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ルークの忙しい一日


俺達はトワイライト王国に戻って来る。やる事が多すぎて忙しい!あっち行ったりこっち行ったりと大変だ。


俺はまずトワイライト王国の北西エリアにあるトールの鍛冶屋に行く。トールはいつもそこで鍛冶をして武器などを作っている。はっきり言って武器を作っても、この国では全く売れない。トールが作る武器が劣っているからとかではない。


トールの作る武器はこの世界では間違いなくトップクラスの性能だ。トールが打った鉄の剣は、王都で売っている鉄の剣と比べると耐久性も切れ味も段違いだ。それでもなぜ売れないか。それは武器を使う事が少なったからだ。


<聖戦タクティクスウォー>では頻繁ではないが、国同士の戦争が起きていた。攻められる事もあれば、こちらから攻める事もあった。武器を使うという事は、戦っている者(素手で戦う者以外)全て武器のメンテナンスがいると言う事だ。いくらトールが作る武器の性能が良いと言っても使い続ければ壊れたりするのだ。


普通の武器よりかは壊れにくいがメンテナンスをしなければいつか壊れてしまう。聖剣などはメンテナンスしなくても壊れはしないと思うが、切れ味はほんの僅かではあるが落ちる。戦闘を生業とする猛者であれば、そのほんの僅かの切れ味の違いでも気にするのである。特にスサノオやルーシーは頻繁ではないが剣のメンテナンスには行くらしい。


だが、こちらの世界に来てから戦争はおろか、戦闘すらほとんどする事は無くなった。もっと言えば守護王達の配下達も戦う事は無くなってしまった。守護王達の配下達は元々武器は持っているので、尚更武器のメンテナンス等が不要になってしまったのだ。既に武器を持っているし、使わないのであれば買い換える必要もなくなると言う事だ。故に売れないのだ。


トールの武器は有用だ。この世界では間違いなく需要がある。なのでいずれトールの店も用意したいものだ。そんな事を考えながら、俺はトールの鍛冶屋に入る。奥からはカン!カン!と音が聞こえてくる。誰かいないかなと周りを見渡すが誰もいない。俺はトールの名前を呼ぼうとしたらトールの配下が奥から出てくる。


「ん?ルークの旦那じゃないですか!?こんなとこまでどうしたんですか?」


「トールに会いに来たんだ。一応トールには連絡している」


「親方にですか?ちょっとまってくだせぇ!」


トールの部下は奥に入っていく。トールや守護王達も忙しいのだし、やっぱ俺から出向いた方が気が楽なんだよ。まぁそうすると、いつも守護王達が王の命令とあればいつでも来ると怒られるんだが。ちなみにトールの配下達はトールの事を親方と呼んでいる。


配下が奥に入って数分、トールが出てくる。俺がまず驚いたのは鍛冶屋の入り口で既に暑いのだが、奥にいたトールは汗1つかいてない。武器を打っている炉の近くは、こことは比べるまでもないぐらい暑いはずなのだが…。ってかさっきの配下すら汗をかいていたのに。


「ルークの旦那。呼んでくれりゃワシから出向いたのに」


そして案の定やっぱ言われた。


「いやトワイライト城に用事があってそのついでにな。それよりも暑くないのか?汗1つかいてないが」


「あんな暑さなどワシにとって平温じゃ。それよりワシに何か用事か?」


ここでも暑いのに中の暑さが平温と言うのか。いやまじで火の適正あるだろうと思ってしまうのだが…。凄いなトール。


「あぁ。頼み事があってな」


「頼み事じゃと?なんじゃ?」


「実はな…」


俺はトールに商人ギルドで聞いたシンボルについて話す。


「なるほど。そのシンボルをワシに作ってほしいと」


「あぁ。作れそうか?」


「作れるとは思うが、一体どういうシンボルにするんじゃ?」


「やっぱトワイライトだから夕日かな?」


「ふむ。では橙色の布に夕日を描くとするか」


「それを2つ作ってほしいんだが、時間掛かりそうか?」


「まぁ2時間もあれば作れそうじゃな」


おぉ!流石トールだ!ドワーフなので鍛冶屋が主だが、トールのユニーク【物作りの神】は物を作る際に発動する。つまりシンボルマークを作る時にも発動する。ちなみに2時間もあればとか普通に話しているが、この世界の者に2時間もあればなどというと全く通じない。この世界には時間の概念がないからな。


