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コトバがあるということ  作者: かなたつむぐ
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父からのメッセージ ②

 実家に帰ると庭にあった鯉が泳いでいた池が土で埋め尽くされ、入り口にあった大きな二本の松の木の一本が切られていた。家の横にある家庭菜園では、僕が大好きなシャインマスカット、キウイフルーツ、サクランボの木が植えられていた。父は趣味で家庭農園をするようになっており、色んな野菜を育てていた。時期になると、実家から野菜とフルーツが送られてきていた。これは全て父が手作りしたもの。まさか、フルーツまで作りはじめていたことに驚いた。


 そんな家庭菜園をぼーっと眺めていると麦わら帽子とメルヘンなキャラクター達がバスケットボールとユニフォームを身につけたTシャツを着てやってくる。その変なTシャツは僕がいつもネタとして父の日にプレゼントしているTシャツであった。父は近くにやってきて「おかえり」と言い、また家庭菜園で作業を始める。


 家に入る前に番犬たちに挨拶をと思い、家の裏に回る。すると、同じ敷地の別宅に住んでいる、常にしかめ面で口うるさかった父方のおじいさんが無言でニコニコしながらフラフラと家の周りを徘徊していた。そして夜になると勝手口をドンドンと叩き「テレビが映らん」と言って大暴れをする。結果、電源を切ってしまうらしくリモコンでテレビがつかないと言ってくる。


 おじいさんの昼と夜の温度差にも驚くが、僕が知っているおじいさんとはほぼ別人になっていた。そして、おじいさんの行動は毎日の恒例行事らしい。おばあさんは元々引きこもり気味なので、裏の別宅でいつも通り生活をしていると思っていたら、体調を崩し寝たきりになっているそうだ。要介護1でペルパーさんに来てもらってやっと生活が出来ている状態だった。


 母は介護をしながら看護師として働き、家のことをやっていたのだ。僕は母や父からそんな話を一度も聞いたことがないし、この現状をはじめて知ることになる。僕は浦島太郎にでもなったのかと思った。


 それくらい僕の家の状況は変化していた。母は昔と違って痩せ細りガリガリで、肌は真っ白で目のクマもあり病人のような見た目になっていた。声も前のように元気いっぱいではなく、少しかすれて優しくゆっくりな口調になっている。年を取ったな……思っていると。


「おかえりなさい。会わない間にすっかり立派な紳士になりましたね! 私、すっかり老けちゃっておばあさんみたいでしょう?」と母は笑いながら笑顔を取り繕ってみせた。

「そしたら僕はオジサンってこと? まだ20代前半なんだけどな。僕としてはまだお兄さんくらいがいいから、母さんはオバサンくらいにしてほしいな。おばあちゃんになる時はさ……」と返す。


 僕はその時、なんて返せばいいかわからずこんなコトバを返したのを覚えている。

「あらあら。お母さん、もう少し若々しく頑張らないといけませんね。おばあちゃんになるのはもう少し先ですね」と母はくしゃくしゃの笑顔でガッツポーズをする。

 そんなことを言うようになったんだ。それだけの年月が経ったのだと実感した。こんな母はいつものメッセージからは想像もつかない姿であった。


 そう、これが現実なのだ。

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