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由美の逃亡記①

 裏アカデメイアことエレちゃんとの戦争が終結した頃、アカデメイアでは異変が起きていた。エレちゃん曰く、自転軸が90度回転してしまったのだとか。裏アカデメイアの都への攻撃に魔術砲を使ったことで傾き、それが惑星魔術砲で周辺の歪みが増幅され、歪んでいなかった部分には影響が出なかったものの既に歪んでいた自転軸が完全にズレてしまい、天王星のような状態になってしまったのだ。その結果として中央部は緯度45度ほどで殆ど影響が出ないものの、極地では白夜のような薄暗くも太陽が照る状態が続くのだとか。これとは別に自転軸の球面上での位置も90度変わって太陽は東西から南北へと移動方向を変え、東は南に、西は北に変化したという。エレちゃんの指摘によって発見されたこの現象は、研究者たちの好奇心によって放置される事となった。そんな事も知らず、由美らは気候変動の中を生き抜いていくための計画を立てていた。新天地に移った事で太陽が昇る方角の変化にも気付く事の無かった由美らは、雪原開拓のために国営農場(sovkhoz)の設置と既存農地の集団農場(kolkhoz)化を進めた。要するに社会主義化である。確かに社会主義化は一時的に生産力を高めるが、平等分配はやがて労働意欲の低下をもたらす。当然の事ながら、新しい農場は放棄されてしまった。そこで由美は5人組制度を導入した。その概要は、5人1組で生産責任(ノルマ)を負わせ、その組の成果は組員で平等分割させるようにするというものであった。しかし寒冷地において耕作が容易い訳もなく、ノルマが達成できずに資産を没収される者が相次いだ。それらの資産は指導者の手に渡って蓄えられた。そうして次々と財産を失っていき、やがて殆どの組がノルマ未達成により最貧階級にまで落とされてしまった。それらの財産の総計は三壁に残った市民の財産に等しく、その額は現実価値に換算して銀座の一等地100坪分、約100億円といった所とされる。この没収された資産は民生向上に用いられる事はなく、反体制派が立ち上がって反旗を翻した。一時は住宅街を殆ど制圧したものの、農具を武器とした反体制派と剣や盾を持った体制維持派の決着はすぐに付いた。既に反体制派の多くは財産を没収されていたが、それでも住む所は城壁の中に与えられていた。しかし没収するものがこれ以上にないからとして、住処までも没収されたのである。更に農具も没収され、高額で貸し出す事により借金地獄に追い落とされた。多重債務者(リボユーザー)のようなものだ。反乱が鎮圧された後、反体制派はリスポーン機能を呪った。主に寒さによる痛みはあっても、死ねばまた復活する。そしてすぐに外に放り出され、また同じ痛みを受ける。そうして反体制派の一部は精神を病んだり脱走して更に労働を課されたりして、壊れていった。そんな中で由美は反体制派には属さなかったために住居は奪われなかった。しかしいつ同じ目に遭うかと思えば日に日に不安も増すというもの。そして遂に、政府建物を爆破してその混乱の隙に南のマチュピチュもどきの集落遺跡への逃れる計画が由美を指導者にして立てられた。そして決行の日、支配者の建物に群衆が雪崩れ込み、それは鎮圧されたものの建物に潜んだ工兵には気付かずに夜を迎えた。そして爆発音が響いた。リスポーン機能があるので勿論自爆であった。そして松明も無い闇の中を由美らが先導して門へと導く。そして城門を開き、民衆は一斉に逃れた。支配者側が気付いたのは意外と遅く、山を1つ越えてからであった。そこには一部の者がたまに抜け出して作った簡易な砦があった。そこに松明を立て、そこに誘き寄せる形で更に南へと逃れた。翌日の朝、晴れてもそこは吹雪であった。しかしこの中で死んでしまえば、リスポーン先はあの城壁の中。北からは追っ手が近付いてくる。理想郷を求めて皆が走りに走り、しかしながら道を見失い、そうして辿り着いた先は川辺の洞窟であった。幸いにして岩山が並ぶ地帯にあり、猛吹雪のお陰で追っ手に見つかる事は無さそうだ。洞窟の中ならば火を灯せる。こうして焚き火で温まる事で凍死を免れる事が出来た。

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