「助かるよ。出来たら取りに来るよ」


「分かったのじゃ」


「あとトールに迷宮でドロップした武器をやるよ」


「要らんのか?」


「鋼とか鉄とかあまり品質が良くなさそうだしな。トールの金魔法で金属の中にある不純物を取り出せるんじゃないか?」


俺も錬金術を使うのだが、トールの金魔法が一番錬金術っぽいのだが。不純物が入った鉄であるならばまず<分離>をする。分離とは混合物の分離、鉄であるならば酸化鉄を酸素と分離する。その後は分離した純度100%の鉄だけを<摘出>。そして取り出した鉄を<結合>で1つの鉄の塊に。この工程を一瞬でしているので尚更錬金術っぽい。いや錬金術か。


ちなみに迷宮で出る鉄や鋼は少なからず不純物が入っている。この世界では純度100%の金属の作り方はまだ確立していないのだ。


「出来るぞ?」


「だったら純度100%の鋼で作る剣の方が強いと思ってな」


「まぁそうじゃな」


「純度100%の鋼とか売りに出したら高そうだなぁー」


「ワシも王都の武器屋を見て回ったがありゃだめじゃな。不純物だらけの剣じゃ。ワシから見たら、ありゃ鈍らじゃわい。ワシが作る剣は王都で出せばそれなりにするじゃろうな」


やはりトールから見たらその程度の武器なのか。んー…やはり次に店を出すなら鍛冶屋かな?トールの力を活用しないのはもったいない。ちなみに風の杖や風の鉤爪は魔法武器なのでトールには渡してない。


「じゃあいつか鍛冶屋を王都に出すからそんときは頼むよ」


「面白そうじゃな!そんときはワシに任せろ!」


「じゃあシンボルマーク出来たら教えてくれ」


「うむ」


俺は鍛冶屋を後にする。俺達は一度トワイライト城に戻る事にする。


「イーリス、プリン、俺は風呂に入ってくるから自由にしてていぞ?」


「分かりました」


「分かったのです!」


イーリスとプリンとは別々に行動する。本当はエールを連れて行かないといけないのだが、面倒くさいから念話だけ入れて先に行こ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺は体や頭を洗って風呂に入る。


「あぁ…。生き返るなぁー」


最近は清掃(クリーン)の魔法でしか綺麗にしてなかったから、久しぶりに入る風呂は本当に気持ちいい。


そういえばこの世界のお風呂事情は、一般家庭にお風呂がついてることは滅多にない。お風呂は金持ちや貴族が入るものなのだ。


ミルハイムさんの家ならお風呂が付いてそうだが、レナルドやマリナの店には付いてなかった。一般家庭は水を浴びたり、タオルのような物で体を拭くだけが普通らしい。こうやって俺みたいに毎日風呂に入れる人は殆どいないらしい。いや俺も<清掃>で済ます時があるが、入ろうと思えば毎日入れる。


それに貴族も毎日入るのではなく、数日に1回程度である。入らない時は水浴びや体を拭くだけで済ますらしい。ふむ。温泉を作ったらかなり儲かりそうだが、お風呂に入れない者が多いのでかなり面倒くさそうだ。ちなみにトワイライト王国では銭湯が3つある。安いのでみんな問題なく入れている。


「毎日入れる黄昏(トワイライト)王国は贅沢なんだなぁー。まぁ世界平和の為に頑張るより金持ちになってまったり生活する方が幸せだよな」


そんな事を呟きながら風呂を満喫する。さーてそろそろ出るか。俺は風呂から上がる。


ふぅー。風呂から上がり脱衣所に出るとそこにはエールが涙目になって立っていた。やば…。


「ル、ルークざまぁー!どうして私をお供に連れて行ってくれなかったんですかぁ!嫌いになったんですかぁ?」


「ち、違うから落ち着け!体が気持ち悪かったから早く入りたかったんだよ!」


「本当ですかぁ…?」


「本当だよ」


俺は頭を撫でる。今の俺はメイドに優しくするご主人様と、言葉だけ聞いたらかっこいいのかもしれない。だが脱衣所にある鏡を見てみると、裸の男がメイドの頭を撫でると言う最悪の絵面が映っている。何が悲しくて裸でメイドの頭を撫でないといけないんだ。こんなところイーリス達に見られたらと考えたら背筋がブルっとした。おかしいな?さっき風呂で温まったはずなのに寒いのだが。


