マリナの道具屋
「それはそうと、わざわざ来てどうしたのじゃ?」
あぁ、そうだった。あの台座が気になってすっかり本来の目的を忘れてしまった。
「重力結晶が凄すぎたから忘れてたが、作って欲しい物があってな。いや?改造してほしいかな?」
「改造?」
「そうだ。改造してほしいのはテントだ。今は3人が寝れるスペースだが、もっと大きくしてほしい」
そう。俺の目的はテントの改造だ。迷宮攻略するとなると執務が出来なくなるので、それを何とかしないといけないんだよ。昨日はイーリスに3分の1の書類をやってもらったのだが、次も同じ事したらイーリスの好感度下がっちゃうからな。
頭を撫でたら一瞬で好感度上がる気がするが…。なんてイージーゲーム…。いや、それほど俺の事を好いてると言う事だ。ありがたい。
「まぁそれは可能と思うのじゃが大きくして何をするのじゃ?」
「テントの中に転移門を付けれるか?やはり迷宮攻略で長く離れ過ぎると書類が大変でな。昨日は夜中までかかったんだよな」
「なるほど。そういう事か。まぁ試して見ないと分からんのぉ」
「もし付けれるとしたら、セレス達のパーティのテントにも転移門を付けたら離れてても一緒に食事が出来る事になる」
多分だが、また迷宮攻略では別行動になる。テントの中に転移門を付けていれば、いつでもトワイライト王国に帰ってこれるという事だ。
「なるほど。確かにそれはセレス達が喜びそうじゃな。よし分かった。次の迷宮攻略までには何とかしてみるのじゃ」
「ありがとう。転移門が欲しいならイーリスかルビー、シーナに言ってくれ」
「分かったのじゃ」
「あと王都には行かんだろ?」
「そうじゃな。主がいま言った新しい研究もあるからな」
「そうか。じゃあちょっと王都に行ってくるわ」
「行ってらっしゃいなのじゃ」
俺はレイアの研究所を後にする。俺は重力結晶の台座の所まで戻ってくる。確か俺が乗ってきたのは左の台座だったのだが、その台座は今は無い。恐らく上に戻ったのだろう。だが、この地下に来たから理解できた。
俺が乗って来た台座から少し離れた場所にもう1つ台座があるのだ。俺はその台座に乗り、真ん中に立つとその台座が起動して動き出す。無理やり重力に逆らって上っているのではなく、台座の中だけ重力が緩和しているような。優しく上っている様なそんな感覚だ。
上について台座から降りるとその台座が下に戻っていく。こっちが昇り専用だったか。台座があった場所は、ぽっかり穴が開いているが、誰かが落ちないように結界魔法が張られている。安全対策も完璧だ。
俺は小さい搭?から出て執務室に行く。塩と砂糖を取りに行って王都に出発だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
執務室の前に到着して中に入る。中にはイーリスとエールがいるが、アルマはいない。昨日頑張ったのでアルマの出勤を少し遅らせているのだ。
「主様、塩と砂糖の準備ができています」
「助かるよ」
俺はアイテムボックスに入れる。流石はイーリスだ。大樽の大きさもばっちりだ。
「イーリスも王都に行くだろ?」
「はい。お供します」
「じゃあ今から行くから用意が出来次第、転移門部屋に来てくれ。あと行く者にも伝えてくれ」
「分かりました」
「エールは留守を頼む。それとルビーとシーナに、レイアが拠点宝珠で転移門を買いに来るかもしれないから買ってあげてくれと伝えてくれ」
「畏まりましたぁ!」
「では俺も一度部屋に戻って準備が出来次第、転移門部屋に行く」
俺は執務室から出て一度部屋に戻る。
戻ってから準備が出来たので転移門部屋に向かう。転移門部屋のドアを開けると既に王都に行くメンバーが揃っていた。
「お待ちしてました」
「…ふむ」
「ルーク様!」
「わたくしもお供いたします」
イーリス、スサノオ、プリン、ドラグの4人だ。イーリスは側近だからと。スサノオは護衛として来るらしい。プリンは一緒に行きたかったからで、ドラグは俺の執事だからだ。リル、セレス、ヴィーナ、ルーシーは4人でお茶会だそうだ。ルーシーはダラダラしてたいだけらしいが。トールは鍛冶、タナトスとレイアは研究で来ない。
プリンのお腹というより服の中がゴソゴソして
「ララもいるよー!」
「ララも行くのか?駄目って言ったら?」
「やっ!」
「分かったよ。だけどフリージアさんには言ったのか?」
