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ビルドとポーション瓶


「貴方がビルドさんでしたか。今日ここに来たのは…」


「ポーション瓶の事か?」


「よく分かりましたね」


「当然じゃ。ここに来る者はほとんどポーション瓶を作ってくれという用事だからのう」


まぁそうか。ビルドさんはポーション瓶作りで有名だ。ちなみにビルドさんは剣を打ったり鎧を打ったりなどはしない。ポーション瓶だけで生計を立てている。


「作ってやってもいいぞ?」


「いいのですか?」


「ただし、今から作るとなると1週間は掛かる」


まぁそうだよなぁ。ビルドさんはポーションを売っている者からしたら有名だ。ポーションを売るならビルドさんに頼みたいはず。俺より前に予約している者なんていっぱいいるだろう。しかし1週間か…。


「そんなに掛かるのですか?」


「あぁ。何せポーション瓶を買いたいという道具屋は多いからな。ポーションを扱ってる店のほとんどがワシの所に来よる」


分かっていた事だ。もう少し話を聞いてみよう。無理なら秘策を出すまでよ。


「そうですか」


「それにポーション瓶を作る時は魔法を使う。ワシの魔法が切れたら作れないのじゃ」


「ビルドさんの魔力が尽きたらその日は作らないという事ですか?」


「いや休憩して魔力が全て回復すればまた作る。魔力ポーションは大量にあるからのう」


だとすると1日に作れるポーション瓶の数は大体決まっているのか。なるほどね。


「では今から作ってほしいと言っても後回しになると言う事ですか」


「そうじゃな。じゃがワシは先着順に作ってる訳じゃないぞ?」


おっ?って事は俺が一番最初に作ってくれるかもしれないと言う事か?


「そうなんですか?」


「そうじゃ。金はまぁ生活費を稼ぐ為に取るのじゃが、ワシが誰を一番先に作るのを優先するかは、金と一緒に何か付けてくれる者を優先しておる」


「どういう事ですか?」


「ワシの店にポーション瓶を先に作ってくれと、ポーション瓶の代金と何かを付けてくる者がいるのじゃ。さっき言った魔力ポーションもそうじゃ。あとはワシの好きなエールを樽ごととかな」


なるほどな。誰を優先するかは、簡単に言えばこのビルドさんが欲しいものを付けて上げればいいのか。一応何が欲しいか聞いてみるか。トールと同じドワーフだが、もしかしたら全く性格が違ったり、好き嫌いも違うかもしれない。


「そうですか。では何が欲しいのですか?」


まぁ予想が正しいなら欲しい物は大体分かる気がするのだが一応聞いてみる。


「ドワーフが欲しい物は決まっておる。酒じゃ。誰が一番先に優先して作るかは酒で決まる」


ですよね。やはりドワーフは酒好きだなぁー。まぁ酒なら拠点宝珠で買えるから何とかなりそうだが。俺が持ってきた秘策とはこのビルドが知らない酒の話だ。まぁ俺の拠点宝珠から買える酒なのだが、酒好きなら一度は飲んでみたいものだろう。


「では俺が酒を持ってきたらすぐに作ってくれますか?」


「ほう。ワシを満足させられる酒を持ってくると?」


「それはどうか分かりませんね。ですが、俺の配下にもドワーフがいます。そのドワーフが毎日飲んでる酒なら用意できますよ?ちなみにこのナルグランデ大陸に売ってない物です」


くくく…!この大陸に売ってないというか、拠点宝珠からしか買えないからな!この話を食いつかないわけがない!あのトールでさえ毎日飲んでいるからなぁ!