エールの機嫌が良くなったので、俺は素早く服を来て執務室に向かう。ちなみに脱衣所には冷蔵庫があり、その中にはフルーツ牛乳などが入っているのだが、今日は飲まずに執務室に向かう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


執務室に入ると、イーリスとアルマが仕事をしている。相変わらずイーリスは真面目だ。少しぐらいは休んでもいいのに。


「イーリス、少しは休んだか?お風呂とか入ったらいいのに」


「主様の清掃の魔法で十分です」


「そうか?気持ちいぞ?俺が尻尾を洗ってやろうか?今もモフモフだがお風呂に入ったらもっとふわふわモフモフになるかもよ?」


「な、何を言ってるんですか!主様とお風呂でいちゃいちゃなんて他の人がいる前で言わないでください!」


…いやそんな事は一言も言ってないんだが。まぁ一緒に入る事はイーリスにとってそう言う事になるのだろう。だがここは敢えて無視するか。


「アルマは調子はどうだ?」


「はい。仕事も覚えましたし楽しいです」


「それはよかった。何か不便な事があったら何でも言えよ」


「はい」


俺は椅子に座り、拠点宝珠に触れて拠点宝珠の商品リスト開く。少し確認したい事があるからだ。


ふむふむ。紙は1枚1ポイントか。まぁ妥当だ。


次に見た商品はマッチだ。そう、これがマリナの店に置く新商品になる。マッチ(小)は1箱10ポイントになっている。んー?普通は20本入りだよな?俺は試しに1つ買ってみる。


近くにマッチ1箱出てくるので、箱の中を見てみると10本入りだった。なんで10本入りなのか考えたけど、まぁ10本でも20本でも同じか?とすぐに考えるのをやめた。


マッチにはマッチ(小)とマッチ(大)がある。マッチ(大)は100本入りで、100ポイントだ。これもまぁ妥当ではないか。


次は娯楽を見てみる。トランプだが1組5千ポイントする。女神様が高くするとは言ってたが、まぁこれぐらいが妥当なのか?いやまぁ普通に高いのだが。もう1つ娯楽の商品がある。それはリバーシだ。これも1つ5千だ。


紙が1枚1ポイントだが、同じ紙なのにトランプというだけでこんなにポイントが違うんだから高いんだろう。


取り敢えずトランプとリバーシは2セットずつ買っておく。さて商品はもういいだろう。次に気になるのはやはりトワイライト王国の民達の数だな。10万にならないと次のレベルに上がらないから何か増やす手段を考えないとな。


そんな事を考えていると


『ルークの旦那、シンボルマークが出来たぞ』


おっ。もう出来たのか。というかもうそんなに時間が経ったのか。やりたい事というか、やらなければならない事をやってると時間が経つのが早い。


『今から取りに行くよ』


念話を切り、トールの鍛冶屋に行く。イーリスもついてくるようだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おぅきたか!出来たぞ?」


出来たシンボルマークの布を渡してくる。俺はそれを広げて見る。


「おぉ!いいじゃないか!」


その布の真ん中に黄色みたいな白で太陽が描かれていて、その周りは橙色、夕焼け色で影があるところは黒で描かれている。そしてその夕焼けを飛び回る妖精達が描かれている。妖精達も影だが幻想的だ。っていうか普通に高値で売れそうなぐらい良い出来だ。


「また店を増やす場合は作らないといけないんじゃろ?そん時はまた儂のとこにこい。作ってやるぞ」


「助かったよトール。ありがとう」


「礼にはおよばん」


そして俺は鍛冶屋から出てまた王都に行く。今日は移動してばっかだ。だがやらないといけないから仕方ない。あぁーもふもふ成分が欲しい。イーリスとかリルの尻尾をモフれば良いと思うだろう?だがそんな簡単な事ではないのだ。


どうやら獣人達にとって尻尾はデリケートな場所なのだ。もちろんイーリスやリルなら許してくれるだろうが、そんな簡単に触って良い場所ではないのだ。だから俺も配下だからと言って容易には触れない。やはり新しいモフれる何かを探さないと。と考えながら王都に向かう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


