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コトバがあるということ  作者: かなたつむぐ
18/27

彼女の「おはよう」は特別なモノ ①

 社会人になって二人暮らしを始めた。


 一緒に住んでいるのは同じ大学で同級生だった浬音。

 僕は会社から三駅以内であれば家賃補助がもらえるという福利厚生がある会社に就職したが、住みたいところに住もうということで……ドアツードアで四十五分くらいの場所に住み始めた。


 学生の頃とは違って家から会社まで遠い……早起きしなくては! と思っていたが情報・通信業系の企業に就職したらなんと! 午前十時からのスタートで大学生の時と同じ、午前八時に起きる生活のままになった。


『おはようございます☀』相変わらず、午前七時前後に毎日届く母からの言葉。そして午前七時十五分になると『いってらっしゃい!』とメッセージが届く。


 もちろんぐっすりと寝ている。社会人になってからは、その両方のメッセージに返事をすることはなくなっていた。午前八時になると大好きなアーティストの曲が流れ、その音で目覚める。


 朝一番に僕に「おはよう」を言ってくれるのは僕の隣で寝ている浬音。僕は目を閉じたまま「おはよう」と返す。

 大好きな人からの『おはよう』は特別で、その一言のコトバで笑顔になって元気になれる。今日も一日頑張ろうとなる。同じ言葉なのに世界が違って見えるくらいのコトバ。


「うふふ。おはよう」

 浬音は毎朝、太陽のように眩しいキラキラな笑顔をみせる。

「おはよう」

 僕はまだ少し眠い……。けど浬音の起きた時の姿をみられるのは今しかないと思い、頑張って目を開ける。

「ほら、もう起きないと遅刻しちゃうよ」と浬音は呆れた口調で言い、僕に優しくキスをする。

 僕が起きて最初にやることは、両手で浬音の頬に触れ鼻と鼻でキスをすること。これは実家の猫が毎朝起こしに来てやっていたこと。きっと猫なりの”おはよう”なんだと思う。僕はこれがお気に入りだったので浬音への挨拶にしている。


「ふふ、くすぐったい」

「いつもの挨拶」


「俊のその挨拶はもちろん好きよ、けど私は……」と浬音は唇に触れるか触れないかくらいのキスをする。

「私は、こっちのが好き」と浬音は頬を淡い桜色に染める。


「僕も本当はそっちのが好きだけど、それは浬音の挨拶だから。僕は鼻チューにしているんだよ」

「別に、俊もしてくれてもいいんだよ」

 浬音は目をキラキラさせて僕のことをジッと見る。


「それはしてほしいっていう、おねだりですか?」と僕は少し意地悪な言い方をしてみる。

「もう!」と浬音は枕を僕の顔に押し当てる。


「仕方がないな……」と僕はキスをするふりをする。

 浬音は目を閉じ、キスを待っている。それが可愛くて見ていると……。

「バカ」と言って浬音は枕を思いきり投げつけてくる。


「ごめん、ごめんって。でも浬音はどんな時でも可愛いよ、大好きだよ」と浬音にキスをする。

「へへ、私も大好きだよ」と浬音はギュっと抱きしめてくる。


 これが今の僕の当り前の朝の光景。こんな朝だから、寝たふりもしたくなってしまう。

 朝だけど少し甘い時間を楽しむのが日課になっていた。

 なんて母にも浬音にも内緒の話。

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