第15話
「んんー!やっと終わったね!」
「そうだね、お疲れ様」
月曜日の授業はなんでこんなに疲れるんだろう。
6限の終わりのチャイム後すぐに背伸びをした赤崎さんを見て疲れを感じた僕は、机に顔を倒し、桜を見ながら考えていた。
「じゃ次は掃除やって、ホームルームして部活だね!」
「うん、相変わらず元気だね赤崎さん」
「まだ月曜日が終わったばっかだよ?元気じゃないとやっていけないよ!」
「その通りですね……」
一日一日リセット型じゃなくて一週間でリセット型なんだな赤崎さん。
僕は一日の体力を100としたら一日で90使って、睡眠で90回復してるみたいなものだけど、赤崎さんは1000の体力を5日で900使って土日で全回復みたいな感じなんだろうな。
そもそもの体力差がすごい。体力といっても肉体の話ではなく気持ちの話だか。
机の上に椅子を載せ、後ろに下げる。それが掃除の始まりとなりクラスメート全員がそれぞれの掃除場所に向かう。
掃除場所には当たり外れがあり、先生がつく場所はハズレ、先生がつかないで自由に掃除できる場所が当たりになる。
僕はそのハズレである教室が担当となっており、もちろん巻き添えで赤崎さんも教室掃除になっている。
一番の当たりは空き部屋掃除で先生もつかないで掃除する範囲もめちゃくちゃ少ない。
あぁーそこに行きたい……。でも赤崎さんいるから教室でいっか。
ハズレ場所で少しでも楽に掃除するには箒ジャンケンという勝負を乗り越えなければいけない。
今まさに僕たち教室掃除はその勝負に全てをかけて運を手に込めていた。
――結局僕と赤崎さんは二人とも勝ち、箒を手に入れることができた。
一ヶ月交代の掃除場所に不満を持ちながらも、過ぎていく時間が早まることなんて願わず、教室掃除でもしっかり掃除をする。
それから15分の掃除が終わり、それぞれの掃除場所から帰ってくる人が見え、僕たちも掃除を終えた。
「一番掃除の時間が大変な気がする」
「僕にとっては学校全部が大変だよ」
「それはあるかもね」
朝来たときのクラスのようにドヨンとなった僕たちはそのままホームルームを迎え先生の解散でさらに体をだらけさせた。
「ミーティングってどこであるの?」
「2年4組、ここの真下だよ」
「何時から?」
「17時ぐらいからかな」
今の時間は16時すぎで、あと一時間ほど自由時間があった。
「なーにしようかなこの時間」
「未來たち呼んで話でもすれば!」
「あーそれいいかも」
「隣もホームルーム終わってるみたいだから呼んでくる!」
「うん、いってらっしゃい」
ドヨンとした空気を一瞬で変え、そのままの調子で翔たちを呼んできた赤崎さんのすごさに僕は拍手をしていた。
「みんな揃ったよー!」
「凛が呼んできたから付き合ったけど愛斗だったらそく図書室行ってたよ」
「それを考えて赤崎さんに行ってもらった」
「嘘つく男はモテないよ」
「別にモテなくてもいいよ」
「うわ、愛斗それは俺含め他の男子に血管剥き出しされるぞ」
「片桐くんのその変な言い方どうにかならないの?」
「如月がどうにかしてくれたらどうにかなるぞ」
五人集まればすぐにうるさくなるこの環境がとても心地よく好きだ。
「それより愛斗、赤崎さんに加えてもう一人マネージャーが入るらしいんだがその人が――」
「えっ、凛、テニス部マネージャーになるの?」
翔の言葉を松下が遮る。
「うん、小渡くんに誘われて何もやることなかったから承諾しちゃった」
「そっか」
「松下も中学のとき誘ったけど無理って言ってたしな」
「あれは中学のとき、今は高校生だから誘ってくれても良かったのに」
「いやいや、趣味優先ーとか言うじゃん」
「ま、まぁ」
そんなに入りたかったら自分で記入紙に書けばよかったのに。なんで今になって言ってくるんだろう。
「それで、翔のいいかけてたことは?」
「あぁ、それなんだけどもう一人のマネージャーが一個上の東雲弥生先輩らしい」
「えぇ!?」
松下と如月さんがめちゃくちゃ驚く。
「びっくりした、そんなに驚くこと?」
「いやいや、愛斗が一番驚くでしょ普通……いや、普通じゃなかったか愛斗」
「その、東雲弥生先輩ってそんなに驚くような人なの?」
「うん、一言でいうと、やばい。簡単に言うと、愛斗のことがめっっっっ」
長い長いためすぎだろ。翔に心のなかでツッコむ。
「っちゃ好きな先輩」
「そうなの?小渡くん」
「いや、みんなそう言うけど分かんない」
「あっ、そっか小渡くん分かんないのか……」
え?そんなに分かるもんなの?いやいや分かんないってまじで。
「だから愛斗が苦労するんじゃないかと思ったんだけど」
「愛斗は自覚ないの?何かやられてる」
「んー確かに東雲先輩はよく見るし家の前に来ることもあったりするけど普通じゃないの?」
「やっば」
如月さんの一言で重症だということを少し分からされた気がした。
「でも東雲先輩も手に負えないほどの問題じゃないのが問題なんだよな」
「というと?」
「東雲先輩は愛斗のこと好きすぎだけど、ちゃんとやっていいことと、やっちゃいけないことを分かってて行動してるから辞めてくださいとも言えないんだよな」
「そりゃ2年で一番頭良い先輩だからね」
「ホントに小渡くんの普通のラインがやばい」
あぁ、さっきは東雲先輩にやばいって言ったんじゃなくて僕の普通のラインにやばいって言ってたのね如月さん。
「とにかくミーティングじゃ目を合わせないようにな、愛斗」
「う、うん」
翔の言うことがあまり分からなかったがここは目を合わせないようにしないといけないってことに意識を集中させよう。
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