文字の「おはよう」 ~大学生の思い出~ ②
アイのグループと過ごすようになってから、異性から声をかけられる回数が減った。アイと一緒に過ごすまでは人生最大のモテ期か! のように毎週のように告白をされていた。
恋をするきっかけは単純らしく、声をかけられたから、ノートのコピーをくれたから、優しく笑いかけてくれたからという理由らしい。普通に接することで誤解を招くこともあるのか、人との距離のとり方が難しいと思いながら勘違いを起こさないようにと気を遣って接するようになっていた。
そんな中、同性である男性から告白をされた。
「山田! すげぇ可愛いと思っている! 俺の彼女になってくれ!」
僕はカラダもココロも男性。童顔とよく言われるが、身長は平均身長より高い。運動部なので普段から鍛えていてカラダはどちらかというと細マッチョ系。
僕は彼のコトバに驚いた。なぜなら僕は女性としてみられていたからだ。男性から男性にみられるなら理解は出来るが、女性にみられていることに衝撃を受けた。彼の頭の中はどう僕のことを思っているかわからないが、とりあえず僕は目の前にいるたった一人の男性のために女性になれということだろうか。さすがにそれは受け入れられないので「僕はカラダもココロも男性です。男性もしくは一人のヒトとしてみてくれるなら嬉しいですが、彼女にも女性にはなれません」と伝えた。
彼は苦笑いをしてペコリと頭を下げてその場から立ち去っていった。それからは普通に接してきたので僕も普通に対応をすることにした。
僕は人を好きになる感覚が他の人達とは違うのかと悩んでいると、アイのグループの柿田浬音が声をかけてきた。
「しゅーんしゅん! どうしたの? なんか元気ない感じ?」
「凛音にはすぐにバレちゃうね」
「なんとなく気になっていたけど、声をかけろっていったのはアイだよ」
「そうなの?」
「うん。アイはしゅんしゅんが大好きだからね」
「それはよく知っています」
「まあ周りは勘違いするくらい、アイのしゅんしゅん好きはみてわかるからね。でもアイはしゅんしゅんのパーソナルスペースには入ろうとしないよね。実に面白い」
「それが僕には嬉しいところだけど、距離も感じるところでもあるんだよね」
「ね、人との距離は難しい。けどズカズカ来れちゃう私は最強! ってことで来ました。噂ではね、耳にしているというかそれ系かなと」
「多分、あたりかと」
「多分って! モテないよりはモテたほうがいいとも言えないものね」
「自分で言うのも変だけど、真面目すぎるのかな? 好きって気持ちは相手を知らなくても溢れる感情だとして。でも付き合うってそれなりにお互いを知ってからというか、お互いに思う気持ちがないと上手く行かない気がするんだけど」
「それに関しては激しく同意します! が十人十色というコトバがあるように感覚はそれぞれよね。告って相手に気がなくても付き合える人が多いのも事実。相手に求めるのが恋人ではなく、見た目が良いから自慢の対象としてとか、カラダ目的とか、色々あるよね。それを理解しろとはいわないけど、いるって思っておかないと毎回悩んじゃう。人は人。自分は自分。それでいいじゃない! 私は誰かを傷つけないようにコトバを選んだり行動したりする、しゅんしゅんというヒトが好きだよ。でも自分らしくも悪いことじゃないと思うな」
凛音の考え方とコトバが好きだ。自分の価値観や考えと合わないことが自分の問題なんだとは思わなくていい。もちろん自分と違うからといって否定もしない。それぞれの個性があること、考え方があることを知っている。それだけで悩まなくていいんだと教えてもらった。
「ヒトが好き」というコトバが好きだ。僕は男性らしい女性らしい、若者らしい、長男らしい、何型らしいとかそういうコトバが苦手だ。僕は性別や年齢などでヒトをカテゴライズするのではなくヒトとして誰かに接しているから、その「ヒトが好き」というコトバが本当に嬉しく思えた。