「言ったよー!」
「ならいいが」
一応念話で確認してみたら『聞いてません!』と言っていた。おいっ!平気で嘘をつくなぁ…。まぁララも行くと言ったら聞かない。フリージアさんも、申し訳ありませんがお願いしますと言ってたし預かるか。
ちなみに念話の指輪ではなく、念話魔法だ。俺から繋げたから、フリージアさんも話せるが、フリージアさんは念話魔法を使えないので、フリージアさん側から俺に繋げる事は出来ない。
さてそろそろ王都に行くとしよう。と転移門を潜る。
転移門を潜るとヴィーナの部下が待っていた。
「お待ちしておりました。王よ」
「あぁすまないな」
「いえ。では外に誰かいないか確認しましたら合図します」
ヴィーナの部下は影に潜る。そして合図が来たから物置小屋から出る。ヴィーナの部下に感謝を言ってレナルドさんの店に行く。レナルドさんには前もって行くと伝えてあるから大丈夫だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺はレナルドさんの店に着いて中に入る。
「レナルドさーん?」
俺がそう叫ぶと、奥からレナルドさんが姿を見せる。
「ルークさん待ってましたよ!ささ、奥にどうぞ」
いつものように生活ルームに通される。
「今日はお店休みなのか?」
「いえ、今日はルークさんが来るので、お昼から営業しようかと思いましてね」
「それはすまないな」
「何を言ってるんですか!感謝したいのはこちらの方ですよ!」
レナルドさんは笑っている。前は誰が見ても落ち込んでいる暗い顔をしていたのに、今では満面の笑みだ。本当に良かった。
「そう思ってくれるならありがたいな。今日はここに来るついでに塩と砂糖を追加で持ってきた」
「それはありがとうございます!塩は特に無くなるのが早いですからね」
「やっぱ塩の方が売れてるのか」
「はい。ですが砂糖も売れてますよ!」
そうなのか。まぁ砂糖は高級で高い。なかなか手を出しにくいかもしれないが。
「さっお掛けください。お茶をお持ちしますね」
レナルドさんはそう言って、お茶を用意して俺達人数分を配る。もちろんララにもだ。
「プリンさんとララちゃんは前に会った事がありますね」
「はいなのです!」
「久しぶりー!」
「そちらのお二方は初めてですので自己紹介を。私は王都で商人をしているレナルドです」
「ご丁寧にありがとうございます。私は主様の側近、イーリスと申します」
「…我は主の護衛。…スサノオと申す」
「側近に護衛?やはりルークさんは貴族なのですか?」
まぁそういう反応になってしまうのは仕方ない。側近に護衛と言われれば貴族と思うだろう。まぁ流石に王族ではないだろうと思っていそうだが。
「いや貴族ではない。レナルドさんも薄々気付いてるかと思うが、普通の旅人ではない。ただそれ以上は教えられん。だが、そう遠くない日にその秘密を教えると思う」
「…なるほど。そういう事ですか。ではその日まで待つとしましょう」
本当にレナルドさんは話が早くて助かる。俺は出されたお茶を飲んで一息つく。
「そういえば前の報告では確か塩が70壺分で砂糖が40壺分ぐらい売れたんだったか。今ではどうなんだ?」
「はい。前は売り始めてからそこまで知名度が無かったのでそれぐらだったのですが」
いや、知名度があまり無くて塩70と砂糖40は凄いけど。
「今は少しずつ知名度が上がってきましてね、あれから今日まで塩壷が小もいれて約190壷、砂糖が小もいれて約120壷売れてますね!」
塩壷大が金貨2枚だから、金貨が約380枚、砂糖壷大が金貨10枚だから、金貨が約1200枚売れ上げたと言う事。
「やはり砂糖は買う者が少ないですが、砂糖を気に入って頂けた名のある貴族が纏めて買う事が多いんですよ。20壺分を一気に買ったりと」
「なるほどな」
まぁ有名な貴族はパーティーやら客人の招待やらで出すお菓子や、デザートなどに砂糖を使うのだろう。1回1回買いに来るのが面倒くさいんだろう。
塩と砂糖の売上は前の報告の分も合わせて金貨が約2120枚か。大金だ!塩と砂糖が1キロで、どちらも拠点宝珠で1000ポイントで買えるのに、ここまでのお金になる。俺は誰かを使って塩と砂糖を届けさす。塩と砂糖はレナルドさんが売ってくれる。何もせずに金が入る。…他力本願最高かよっ!不労所得最高!
