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コトバがあるということ  作者: かなたつむぐ
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先生との「おはよう」 ~中学生の思い出~ ②

 小学校を卒業する前には不登校になっていたが、卒業式の日ももちろん連絡はない。そして中学入学式でほぼ新品のままの小学校の時の上履きと体育館シューズを持ち行くと、中学の担任の先生からは「小学校の時に中学指定の上履きや体育館シューズ、他にも持ち物リストをもらわなかった?」と言われ、そうか僕は鈴木先生から嫌がらせを受けていたのかとやっと気が付いた。先生も一人の人間だからストレスを発散させる人間が欲しかったのだろう。


 後から聞いた話によると、父が教育委員会にいて鈴木先生と揉めたことがあるそうだ。父に言い返せないモヤモヤを僕に八つ当たりしていたらしい。大人、先生の行動とは思えないがそういう人間もいるのだと知ることが出来た。嫌な出来事も記憶も経験値として捉えれば自分がレベルアップで出来るわけだからプラスに捉えようと思うようになった。なんてかっこいいことを言ってみたが同時に相手のことは“人に当たることしか出来ない可哀想な生き物だ”と心の中で思うことでストレスを発散させることにした。


 僕は先生という存在と学校という場所が嫌になり、学校へ行きたいとも思わなくなっていた。


 それに父は僕が中学生になった頃から、小学生とママさん以外にも中学生にまでバスケットボールを教えるようになり、おまけに他の趣味の囲碁もはじめ、離れで囲碁をする部屋まで作り、人が出入りするようになっていた。平日の夜は毎日練習と囲碁、土日は試合と家にいなかった。父は朝みかけるけどご飯は一緒には食べない。土日は家にいないしほとんど話したことはなかった。


 そんな父のせいか母は僕らに寂しい思いをさせないようにと天職だと言っていた仕事を辞めた。でも本当は知っている、母が仕事を辞めた理由は僕のせいだということを。学校に行かなくなった僕は朝起こされなくなった。

 好きな時間に起きてリビングに行くとテレビを見ている母が「おはようございます、俊」と言って朝ごはんを用意してくれる。

「おはこんにちは、母さん。いつも温かい美味しいブランチをありがとうございます」

 母は僕がご飯を食べている時は対面に座ってお茶を飲み、他愛もない会話をするのが毎朝の光景になった。


 そして朝ごはんを食べ終わると母は「今日は何をしたいですか?」と聞いてくる。気分によって保健室登校をしたり学校の代わりに出席扱いになる不登校の子たちが集まる施設に行ったり、時には観光に行ったり買い物に行ったりもする。


 田舎なので近所での噂はすぐに広がっていたが母は気にせず僕を家から連れだしてくれた。夜は母が僕の先生になってお勉強を教えてくれる。勉強が終わると「おやすみなさい」と言って布団に入る、それが僕の中学生の時の僕の日常になっていった。

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