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こうしてオーラのお掃除係りになりました

はじめましての方は

はじめましてこんにちは。

そうでない方は

またお会い出来て嬉しいです。


相変わらず文才ないですが

どうぞよろしくお願い致します。

 セリナには人に言えない秘密があった。


 その秘密を知っているのはセリナの乳母であるマリサと、マリサの娘で現在はセリナの侍女をしているメイだけで、家族─両親も2つ違いの姉であるジョアンナも知らない。

 ()()はセリナが物心ついた時には見えていたので、きっと生まれつきのものなのだろうと思う。



「さ、セリナ様、そろそろお時間ですよ」


 セリナのミルクティー色の細くて絡まりやすい髪を丁寧に梳かしていたメイがにっこりと言う。

 鏡越しに見るメイの輪郭はハッキリとしているが


「ありがとうメイ」


 振り向いて見るメイの身体の周りにはモヤモヤとした透明な膜のような何かが覆っている。

 その色は黄緑色。時にユラユラと流れる水のような、また時には内側から放たれる光のようなものが透明な黄緑色の膜となってメイの周りを取り囲んでいる。

 くすんだような色合いはどこにも無いので、メイは今日も元気なようだ。



 メイに促されて向かうのはセリナの家─ミュラー子爵家の応接室。

 今日は半月に一度やって来る、来客の日なのだ。


 部屋に入ってスカートを摘みながら挨拶をしようと口を開きかけるが


「挨拶はいい」


 ソファの背に深く沈むようにしてグッタリと座っていた来客に遮られる。

 仕方なく頭を軽く下げて目を伏せていると、衣擦れの音がして来客がゆっくりと立ち上がる気配がした。

 それを見計らってセリナは声を掛ける。


「では、こちらへ。」



 半月に一度、こうしてセリナの屋敷に来客─スタンレイ公爵家の子息であるギルバートがやって来るようになったのは4年ほど前からだ。

 それはセリナが11歳になる年。セリナは母方の伯母であるシスレー伯爵夫人に連れられて、2つ年上の従兄弟であるジェラルドと一緒にスタンレイ公爵家で開かれたお茶会に参加した。


 スタンレイ公爵家の子息、ギルバートとジェームスは双子だった。

 当時13歳だった二人の為に、歳の近い高位貴族の令息や令嬢を招いてのお茶会だったので、同じくらいの少年少女がたくさん参加していた。


 二人は双子なので顔立ちはよく似ていたが、纏う雰囲気は正反対のようだった。

 ギルバートは黄金の髪に、きかん気の強そうな深い蒼玉(サファイア)の瞳、ジェームスは黄金の髪に優しげに輝く翠玉(エメラルド)の瞳を持つ、それぞれに美しい少年達だった。

 絵本から抜け出たような美しい高位貴族の令息達に令嬢方は目の色を変えて群がり、令息達も家の為、自分の将来の為にお近づきになろうと懸命だった。


 にこやかに対応するジェームスとは反対に、ギルバートはどことなく不機嫌そうな、疲れたような表情をしており、しかしそのそっけない態度に令嬢方はますます夢中になっているようだった。


「…すごいね」

「うん、すごいね…」


 セリナとジェラルドはその様子を眺めて呆気に取られていたが、既に挨拶は済ませた。のんびりとマイペースな性格の二人は、目の前の美味しそうなお菓子とお茶に、気付けば夢中になっていた。


「うわ、この焼き菓子、バターの香りがたまんない。」

「こっちのクッキーもすごいよ、サクサクして口の中でとろける。」


 セリナのミュラー子爵家は貧乏ではないが裕福という訳でも無かったので、普段家では出ないようなお菓子に喜色満面だったし

 ジェラルドのシスレー伯爵家は両親が甘い物をそれほど好まなかったのでこういったお菓子が物珍しかった。

 そうして二人してお菓子に夢中になってしまったのだ。


「…お気に召されたようで、何よりだ」


 不意に掛けられた言葉に振り向くと、蒼の瞳のギルバートが無表情でジェラルドとセリナの間の椅子に座る所だった。

 どうやら令嬢方から逃げてきたらしい。


「…なんだか大変そうですね」


 思わずそう声を掛けたジェラルドに、コクコクと同意して頷いたセリナを見て


「…君達は呑気だな」


 ギルバートは呆れたように言うと、給仕に置かれたお茶を飲んで「ふぅ」と溜め息を吐いた。


「シスレー伯爵令息とミュラー子爵令嬢だったか。見つかるまでちょっとここで休ませてくれ。」


 そう言うとテーブルに肘をついて両手で顔を覆ってしまった。

そのまま固まったように動かない。


(とても綺麗な珍しい色をしているけれど…だいぶお疲れのようだわ)


 セリナはギルバートを包む膜を眺めてそう思った。

 ギルバートを包む色はキラキラとした青銀。時々銀の中に金の光が煌めく。だが、その美しい膜の中に所々ぼんやりと黒っぽい靄が漂っている。


(こういうのが付いていると、かなり疲れるのよね…)


