元剣聖は村につく。
馬車に乗ってからしばらくしりとりを続けていると、村が見えてきた。
特にこれといった特徴はない、ごく平凡な村だ。
「今日はここに泊まろうか」
「泊まれる施設とかあんのか?貧しくはないだろうけど、富んでもなさそうだぞ?宿泊施設があるのか?」
「さあね?なかったらなかったで何とかなるよ」
「お前なぁ……」
メイトは呆れながらリーガンの後ろをついていった。
「まあまあ、旅は道づれっていうじゃないか。その時その時で起こるハプニングを楽しむのも一つの良さだよー?」
「そういうもんなのかね?楽しい旅なんてほとんどしてこなかったからな」
ロンの人生はそのほとんどが戦争で構築されている。
十代の前半で初めて兵士として戦争に赴き、二十代前半から有名になる。
そのあたりから傭兵として仕事をしだすようになり、各地を転々としながら、行く先の戦争に参加して、莫大な戦果を挙げてきた。
つまるところ、彼にとって旅とは新たな戦場へ向かい際の待機時間ないし身体的な休息時間でしかなかったのだ。
そんなロンからすると、メイトとして初めて赴く旅が牧歌的で計画性のないもの、というのがなんとも違和感のあるように思えた。
「そーだなー、とりあえず村の人に宿が無いか聞いてみようか。……すいませーん、そこのお兄さん!」
リーガンは言うが早いか、村の人間を見つけるとすぐに駆け寄って話を始めた。
村の男性は困惑しながらもそれに対応した。
「は、はい……?」
「すいませんね、僕たちは旅をしていまして」
「ああ、道理で。見たことがない方だったから、驚いたよ」
「そりゃあすいません。ところで、この村にどこか泊まれる場所とかってありますかねぇ?」
リーガンの話し方は不思議な魅力がある。
真意がつかみきれないような発言や、言葉の特殊な言い回し、その他にもとにかく彼の話し方は歩ほかの人とは違う、変な魅力があるのだ。
「ここら辺には人は全然来ないからね、宿なんてなかったと思うな」
「おい、宿ないって言ってるじゃねえか、どうすんだよ」
「まあまあ、落ち着いて。ありがとうございますね、お兄さん」
男性と別れて、メイトとリーガンは話し合いをした。
「で、どうすんだよ」
「……野宿?」
「やっぱりそうなったか……まあ、慣れてるから別にいいけどよ」
そういって、村から少し離れたところに野営地を作る。
その動きは二人とも手慣れたものだった。
メイトが力仕事を全くこなせず、仕方なくリーガンが己に強化魔法をかけて行たっため、実質リーガンがほぼ一人でやったようなものだったが。
「本当に、力がないってのは不便だなぁ……」
「本当だよ。あーあ、明日は筋肉痛かなぁー?」
「それは日ごろ体づくりをしないお前が悪い」
なんどもやってきた野営。しかし、こんな楽かったことなんてなかった野営。
会話の弾む二人を見ているのは、空で瞬くたくさんの星と、それからもう一つ。
濃い影をしたものが、間違いなく二人のことをしっかりと見ていた。
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どのくらいってそりゃあもう、太陽ぐらい。(適当)
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2020/6/1 0:38 誤字修正