表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

春の装い

長い学校の授業も終わり、放課後の幽幻街の何処かをぶらぶらと歩いていた。

辺りには雪が降っているのであまり遠出はしていないだろう。

幽幻街では土地によって季節が変わる。

時間経過による季節変動はあまり起こらないのだ。

なので僕の住む幽幻荘周辺はここ二、三年ずっと冬だ。

それは何故かと言うと幽幻荘の三階に雪女が居住している為である。

僕たちは冬の根源たる彼女と住処を同じとしている為、冬の生活を繰り返しているのだ。


すると、蒲公英(タンポポ)の咲く河原に出た。

遠くに見える山はとても冬とは思えぬ青々とした装いだ。

山から流れる河は、浮かぶ雪を僕の背の方へ流していく。

この様に辺りに冬の気配が消える時、僕は幽幻街から遠ざかっていることが分かる。

極度の方向音痴の僕でも我が家に帰れるという訳だ。


しかしまだ家に帰るには時間があるため、あの山の方へ歩を進めた。

この様な行動が僕を方向音痴として定義付けているように思う。

取り敢えずあの山を探索しに行きたいと思うが、あそこまで辿り着くには少々時間がかかりそうだ。

何か素早い移動手段があればいいのだが...

と、その時空から垂れた触手が背中に伝った。

うわっと驚いて振り向くと、そこにはウキクラゲがふわふわと浮いていた。

どうやらまたまた迷いそうな僕を見かねて付いてきていたらしい。

有難く、その触手に絡まって山を目指した。

山から吹く風に抗い、僕達は高めに上昇して山を目指した。

漸く大地に足をつき、

山の入口を正面にいざ探検だ。と意気込んでいると、脇に黒ずんだ木製の看板が目に入った。


[この先、樹神(こだま)家の土地。無用の立ち入りを禁ずる。]


どうやらこの先は、いや、この山自体が樹神さん家の土地らしい。

そう言えば、樹神と言えば僕のクラスメイトに同じ姓の者がいた。

ふと思い出してあばら家から貰ったメモを取り出した。


《請求書》

樹神嬢に五〇〇円を要求す。

あばら屋 店主


彼女もミニシャンパンの瓶を返しに行かぬ不届き者であったらしい。

普段は植物の様に大人しく清楚で居るのに、どうやらガサツな面も持ち合わせていたらしい。


無用では無くなった僕は樹神家の山に足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