 美味しいお菓子とお茶のお礼に、セリナはその靄を少し取り除いてあげようと思った。

 気付かれないようにこっそりと、さり気なくギルバートを包む膜にセリナが触れると、その手に吸い付くように黒っぽい靄がくっつく。

指先でそれを絡め取ると、テーブルに隠れて指先をクルクルと回してゆく。

 すると靄はどんどんセリナの指に絡んでゆき、ギルバートの膜から出てゆく。

 全て絡め取るとセリナはギュッと手を握り、パッと開くと靄が霧散して消えた。


 大きめの靄はそんなふうにして取り除き、小さなものは指先で摘んで引くと糸くずのように引き出されて消えてゆく。


(あらかた取り除けたかしら)


 セリナがそう思っていると、両手で顔を覆って眠っているようにも見えたギルバートがゆっくりと顔を上げた。

 そして不思議そうな顔をしながら首を傾げると右隣のジェラルドを見て、それから左隣のセリナを見た。


「君達は…」


 ギルバートがそう言いかけた時


「まあ、ギルバート様! こんな所にいらっしゃったのですか」

「こちらにいらして下さい! エミリア様がピアノをお弾きになるそうですよ!」


 令嬢方がギルバートを見つけてきゃあきゃあと集まってきた。


 ギルバートは「いや、僕は…」と言いかけるが令嬢方に手を取られ腕を引かれ、眉間に皺を寄せながら連れて行かれた。


「…すごいね」

「うん、すごいね…」



 そんなふうにして終わったお茶会から半月ほど後、ギルバートがミュラー子爵家にセリナを訪ねてやってきた。

 公爵家の令息がやって来るなど思いもかけない出来事だった為に、先触れの知らせに家中が大慌てだったが


「セリナ嬢と話がしたい」


 と言うギルバートの申し出に両親は期待で目をキラキラさせ、姉のジョアンナは悔しそうな顔をしていた。

 先日のお茶会に、母方の伯母であるシスレー伯爵夫人が妹のセリナだけ連れて行った事に─母に強請って自分だけドレスを買いに行っていた事や、それを聞いてセリナを可哀想に思った伯母が連れ出してくれたという事を棚に上げて─ジョアンナはとても憤っていたのだ。

 下位貴族である子爵家にはお茶会の招待状は無く、セリナが行けたのは伯爵夫人である伯母が連れていってくれたおかげだ。


 妹のクセに生意気だ、悔しい悔しいとここ数日煩かったのだが、これで更に姉の癇癪が酷くなるのかとセリナは頭が痛くなった。


(それにしても一体なんの用だろう?)


 父の命令で常に無く着飾られたセリナが邸内の薔薇園に設えられたお茶の席に出向くと、そこには見頃の薔薇に囲まれ美しい絵のような佇まいのギルバートが、またもや黒っぽい靄をたくさん膜に漂わせて待っていた。


 先日の茶会では暫しの休息に付き合ってくれてありがとうと礼を言われ、他愛ない世間話をするギルバートに

 セリナは戸惑いながらも返事を返しつつなんとか会話をしていた。


 手土産にまた美味しいお菓子をたくさん頂いたのが嬉しかったので、そのお礼にまたさり気なく黒っぽい靄を取っていたら、世間話をしていたギルバートが言葉をふと途切れさせ、セリナの顔をじっと見つめてきた。


 妙な手の動きを気付かれたかと内心焦りながら、にこりと誤魔化すように笑んだセリナに


「やっぱりそうか、君の方だったんだな」


 確信を持ったような真剣な瞳でギルバートが言い出した。


 曰く、先日のお茶会の途中から、ずっと重苦しかった体調がすこぶる良くなった。スッキリと晴れやかな身体と気持ちに、どうして急にと不思議になったと。

 そしてどうもそうなったのは


「君達のテーブルで休息をした辺りからだと思って」


 まずはシスレー伯爵家を訪ねてジェラルドに会ってみたのだそうだ。

 だが、再び重苦しくなってきていた体調は変わらない。

 それで、セリナの方かと今日はミュラー子爵家を訪ねてきたのだと。


「君と話しているとどんどん体調が良くなるようだ。何故なんだ?」


 真剣な顔で問われ、セリナは(しまった)と思いつつ、どうとぼけようか、誤魔化そうか、と必死で考えた。


「さ、さあ…私にはよくわかりませんが」


 そう言ってもじっと蒼の瞳に見つめられ、セリナの目が泳ぐ。

「飲んでいたお茶のせいでは?」とか「見頃の薔薇が気分転換になったのかも」などと言うセリナを見る瞳が、だんだんと細く鋭くなってゆく。


 気まずくなって目を逸らしつつお茶を飲むセリナに、小さく溜め息を吐いたギルバートは


「わかった。君にも原因はわからないとしても、君と話していると僕の体調がよくなる事は事実だ。申し訳無いが、これから付き合って貰いたい。」


(えええ…面倒くさい事になっちゃったな)


 そうは思うが、でも待てよと思い直した。


(定期的にお茶を…となると、定期的に美味しいお菓子が食べられる…?)


