由美の深慮遠謀
そのまま最奥の部屋まで連れ込まれた。
「私を愛して下さいますか?」
どうやらこれから閉じ込められるようだ。好きと言っても出られないのかな。
しかし、この部屋は元々籠城戦に備えた施設。当然の事ながら、地下トンネルが存在する。
この場さえやり過ごせば、脱出できる。
そうして私はこの部屋への監禁を甘んじて受け容れた。
しかし提供された食事を食べると、かなりの眠気が襲ってくる。睡眠薬でも盛られたのか。
というかこの世界にも睡眠薬があったのか。
そう思いつつも、逃亡中に眠ってしまっては機会を台無しにするので、取り敢えず寝る事とした。
目を覚ますと、由美が隣で寝ている。どうして。
眠りに就いた記憶はあるのだが、何か思い出せない気がする。
腕は、幸せそうな顔の由美を抱き締めている。全く記憶にないのだが、寝ている隙に入ってきたのか。
「私だけのものだよ」
と笑顔で言いながら、この部屋からは出してくれないのか。
由美が出て行った隙に、トンネルで脱出したいのだが、由美のタイムスケジュールが分からない。
こんな折、長期でここを空けると言ってきた。
これは大チャンスだ。由美が上街城を出て行った瞬間、私は床を外した。
そして降りた後は元通りに戻し、脱出路を歩く。
上街区よりも外側に出口があり、外に出るとかなり寒い。
しかしすぐ近くに道路があるので、そこから外街6区の方向へと向かった。
再建中の建物が多い6区。戦禍を免れた南側にあるミニ別荘に泊まる事とした。
ミニ別荘にはフル強化のダイヤ剣がある。これで大抵のものは仕留められる。今夜はここで過ごそうと思った。
翌朝。とはいえゲーム内ではかなりの日数が経つが。
窓の外を見ると、一面雪景色なのは変わらないのだが、何か気配を感じる。
するとガラスの窓に矢が刺さった。矢文らしいが、外に出てしまえば居る事が確実視されてしまう。
こんな時のための脱出路。実はこの別荘にも脱出用の道はある。
今度は外街5区の方に出てきた。ここから壁外に出られれば、脱出は大いに進展する。
しかしここにも追手が迫ってきた。すると壁外にも何個か人影が見える。手招きしている様に見えるので、そちらへと向かってみる。
するとそれは萌香率いる雪花市の兵士だった。追手は撤退していった。
遂に脱出に成功した。
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