第13話
「ただいま、おかえり」
「俺の返事いらないのか?」
「ううん、そういうことじゃないけど、言いたかったの?」
「ぜーんぜん」
「なんやねん」
料理を作り終えた僕はそれを持ってテーブルの上に並べていた。
それにしてもお風呂上がりでも元気だよな。それに、これからがお泊りの本番とか言い出しそうだし。とにかく呼びに行くか。
「ご飯できたから冷める前にこっち来て食べよう」
「おぉーナイスタイミングでバッドタイミングー」
「ちょうど凛がお風呂行ったからもう少し後で」
「そうなんだ、分かった冷めないようにしとく」
僕と話すお風呂上がりの二人は学校で人気のある女子というのが伝わるほど魅力というかなんというか、そういうものを持っていた。
一年生なのに学校で人気出るとかすごいよな、それに赤崎さんも転入してすぐ有名で人気にもなったし。考えてみれば僕の周りには人気者がたくさんいるな……。
――お風呂を上がった赤崎さんと5人でテーブルを囲み、温かいご飯を食べる。
今日は5人分のオムライスを作った。卵はふわとろにしてソースはデミグラスソースにした。
「どうですか味の方は」
「相変わらず美味しいよ」
「未來と同じ」
「俺も同じ」
え?ここには小学生しかいないのかな?語彙力ないのか適当に返事してるのかわかんないけどもっとあるでしょなにか。
「小渡くんってこんな美味しい料理作れるんだね!すごいよ!毎日食べれる!」
「赤崎さん……ホントにありがとう。ここにちゃんと感想を言える人がいてよかった」
「ん?」
なんのことか分かっていない赤崎さんだがそんなことは僕の中で気にすることではなく、ただ久しぶりに褒められたことを嬉しく思っていた。
「ごちそうさまーありがとね愛斗」
「私からもごちそうさまです小渡くん」
二人が同時に食べ終わり食器を持って席を立った。泊まりきたときはさすがに自分で食器は洗うようで食器用洗剤を使い丁寧に洗っていた。
その後も続けて翔が食べ終わり二人のいる部屋に戻っていき、僕と赤崎さんの少食コンビはともに三分の一の残りを食べ続けていた。
「量多かった?」
「ううん、全然食べれるけど私、少食だし食べるの遅いんだよね」
「そっか、じゃ焦らないでゆっくり食べてね」
そうして僕は食べ終わりそうなオムライスを食べるスピードを落とした。
「ねぇ、小渡くん、さっき片桐くんから聞いたんだけどテニスが一番苦手ってホントなの?」
「うん、そうだけど」
いきなりのことに少し戸惑った。
「それで片桐くんと同じ部活がしたいからってテニスしてるって言ってたけどそれ本当なの?」
「半分本当だけど半分嘘でもあるよ」
なんでそんなこと聞くの?なんて聞き返すことはせず肯定した。
「じゃ半分の嘘で隠してる本当の理由は?」
「中学生のとき何度か助っ人入部して大会とかに出てると好成績を残しちゃって、それを妬んだ先輩から軽くいじめられたんだよ。だからそれから一番苦手なことをやるようになった。簡単に言うとこんなとこかな」
運動にしてはなんでもできるが故の劣等感だった。別にその部活の人と同じ量の努力をしてるわけではないけどなぜかその人たちより上に行けてしまう。不幸中の幸いで僕はテニスが好きだからまだ良かった。
「ごめん、嫌なこと思い出させちゃて」
「ううん、これは人から聞いたことだから実際本当なのかは分かんないから嫌なこととして記憶には残ってないんだ」
「……鈍感で良かったのかな?」
僕はいじめられてることに気づいていなかった。ボールを取りに行かされることやダブルスで前衛のときに後衛にいた先輩にボールをぶつけられることも仕方ないことだと思っていた。
でも翔がいじめだと言うので僕はそれをいじめと理解し先輩たちをボコボコにした。もちろんその人たちの種目で。
その後いじめてきた先輩たちは退学となり僕は解放され、同時に得意な球技を部活としてすることがなくなった。
「赤崎さん、もう残ってないからスプーン置いたら?」
「そ、そうだね」
地雷を踏んだと思って落ち込んでいるのかな?
