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プロローグ

 秋も深まった日の午後。

 わたくし──トランデル王国において公爵位を賜るフェリアス公爵家長女、ローゼリア・フェリアスは、婚約者にして我が国の王太子であるエルリック・ジュネ・トランデル殿下に呼び出されました学院の片隅で、王太子殿下その人にびしりと指を突きつけられております。


 これはあれですか。近頃流行りのあの展開でしょうか。


 東屋を背に佇むわたくしに対峙するのは、婚約者である王太子殿下。その傍らには、殿下がご執心の平民の女子生徒──ソフィア・バラッド嬢。ふたりの背後に控えているのは、王太子殿下の取り巻きである男子生徒三人。

 向かって右から順に、キャンベル伯爵家のフィリップ様。シュナイデル伯爵家のトール様。ジェイムズ伯爵家のラディオ様。

 お三方とも、宮廷にて要職を務めるお父上を持ち、自身は王太子殿下の未来の側近候補と目されている方たちです。

 学年はそれぞれに前後しますが、大抵いつも王太子殿下に従っている腰ぎんちゃく──もとい取り巻きたちですわね。ですが、


 宰相を務めるハーノス侯爵のご子息、デミオ様がいらっしゃいません。


 デミオ・ハーノス様はお父上に似て大変優秀な方で、すでに王太子殿下の側近と目されている御方です。実際のところはお目付け役の意味合いが強いようですが、だからこそ、学院内でも学生寮でも、可能な限り行動を共にしているようでしたのに。

 ここにきて別行動でしょうか。


 デミオ様はいわば殿下の手綱。その彼がこの場にいない──殿下がデミオ様を遠ざけたのか、あるいはデミオ様が殿下から離れたのか。どちらにしろ、殿下の暴走を止める者はいないということですわね。


 え? 殿下に付き従うお三方?

 彼らは殿下の行動を助長はしても止めはしないでしょうし、止められもしないでしょう。

 でなければ、あのように意気揚々とした顔でこの場に従いはしないでしょうから。


 はたして──


「ローゼリア・フェリアス! お前との婚約を破棄する!」


 王太子殿下は、前置きもなにもなく、半ば予想通りの科白を言い放ちました。

 ええ、予想通りです。なんなら期待しておりましたわ。


 ──さて、

 どういたしましょうか?

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