第16話
それから五人で東雲先輩やその他の話で時間を潰し、ミーティングの10分前に移動を始めた。
松下と如月さんは図書室に行き、僕と赤崎さんと翔は一階降りて2年4組教室に入った。
そして時計の針が17時を指し、キャプテンで3年の東勇輝先輩がミーティングを始める。
「全員揃ったから始める。まずこの部活にマネージャーとして入ってくれる人を紹介する」
東先輩が入っていいぞと言った瞬間、教室のドアに全部員が集中する。
「失礼します」
「失礼します」
最初に姿を見せたのは赤崎さん、そして次に東雲先輩だった。
その二人を見た部員は目を輝かせ、うぉー!っと叫ぶ人までいた。
「それじゃ自己紹介してもらおう」
「はい、はじめましてみなさん、1年4組の赤崎凛です。右も左も分かりませんがこれからみなさんをサポートできるように頑張ります。今後よろしくお願いします」
いつもより落ち着いた感じの赤崎さんが丁寧に自己紹介を終えてみせると、部員からはとてつもない拍手と指笛が鳴り響いた。
やっぱり赤崎さんって学年超えても人気なんだな。
「はいはい、静かに。赤崎さんは転入してきたばっかでこの学校のこともあんまり分からないらしいから仕事を押し付けないこと。じゃ――」
僕は翔に言われたように下を向いて目を合わせないようにした。
「どうも、東雲弥生です。1年ではテニスをやってましたがなんとなくマネージャーをしてみたいと思ったので部活を変更させてもらいました。これこらよろしくお願いします」
赤崎さんと同じぐらいの紹介時間をした東雲先輩に部員からは赤崎さんレベルの拍手と指笛が鳴り響いた。
そう、この東雲弥生先輩は頭が良いだけでなく顔も学年一位と言われており人気があるのだ。
東雲先輩の身長は160cmの赤崎さんと同じで、髪はショートカット、スタイルもよくその他ほとんどが完璧だった。
「赤崎さんに頼めないからって東雲さんにばっか頼るのもだめだからな」
「それじゃどうすればいいんだよ」
「自分でやればいいだろ」
3年生同士の会話にくすっと笑い、目を合わせないということを忘れた刹那、視線を黒板に向けると東雲先輩と目が合ってしまった。
すぐに目をそらしたが視界の隅にいる東雲先輩の手が動いているようでそれに気づいた東先輩が問いかける。
「東雲さん、何をしてるんだ?」
「あぁすみません、愛斗くんが手を振ってきたので振り返してたんです」
「ほぉ、愛斗、お前は東雲さんを狙ってるのか」
「え、いやそういうわけじゃないですよ」
やられた、僕のせいにされるなんて……。翔がこっちを見てやらかしたなって目で見てくる。
「とにかく、二人がマネージャーとして入部してくれたから俺たちは結果をさらに上げることができるだろう。全員頑張るように」
それからミーティングで今後の日程を伝えられ終了となった。
解散した瞬間僕は翔に教室を出て3階に戻るように言われているのですぐに教室を出た。
が、先回りしていた東雲先輩にあっさり捕まった。
「久しぶり愛斗くん。この一年君がいなくて私は学校がつまらなかったよ」
「そ、そうですか。それで僕を引き止めた理由はなんですか?」
「ん?今日はもうすることないから一緒に帰ろうかなって思って」
「分かりました、じゃ準備終わったら玄関で待ってるので」
「おっけー!じゃ玄関で、ばいちー」
別に断る理由もないし一緒に帰ってもいいでしょ。
みんながやばいって言う理由が僕にはそこまで分からない。だって話してみれば優しいおねえさんみたいで、なにか悪いことをされてるわけでもないし。
「お前に対する気持ちがやばいってことだぞ」
「え?」
僕の心を見透かしたように翔が話しかけてきた。
「東雲先輩は傍からみると非の打ち所がない人だけど、愛斗って言葉が入るとスイッチが入って壊れるんだよ」
「別に僕と僕の周りになんの被害も無ければいいよ」
「まぁそうだな、ゆっくり帰れよ」
「聞いてたのかよ」
「まぁな」
東雲先輩と帰ることになったため今日は四人で帰ってもらうことになった。
いつも僕と翔が部活のとき、部活が終わるまで松下と如月さんが待って一緒に帰る。たまに用事で集まらないこともあるが。
最近はそこに赤崎さんも加わり楽しく帰っていた。ただ今日は用事ができたから一緒に帰れないけど。
「そういうことだから翔と赤崎さんは松下と如月さんのとこに行っていいからね」
合流した赤崎さんに東雲先輩と帰ることを伝え、四人で帰ることにしてもらった。
「じゃ片桐くん、行こっか。小渡くんまた明日!」
「うん、また」
教室を先に出た二人は図書室に向かった。
その後すぐにカバンを持ち玄関に先につくため小走りで階段を駆け下りた。
その間にはじめましての人を何度も見て玄関についた。
そこには東雲先輩の姿があり、待たせてしまったことを申し訳なく思った。
「っや!」
「すみません、待ってるって言ったのに遅れました」
「ううん、いいよ」
「ありがとうございます、じゃ帰りましょうか」
「うん!」
東雲先輩は笑顔で僕の腕に抱きつく。そのときの東雲先輩の顔は、逢魔が時の今でも分かるほど顔が赤かった。
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