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コトバがあるということ  作者: かなたつむぐ
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校門に立ち「おはよう」という毎日 ~高校生の思い出~ ①

 高校生になった。午前七時。

 目覚まし時計はならない。というより目覚まし時計はもうない。高校生になると母が起こしに来る前に起きるようになって、朝の目覚ましは母の声ではなく大好きなアーティストの曲で目覚めるのが当たり前になっていた。


 起きてスマートフォンでニュースを見る。朝の六時過ぎになると猫が部屋のドアノブをガシャンと開けて入って来て、ベッドに乗ってゴロゴロと喉を鳴らしながら顔にスリスリしてきて大きな声で「ニャー」となく。


 洗面所に行くと父が洗濯物を干す準備をしており「おはよう」と言葉を交わす。父はご飯を炊くことすらできないが、何故かカレーとイカの塩辛だけが作れるようになって、忙しい母の家事を手伝うようになっていた。洗濯と朝の食器洗いが父の家事の分担になっていた。父と入れ替わり洗面所で顔を洗って髪を整え、ダイニングに行く。


 母は笑顔で「おはようございます」と言って、お弁当と朝ごはんを出してくれる。僕が朝食を食べていると、母は僕らより先に家を出ていくようになった。


「いってきます」と言って車に乗って手を振って出掛けていくのを見送るのは、僕と星耶と父。僕と星耶はリビングの窓越しに手を振り、父は玄関先で母を見送る。それが毎朝の光景に変わっていた。


 母は誰より先に出ていくようになっても「気を付けていってらっしゃい!」という言葉は忘れずに言ってくれた。母の後に僕と星耶が出掛けようとすると父が「いってらっしゃい。気をつけてな」と小学生の時に母が見送ってくれたように僕らがみえなくなるまで手を振ってくれるようになった。


 母はパートではなく正社員に戻っており、看護師なので早番、遅番、日勤、夜勤と働く時間がバラバラになっていた。夜勤の場合は、朝ご飯とお弁当の準備だけでなく夜の食事を用意して出掛けていくようになった。


 母にはプライドがあり『看護師は自分の家族より患者さんを優先する。家にいないし、家のことをやらないから良い母にはなれない』と周りに言われることがあるらしく、100%手料理を作るというのを徹底していたのだ。


 母が先に家に帰っている時は相変わらず「おかえりなさい」と言って出迎えてくれ、僕が先に帰宅している時は母の車が到着したと同時にインスタントコーヒーを入れて、リビングに入ってくるのを待ち「おかえり」と言うのが当たり前となっていた。

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