「なにっ!?新種の酒か!?」


「まぁそう思っていただいて構いませんよ。特に売り出す事は考えてませんからね」


そう言って付加価値を上げる。売り出すことはないという事は、今後も手に入らないと言う事だ!目の前にこんな大きな餌がぶら下げられているのだ!食いつくに決まっている!拠点宝珠の酒は全て1リットルで売られているが、1本3千ポイントと少し高いんだよ!それをトールは毎日…。まぁいい。今の所は売り出す事は考えてないのは本当だ。


「どうですか?交渉材料になりますか?」


「そんなもんなるに決まっておるだろ!じゃがその話が本当だとしたらだがな…」


「そうですね。俺も今、その酒を持ってませんからね」


「そうか。少し味見をしたかったがのう」


本当に飲みたそうだ。まぁ無理もない、この異世界にはない新種の酒だから。本当は持ってこようと思ったらすぐに持ってこれるのだが、持ってきて仕事しないかもしれない。ドワーフに限ってそんな事はないと思うが。


「なら条件があります」


「条件じゃと?本来ならこちら側から条件を提示する側なのじゃが、立場が逆転したか…。まぁ新種の酒が飲めるなら聞くが」


釣り上げた。ちょろいドワーフだ。


「このナルグランデ大陸には売ってないのですから条件ぐらいつけますよ。ビルドさんも他のドワーフにいうと大変な事になりますよ?」


「分かっておる!他のドワーフには誰も言わん!だから条件を早く教えんか!」


すごいグイグイくるなぁ。他のドワーフにいうと絶対に欲しがるだろう。俺も飲ませろとビルドに付き纏うだろう。一度あげてしまえば、また飲ませろと永遠に付き纏うだろうな。まぁそれはビルドも分かっているだろう。だが酒の量を増やしてといわれても俺は決まった量しか渡さないが。


「条件は2日後に新しい店を開くのですが、その店でポーションを扱うのです。ですがポーション瓶が無いので作って欲しいのです。2日後までに出来ますか?」


「それは量を聞かないと分からんな。何個作ってほしいんだ?」


「ポーション瓶を1千個作ってほしいのですがいけそうですか?」


「なんじゃ。そんな少なくてええんか?中規模の道具屋でも5日で5千個は作るぞ?」


口ぶりからして余裕そうだ。流石はドワーフと言ったところか。


「もちろんもっと作りますよ?ですが今はその分だけ欲しいです」


「そうか。なら明日までに出来るぞ」


明日に出来るのか?かなり早い。いやただ酒を飲みたいからなのかもしれないが。


「そんなに早いのですか?」


「ワシのは早くて出来が良いからな。ワシはドワーフには珍しい土と風の適正を持ってるのじゃ。土で形を作ったり乾燥させたりの工程は省けるからな。焼くのは地下にある大窯で一気に焼く」


土で作るポーション瓶の作り方を説明されてもよく分からんが凄そうだ。それにドワーフとしては珍しい風魔法か。ドワーフのほとんどが土魔法の適性を持っている。だが水魔法を持ったドワーフはほとんどいない。もちろん風魔法もだ。種族的に土魔法を持ったドワーフが多いのだが、ビルドさんは風魔法を持っているのは確かに珍しい。


「まぁお主に説明しても理解出来なさそうだからある程度省いて話してるがな」


「俺はそういう物作りには疎いですからね。取り敢えず明日には出来るんですね?」


「そうだ。明日には出来てるから取りに来い」


「分かりました。それともう1つ条件があります」


「まだあるのか!」


まぁこっちは条件というか契約的な話だが。


「はい。俺達は2日後、つまり1日に店を開く事になります」


「ふむ」


「このポーション瓶1千個はその1日〜4日までに売る分です。ですので5日目からの分のポーション瓶、1千個を作ってほしいのです」


「するとそのポーションは5日〜9日で売るという事か。売る期間は4日間だけなのか」


話が早くて助かる。


「そうですね。簡単に言えば1日、5日、10日、15日、20日、25日にポーションを売り出します。ビルドさんは4日、9日、14日、19日、24日、30日までにポーション瓶を1千個作ってほしいのです」


