第9話
会計の出口から店の出口まで一直線のため、私は迷うことなく二人のもとにたどり着けた。
「お待たせ、二人とも!」
「ん。じゃ次は今日の夜の買い出しだけど何買うかわかる?なつみ」
「んーっと、トランプとかそのぐらいだと思うけど」
「トランプって愛斗の家になかった?」
「前遊んだときに3枚も無くしたじゃん。未來が」
「そうだっけ?……まぁそうなら買うかー」
如月さんが何回目?みたいな感じで松下さんに言う。
「よく無くしたりするの?」
「無くしてるつもりはないけど、いつの間にか私が使ったあとは無くなってる」
「へぇー、それならトランプ使うときは松下さんに注意しないと」
「頼んだ、赤崎さん」
「任せて!」
ということで私は松下さんがものを無くさないように見張る係となった。逆に、ものが無くなったら私のせいになるわけだが……まぁそうなっても怒られることはないでしょ!
「それじゃエスカレーターで下に行こうか」
如月さんの案内に私と松下さんはついていく。
それにしても、引越し前のモールよりここのモールのほうが全然でかいしお店の種類も豊富。ここなら一日時間を潰せそう。
そんなことを思いながらエスカレーターに身を任せ下に降り、そのまま真っすぐ歩く如月さんの隣に行く。
「二人はいつからそんなに仲良くなったの?」
ふと気になった。
「私となつみは中学のときからかな。その時たまたま図書室で会って、本のこと聞き合うようになってからいつの間にかこんな関係になった」
「あの松下未來がライトノベル小説を読んでるから思わず声かけちゃってね」
如月さんの言い方からして松下さんは中学の時も成績優秀だったのだろう。
「いいよね、自分の趣味を誰かと共有できるって!」
「まぁね。赤崎さんは趣味とかないの?」
「私は最近、鈍感な小渡くんをいじるのを趣味にしてるよ」
「それなら私と共有できるじゃん」
「そっか、松下さんは小渡くんと幼馴染だもんね。でも松下さんも小渡くんをいじるの趣味だったの意外」
「そう?」
「うん、だって松下さんは鈍感な小渡くんのことめんどくさがりそうなイメージあるから」
幼馴染ならクラスメートにとる対応より、なおさら強く気怠げな面を見せそうなんだけどな。
「私も未來のそこが分かんないんだよね、幼馴染ってそういうもんなの?」
「っさ、なんででしょ。私も分かりませーん」
そういう松下さんの表情は少し、焦りのようなものを感じさせるものだった。
「――ほらここっしょ?なつみの行くとこ」
会話に夢中になっていた私たちの中で一番早くその中から解けた松下さんがほらほらと指を差して教える。
「結構早かったね、喋ってたらあっという間じゃん」
「それな」
「それじゃ入ろうか」
お菓子や服、雑貨などさまざまなものが売ってあるお店に入る。
「トランプの他に何がいると思う?」
そういう松下さんの左手にはもうトランプが持ってあり、入店してすぐ隣にあることを分かっていたように手にとっていた。
めちゃくちゃ早かった。
「やっぱり考えても出てこないからトランプだけでいいんじゃない?」
「赤崎さんも何もない?」
「うん!私もトランプだけで大丈夫だと思う」
「っそ、んじゃ会計行ってきまーす」
見た目はクールだけど中身はいつも通りなんだと思わせる返事をして松下さんは会計に行った。
「――お待たー、そんじゃ愛斗の家に行きますかー」
「そのまま?」
「あっそうか、赤崎さんは愛斗の家に着替えとか置いてないのか」
「二人とも置いてるの?!」
「未來が着替えとか忘れることあるから、もう置いていっていいってなって、それからずっと置いてるよ」
もうシェアハウスみたいな感じじゃんそれ。
「それなら私は一回家に帰って後から合流しようかな」
「いや、赤崎さんの家までついていくよ。時間あるし、もし愛斗の家までに迷ったら困るの赤崎さんだし」
「ホント?!それならお願いしようかな、ありがと!」
「いえいえー」
私はそこまでしてくれることがとても嬉しかった。出会って一ヶ月も経ってないのに、友達としてそうすることが当たり前というような二人の私に対する関わり方が。
そんな二人に私は一つお願いをしてみようと思った。友達として。
「ねぇ、二人のこと下の名前で呼んでいい?」
「いいよ、んじゃ私も凛って呼ぶから」
「私も凛って呼ぶから、私のことはなつみでいいよ」
思った通りの答えが返ってきたことに心の中で一人、テンションアゲアゲ状態になっていた。
「ありがとう!でも最初から呼び捨ては難しいから、未來ちゃん、なつみちゃんって呼ぶね!」
「私に、ちゃんって似合わなくない?なつみには似合うけど」
「んーーー分かった!もう呼び捨てにする!」
「いや、決断はや」
少し悩んだが別にこれからも関わっていくならいいかと呼び捨てにすることにした。
「よし、未來!なつみ!私の家に行くぞー!」
「ははっ、何そのテンション」
なつみのクスッと笑った顔と未來の私に対してのツッコミで私は今日二人を誘ってよかったと思えた。
――それから私の家まで仲を深めながら楽しく帰り、小渡くんの家に置いておくための服などを持って再び二人と歩きだした。
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