「そんな気負わないで、いつもみたいに赤崎さんらしく元気でいてよ」
「そんなに出てました……?」
あまりの申し訳無さに敬語になってる。
「めちゃくちゃね」
「ごめん」
「次謝ったら罰ゲーム」
「あぁ、ご……分かった」
「うん、じゃ洗いに行こ」
二人で食器を洗いながらも会話が止むことはなかった。
「なんで翔の言うことが違うってわかったの?」
「昔から赤髪のせいで人と関わることが多くて、そのときにいつの間にか嘘をついてる人がわかるようになったんだ」
人の視線を感じやすくなった僕に似ている解答だった。
「結構当たって役に立つよ」
「だろうね、僕もそういうのわかる人になりないな」
そうして赤崎さんの元気を取り戻しながら食器を洗い、三人のいる部屋に向かった。
三人のいる部屋、つまり寝る部屋は僕の部屋で5人入っても少し余裕のある部屋だ。テレビもあり松下家に近く、逆のお隣さん家から一番離れているとこでもある。
21時を回ったときその部屋では5人でホラー映画を観ていた。
この中では僕がホラー映画に一番強く、松下が一番弱かった。
性格とか考えたら松下が一番強そうなんだけど、こういうときは無理なんだよな。
「ねぇ、騒ぎすぎないでね?特に松下」
「無理」
序盤の今ビビってるのか簡素な返事だった。
「ねぇ凛、怖いのいけるタイプ?」
「私は無理かな、如月さんは?」
「凛がくっついてる人と同じタイプ」
如月さんの言うくっついてる人とは僕のことだろう。だって今左手を赤崎さん、右手を松下が掴んでおり、絶対に離さないっていうのが伝わってくる。力強すぎる。
「ごめんね小渡くん、ちょっと掴ませて」
「ちょっとってあと一時間半でしょ?」
次謝ったら罰ゲームということをすっかり忘れていた僕はこの映画の残り時間を確認して返事する。
「いいな愛斗二人の美少女に囲まれて、俺なんて全く怖がらない人が隣だぞ」
席順は松下、僕、赤崎さん、如月さん、翔で耐性持ちの如月さんの隣の翔はいつものごとくわーわー言っていた。
「お前は学校で人気だからいいだろ」
「ここは学校ですか?いいえ愛斗の家ですけど?」
「一人で完結するな」
翔は学校では女子から人気で部活を見に来る人もいる。でもさすがはマンモス校、翔はほとんど覚えておらず三度目の人も誰ですかと聞き返していたほどだった。
――それから一時間半、両手は拘束されたままで耳元でキャーと叫ばれ、僕はホラー映画の主人公なみに被害を受けた。
「多分迷惑かかってないと思うからよかったけど、耳が変な感じするわ」
「それはドンマイ」
「はぁ、まぁいいけど。じゃ僕は寝るよ」
「待って待って、赤崎さんの寝るとこは用意してないの?」
「あぁ、そうだった」
三人のは用意しているが赤崎さんのは用意していなかった。場所はあるが布団などはなかった。
「赤崎さんはベットに寝て、僕はリビングのソファで寝るから」
「いやいや、私がソファ行くよ!小渡くんはベットで寝て!」
「僕は別にどこでも寝れるから心配しないで」
「心配しなくてもダメ、私がソファで寝る」
そんな会話を続けること一分半。
「もう赤崎さんと愛斗が一緒に寝ろよ」
「え?」
翔のいきなりの発言に四人全員が同時に発した言葉が、は?だった。
「もう決まらなさそうだからそうしたほうがいいだろ?」
「いや、一緒に寝るなら私が寝るよ、赤崎さんにはハードル高いでしょ?」
「なんで未來が入ってくるんだよ、別に赤崎さんハードル高いって思ってないでしょ」
「う、う、うん?いや、えー……」
「ほら困ってるじゃん」
松下と翔が言い争うのを僕と如月さんはじっと見ていた。如月さんはなにか楽しそうで、僕は松下の焦ってる様子は珍しいと思いながら見ていた。
「別に僕はそれでいいけど」
「だってよ、赤崎さんどうする?」
「……片桐くんが小渡くんと寝るのは?」
「それはないな、俺寝相悪いから愛斗が寝れなくなる」
「じゃ――」
結局松下と如月さんがベットになり他三人は川の字になって僕が真ん中になり就寝となった。
松下は不満そうで如月さんと翔は楽しそうで赤崎さんは満足気だった。
良かった、みんながみんな今日を楽しめて。
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誤字脱字ありましたら、申し訳ありませんm(_ _)m