
「そうだね、そうする! ありがとう」
私は素直に手を止め、ソファへと移動する。
お菓子を一口かじりながら、隣に座ったディアの柔らかな毛並みを撫でると、ふわりと心が軽くなった。
「はい、ディア。あーん」
小さく口を開けたディアにお菓子を分けてやりながら、私はここしばらくの出来事をぼんやりと思い返す。
皇妃のこと、異母兄のこと、さまざまな貴族たち、シャルロッテ、そして精霊の存在。
まだ五歳になって、それほど時間は経っていないのに、ずいぶん多くのことがあった気がする。
それまでは、本と知識と魔法がすべてだった。あの日々も楽しかったけれど――今の生活も、決して悪くない。
「世界が広がっていく感じ……ワクワクするな」
小さくそう呟いたとき、ふと、たった一度だけ出会った黒髪の少年の姿が脳裏をよぎった。
ほんの一瞬だったから顔ははっきりとは覚えていない。それでも、まるで海のようにどこか不思議で美しい瞳だけは、なぜか印象に残っている。
(あの子とも、またいつか再会できるかな)
理由はわからない。けれど――なぜか、もう一度会ってみたい。
そんな気持ちが、胸の奥に静かに残り続けていた。
◇ ◇ ◇
「よし!」
そう言って私は、机をばん、と叩いて勢いよく立ち上がった。
その衝撃で、積み上げていた招待状の束が揺れ、ぱらぱらと床に散らばる。
突然の行動に、そばにいたディアが目を丸くしてこちらを見上げた。
――どうした? とでも言いたげな視線だ。
「わからない! こんなに招待状をもらっても、誰がどんな人なのか全然わからないから進まないのよ! つまり――こちらから招待状を送って、みんな呼び集めて、そこで気になる子を見つけるわ!」
顔も性格もわからない相手から届く、丁寧な言葉で飾られた招待状をいくら眺めていても、その人となりは見えてこない。
だったら、直接会って、自分の目で見て選べばいい。
そう思った私は、すぐにマリーへ相談する。
「つまり、招待されるのではなく、皆さまを姫様のもとへ招待して、一斉に交流を持たれたい、ということですね?」
「そういうこと!」
「承知いたしました。このマリー、姫様初の大々的なお茶会を、必ず大成功させてみせますわ!」
なぜか一段と張り切り始めたマリーは、「忙しくなりますね!」と意気揚々と部屋を飛び出し、準備に奔走し始めた。
その様子を、部屋の扉の前で護衛を兼ねて立っていたエディが、うっとりとした表情で見送っている。
「今日もマリーは輝いてるなぁ……」
完全に惚気だ。
私は思わず小さく苦笑した。
――そして、マリーの奮闘により、一週間後。
私が初めて主催するティーパーティーが開かれることになった。
薔薇庭園じゃない方の庭園を使いたいとお願いすると、ルシウスは快く了承してくれた。
色とりどりの花が咲き誇る庭園には、五歳から十歳ほどの子どもたちが大勢集まっている。席は同じ派閥同士である程度まとめつつ、公爵家から男爵家まで、気になった家の子どもたちを満遍なく招待してみた。
テーブルごとに私が回り、少しずつ話をしていく予定だ。
――そして、なぜか私のテーブルには、ルークとルビー、それからサフィリアンが当然のように座っていた。
お茶会を主催すると話した途端、
「ルーナの初めてのお茶会に、僕も参加したい!」
「私も参加したいー!」
と、この双子が揃って駄々をこねたのだ。
結局、席を用意することになり、ちょうど遊びに来ていたサフィリアンも、何も言わないまま期待に満ちた目でこちらを見つめてきたため、招待状を送ることになった。
そうなると自然と双子の側近たちも参加することになり、結果的に、思っていたよりもずっと盛大な会になってしまったのである。
「ルーナのお茶会、感動」
「幸せ」
そう言って本気で喜んでいる双子を苦笑しながら眺め、私は小さく息を吸い込んだ。
(さて――私も、がんばろっと!)
胸の前でそっと拳を握り、最初のテーブルへと歩き出した。
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