最後の25〜30日だけは、売る期間が5日になってしまうがまぁ仕方ない。今後先さらに売るポーションの数を増やすかもしれないが今は様子見だ。


「ちょっと待て。カレンダーに記して置く」


ビルドさんはカレンダーにポーションを作る日を記入している。ちなみにカレンダーには俺の印しかない。よほどこの酒を逃したくないのだろう。他の道具屋がどうなろうと。


「毎月その日に作ってもらえばありがたいです。もちろん毎回新種の酒を持っていきますよ」


毎回新種の酒というのは、毎月違う酒を持ってくるのではなく、この世界では新種だが同じ酒を持ってくるという意味だ。毎回違う種類の酒も持っていくのはダメだ。何かあった時の為に他の酒は隠しておく。


「それはありがたいな!だがなんでそんなにポーションを小分けにして売るんだ?」


「小分けにしないと敵を作ってしまう恐れがあるからですよ。まぁ結局敵を作ってしまうとは思いますが、敵は出来るだけ少ない方がいいですからね」


「ん?よく分からんがまぁいい。ワシは酒が手に入ればいいだけじゃからな」


カレンダーに記入し終わるビルドさん。


「取り敢えず作ってやるがまだ仮だ。明日ポーション瓶を取りに来て酒を飲ませてもらった時に、優先して作るか決める」


ほぅ!ポーションの瓶は作ってやるが一番優先して作るのは飲んでみないと分からんと?エールで満足しているようじゃ結果は見えているがな!


「分かりました。それでいいです」


「ならワシは今から作業に入る。他に用はないか?」


「はい。俺の用事はこれだけです」


「そうか。ではまた明日会おう」


ビルドさんは家の奥、というか地下に向かう。さてポーション瓶は何とかなりそうだな。


「俺達もマリナの道具屋に戻るか」


守護王達も頷く。今日はもうやる事はないかな?マリナの道具屋の後にトワイライト王国に戻って、溜まっている執務を終わらせないといけないか。そう考えると重い足取りになる。足が重いがマリナの道具屋に戻る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺達はマリナの道具屋に着いて中に入る。


「お帰りなさい!」


「どうでしたか?」


レナルドとマリナが出迎えて聞いてくる。


「取り敢えず明日までには作ってもらえる事になったよ」


「それは凄いですね!あの頑固なビルドさんを説得できたのですか!」


「説得というより交換条件みたいなもんだな」


ミルハイムさんもビックリしている。ドワーフのお酒好きを利用した感じだから、ドワーフからしたら断るのが難しかったんだろう。


「そうそう。それはそうと俺に新しい家族ができたんだ」


「新しい家族!?子供ができたんですか!?」


「おめでとうございます!」


何故かマリナが食い付いてくる。というか近い!近いからマリナさん!レナルドも勘違いしてそうだなぁー。


「マリナ落ち着け。新しい家族は子供じゃない。俺は冒険者なのは知ってるよな?言ってなかったけど、俺はモンスターテイマーだ」


「だからモンスターテイマーの証を付けていたのですか!」


「そういう事ですか」


何故かマリナは安心している。ビックリしたり安心したりとよく分からん。


「という事は、新しい家族というのはテイムした魔物という事ですか?」


「そうだな」


「しかし何処にいるのでしょうか?外にいるのですか?」


「いや近くにいるんだよ。少し特殊な個体でな。呼ぼうか?」


「えっと…その…大丈夫なんでしょうか?ルークさんの魔物なので心配はしてませんが…」


まぁそう思うのは仕方ないよ。いきなり魔物を出すのだからそりゃ心配になる。この店が荒らされたりしたらとか考えるか。


「大丈夫だよ。意思疎通は出来る」


「そうなのですか!実はあまり魔物を近くで見た事がないので楽しみなんですよ!」


「私も見てみたいですね!」


ミルハイムさんとレナルドは少しワクワクしているが、マリナは少し不安そうな顔をしている。


「では呼びますか。クイン?」


俺が一言呼ぶと空間が開きクインが出て来る。普通の人間なら何が起こったか分からないだろう。だって何もない空間からいきなり魔物が出てくるのだから。みんな大きな目を見開いて驚いている。


「クイン。ここにいるみんなは俺の仲間だから攻撃しちゃだめだぞ?」


「ギチチ」


「これが俺の新しい家族のクインです」


「ギチ!」


クインが飛びながら挨拶をしている。怖くないよとアピールしているのかもな?