 美味しいお菓子は喜んで! とばかりに、にこやかにセリナは笑って承知した。


 以来、この4年ほどの間、半月に一度の割合でギルバートがやって来るようになったのだ。



 そして今日も今日とて、綺麗な青銀のオーラの中に黒っぽい靄を漂わせたギルバートの後ろを歩きながら、セリナはせっせとその靄を取り除いていた。


 この靄を取り去るのが目的ならば、お茶をするより散歩をしてギルバートの後ろを付いて歩いた方が都合が良い。

 そう思ったセリナは「気分転換のお散歩」を推奨し、半月に一度、ミュラー子爵邸の庭をギルバートと二人、お天気が悪くない場合はこうして散歩している。

 他愛ない話をしながら散歩をし、体調が良くなって気分も明るくなったギルバートと庭の東屋でお茶をし、彼は機嫌よく帰ってゆく。



 オーラに漂う黒っぽい靄、それが何なのかはセリナにも正確にはわからない。

 わからないがしかし、それまでの経験でなんとなくはわかっていた。

 それは、他人の悪意だ。

 妬みや意地悪や執着や、その人にとって良くない感情を向けられると、こんなふうにオーラに入り込んでくっつく。

 強い想いは入り込みやすく、大きな淀みのような靄になるが、

 その靄が体調を崩す原因になったりする。

気分が悪くなったり頭痛がしたり身体が重くなったり、酷くなると寝込んでしまうような事にもなるのだが

 膜が強い人だと跳ね飛ばすように靄を入り込ませかったり、大きな淀みが入り込んでいても、翌日にはキレイさっぱり無くなっていたりする人も居る。


 そして4年ほどの付き合いでわかってきたのだが、ギルバートは結構ハッキリした気の強い性格をしているらしく、思った事は言葉を飾らずにハッキリと口にする反面、案外繊細でもあるようで、傷つきやすい心を持っているようだった。

 だから靄を入り込ませやすいのだろう。態度や言葉が強いのは、だからこそ─そんな自分を守る為─なのかも知れないな、と最近のセリナは思うようになった。



「ではまた半月後、来月の頭に来る」


 そう言って馬車に乗って帰ってゆくギルバートを見送り、部屋に戻ろうとした所で姉のジョアンナと遭遇した。

 姉はセリナを馬鹿にしたような笑みを見せると


「まああ、相変わらずギルバート様はあなたに愚痴吐きにいらしてるのかしら。せいぜい気に入られて、ゆくゆくは公爵家の侍女にでもして貰えればいいわね」


 そう言い放ち、ツンと顎を上げてセリナの横を通り過ぎていった。



 最初にギルバートが訪れた日、半月に一度の訪問の約束をしてそろそろ帰ろうかという所へ、セリナを羨み、負けてなるかと侍女に命じて夜会にでも行くのかというほど着飾ったジョアンナが現れた。


「ギルバート様! 先日のお茶会ではご挨拶に伺えず、とても残念でしたわ! 私がこの家の長女のジョア」

「許しも得ずに勝手に名前を呼ぶような不躾な者を呼んだ覚えはない」


 嬉々として挨拶をしようと、媚びた声を上げながら微笑んだジョアンナの言葉が終わる前に放たれたギルバートの冷たい視線と鋭い言葉に

ジョアンナは真っ青になった。


 そんなジョアンナに目もくれずプイと顔を背けたギルバートはセリナに向かって淡々と


「では今日はこれで。また半月後に。」


 そう言って帰ってゆくとジョアンナは烈火の如く怒り狂っていたが

 後日、公爵家から説明されて多少気落ちした父から


「ギルバート様はセリナと話をすると気鬱が晴れるらしく、お話し相手になって欲しいとの事だ」


 という説明を受けると


「ふん、なんだ、ただの愚痴吐き相手って事なのね!」


 と鼻息と共に吐き捨てると


「あんたみたいな冴えない子には丁度いい役目ね!」


 と馬鹿にして、以来、お茶会にも散歩にも顔を出さなくなった。

 お茶会がきっかけでセリナが見初められたのかとぬか喜びした両親はガッカリしていたが

 そんな物語のような事が都合よく起こる訳ないではないかとセリナは呆れ、公爵家から齎される美味しいお菓子の為にご奉仕を続けているのである。


今回“オーラ”なんてモンをチョイスしましたが、特に詳しいワケでもスピリチュアル野郎なワケでもないです。

「それは間違ってる」と思われる事も多々あるでしょうが、まあご都合主義の異世界フィクションですのでお目こぼしを。


例によって見切り発車。

なのでこの先どうなる事やら。

書き溜めたりもしていないので不定期更新です。

す、すみません…

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