第29話
未來にLINEでゴールデンウィークの予定を聞かれたときは変だとは思ったが別に何も予定はなかったのでその旨をそのまま返信する。
――それから何日も未來からゴールデンウィークについての予定が来ないのでやっぱりなにかおかしいと思い、未來に聞いてみると、私は予定あるけど翔はないのかって気になっただけって言われてそれだけかよって思った。
別に俺は暇人だし、することもないから今年は寂しく別のことでもしときますよーだ。
そう思っていたときに一件LINEがくる。相手は如月だった。
内容は、暇人なら私の本を買いに行くのに付き合って、という簡素なものだった。
俺はそれを見たとき思わずえ!と口に出して驚く。そりゃ未來のことだから如月と予定があると思ってたし、なにより好きな人からのお誘いだったから。
――俺が如月を好きだと気づいたのは中学二年になってから。
俺は中学一年のときから女子に話しかけられることも告白されることも多くて正直めんどくさかった。だから図書委員になって少しでも静かなとこでゆっくりしたいと思い学期交代の委員選びで二学期から図書委員になった。
そしたら未來に新しくできた友達、如月なつみが図書室によく来るようになった。未來とは逆のかわいい顔と見た目に俺は未來といいコンビになりそうだと思っていた。
それから毎日図書室に来る未來が用事で来れなくなり、如月一人でやって来た。
一人で静かに本を読む如月に俺はいじわるをしたくなり、静かに後ろから驚かす。それに期待通りの反応をする如月を見ていると俺は疲れが飛んでいくように感じた。
そんな日々を過ごしていくといつの間にか如月とよく一緒にいるようになり、その時はまだ好意に気づかなかったが、もう好きだったと思う。
俺を囲む女子と如月は全然違って俺の唯一のめんどくさくない女子だった――。
過去のことを思い出しながら返信をする。するとすぐにありがとうとスタンプを送ってくる。楽しみだな。
――如月と買い物を終えた俺は今、如月を部屋に呼んでいた。
「久しぶり来たけど何も変わってないね」
「変わってるのが普通なのか?」
「私は簡単な模様替えとか良くするけど、他の人のことは知らない。でも未來は絶対変わってない人だね」
「未來はそういう性格だからな」
「そうだね」
如月はおとなしい性格をしてるため人と積極的にコミュニケーションは取らない。だからそんなに笑うとこを見せないが笑う瞬間はもう言い表せないほど破壊力がある。俺だけかもしれないが。
俺は如月を部屋に残して一階に行き、飲み物とちょっとしたお菓子を持ってくる。
部屋に戻ると如月は泥棒のように俺の部屋を漁っていた。
「如月、警察行くぞ」
さっき俺が冗談で似たようなこと言ったら警察行こうってしたくせに自分は実行するとかもう俺より上行ってるじゃん。
「ごめんごめん、なんか落ち着かなくて」
「そっか、一人で部屋に来るの初めてだもんな」
「うんまぁそれもあるけど……」
「けど?」
「ううん、何もない」
まぁ男の部屋に一人って気にしないようにしても気にするよな。
「それで何するの?」
「ん?別に何するか考えてないよ、ただ買った本読もうかなって思って」
「そうなんだ、じゃ一人でどうぞ、私は夜に集中して読む人だから」
「へぇー初めて知った、ここにきて如月のこと初めて知るなんてな」
「知らないことばっかりでしょ」
たしかに如月の好きな人のタイプとか知らないし、嫌いな人のタイプも知らない。だからどうすれば如月に好かれるのか俺には分からない。
こうしてみると恋って難しいよな。どれだけ周囲から人気があっても好きな人から好意がなければ全く意味がない。何度告白されるたびに如月だったらいいか考えたことか……。
「暇だな」
「いつも通り」
「いつも何してるんだ?」
「本読んだり勉強したり、小渡くんの家に遊び行ったり。片桐くんは?」
「んー動画を観たりするぐらいしかないかな」
「私と変わんないね」
なんだかんだ本に目を落としながら返事をしてくる。俺にそんな興味がないのか不安だが如月は興味がないやつには関わらないからそういうことはないだろう。
でも分かっていても少し胸がズキッとするのは自然なものだ。
「片桐くんって誰とも付き合わないの?」
「え?」
「モテるでしょ?先輩後輩同級関係なく。だからその中に未來みたいに良い子がいたりしないのかなって」
「未來みたいな子は今まで告白してきたことないぞ。それに未來なみの子なんてマンモス校でもそんないないし、みんな愛斗に行くだろ」
「まぁそれはどうか分かんないけど」
誰とも付き合わないのは好きな人がいるからなんだけどな。しかもその人が目の前にいるなんて絶対分かってないだろうし。
ちなみに愛斗よりモテる男子は優成第一には先輩でも存在しない。本人は俺のほうがモテると思っているがそれは愛斗が気づいてないだけで実際は違う。
「如月こそ人気だろ?ないのか?」
「ないよ、私はめんどくさいのは嫌いだから」
「それは俺も分かる」
女子の中でも人気である如月の悩みは俺に共感をさせる。
それから窓から入る光がオレンジ色になる頃俺らはいつも通り笑っては喋ってを繰り返していた。
「そろそろ私は帰ろうかな」
「ん?もうそんな時間か」
時計の針は17時を指していた。
まだ帰ってほしくない。そう思う俺はまた二人で遊ぶような時間がほしいと思い頭をフル回転させて良いタイミングがないか考える。そして思いついた。
「如月、夏休みになったら二人で夏祭り行かないか?」
「……いいよ」
「ホントか!ありがとな!」
断られるかと考えたが優しい声でいいよと言ってくれたことに俺は心のなかでテンションマックスにしていた。
「先、まだ長いけどなんで今いったの?」
「んー人気の人には予約しとかないと」
「はぁ、誰かから誘われても誰とも行かないよ」
「そうか」
三文字の返事に千文字ほどの感謝と気持ちを隠す。どこかに今の気持ちを発散しないと爆発しそうだ。
「それじゃ私は帰るけど、まだなにかある?」
「送るよ」
「すぐだから大丈夫だよ」
「分かった」
「他になにかある?」
「いや、ない」
「っそ」
「気をつけて帰れよ」
「あるじゃん」
「ははっ!これも入るんだな」
そうして、可愛くじゃね!と手を振り早足で帰る如月を見送り俺はベットに嬉しさを爆発させた。
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