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マリナに付き纏う男


「どういう事だ!マリナ!」


そう叫んだのは1人の男だ。まだ開店時間前だというのに、その男は許可なく店に入ってくる。何だこの失礼な男は、というかマリナと呼んでいるからマリナの知り合いなのだろう。…ん?この人どこかで見た事あるなぁ…。そんな事を考えていると


「ログルさん!?」


マリナがびっくりしながらその男に向かって言う。ログル?あぁー…前の店で初めてマリナと会った時、マリナの店に買いに来てた奴だったな。確かマリナの夫と同じパーティだったとか?


その時は、毎日マリナの店に買いに来てて、本当にマリナの事を助けたいのかな?と思って関心していたのだが…。店に入るなり何故こいつは怒っているのだろうか?


「どういう事だと聞いている!」


「どういう事とは?」


「俺は聞いてないぞ?新しい店に引っ越しするなんて!」


いやなんでお前に言わないといけないんだよ。こいつ馬鹿だろ。


「それはごめんなさい。かなり急な事でしたので」


「そういう事は俺に許可を得てから言え!」


「…え?なぜログルさんの許可が必要なのでしょうか?」


いや至極当然の返しだ。友人でもなければ夫でもないのだろう?何様なんだ?このログルとかいう男は。


「なぜなら、俺がマリナの夫になるからに決まっているだろう!」


っえ!?それは本当なのか?それが本当なら少し面倒くさい事になるのだが…。


「そうなのか?マリナ」


「いえ、そんな事はないです」


いや違うのかよ!それならこのログルという男が勝手に夫になるとか言っているのか?マリナが否定したがどういう反応を見せるのかな?


「そんな筈はない!あの時、確かにマリナは…!」


「確かにあの時ログルさんから夫になってやるとは言われました。私は、もし夫になったその時はよろしくお願いしますと言いましたが、夫になってくださいとは一言も言ってません!」


「そんな…俺を騙したのか!?」


いや騙してないだろ。夫になった時はよろしくと言っているのが、夫になってとは一言も言ってない。言葉を理解してないのか?


「騙したも何も、最初からログルさんの妻になるつもりはありませんでした。ですが、あの時は経営も維持出来ないほどお金がありませんでした。以前からログルさんに「俺が夫になったら子供も養ってやる」と言われてました。正直、ログルさんが夫になるのは嫌でしたが、子供を養うためにはログルさんに頼るしか方法が無かった為、夫になった時はよろしくお願いしますと言っただけです」


へぇー。俺と出会う前にそんな話があったのか。だが、確かに自分が夫になった時はよろしくお願いします、と言われれば男なら期待してしまうか?それも大好きな異性から言われれば尚更な。まぁ言葉をちゃんと理解していないログルに落ち度はあるのだが。


「ですがその後、ここにいるルークさんに助けてもらい、ログルさんが夫にならなくて大丈夫になったのです」


「何だその話は!マリナ!俺が毎日助けてやったのを忘れたのか!」


「確かにログルさんは毎日買いに来てくれたりと感謝してますが、別に私はログルさんの事が好きでもありませんし、助けてもらわなくても大丈夫です」


このログルという男は今、マリナに振られたな。こんなに観客がいるのに、これは恥ずかしい。まぁ毎日助けてやったから俺と結婚するのは当たり前とか、マリナの事が好きなのは分かるが、弱みに付け込んで結婚を迫ったりとかやっている事がダサいなぁ。


マリナにそういわれて、ログルは何も言い返せず、俺達や特にマリナを睨んでいるが、そのログルの目がマリナの首に目がいく。


「マリナ!お前の首に付けてあるネックレスはなんだ?」


「これはルークさんに貰ったのですよ!綺麗ですよね?」


ニコニコしながらマリナは嬉しそうにしている。これは完全に見せびらかしているなぁ。マリナも相当この男が言い寄って来るのに耐えていたのだろう、あの笑顔はそういう笑顔だ。だがあの男の感情を逆なですると面倒くさそうな事になりそうなのだが…。


「貰っただと?今すぐそんな物は捨てろ!俺の妻になるのだから、俺のプレゼントだけ貰っておけばいいんだよ!」


「捨てません!これはルークさんから貰った大事な物です!」


「なら俺が捨ててやる!」


「やめてください!」


「ママー!」


ほら言わんこっちゃない…。いや口には出していないのだが。ログルが鬼の形相でマリナに近付く。マリナは俺から貰ったネックレスを両手で握りしめ、ログルを睨んている。もちろん俺は見ているだけだ。助けてもいいのだが、確認したい事があるからな。マリナには悪いが…。リリナも心配しているが、ログルは止まらずそのままマリナの首に手を掛けようした瞬間…


バチィ――ッ!


