第17話
朝日が私たち5人を照らしながら朝を知らせる。私たちは愛斗の家を出て学校に向かっている。
昨日寝るときのことを思い出して一人で恥ずかしくなり頭を左右にブンブンふる。
それに気づいた翔が何してんの?なんて聞いてくる。
私が話しかけてほしいのはあんたじゃないよ!なんて言えるわけなく心のなかで叫ぶ。
「――ね?未來」
「え?あ、あぁうん」
凛が話しを私にふってくれたみたいで、聞いていなかった私は曖昧な返事をした。
「どうしたの?なにか考え事?」
「んーまぁそんなとこかなー」
「松下が考え事って今日は雪でも降るのか?」
「降るんじゃない?」
いつもの私で愛斗と話せてるだろうか。どこか違和感はないだろうか……って私はなにを考えてるんだろ。
いつから私は愛斗のことをこんなに考えるようになった?多分それは高校生になってからすぐ。つまり凛が転入してからってこと。
焦ってるんだ。だってこんなに完璧の権化みたいな子が愛斗の近くにいるんだから。
今日だって、今までは全然起きないのは私でいつも愛斗に水をかけられてたけど凛がかけられてたし。
あの日、凛の質問に答えたいからって電話してきたときも、女の子のことってだけで焦って顔を見て話そうなんてまた言っちゃったし。
これまでだって愛斗が他の女の子と関わるだけで焦って、そのたびにベランダに呼び出した。でも嫌な顔しないで付き合ってくれる愛斗に私は少し安心していた。
なんで焦るのか、なんでこんなにチクチクするのか分かるけど、私はわからないふりをしてるんだ。気づいたら関係が壊れるかもしれないでしょ?私はそれが嫌だ…………でもやっぱり気づいちゃったらわからないふりなんてできなかった。
赤崎凛。彼女はとてもいい子で接しやすい。それに愛斗のことになれば私に余裕がある。
純粋な気持ちでただ愛斗と接してる凛と邪な気持ちで接する私。愛斗がこれを知ってしまったらどうなるだろうか。まぁそんなことはないんだけど。
まだ凛に愛斗に対する恋心はない。これは絶対そうで確信している。
だから私はまだ全然安心していた。焦りはするけどそれは一過性の病気みたいなものって思い込んでね。
「東雲弥生先輩がマネージャーになる」
翔の言葉に過去1驚いた。それを見たみんな驚いてたから私は恥ずかしくて適当に取り繕った。
東雲弥生、私が一方的にライバルと思っている人だ。中学のときに東雲先輩が愛斗のことを好きだということを知り、それまで意識していなかった私に愛斗を意識させた人でもある。
それまで私は成績は普通だったけど東雲先輩と競うために猛勉強してクラス一位まで行き、学年一位もとった。
でもどれだけ頭が良くても、どれだけ顔が良くても、どれだけ運動ができても、愛斗を振り向かせるのは愛斗に恋とは何かを教えた人なんだって気づいて私はどうすればいいのか分からなかった。
私は幼馴染として愛斗に一番近い存在だけど、逆にもう愛斗に刺激を与えることはできない存在でもある。
そんなときにタイミングよく凛が転入してきて、どんどん愛斗の隣で刺激を与えていく。
どうしようどうしようどうしよう。
「どうしよう」
「何が?」
「あぁ、口に出してた?」
「うん、めっちゃ出てた」
重症だ、考えすぎてる。
「また小渡くんのこと?」
「うん、まぁね」
なつみは私の秘密を知っている唯一の友達だ。だからたまに相談したりしてるけど、なつみもなつみで悩みがあるらしくて結局解決したことはない。
「まぁ、ライバル多そうだもんね」
「なつみもでしょ?」
「レベルが違うでしょ。未來もめっちゃレベル高いけど、凛と東雲先輩ってなったらもう大変でしょ」
「んまぁ、でも諦めないよ。一番近くにいたんだから一番に気づかせないと、今までなんの時間だったってなるしね」
「凛がまだ好きにならなさそうでよかったね。一対一だよ」
「一人でもレベル高え」
私はこの気持ちを表に出すのがとても苦手だ。それに対して東雲先輩は表に出すのがとても得意で、いつの間にか愛斗のことを熟知してる。
なんで知れたのかはわかんない、恋の力ってやつかな?
まぁ今はそんなことより部活で一緒になる二人に競うためには隣同士の家っていうアドバンテージを使うしかない。
何をするか今日帰りながら考えよう。それまでなつみとラノベでも読んで待っとくかー。
なんてことはうまく進むわけがなかった。なつみの後ろに玄関が見えるがそこに愛斗と東雲先輩の姿があった。
「なつみ、あれ東雲先輩と愛斗だよね?」
「ん?あぁ、やられたね」
見間違えを願ったが残念ながら正解だったようで、胸がチクチクするのを感じた。それと同時に翔と凛が図書室に入ってきた。
「おーちょうど帰ってるな、愛斗は東雲先輩と帰るって。だから俺たち四人で帰ることになりました」
「よし、帰ろー!」
元気な凛から東雲先輩に対する嫉妬などは感じなかったため私はそれについては安心する。まだ好きじゃないみたい。
でも東雲先輩に先を越された私は再び頭の中をどうしようで覆い尽くしていた。
「もうすぐ暗くなるから早く帰ろうぜ」
「うん、ほら未來も準備して」
「お、おっけー」
焦りを悟られないように隠して準備をする。
――それから家につくまで私が覚えていたのは東雲先輩と帰った愛斗のことだけだった。
あぁ、私って嫉妬深いんだな。
でも時間を多く使えたのに使わなかった自分だ。だからこの悔しさを誰かに向けるのはお門違いだ。
高校生になってから一気に周りに変化が訪れ私もこれから変化していくのだろうか。いや、変化しなければきっと勝つことはできないだろう。
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