…はっ!?俺は今人間としていけない思考になってしまったのではないか?いかんいかん。顔がニヤけそうだが抑える。
「どうしました?」
「…ん?んっんっ!何でもない…。それよりレナルドさん、売上を回収してもいいか?すぐに大金を使うかもしれん。本当は一月経ってから回収したかったんだがな」
「はい。もちろん大丈夫ですよ?道具屋の事ですか?」
「そうだ。今までの売上をだいたい計算すると金貨2120枚ぐらいか?その2割だから……金貨424枚がレナルドさんの取り分だ。レナルドさんも計算してくれ」
「はい」
流石商人だ。2割と言っても通じるし、計算も出来る。レナルドさんはやはり優秀だ。
「確かに金貨424枚であってますが…やはり貰いすぎではありませんか?」
「そうか?俺は商品を持ってくるだけだからな。何もしてない。だから3割でも良かったのだが」
「いやそれは流石に駄目です!」
「じゃ2割でいいだろ?」
「はぁ…分かりました。それで納得します。端数はどうしましょう?」
「この端数は店の為に使ってくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
頭を下げてくる。そんなに畏まらなくていいんだが。
「それはそうとレナルドさんの言ってた道具屋は何処にあるんだ?簡易的でもいいから地図がほしいのだが」
「分かりました」
レナルドさんは紙を取り出して、羽ペンで道を書く。紙は俺の国で使ってる紙より質は下だ。茶色だしザラザラだし絶対書き辛いだろうなぁ。たぶん羊皮紙だろうと考えていると
「出来ました。どうぞ」
「助かったよ。では俺はその道具屋に行ってくる」
「もう少しゆっくりしていっても大丈夫ですよ?」
「そうしたいんだが、この後も予定が詰まっててな」
「そうですか。それは残念です」
「また来る」
「お待ちしていますね」
俺達は店を出る。そしてレナルドさんが書いてくれた地図を頼りに道具屋を目指す。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私の名前はマリナ。王都ファルシオンの中央広場から東に進んで、そこから北に進んだ、入り組んだ場所にある道具屋の店主をしています。
立地が最悪なので客はほとんど来ません。ですがそれでもいいのです。物を売って人に感謝される。それだけで私は商人をしていて良かったと毎回思うのです。
昔から私は商人に憧れていました。私は子供の頃から感謝される事が好きで、感謝されて人の笑顔を見るのが大好きで、大人になれば人の役に立つ仕事がしたいと思っていました。
それで気になったのが商人です。食材でも薬でも買う時はみんな商人に感謝しているのです。もちろん何も言わない人もいるけど…それでも感謝する人がほとんどです。
だからそんな商人に私はなりたかったです。ですが私の家は裕福ではありませんでした。なので商人になる事は出来ません。仕入れをするお金もありませんからね。
私の魔法の適正は水だけしかありませんが、戦闘も苦手ですし、魔法もあまり使った事が無いため、冒険者には向きません。なので少し大きい商会で働く毎日です。私は商人には一生なれないと思ってました。
ですがそんなある日、1人の男と出逢いました。私の運命、そして人生を変えた人、それが私の夫です。最初は私の行きつけの食事処で出逢いました。彼もその店が好きだったのです。いつもいる顔ですのでお互いが顔を覚えてしまい、彼から声をかけてきて、そこからは意気投合したのです。
彼は冒険者でその時はBランクの冒険者でした。私達は何度も会って、次第にお互いが惹かれていき、お付き合いを始めたのです。もちろん彼の冒険者メンバーにも紹介されて祝福されました。
そして時は流れそのまま結婚をしました。結婚したとある日、彼はこう聞いてきました。『マリナのやりたい事はないのか?』と。彼はBランクの冒険者でそこそこ稼ぎはいいですが、それでも店を開くのにはお金が足らないでしょう。でも私は言ってしまったのです。『商人になって店を開きたい』と。でもすぐに謝り、今の言葉を忘れてほしいとお願いしました。
でも彼は『俺も頑張るからいつか2人で店を開こう』と言ってくれした。その時、私は泣いてしまいました。愛した人が彼で良かったと。それから2年、子供を授かりお金を貯めて店を開く事が出来ました。
店はそこまで大きくないですし、立地も悪いので仕入れは、本当に少ししか仕入れてません。それでも数少ないですが、お客様も来てくれて、感謝されて、そして良い旦那に恵まれて私は幸せでした。
更にその2年後に子供をもう1人授かり順風満帆でした。そう、その時までは…。
その幸せは一瞬で崩れ去りました。とある日、夫が冒険中に、急に倒れたといって夫の冒険者パーティの人達が私達の家まで運んで来ました。
