第4話
教室は隣といってもマンモス校のため人に必ず会う。
「あっ、小渡くん、また未來に用事?」
今日会ったのは松下の1番の友達、如月なつみだった。よく松下と一緒にいて僕ともいろいろ話してくれる友達の1人だ。
「うん、そうだけど松下いる?」
いつも松下は昼休みになると図書室に直行するため、約束を忘れていたらもういない時間であった。
「いるよ、ほらあそこ」
「ありがとう」
如月さんの指差す先には、本を読むことに集中している松下の姿があった。
そんな中、松下が教室にいることが珍しいと思ったクラスメートが松下に昼ごはんを食べないかと詰め寄っているようだった。
「如月さん、あれ助けたほうがいいんじゃ?」
「小渡くんが用事あるんでしょ?なら小渡くんが行くべきかなーって思いますけど」
ごもっともです。納得はしたが松下の扱いは正直如月さんのほうが分かっている気がする。
如月さんも成績優秀でクラスメートからはおとなしいながらも人気がある。その理由は言わずもがな、この148cmの身長が関係している。
そんな如月さんは中学から常に松下と一緒で、たまに僕の家にも連れてくることがあったほど遊ぶときも一緒で、プライベートのことなんて全く知らない僕より詳しい。
「――はぁぁ、行くしかないかな」
「私が行ってくるよ!」
目をキラキラ輝かせる赤崎さんがどうしても行きたいという意思を伝えてくる。大歓迎な僕はもちろんそれを承諾した。
「それじゃ、一緒に行こうか」
「小渡くんも行くの?」
「うん、僕が松下のとこに行くって約束したから守らないと」
「ちゃんとしてるんだね」
「当たり前のことじゃない?」
たまに約束を守れないときもあるけど、それは守れないときだけで守れるときは絶対に守る。これは僕の中でも結構重要なことだ。
「――じゃ私はここで」
「あっ、待って!」
赤崎さんが如月さんの腕を軽く掴み、なにかを伝え忘れていたかのように早口で喋りだした。
「私、1年3組に転入してきました、赤崎凛って言います!如月さんと友達になりたいんだけど、今度一緒に買い物でもいかない?」
「買い物?」
如月さんは戸惑うことなく引っかかったことを聞き返す。
「うん!いきなり友達って変だから、買い物とか行けたら仲良くなれると思って」
「いいよ、ちょうど買いたいものもあったから」
「ほんと!じゃまた後で詳細送るから、はいこれ、私の連絡先」
赤崎さんはポケットから赤色のスマホを取り出し、軽く操作をして連絡先を如月さんに見せた。
めちゃくちゃ早かったなスマホの操作。
「登録しといたから、また後でね」
「うん、ありがとう!」
「こちらこそありがと」
ニコッと軽く笑った如月さんは華奢で、みんなから好かれる理由がなんとなく分かった気がした。
教室に戻った如月さんは席について弁当を友達と食べ始めていた。
「――よし、僕たちも行こうか」
「だね!」
赤崎さんと如月さんの話しが終わってもまだみんなに囲まれていた松下。そんな松下を助けるために、なるはやで松下のとこに向かった。
「――だから先客があるの、ごめんね」
近づいていくと松下の声が聞こえてきた。大変そうだったので少し早めに声をかける。
「松下、ちょっといいか?」
「……やっと来たの?遅すぎ」
「松下の人気ぶりを遠くから見てたら話しかけにくて」
「なにそれ、まぁいいけど」
それにしても僕が話しかけると松下に話しかけていた人たちは僕たちに注目したのか、視線を感じる。
周りから【鈍感】と言われる僕だが、オッドアイのため、生きていく中で何度も注目を浴びた。だから人の視線には敏感になったのである。
個人的に鈍感と思うことはないんだけどな。
「それより――」
「松下さんはじめまして!隣のクラスに転入してきた赤崎凛です――」
その後は如月さんを誘ったように買い物に誘って、連絡先も交換し終えた。
「それじゃ、今度こそ図書室行こ」
「そうだね!」
そうして4組の視線を感じながら教室を出て図書室に向かう。
「やっぱり、松下が昼休みに教室いるとああなるんだな」
「そんなに私と話すことある?ホント疲れる」
「分かる、僕も人と話すときは早く終わらせるようにしてるもん」
「ホント?私はみんなと話すの楽しいからずっと喋ってたいけどな!」
僕と松下は、なんだこの怪物はという目で赤崎さんを見る。
実際赤崎さんも珍しい人であるためたくさんのクラスメートに話しかけられていた。転入して友達を作るときなんて四方八方の話しをさばいていた。
聖徳太子がいたらあんな感じなんだろうな。
「――思った通り赤崎さんはワイワイ系の人だね」
「そう?……んーそうかも!」
「昨日愛斗に相談されたときになんとなーく思っただけだけど」
「でも実際そうだっただろ?赤崎さんは髪色と性格がイメージ通りだし」
「え、小渡くん、私にどんなイメージ持ってるの?」
「暖かいイメージかな。僕にはちょうどいい性格って感じで」
「えぇ!嬉しい、初めて言われたよ!」
「そう?よく言われてそうだけど」
「私も、嫌いじゃない性格かな。基本みんな関わりにくいけど、ここまで元気で明るく接せられたら逆に好き」
「2人とも嬉しいこと言ってくれるじゃん!」
相変わらず元気な赤崎さんは僕と松下の肩を同時にパンパン叩く。でも痛くないし、丁度いい力加減だった。
それから図書室まで3人で話しては笑ってを繰り返しながら歩いた。
その中で僕は松下を赤崎さんに、赤崎さんを松下にどういう人か分かる限り説明して2人が友達になるように勧めた。
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