世界一臭いウンコをする男
マーケティング
良い品も ちゃんと売らなきゃ だだの物
<シーン①>
とある郊外の私鉄駅前 PM8:00
疲れたサラリーマン風の中年男に、
チンピラ二人組が絡む。
[チンピラアニキ]
おい、命が惜しけりゃ、金を出せ。
[男]
金は出せんが、ウンコなら出せる。
[アニキ]
なっ、なにふざけたこと言ってやがんだ、
このヤロー。マジでぶっ殺すぞ。
[男]
ふざけてなんかいない。
真面目だ。
まあまあ、落ち着いて、私の話を
よく聞いてくれ。
[男]
私のウンコは金になる。
なぜなら、私のウンコは
世界一臭いからだ。
[チンピラ子分]
世界一?
[男]
私のウンコは武器になる。
ひとたび、このニオイをかいだ者は、
あまりの臭さに三日三晩
身動きできなくなる。
食事すら取れなくなり、
最悪、死に至ることすらある。
皆、クセェークセェーと叫び続けること
から、これをクセェークセェー病と呼ぶ。
[子分]
クセェークセェー病?
[男]
うん。今、君たちには、
三つの選択技しかない。
1 何も取らずに、ここから退散する。
2 私のウンコ攻撃を受けて、
クセェークセェー病になる。
3 私のウンコを持ち帰って、
金にかえる。
さあ、どうする?
[子分]
アニキ、3が一番マシじゃないの。
[アニキ]
まあ、普通に考えれば、そうだよな。
[男]
さすが、ものわかりが早い。
では、そこのトイレで、このチャック付き
の袋に入れて持ってくるから、
ちょっと待っててくれ。
心配するな。逃げたりはしない。
(しばらくして)
[男]
ハイ、これだけあれば十分だろう。
[子分]
おー、あったけーや。
[男]
採れたてだからね。
とりあえず、明日、
自衛隊にでも持っていくといい。
武器として高値で
買い取ってくれるはずだ。
[アニキ]
わかった。ありがとよ。
<シーン②>
ヤクザ事務所 PM10:00
[ヤクザ親分]
おーい、今日のアガリを出せ。
[子分]
今日のはこれ、ウンコでっさー。
[親分]
ウッ、ウンコ?
ふざけるのもいい加減にしやがれ。
[アニキ]
親分、
これはただのウンコじゃないんです。
世界一臭いウンコで、
売ればメチャ金になるんすよ。
[親分]
ウンコが金になるわけないだろう。
[子分]
だったら親分、試しに一つ
ニオイ嗅いでみてくださいよ。
[親分]
バカやろー。
なんでこの俺様が人のウンコの
ニオイを嗅がなきゃいけねーんだ。
もういい。その世界一とやらを、
とっとと金にかえてきやがれ。
[アニキ]
了解。
<シーン③>
某陸上自衛隊駐屯地前 AM11:00
[アニキ]
まったく、あいつら話にならねーな。
[子分]
まあ、自衛隊もしょせん、
頭の硬い公務員だからね。
[アニキ]
あれじゃあ、いざ敵が攻めてきても、
「稟議書に、上司のハンコ
もらうまで攻撃できません。」
とか言ってる間に、
やられちまうんじゃねーか。
[子分]
だから、このウンコが
いいのにねぇー。
「武器使用にはあたりません。」
とか、言い訳できるのに。
[アニキ]
「生物化学兵器だ。」
なんて、なんくせつけてくる国も
あるかもよ。
[子分]
防衛大臣が、緊急記者会見で
「生物化学兵器ではありません。
ウンコです。」
とか言っちゃって。
[アニキ]
大臣が公の場で、「ウンコ」なんて
言葉使うか?
[子分]
じゃあ、なんて言うんすっか?
[アニキ]
う〜ん、人糞とか。
「犬の糞ではありません」とかね。
[アニキ]
だけどよ、新聞のタイトルに
<自衛隊、人糞で応戦>
なんて出ちゃったらさあ、
国民は怒るぜ。
高額な新兵器購入に使った税金
返せってね。
[子分]
アニキ、こんなバカなこと言ってる
場合じゃないっすよ。
これをなんとか金にかえないと。
[アニキ]
それじゃあ、とりあえず、
街頭で売りさばくとするか。
[子分]
おっ、ウンコのたたき売りですか。
[アニキ]
バーカ。
<シーン④>
とある街頭、PM1:00
[アニキ]
さあさあ、よってらっしゃい、
みてらっしゃい。(バンバン)
ここにおわすこのウンコ、
ただのウンコじゃありません。
よっ、そこのおねーさん、
痴漢撃退にどお、これ。
[女性]
きゃー。
[子分]
そこのボク。
今ならこの「ウンコ漢字ドリル」
がついて、なんとこのお値段。
[こども]
いらなーい。
[アニキ]
そこのおじさん。
オヤジ狩り対策にどう。
[オヤジ]
ふっん、アホくさい。
[アニキ]
いや、本当に臭いんだってば。
[アニキ]
おっ、外国のお客様のお出ましだよ。
お前、なんか言ってこい。
[子分]
えー、マジっすかー。
[子分]
ヘロウ。
ディス イズ ザ モウスト
クサイ ウンコ イン ザ ワールド。
イット ウィル ビー ウエポン
フォー ユー。
[外国人]
(両方の手のひらを上に向け、
首を傾げるポーズ)
[アニキ]
たっ、ハァハァ。ダッセー。
こりゃ、0点だな。
PM6:00
[アニキ]
今日は一つも売れなかったなあ。
[子分]
アニキ、それ、本当に世界一臭い
ウンコなんすか?
たぶん、俺たち、あの男に
騙されたんだよ。
[アニキ]
そんなことねぇーよ。
とっさに、あんな手の込んだウソ
言えるわけねぇーだろ。
[子分]
前々から、いざというときのために
考えていたかもですよ。
アニキは人が良すぎるんだよ。
[アニキ]
バカ言え、俺はこの仕事長く
やってんだから、オメーなんかより
ずっと人を見る目があるんだよ。
[子分]
だったら、試しに、この袋
開けてみましょうよ。
[アニキ]
おい、よせ、やめろ。
(ビリッ)
[アニキ&子分]
クセェー、クセェー。
ピーポー、ピーポー(救急車)
<シーン⑤>
某救急病院 PM8:00
[看護師]
先生、患者は、ただひたすら
「クセェー、クセェー」と叫び、
食事すらしようとしません。
[ドクター]
うん、クセェークセェー病だな。
[看護師]
クセェークセェー病?
[ドクター]
よしっ、点滴の準備だ。
[看護師]
あっ、ハイ。
[ドクター]
だから言っただろー。
私のウンコは世界一臭いんだって。
治療費はたんまり払ってもらうからね。
完