護国戦争、終戦?
開封市の東には東安川がある。その東の台地に陣を張る。
敢えて作った、ここを襲わせるための偽本陣である。
実際に小屋に松明を立て、ここを中心に動く。
そして敵が八重垣を越えて偽本陣を落とした時、こちらは手薄な開封市を落とすという算段だ。
一方で壁内の方では、正統三壁帝国が北に吸収されたとか。
西方軍は外街8区まで押し返したが、戦線が膠着したらしい。
また北石野亡命政権は脱出後に最後の砦が陥落し、亡命政府が壁内に移ったとか。
あまり詳しい事が伝わってこないあたり、戦線が離れすぎた結果だろうか。
そうして待っていると、敵軍が偽の本陣を取り囲んだ。今しかない。
いくら空堀を巡らせ、入口さえ潰したとはいえ、砦内からの攻撃がないのならすぐに落とすだろう。
開封市内に一斉に侵入すると、市民とも戦闘になる。
向こうにとっては都市を見つけて住み着いているのだ。
つまり、ここの陥落は住居を失うのと同じ。
ならば。
「降伏すれば住居は与える」
こうすれば問題はないはず。
東安の領内だが、現実世界以来の交渉術でどうにかなるだろう。
こうして開封市を少し強引に平定した。
西方軍は弩兵隊を駆使して戦っているとか。
聞いていると、どうやら「湿地の民」は陸上での集団戦闘が不得手らしい。
今度は南から報告が来た。港と道路の建設が終わったとの事。
また報告だ。石野旧領に「石野王国」が建国されたとか。
勿論、「湿地の民」の国・北三壁帝国の属国らしいが。
北三壁帝国(湿地)軍と西方軍が外街9区で激突し、敵の不得手な筈の陸上戦闘なのに、完全兵装のこちらにも死者が出たとか。
幸いにも兵装は回収できたらしいが、激化してくると、いずれ兵装を奪われる日がやってくる可能性がある。
その前に敵軍の強さを分析せねば。
そして東安城を解放せねば。
物資輸送は海底回廊から安定的に行えるものの、それが問題ではない。
いつ城壁が破られるかも分からないのだ。
東安が落ちれば戦線崩壊である。
幾ら一度も侵入を許したことのない月都本土でも、「湿地の民」の手に掛かれば籠城戦に追い込まれるだろう。
宮殿や住居のある高山はすぐに落とされるだろう。
そうすれば旧世界民たる我々は終わりだ。
かつてゲルマン人によって滅びたローマ、五胡の侵入で滅んだ西晋の二の舞を踏まぬように。
最後の砦である東安の後詰めに駆け付け、勝利せねばならない。
開封まで来れば、東安は目と鼻の先。
決戦の地は開封市街。市民には南岸への避難を促した。
しかしここに思わぬ敵がやってきた。
それは東からの「湿地の民」だった。
東からの「湿地の民」、尤も彼等は「南湿地の民」と名乗っていたが。
彼等の来訪は大ピンチであった。
今決戦をすれば、東安を包囲する「北湿地の民」とバビロン州方面から来る「南湿地の民」に挟撃されるのだ。
これまで侵攻を行ってきたのは「北湿地の民」らしい。
兵力不明の「南」を相手取ってはいけない。
直感的にそう思い、開封から撤退し、アレクサンドリア州まで戻った。
旧東安領は東安の東隣に東安東州、その南に開封市、その東がバビロン州で、開封市の南がアレクサンドリア州である。
この「南湿地」をどうにかやり過ごす方法はないか。
「南」と敢えて名乗っているという事は、「北」からの独立性を主張しているという事。
つまりこの2勢力は対立し得るという事だ。
早速「南」に使者を飛ばした。協力要請だ。
条件として住宅を要求されたが、開封への集住を許可すると、「湿地の民」の南北戦争が始まった。
南北ともに湖で戦ったため、こちらから見て左側が敵の「北」、右側が「南」だった。
結果はこれまで戦力を温存していた「南」の勝利であった。
更に我々は「北」の本拠地への攻撃を共同作戦として行う事とした。
敵が本拠地を失えば攻撃は止むはず。
そう信じて、「北湿地」への攻撃が始まった。
「北湿地」には、バビロン州にある東西の川を遡上すると行けるらしい。
そして「南湿地」の軍隊とともに「北湿地」へ向かう。
まだ見ぬ世界である。
川を上ると、小屋や木々が所々にある。
その全てを焼き払い、水路網を破壊する。
二度と外を夢見ぬように、湿地と小川の間に10ブロック程度の盛り土をした。
二度と船を造れぬように、木という木を焼き払い切り倒した。
二度と軍を出せぬように、湿地を完全に封鎖した。
そして巨大な地下牢を建設した。
敵軍捕虜をここに収容するためだ。
勿論湿地であるため、水牢にもなっている。
こうしていると、報告が入った。
西方軍が勝ったらしく、撤退してくる「北湿地の民」を発見した。
それら全てを捕虜化し、深さ50Bの地下牢に入れた。
これで戦争は終わった。
全く終結した感じはないが、護国戦争は旧世界軍の勝利に終わったのだ。
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