「これは凄いですね!」


「クインさんですか。よろしくお願いします」


「ク、クインちゃん。よ、よろしくお願いしますね?」


「ギチチ!」


律儀に頭を下げてる。賢いなクインは。その頭を下げている姿を見てマリナが少し警戒を緩める。


「クイン。家族の証に従魔の腕輪をやろう」


俺はギルドマスターから貰った従魔の腕輪をクインの前脚に付けてあげる。ちょっと忘れていた。これを付けないと容赦なく魔物認定される。気付いてよかった。


「ギチチ?」


「家族の証だ」


「ギチ!」


クインはこれ何?と言ってきたが、家族の証と説明するが、あまりよく分かってない。だが大切な物だとは理解しているようだ。


するとそこにリリナとエリナちゃんが来る。


「ママ何かあった…の?きゃーー!」


「でっかい虫ー!」


「マ、ママ!魔物が、大きい蜂が部屋の中で飛んでいる!」


「あ、安心しなさい。ちょっと怖いけどルークさんの家族ですよ?」


マリナも少し怖がっているが頑張って子供に説明している。


「驚かしてごめんな?俺はモンスターテイマーなんだよ」


「モンスターテイマー…?」


「魔物をペットみたいにして戦う職業だ。だが俺の家族だ。クインは優しいぞ?」


俺は言う。するとエリナちゃんがクインに近付いて


「抱っこしてー!」


「ギチ?」


エリナちゃん怖くないのか!?さすが子供の好奇心は侮れん…。クインも困惑しながら俺の顔を見てくる。


「クイン、エリナちゃんが抱っこして欲しいだって」


「エ、エリナ?危ないわよ?」


「そ、そうよ!」


マリナとリリナが心配して言ってるが、エリナちゃんは抱っこして欲しいみたいだ。クインは抱っこというのを知らないが、俺がどういう感じなのか俺の頭で想像し、それを意思としてクインに伝える。


俺はエリナちゃんを持ち上げて、クインは理解したのかエリナちゃんの後ろから、エリナちゃんの脇に前脚を入れて優しく持ち上げる。そして飛び回る。


「わぁー!すごい!飛んでるよー!」


部屋だけだが天井近くまで飛び回る。一応俺の意志で落とさないでくれと言ってるから大丈夫だと思うが。そしてある程度飛んだら降りて来る。


「えぇー!もう終わりー?」


「悪いな。クインは子供を育てないといけないから忙しいんだ」


「クインちゃんもお母さんなの?頑張ってね!」


「ギチチ!」


クインは異次元の中に帰っていく。リリナは少し不満そうな顔をしている。そんなリリナを抱っこして


「リリナもクインに抱っこされたかったか?」


「そ、そんな事無いよ!お姉ちゃんだから!」


「そうか。じゃあ次来たらクインに抱っこしてもらうように頼むよ」


「ほんと!?」


「あぁ!」


子供は単純だなぁ。だがそこが可愛い!と俺は思う。まぁリリナもクインに抱っこして欲しそうな顔をしてたからなぁ。クインが一段落ついたら遊ぶ時間も増えるだろう。


「ビックリしました!でも本当に大丈夫なんですね!」


「クインは賢いだろ?」


「そうですね!…あっそうだ!そろそろお昼ですので一緒に食べていきますか?」


「そうだな。お願いするよ」


俺達はマリナの昼食に呼ばれる事になった。もちろんレナルドやミルハイムさんも一緒にだ。


どんなお昼が出てくるのか少し楽しみだ。俺はワクワクする。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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