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第30話




 ゴールデンウィークが終わり、クラスはいつもの月曜日よりもドヨンとしていて空気が重かった。おそらくそれぞれ楽しい思い出を作ったり、好きなことをしていたのだろう。


 でもそんなクラスの中でもやはり一人だけ元気な生徒がいた。いや、逆に今までよりも全然元気で、クラスの空気を変えてくれるほどに感じる。


 「おはよ!愛斗くん、今日からまた学校だね!」


 「おはよう、凛。ゴールデンウィーク明けにそんな元気に登校してくるの凛以外いないよ」


 「そんなこと……あるかもね……」


 ない!と言い切りたかったのだろうが周りを見るとそれが無理だとすぐに分かったようだ。


 「今日からの学校が億劫じゃないの?」


 「うーん勉強とかは億劫だけどそれ以外は別にーって感じ」


 「勉強以外って2割3割ぐらいしかないでしょ、よくそれだけで……」


 僕は元気出すなんて無理だ。だって勉強の時間がどれだけめんどくさいか分かってるし、何より苦手だから。


 まぁそんなこと言っても頭のいい人には理解されないことだから言わないけど。


 「愛斗くん、今日の私はいつもとどこが違うでしょーか!」


 「うわ、久しぶりに聞かれたそれ」


 「ふふーん、でしょでしょ!」


 「ちょっと待ってね……」


 隣に座る凛を頭から見ていく。キレイな赤髪に人が魅入るほどの顔、細い首に無駄な脂肪のないような腕とスラッとしたお腹周り、制服の上からでも凛のレベルの高さが分かる。


 結局僕はその中にいつもと変わったとこを見つけることはできなかった。


 「やっぱり無理」


 「で、でしょー!実は変わったとこはあるけどそれはまだ愛斗くんには分かりませーん」


 「どういうこと?」


 足まで見て目線を凛に戻すと、凛の顔は赤かった。


 「……いつもより顔が赤いとか?」


 「!?、私顔赤い?」


 「うん」


 「……半分正解で半分不正解かな」


 「ホントに分かんないし、今日の凛なにか嬉しそう」


 「な、何かいいことがあったんだよ、自分でも分かんないけど」


 顔が赤いのは自分の顔を自分で見ることできないから分からないのに納得できるけど、態度はさすがに分かると思うけどな。


 それよりも一番気になるのは情緒不安定なとこ。慌てたりからかってきたり、今日はいつもと違う凛を感じていた。


 それからも喋りかけたり喋ってる途中にも朝と同じような凛に、僕は一日振り回された。


 土日を挟んで月曜日、凛は僕より先に席についていた。


 「おはよう、今日はいつもより早かったね」


 「おはよ!早起きしちゃって、家より学校にいるほうが楽しいから早く来ちゃいました」


 「そっか。今日は金曜日みたいに情緒不安定じゃないんだ」


 「ええ?そんな私変だった?」


 「変ってか違和感を感じてただけだけど、今日は特にそんな感じじゃなさそう」


 まだあいさつをしただけだが金曜日の凛ではないのは分かる。今日は振り回されなさそうで安心だな。


 「あっそうだ、ここの問題教えてほしいんだけど」


 3限目にある小テストで再テストとならないように先に凛に教えてもらうことにする。


 「任せてー、どれどれ」


 凛と肩が触れ合う距離まで近づく、僕の顔と凛の顔の距離はおよそ15cmほどで僕の口と凛の耳の距離は12cmほど。


 「ここなんだけどさ」


 その距離で僕は問題の場所を教える。すると凛は固まり、顔をだんだんと赤くした。


 「ねぇ、やっぱり何かあった?僕、鈍感だから分からないんだよ」


 「ううん、別になにもないよ!ほ、ほら続けよ!」


 「……何かあったらすぐに言ってね」


 やっぱり違和感を感じる。この違和感が何なのか理解できてないがきっと悪いことに繋がるような違和感ではないことは分かる。


 凛に小テストの範囲を一通り教えてもらい、そのまま僕は凛と喋りながら一限目の準備をした。


 ――小テストも無事に合格して午前の授業を終えたあと昼休みになった瞬間に僕は図書室に向かった。


 チャイムがなってすぐに教室を出ようとすると凛が僕を呼び止めたが用事があると言って今日は一緒にご飯を食べれないと伝えた。


 図書室につくと、僕が一番だったようで静かに入室する。それから未來が来るのを待ち僕は一冊適当に本を取り読んでる感じを出す。


 「珍しいじゃん、なにしてんの?」


 「ん?未來か」


 本を誰かが近づいてくることが分からないほど集中して読むことなんて今までなかったけどこの本はぼくをそうさせた。


 なかなか面白かったしこれ借りようかな……。


 「未來ですけど、なにしてんのって聞いてるんですけど?」


 「あぁ、ちょっと未來に聞きたいことあって」


 「また?……凛のこと?」


 「うん、そうだけどなんで分かったの?」


 「それ以外の選択肢が私の中に無かったから」


 なんとまぁ意味のわからないことを。


 「それで?」


 「最近、凛の様子が変でさ、他の人と話してるときは普通なんだけど僕と話すときだけ顔を赤くしたり慌てたりして、女子ってそういうとき何か理由があるのかって思ったんだけど――」


 僕の話しを一通り聞いただろう未來はなぜか固まっていて、未來もおかしくなってしまったと思っていた。


 「……それは私にも分かんない、分かるのは凛か愛斗だけだよ」


 しばらくの沈黙の後落ち着いた様子の未來は曖昧な答えを出した。


 「そっか、ありがとう話を聞いてくれて」


 「ん」


 「それじゃ僕は戻るよ」


 僕はこの気になる気持ちをそこまで重く考えていなかったためあっさりとその場をあとにする。


 いつか自然と分かりそうな、そんな気がするから。

 ここまで読んでいただきありがとうございます


 応援を評価という形でしていただけると嬉しいです


 誤字脱字ありましたら、申し訳ありませんm(_ _)m

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