『召喚』
凱旋式で知らされた事実に、世界中が驚いた。
「この世界を何者かが制御しようとしている」
しかし同時にもう1つの事を知らせた。
あのポータルは封鎖したが、技術を転用してこちらが主導権を握り返せるかもしれない、と。
こうして完成したのがミニポータル。
現実世界に対する場所も指定できる優れものだ。
殆どは備え付けられていた機器を流用して成し得た技であった。
これで誰もが現実世界に帰れると思った。
しかし1つ難点がある。
「ミニ」と付くように、大穴を開けられないのだ。
尽力はしたが、大穴となると大量の資源収奪が必要となる。
穴の直径を2倍にするだけでも、10倍以上の資源やエネルギーを要する。
出来てせいぜいペットボトルキャップくらいの大きさ。
こちらの世界から向こうに出るには、かなり難儀するらしい。
しかし一方でこちらに入るには何故か苦労しないらしく、どんなものでも入れられるらしい。
位置エネルギーが違う2点の移動のような感じだろうか。
高所から低地へはすぐに行けるが、低地から高所へはエネルギーを要する。
そんな感じなのであろう。
エンドシティにあった元々のポータルも、現実世界からの電力供給を受けているように見えた。
つまり我が世界に入るのは簡単、出るのは難しいという状況らしい。
この状況を活かして、ある事を試みようという提案があった。
「召喚」である。
この世界に友人を召喚してしまおう、そんな事を考える者が現れたのだ。
召喚ができれば、使える人材や物品を持ち込めるのだ。
しかし、召喚に応じてくれる現実世界の人は少ない。
それもそのはず、帰還方法不明で、更に失敗例はないものの、失敗すればどうなるかの説明がつかないからである。
コミュ力が求められる異世界召喚。
とことんこの世界は夢が無いなぁと思った。
私も友人に掛け合ってみたが、応じてくれたのは1人だけだった。
それが萌香であった。
召喚に成功すると、色々と訊きたい事があった。
何故応じてくれたのか。
それも重要だが、最も重要なのは時差だ。
向こう側ではどうなっていたのか。
訊いてみると、驚くべき事が分かった。
同じ日付だったのだ。最初の転移者全員が。
最初の転移は同じ時間に行われたのだ。
現実世界とは並行で時間が進んでおり、後の転移者になるにつれて新しい日付になっていく。
時間感覚は凡そ現実と同じで、
特段、連続失踪事件が起こっている感じもない。
本来は居る筈なのに、『居なくても不自然を感じない』ように世界が変わっているらしい。
そこだけご都合主義なのね。
恐らく(異)世界中の人がそう思っただろう。
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