第7話
「――はぁはぁはぁ、びっくりした!」
小渡くんと別れた私は、言われた言葉を思い出しながら走ったせいで、息切れしていることにも気づかなかった。
『特別な友達』
特別な友達なんて今まで言われたことなかったからびっくりしちゃったな。それも男の子に。
私は両親の都合で今までに3回引っ越し、そのたびに転校を繰り返していた。だから友達はできても親友まではできなかった。
そのため特別な友達が親友だと解釈した私はそのことが嬉しくて、小渡くんの前で照れてしまったのだ。
でも、親友って結構な時間かけてできるものじゃないっけ?……まぁ小渡くんがそう言うなら関係ないか。
おそらく私はもう転校することはない。だからこの学校でたくさん思い出を作りたい。
そのための一歩を今日踏み出せたと思うとこれからが楽しみでしょうがなかった。
――そして今日、私と彼との長い長い物語がスタートした。
――考え事をしながら帰ってきた私は思ったより早く家についたことに少し驚き、制服を脱いで早めの入浴をはじめた。
「それにしても今日はとても濃い日だったな。小渡くんのテストに、松下さんとの関係に、如月さんとの……あっそうだ」
頭の中で今日を振り返っていた途中、昼休みにした約束を思い出して、私は土日の日程をお風呂の中で確かめた。
「えーっと、土日はなにもないっと。そりゃまだ学校も始まったばかりだし、部活も入ってないしすることないか」
ということで、土日のどちらかを如月さんと松下さんと買い物に行く日として決めることにした。二人とも暇していればいいけど。
そうして、20分ほどいたお風呂場から出て、濡れた体をタオルで拭きドライヤーを手に取った。
後ろで髪を結んでいる私はドライヤーに時間がかかる。その間何度も自分の目で自分の髪を見るが、そのたびに小渡くんから言われた『キレイな赤髪』という言葉がチラつく。
今私はどんな顔をしているんだろう。鏡で見たらきっと恥ずかしさが倍増するだろうからやめておくけど。
この気持ちはただ言われた言葉が嬉しくて照れている気持ち、またはこれからが楽しみでワクワクしている気持ちだろう。それ以外ないけど。
――それから一日の汚れを落とし、次は食事にするため、私はキッチンに向かった……というのは嘘で私は料理なんてできないのだ。
だから毎日お弁当とサラダを帰る際にコンビニによって買ってくるが忘れていた。その理由はもちろん考え事のせいである。
「あーーっ、やらかしたよ、だからこんなに早く帰ってきたんだ」
夜ご飯はもちろん食べたい。じゃどうするか、買いに行くしかない。
そう結論付けた私はキレイにしたばかりの髪と体に申し訳なく思い、コンビニへと出かけて30分経って帰ってきた。
生活費は両親が毎月振り込んでくれているためお金に困ることはない。でも毎日お弁当を食べていればお金よりも体調が心配になる。
そんなことを考えてもどうしようもないと思い、またお風呂場に向かった。
こんな短時間で二回もお風呂ってやってること意味不明すぎて笑える。
――サッと入浴を終わらせ、ご飯を食べ終わると、時計の針は20時を指していた。いつもより遅いのは言うまでもない。
ゴミを片付け、一人暮らしにしては割とキレイな自分の部屋に行く。
「それで、松下さんと如月さんは……っと」
LINEで松下さんと如月さんと私でグループを作り、土日の話しを始めた。
『改めて松下さん、如月さんよろしくね!』
そう送ると一分後に返信が二人同時に返ってきた。
『うん、よろしく赤崎さん』
『よろしくー』
松下さんは気怠げな人だと言うがLINEでもそれが伝わる簡素なメッセージだった。如月さんは廊下で会ったときの印象と変わらない、普通のメッセージだった。
『二人に話してた買い物の話しなんだけどね、明日と明後日のどっちかで行けないかなって思うんだけどどうかな?』
急過ぎたかな、二人に予定あったら気を使わせたらどうしよう。
『私はどっちも暇だから未來に何もなければどっちでもいいよ』
『私に土日の予定があると思う?』
『いや、ないか』
『……そういうことだから私もどっちでもいいよ』
良かった、二人に何も予定がなくて。
二人の関係が私には面白かった。これだけのやり取りでクスッと笑ったのは初めて。
『やった!じゃあ日曜日の13時に駅前でどう?』
さすがに明日は急すぎて無理をさせるかもしれない。
『おっけー私はそれでいいよ』
『私もそれで大丈夫』
『ありがと!』
『あっ、一つ赤崎さんに言っておくことがあるんだった』
『なに?如月さん』
『未來は遅刻魔だから時間通りに来ないかもしれない』
『いや、それ私がいるグループで言う?』
松下さんは聞いた通りマイペースな人だと思うけど、それ以上に松下さんは松下さんを貫いてる感じがする。
昼休みに囲まれてるとこを見たけど、誰に対しても気怠げな自分を変えてなかったし。
『未來がいるとこで言わないとホントに遅刻してくるでしょ?』
『……なるべく急ぐ』
さすがは松下さんの友達。関わり方を熟知してるみたい。
『遅刻しても待ってるから好きなときに来てくれればいいよ!』
『赤崎さん、いい人』
『そうやって優しさに甘えるな未來』
『はいはい。ちゃんと間に合わせまーす』
この二人は性格が100%噛み合ってるのかな、息ぴったりだし。こういう関係憧れるな。
『じゃ、日曜日は今決めた内容でよろしく!』
『はーい』
『分かった』
――それからも寝るまで二人とメッセージのやり取りを繰り返したくさん笑った。
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