王都に戻る前にプリンとドラグと合流してから王都に戻る。ドラグはミルハイムさんを家まで送ってから、直接こっちに戻って来たみたいだ。さてまずは商人ギルドに行く。


商人ギルドに着き、中に入りルピスの受付に並ぶ。少し並んでいる者がいたが、すぐに俺達の順番になる。


「ようこそ商人ギルドへ!朝ぶりですね!」


「そうだな。マリナの道具屋だが、引っ越しをしたから店の変更がしたい」


「畏まりました!店の場所を教えてもらえますか?」


俺はルピスに店の場所を教える。


「はい!変更の登録が出来ました!」


「次にシンボルマークの登録だ。これを」


布をルピスに渡す。


「早いですね!では確認します。……凄いですねこれ。夕日ですが、そこに妖精が飛んでる姿が描かれています。これだけでも価値がありそうな布ですね。いえ、このシンボルマークを欲しがる人は必ずいます。それぐらい凄い幻想的な布ですね!」


「ありがとう。俺の知り合いに作ってもらったんだ」


「そうなのですか!このシンボルマークを使っても大丈夫ですよ!」


「ありがとう」


これで店とシンボルマークの登録は終わった。さて最後にマリナの店に行く。レナルドも呼んでおく。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


マリナの道具屋に着いて中に入る。すると中にマリナ達やレナルドがいた。


「あらルークさん、お帰りなさい」


「お帰りなさいルークさん!」


「お帰りルークー」


とまずはマリナ一家が出迎えてくれる。エリナに関しては抱き着いてくる。はぁー。もふもふとはまた違うが、癒しは最高だ!


「…待っていたぞ主よ」


「お帰りなさいませ。ルーク様」


「お帰りなさい」


「みんなただいま」


そしてスサノオ、テイエイ、レナルドと挨拶をしてくるので挨拶を返す。スサノオはどこか疲れた顔をしているか?まぁ顔は仮面を付けているから分からないのだが、雰囲気が疲れてそうな…。


「マリナ、店の変更は商人ギルドでしておいたからな」


「ありがとうございます!」


「あとシンボルマークが出来たからこれを店の外に飾っててくれ」


マリナとレナルドにシンボルマークを渡す。トールには2つ作ってもらった。頼りになる配下だ。


「これは凄いですね!何て幻想的な布なんでしょうか!」


「はい!これだけでも売れますよね」


商人ギルドのルピスと同じ事を言ってるな。まぁ物作りに関しては神の領域にいるトールが作ったんだから無理もない。だが商人のレナルドやマリナから見ても売れると言うのだから、それほど凄い価値があるのだろう。流石はトールだ。物作りに関しては神匠のレベルだろう。


「それは売り物じゃないからな?これを店の外側の壁?とかに固定したらいいんじゃないか?」


「そうですね。なるべく窓がない壁に飾ったほうが良いでしょう」


「風とかに煽られると何が描かれているか分からないですからね」


取り敢えず俺が今日やることは終わった。といっても用事がだ。執務の仕事はちゃんと残っている。やっぱ日本に居た時より忙しくね?気持ちは営業するリーマンだ。


「俺は宿に戻るから後は頼むよ。スサノオはどうする?」


「…我も戻るとしよう」


「えー!やだー!」


「無茶言わないのエリナ」


お姉ちゃんのリリナがエリナちゃんを咎める。リリナもちゃんとお姉ちゃんしているのか。偉い。


「…また明日来る」


「約束だよ?」


「…あぁ」


「じゃあ俺は行くよ」


マリナの道具屋から出る。宿屋ではなくトワイライト王国に戻るんだが、一応宿屋と言っておいた。


今日は色々やったから本当に疲れた。午前中はレイアの所に行って話を聞いて、その後はレナルドさんの店に行き、マリナの道具屋の場所を教えてもらい、マリナの道具屋でマリナを説得、その後商人ギルドに行って、次にミルハイムさんと新しいマリナの店を探して、その後はトワイライト王国でシンボルを作ってもらう為にトールに会いに行き、執務室に寄って、また商人ギルド行き、最後にマリナの新しい道具屋に行ってシンボルを渡す。


どう考えても人1人のキャパシティーオーバーだ。不労所得を、何もせずにスローライフを目指しているのになぜこんなにも仕事量が…。まぁ何もせずには言い過ぎたな。この世界を冒険しながらまったりしたいだけなのに。今は忙しいだけだ。いつかやる事がなくなって時間が増えているだろう。俺はそう思う事にした。


トワイライト王国に戻ると既に夕方だった。俺は疲れたので後はゆっくりする事にした。今日の執務?そんなの明日にでも出来るわっ!夜になって本日3回目のお風呂に入り、みんなで食事して早めに寝るのであった。


明日も忙しいからなぁ…。


呼んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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