マリナが身に付けているネックレスが自動的に発動して、マリナの周りに薄い膜の様な結界を張る。薄い膜とはいっても、レイアが作ったのだからそれなりに強力な結界だ。マリナには怖い思いをさせてしまったがちゃんと発動して良かった。


「…ッ!?何だこれは!?」


「マリナ、これが悪意を持った者が触れようとすると、自動的にマリナを守ろうとするネックレスの力だ。逆にマリナから悪意を持った者に触れようとした場合も結界は発動するぞ」


「そうなのですか?」


マリナはそう言いながら、俺の腕にマリナの腕を絡ましてくる。ちょ!?いきなり大胆な!


「ルークさんは私に触れても結界は発動しませんね!」


「お、おい。みんな見てるだろ。やめろ」


特にログルの目が…。目で人を殺せるなら俺は間違いなく死んでいるだろう。


「マ、マリナから離れろ!」


いや俺から近付いたわけじゃないだろ。何なんだこいつ?だが言わなければならない事はちゃんと言っておこう。


「お前もしつこいな。マリナはお前のではないだろう」


「だまれぇ!マリナは俺だけのマリナだ!マリナは俺が一番幸せにできるんだよ!」


すげぇ思い上がりだ…ってかしつけぇなこいつ!だんだん腹立ってきたな!


「ログルさんごめんなさい。私はあなたの事は好きじゃないの」


「そうだよ!ママはいつもあなたよりルークさんの事ばかり考えているからね!」


「リ、リリナ?何を言ってるのかしら?」


俺を巻き込まないでくれよ。いや俺もマリナを守らないと駄目だから、巻き込まれる事にはなると思うのだが、そういう方面で巻き込まないでくれ。俺がマリナを寝取ったみたいじゃないか。絶対に面倒くさい事になるぞ…。


「そうか…。ルークという奴に唆されたのだな。元凶はその男か」


ほーら勘違いした。もう分かってたよ。まぁ仕方ない。ここはマリナの事を諦めてもらう為、一肌脱ぐとしますか。


「悪いな。マリナはお前のではなく俺のだ。マリナは俺の大切で大事な人だ」


「えっ!?い、いきなりそんな事言われても…。やだっ…恥ずかしいわ」


顔を真っ赤にして恥ずかしがっているが、どことなく嬉しそうだ。いや確かに大切な人だが、恋愛感情の好きではない。というか、マリナがそうやって反応すればさらにログルの感情を逆なでしてしまうから黙っていて欲しいのだが…。


「俺からマリナを奪ったのはお前だったのか…。そうか…。お前さえいなければ…お前さえいなければ!」


ログルは店の中で自分の腰にある剣を抜く。こいつ正気か?


「何をしてるのですか!やめてください!」


「黙れー!」


「きゃーー!」


「ママー!」


「なんと愚かな…」


ログルが剣を抜いて襲いかかってくるからマリナ達はパニックだ。エリナちゃんは怖いからマリナに抱き着いている。ログルは俺に近づき、剣を振り下ろす…が


――ガキィン!


ログルが振り下ろした剣は俺には届かなかった。なぜならログルが振り下ろした剣は、一瞬で俺とログルの間に入ってきたスサノオの籠手で防がれている。


そして防いだ際に、ログルの剣は折れてしまう。スサノオの籠手はかなり硬いからな。折れた剣が地面に落ちる。マリナ達に飛ばなくて良かった。飛んだとしてもドラグ辺りがかっこよくキャッチしそうだが。


「…我が主に手を出すなど万死に値する」


「ひっ!?」


「…だが今すぐここから引けば見逃してやる。…どうする?」


「クソッ!覚えていろよ!マリナは俺が幸せにする!」


まるで悪者が尻尾を巻いて逃げる際に吐き捨てるようなセリフを言って、ログルは慌てて店を出ていく。スサノオが防いでくれなくても俺の(シールド)で何とかなったのだが、礼は言わないと。しかし何故あそこまでマリナに拘るのかね?


「スサノオありがとう。ドラグ、すまないが奴を追ってくれ。決して悟られるな。すぐにテイエイ達を送る」


「畏まりました」


ドラグは店から出てログルを追いかける。ドラグは暗殺に特化しているわけではないが、エリートだから普通に悟られず行動する事なんて容易だろう。


「マリナ、大丈夫か?」


「はい!ルークさんに頂いたネックレスが私を守ってくれましたから…」


そう言ってマリナはネックレスを優しくなでている。


「そうか。ログルという男は前からああなのか?」


「はい。正確には夫が亡くなってすぐに。最初は何かあれば何でも言ってくれと優しかったのですが、ある時から俺が養ってやるぞと言われて…その時から言い寄ってくるのです」


なるほど。なぜそこまでマリナに執着するのか。マリナには特別な何かがある?それとも、ただマリナの事を勝手に狂愛してるだけなのか。まぁ普通に考えれば後者なのだが。俺は念話を使いヴィーナに繋げる。


