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元剣聖は友人と話す。

 町から少し外れた場所にある森の中。

 そこには、小さな家があった。それは、初代剣聖と恐れられ畏敬されているロンの現在の住処だ。


 太陽が顔を出し、家を明るく照らす。窓はその光を家に招き入れている。


「うう……」


 ロンはその光で目が覚めた。

 いやはや、こんな年になって。いやな夢を見たものだ。なんて、頭を搔こう――として、指が細い髪に触れた。よく見ると床に自分の髪と思しき白くてさらさらした糸の様なものが自分を中心にして存在している。


 そして、絶望した。ああ、夢じゃなかったんか……と。

 傍らに落ちていたのは長年の相棒。昨日、満足に持ち上げることすらできなかった、愛剣だ。

 やはり、夢ではないらしい。

 夢ならばどれほどよかったでしょう、と言わんばかりに青ざめ、これからどうすればいいか全く思いつかないロンは仕方なくもう一度床に倒れ伏した。


 それからしばらく呆然としていると、この家に近づいてくる人間の気配を感じた。

 ナニカとは明確に違う、人間らしい気配だ。


 もしも敵だった場合はどうすればよいか。剣すら持てない剣聖に何が出るというのだろうか。

 多少体術もできるとはいえ、体形ががっつり変わってしまったせいでうまく歩けるかも怪しいというのに、その上体術を相手にかける?しかもぶっつけ本番で?無理だ。


 がちゃり、とドアノブが音を発する。

 どうする、という考えだけが脳みそを満たし、具体的な解決方法が思いつかない。

 今までの剣聖ロンだったならともかく、今回はタイミングが悪すぎたのだ。流石のロンと言えど頭が回ってくれなかった。


 心臓が今にもはじけそうなほど大きく音を立てる。手には勝手に力が入り、汗がにじんでいる。


 ドアが、開かれる。


 まるでスローモーションのように感じる中で、ロンは、剣も持てない自分を心の中で殴り散らした。

 ごくり、とつばを飲み込む音が、妙に大きく聞こえた。


 ……。


 ドアがついにひ「へいへい、ハローロン略してはろろん、かわいくてよくない?あっれーロンは?あのクソでか脳筋おじいちゃんさんどこ行っちゃったの?って、そこに倒れてるきみ、誰?ロンの子供?あーあの人、ついに子供つくっちゃったかー。ってえなると、この子はロンの娘さん?こんなに大きくなるまでマブダチであるこのリーグン・ボーグンに何も言わないなんて……薄情者だなぁ。あ、お嬢ちゃん、お父さんどこにいるか知ってる?あと、お母さんは誰?それと、かわいいね?」らかれた・・・・・・。


「は?」


「は?じゃなくて、おかあさんだあれ?あのロン爺が子供作るなんて思わないじゃん?俺は責任負えねぇ……キリッみたいなこと言ってたあの堅物だよ?まぁーさかちょっと見ない間に子供作ってるなんて思わないじゃん?あんな堅物を落とせるなんて、どんないい女なんだろうってちょっと気になっちゃってね?」


 この話が異様に長い男はリーグン・ボーグン。ロンと昔同じ戦場で戦った友だ。

 ピエロのような恰好をした虹色の髪をして、飄々とした雰囲気を醸し出す不思議な男だ。

 実のところ、ロンはあまりリーグンのことが得意ではないのだが、何故かわからないが、リーグンのほうは異様にロンに懐いているのだ。

 厳しくなりきれないロンは面倒だとは思いつつもなんだかんだで相手をしてあげているような関係なのだ。


「俺はロンだ」


「うっそだーロンはもっと筋肉!筋肉!!筋肉!!!って感じの体格だったじゃん?」


「そこまで筋肉してねえよ。確かに筋肉はついてたけども」


「まあ、ロンのことはともかくとして、君のお名前は?ロンについては知っているようだけども、こんなところで何をしているんだい?」


「だーかーらー、俺がロンだって何度言えばわかるんだよ」


 苛立ちが募る。相も変わらず面倒くさい男だ、と。そもそも、自分ですら理解できていない情報を他人に信じろというのも無理な話、ということはロンの頭から完全に抜けている。

 腕を組んで、むっとしていると、リーガンもなんとなく現状を理解してきていた。


「えーっと……まじ?」


「まじもまじ。大まじ」


 目と口を大きく開けた間抜け面のリーガン。


「ちょ、ちょっと待って。あの剣聖ロンが、こんなちんまい女の子になったていうの?どうして?え?意味わかんないけど?」


「俺もわからんが、黒い何か……俺はそいつをナニカって呼んでるんだが、まあそいつに襲われて、首になんか液体を打たれて気づいたらこうなってた」


「なるほど、なるほど……いやー相変わらず人間じゃないね。いや、以前までのロンは人間だったけどさ。今回はまさに人間離れだよ。……いやーまさかとは思ったけれど、こうなるんだ。ロンはやっぱ人間じゃないな―」


 乾いた笑いを浮かべながら、キラキラした目でロンを見つめる。


「あ?なんだよその言い方。お前の話し方はいちいち核心を突かなくてむかつくんだよ、さっさと知っていることを話せ」


「はいはい。まったく、美少女になってもロンはつっけんどんでかわいいねー?」

リーガン・モーガンの名前の由来

髪色からそのままドイツ語で虹 Regenbogen を使いました。特に意味はない。

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