開拓戦争<下>
植民地戦争が遂に国境を越えるようになってしまった。
自力解決を促すため、三壁・雪花・西森の3勢力に公国の地位を付け、帝国本国の仲裁を入れずとも良いようにした。
というのも、帝国本国が干渉すれば、本国に対する不満に繋がりかねない。
最高権限は持っておくが、使わないようにする。
こうすれば権力を振るわずとも君臨できる。
そして残るのは自由な世界。
国家による統制無き世界。
これこそが私の理想の世界なのだから。
公国の地位に加え、森林が豊富な南海県を手に入れた三壁は、由美の指導体制のもと富国強兵策を採っていた。
これは従来の商業主義諸公国からいえば脅威である。
特に帝国自体が高山が突出した経済力を持っている事で成立している我が国においては、経済力以外の変数で勢力図を変えられては困る。
取り敢えず、三壁まで行ってこれを止めねば。
三壁では謎の歓迎を受けた。
遣唐使が長安城に入った時をイメージしてもらえると分かり易い。
とてつもない歓迎なのである。
これが縁のある外街1区ならまだ分かるのだが、首都の上街区でこの歓迎を受けると、何だか変な感じだ。
一方で北三壁は、やはり湿地の民との戦乱もあり、未だ復興してないらしい。
かつて、世界国家が在った。そして南の矮小国家に敗れ、弱った末に異民族の侵入で滅んだ街並。
細々とだけ続いている点では東ローマのようなものだ。
もう二度と、かつての繁栄を取り戻す事はないだろう。
それに対して南三壁は戦乱にも巻き込まれず、緩やかな発展を遂げてきた。
しかし建造物の刷新は、起こる気配すらない。
依然として産業革命以前の建築だ。
そういう点では高山と一緒ともいえるのだが、南三壁の民製建築の平均階層数は1.5。殆ど1なのだ。
マンション1つないのだ。あるのは政府関連施設だけ。
この街には市街を拡張しようという機運が無いのだ。
そんなことを考えながら宮殿へ向かう。この世界で最初に建てた城・上街城へと。
宮殿というよりは最終抵抗拠点なのだが、何故?
実はこの城とは別に、少し北に行けばもっと壮麗で大きくて新しい、上街新城がある。何故それを使わないのか?
そう考えを巡らせながらいると、何時の間にか御殿に通された。
由美と2人きりになってしまった。
これについては、美子にも萌香にも、何故か厳重注意を受けていたのだ。
「2人だけになっちゃダメよ、絶対に!」
「絶対に2人きりにならないように」
しかしもう時既に遅し、御殿の扉は鉄で深く閉ざされていた。
手招きを受け奥へ向かうと、壁ドンされた。
正確には、壁際に追い詰められた、と言った方が正しいのかもしれない。
何か言おうとしている様だが、口を噤んでいる。
「何か言いたい事でもあるの?」
そう訊くと、
「好きです…」
と一言。対応に困る。そういう事を言っていたのか。
次話から、改行が殆どなくなります。
これまでのに読み慣れている方は、
却って読みにくいと思います。すみません。
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