『ヴィーナ聞こえるか?』


『聞こえていなんす』


『テイエイにマリナの店まで来いと伝えてくれ』


『了解いたしんす』


俺は念話を切る。


「マリナ、またログルが来るかもしれないから気を付けてくれ」


「分かりました」


レイアが作ったネックレスがあれば大丈夫と思うのだが、一応注意をしておく。話をしているとテイエイが店の中に入ってくる。


「お待たせ致しました、ルーク様」


「来たかテイエイ。いまドラグがログルという男を尾行している。ドラグと代わってログルを尾行し、そいつの事を調べてくれ」


「畏まりました」


「ドラグの位置は分かるか?」


「はい。我らの仲間がドラグ様の居場所を把握しています」


ヴィーナの偵察部隊はやはり優秀だ。話が早くて助かる。


「流石だな。あとこれを渡しておく」


俺はテイエイに念話の指輪を渡す。毎回来てもらうのに、ヴィーナを挟むのも面倒くさいし。そもそも念話の指輪はレイアに言えば作ってもらえるからな。俺の配下が優秀すぎて、俺が霞んで見えるぜ。


「念話の指輪だ。今から王都にいる偵察部隊はお前が仕切れ」


「有難き幸せ!」


「ヴィーナには俺から伝えておく。ではドラグと代わってログルを監視、調べろ。何かあったら念話の指輪を使って俺に知らせろ」


「はっ!」


そう言って、その場からテイエイが消える。マリナの店の扉も動いてないという事は、恐らく闇魔法で影の中に入ったのか?まぁそれはいいとして、こちらに来ている偵察部隊はそこそこの強さなのだが、テイエイは部隊長としてこちらに来ている。テイエイはヴィーナの精鋭部隊に入っているのだ。


強さでいうなら、レベル700にちょっとだったな。守護王達がSSSランク冒険者並の強さなら、テイエイはSSランクぐらいか?テイエイは一応、ヴァンパイア系の最上級魔物だからな。俺の目では捉えきれない訳だ。


ちなみにテイエイの種族はヴァンパイア公爵(デューク)。当然、陽の光なんて問題ない。公爵の上は真相(トゥルー)だけである。


「マリナ、取り敢えず俺達は今日1日この店にいる。何かあればすぐ対応できるからな」


「それなら安心して店を開ける事が出来ます!」


「ルークさん、私の働く姿を見ててくだいね!」


マリナもリリナもかなりやる気がある。ようやく店を開けれるのだからそりゃ気合が入るか。まぁ俺も手伝ってあげたいが、これなら俺がいない時もあるのだから、大人しく見守ろう。


「あぁ、見てるよ。エリナちゃんの面倒はこっちで見とくよ」


「ありがとうございます!」


「では私も店に戻りますね。そろそろ開店準備をしないといけませんからね」


「おっと、レナルド少し待ってくれ」


「はい?何でしょうか?」


「プリン、あの子をレナルドに渡してくれ」


「ハイなのです!」


プリンは自分の異次元からボックススライムをだす。


「この子を預けるのです!」


「この子はボックススライム。レナルドに塩と砂糖を届ける時に見たことはあるな?」


「はい。でも何故ボックススライムを?」


「塩や砂糖とか、紙が千枚入った木箱とか、移動するのも重たいだろ?だからボックススライムを預ける。この子がいれば楽になるし、俺達の言葉が分かるからな」


まぁアイテムバック大があれば何とかなるかもだか、レナルドが持ってるアイテムバックは小だからな。手提げ袋ぐらいじゃあの大きさの木箱は入らない。それならば容量もかなり入れれるし、人の言葉を理解しているボックススライムの方が役に立つだろう。


「名前を付けて可愛がってなのです!」


「分かりました。ありがとうございます」


ちなみにボックススライムは【縮小化】と【巨大化】のスキルを持っている。なので、大きい荷物も自分の体を大きくして取り込むことが出来る。


「マリナ達にもボックススライムを渡す」


「この子にも名前を付けて可愛がって欲しいなのです!」


「まぁ、ありがとうね!プリンちゃん!」


「ママ可愛いねぇ!」


ボックススライムとはいえ、魔物だから怖がるかなと思っていたが、リリナも可愛いと気にいってくれて何よりだ。


「重い物もこの子に任せておけば大丈夫だとおもう」


「ルークさん、ありがとうございます」


「さて開店準備はもうすぐだ。最後の見直しをしようか」


ログルの件でどうなるかと思ったが、何とかなりそうだ。レナルドも店に戻っていった。


準備を進め次の鐘がなると開店だ。外には既にお客さんが集まっている。ミルハイムさんの宣伝はやはり効果絶大だ。


そして開店時間の鐘がなる。さぁ、開店だ!マリナの新しい道具屋がこの日オープンする。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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