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東安攻囲戦と別働遠征

 東安行初日、海上要塞サンドリアを後にした私と美子は湾岸を進み、早くも東安が見える距離まで辿りついた。

 しかしここで問題が生じた。

 東安はいわば「魔獣戦線化」していた。

 数万はいそうな骸骨騎乗兵に日光で死なないゾンビであるハスクの大群。そこに暴走状態の蜘蛛が大量発生し、城外は地獄絵図であった。

 幾ら最強の剣を持っていても、数には勝てない。

 もし三壁市の全市民を重装歩兵化しても勝算は薄いだろう。一目でそう思わせるような数である。

 東安城は南北に長く、宮殿が南側にある「天子北面」の都市である。海側も囲まれており、食糧問題で崩壊するのも時間の問題だろう。

 東安の城壁を守るには1000人は必要だが、耕地面積はせいぜい宮殿の庭の数十人分しかないはず。

 また東安が落ちれば他の都市、それこそ三壁などにもこの魔の手が及ぶ可能性が高い。

 ならば、東安を守らねば。

 何としても、東安への食糧確保をせねば。


 東安への旅の2日目、サンドリアから海底を這うように延びる海底通路を通り、道に迷いつつも、東安包囲網の内側に至る。

 まさか道楽で作った海底回廊が役立つ日が来ようとは。

 そう思いつつ、東安まで進む。

 東安市内に入って道行く人に訊くと、ここは「人類帝国」の首都らしく、市民は既に他の都市が破滅したものと思っているらしい。

 最も驚いた事は、東安の市街予定地が悉く農地化されていたのだ。

 僅か数日で1000人分の食糧を確保できるようにするとは。

 しかし、弓矢や剣はどこから調達したのだろうか。

 「え?武器なんて相手から盗ってるに決まってんじゃん」

 まるで千早城の戦いだ。

 次々と登り来る敵を倒し、その武器を奪ったストックはかなりあるという。

 このように国民皆兵の千人王国が、長期に亘って数万の敵を退けていると聞くと、ここの指導者がよほど有能なのだろうと思う。

 特に怪しまれる事もなく…とは「城外の民」という事でいかなかったが、宮殿に入ってみると、宮殿も殆ど耕地化されていた。

 宮殿内部では、床は剥がされ天井とともに投石に利用され、見るも無残な仕切りのみが残る農場となっていたのだった。

 宮殿を進むと、「皇帝」が自ら迎えにやって来た。

 「ようこそ、『外地の民』よ」

 城外の様子は全く分からないらしく、正門・西門・東門・南岸の4戦線からはいずれもモンスターしか見えないという。

 戦線も疲弊しつつあるが、休息を摂ると人員が足らぬ所だという。

 四六時中止む事のない敵の攻城は休息を大いに妨げ、士気の低下が顕著なのだとか。

 そこで私は城外への調査派兵を提案した。

 というのも、このまま東安城に籠城してもいずれ負けると思ったからだ。

 1番化け物の数の多い東方に何があるのか。

 これを探ってみないと何も分からない。

 提案は受け容れられ、早速出陣となった。


 東安城にある(ひがし)大門(だいもん)を開き、騎兵で敵「群」を突破して全速力で離れる。

 草原の向こうには川があって辿りやすいので、川沿いを進む事とした。

 連れてきた騎兵は早くも100人が40弱となり、戦力の大幅減となってしまった。

 とはいってもゲームだから、リスポーン機能があるのだが。

 怪物のやってくる方向を観察するため、高い岩山の上に陣を張る。

 奴らはやはり東から来ている。

 そう確信してなるべく遠くを見ると、ある兵が城壁のようなものが見えるという。

 その方向を見て、これもまた私の作った都市に違いないと思った。


 バビロン市。その都市のモデルはもちろんバビロンである。

 となるとやはり、奴等は建築限界まで建設した「バベルの塔」から出てきているのだろうか。

 この読みは程なくして当たっていると分かった。

 バビロン市内に川経由で到着すると、一面モンスターだらけである。

 こういう非常時のためにエンダーパールを用意しておいた。

 勿論隠しチェストに入れていたものではあるが。

 これを使えば、自分1人なら、最上階まで行けるかもしれない。

 という事で兵士には塔の入口を守るように指示した。

 もし発生原因を叩き潰しても、制御を失った怪物(モンスター)が却って危険になるかもしれないからである。

 そして背後を固めて、完凸最強剣とエンダーパールを持って、いざ突入だ。

 突入先のバベルの塔は建築限界まで建っている。

 つまり100ブロック以上登らねばならない。

 創造者特権で隠しチェストからワープツール・エンダーパールを出したとはいえ、数は有限。

 なるべく自力で登っておきたい。

 そうして登っていると、第1の敵が現れた。


 いきなりのエンダードラゴンである。

 とはいっても、何かに閉じ込められているような印象すら受ける。

 こんなものとまともに戦えば、下の兵は勿論、この塔ですら崩れてしまうだろう。

 今ここで倒すのは不可能に思える。

 また、奴の巨大な図体では階段は登れないだろう。

 ならば、戦わず登るまで。

 こうして私は第1の敵を無視(スルー)し、第2階層に辿りついた。

 第2の敵は歩くゾンビスポナーである。

 村人の頭がスポナーになっており、それがゾンビを生み出していた。

 このまま囲まれては食われてしまう。

 ワープするしかないという事で、結局第3階層までに殆どのパールを使い切ってしまった。

 最終階層たる第3階層はただ登るだけ。

 果たして本当にここが発生源なのだろうか?

 そう疑いつつも遂に最高地点、建築限界だ。

 上に黒いスポナーがあった。

 何がうずめいているか分からない、闇の深いスポナーである。

 すぐに破壊し、入口に戻るために1つだけ残ったパールを投げる。

 そこには赤い目の未知のモンスターが大量にいた。

 このままでは全滅する。1点突破で東安に戻る。


 脱出に成功して東安に戻ると、残った兵は10にも満たなかったが、こうして制御を失った怪物らは、せいぜい「城外の憂い」程度となり、東安攻囲戦はこれで終結した。

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