文字の「おはよう」 ~大学生の思い出~ ①
大学生になって東京で一人暮らしを始めた。大学の専攻はもちろん心理学。
学校から約五分の場所に住んでいるので、起きるのはだいたい午前八時過ぎ。授業は九時からだから余裕で間に合う。
『おはようございます☀』携帯の画面が光り、メッセージが画面に表示される。
午前七時前後に毎日届く、母からの言葉。当然というのもあれだが、このメッセージで起きることはまずない。七時十五分になると『いってらっしゃい!』とメッセージが届く。
もちろんぐっすりと寝ている。午前八時になると大好きなアーティストの曲が流れその音で目覚める。支度をし、午前八時四十分に僕の家の前に友達がやってきて学校へ行く。
これが大学生になってからの当り前の朝の光景。
授業が始まる前とかお昼休みにやっと『おはよう』と返したり返さなかったり。昼休みの時間は大学の学食でわいわいと食べたりと常に誰かといるのが当たり前で自分の時間がほとんどなくなっていった。
僕の下宿先は大学から歩いて五分という場所にあった。二限目か三限目に空きがあると僕の家に遊びに来て雑談会やゲーム大会をする。慣れとは怖いもので僕が授業でも家を使わせてという友人が出てきて、鍵を貸すこともあった。一人暮らしなのに一人の時間がない日々。
高校生活では人と関わることを避けていたが大学では真逆で人と接するようになった。環境や場所で人は変わる。大学は近い学力で志も近い、価値観も似たような人が多い。その結果、まともに会話ができ、妬みや嫉妬もない世界が広がっていた。
勉強においては面白い論文や知識があれば共有するといった環境。お互いを想いお互いをリスペクトするというポジティブしかないことに僕は喜びを覚えた。
前期が終わる時、クラスの飲み会をすることになった。
大学のクラスはあってないようなものなので仲が良いクラスと全く関わりを持たないクラスに別れる訳だが、僕のクラスは仲良しクラスであった。飲み会の席で一浪して入学したクラスの人気者、田村咲こと、アイドルのアイちゃん推しのためニックネームがアイちゃんという田村咲が僕に向かって「私、告白があります!」と大きな声を出し立ち上がった。そして僕を指さした。
告白といえば普通に考えれば「好きです」だと思うが、僕は彼女とは一度も話したことがなかった。
「しゅんしゅん! 私と友達になってください!」と満面な笑みで手を差し出した。
クラス中に注目をされているのでパフォーマンスをしないといけないと感じ僕は立ち上がりニコッと微笑みながら彼女の手を取る。アイは僕の手をギュッと掴み、ぶんぶんと振り回す。
その時は友達関係がはじまると僕は思っていたが、クラスメートたちは『友達から彼女になる』と受け取ったそうだ。ちなみにアイは僕と同じ考えを持っていた。
アイはクラスの人気者だけあって、学園祭などのイベントを仕切るようになっていた。何故かアイの彼氏役という役をしている僕はアイの右腕となり青春を謳歌しているかのようになった。