病気など1回も掛かった事が無い夫が急に倒れるなんて信じられません。ですが運ばれてきた夫は苦しそうで私は見ていられませんでしたが、出来る限り側にいました。冒険者の1人が毒かもしれないから、薬師の人を呼んだほうが良いと言ってきたのですぐに呼びました。
夫はどうやら毒に侵されていて、しかもかなりの劇毒で、高価な素材がないと薬を作れないと言われました。私達にはそんなお金ありません。なのでどうする事も出来ませんでした。そして私はただただ神に祈る事しか出来ず、3日後、夫は『子供達を頼んだぞ』。その言葉を最後に息を引き取りました。
私は絶望しました。私は後悔しました。私は神を恨みました。そして何も出来なかった私を許してほしいと、無力な自分を呪いました。夫がいない生活なんて考えられません。ですが私には休んでる暇なんてありません。2人の子供の世話をしなければなりません。お店は少し休む事にして、夫から最後に託された言葉を、この子達を守りながら育てていく事を決意しました。
それから3年後の現在、育児は少し落ち着いてきたので、店を開けてまだ売れそうな物は売って、仕入れは出来るだけ売れない物は仕入れない事にして、少しでも利益をあげようとしています。夫の冒険者パーティの方々が、色々買いに来たりと何とかやっていけてたのですが、やはりそれにも限界があります。
夫が少しずつ貯めていた貯金もあったので、3年持つ事も出来ましたが、これ以上店を開くと本当にお金が底をついて、仕入れも出来なくなってしまいます。なので店を閉じて、この店を売り、少しでも安い場所に住むほうが良いのではないかと考えています。
でもこの店は夫が少しずつお金を貯めてようやく開く事の出来た思い出の店。なのでまだ踏ん切りがつかなく迷っています。本当にこの店を手放して良いのか。あぁ、私は一体どうすれば良いのでしょうか?私がそう考えているとお店のドアが開く。いけません。お客様の前でこの様な顔をしては。私は気持ちを押し殺し、今できる最高の作り笑顔でお客様を迎える。
「いらっしゃいませぇ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「んー…ここら辺だと思うんだけどなぁ?」
俺はレナルドさんが書いてくれた地図を見ながら首を傾げる。地図にはマリナの道具屋と書かれている。誰かに聞いてみるかぁ、と思って人を探す。すると男の少年が3人と、少女1人が言い合い?をしている。
「やーい!お前の店は今日も誰もいないのか!」
「商人じゃなくてただの暇人ー!」
「悔しかったら儲けてみろー!」
「うるさーい!もう怒ったわよー!」
「逃げろー!」
少女は怒ると3人の少年達は逃げていく。この世界にも暇人と言う言葉があるんだ。少し失礼かもだが、あの少女に道具屋を聞いてみるか。
「全く!」
「そこのお嬢ちゃん。大丈夫か?」
「いつもの事よ。それよりあんた誰?…ひっ!」
少し怒りながら言葉を返してくる。怖いなこの嬢ちゃん。だが振り返って俺の方を見て、スサノオが目に映り、少し怖がっている。まぁ背が高くて黒い大鎧の般若の仮面だから怖がられるのは分かっていた。
「俺はルークと言う。怖がらせてすまない。後ろの者は俺の仲間だから何もしないよ。少し道を訪ねたくてな」
「み、道?ま、まぁそれぐらいならいいわよ」
「ここの近くに道具屋があると思うんだが知らないか?」
俺がそう聞くと、そのお嬢ちゃんは目をキラキラと輝かせて
「その道具屋のお客様ですか!?」
「ま、まぁそうだな」
「なら案内します!すぐそこですよ!」
急に態度が良くなった。どうしたんだ?まぁいいかとついていく。その店は結構入り組んだ場所にあった。看板があり、マリナの道具屋と書かれている。ここがレナルドさんの言ってた場所だ。
「ここですよー!」
「案内ありがとう」
するとお嬢ちゃんがドアを開けて入っていく。
「いらっしゃいませぇ」
「ママー!お客さん連れてきたよー!」
ママだと?あの嬢ちゃん、この道具屋の娘だったのか。
「こらリリナ!無理やり連れてきたんじゃないわよね?」
「違うもーん!」
「すいません。俺が案内してほしいと頼んだんですよ」
「そうなのですか!それは勘違いをしてしまい…まし…た…」
やはりスサノオを見て驚いている。この店主?は金髪で髪型はショートボブ。笑顔が可愛い。体付きは胸も大きくお尻も大きいのに痩せている。一言で言うならグラマラスな体型をしている。男を引き付ける体付き。これはかなりモテそうだ。これでお母さんだなんて全然見えない。
ちなみにリリナは金髪ロングのストレートでかなり可愛い。この店主?の娘さんだからなぁー。でも少しお客ではない人には生意気だ。
「あー…後ろの大きい人は俺の仲間ですので気にしないでください」
「は、はい。今日は何を買いに来たのでしょうか?」
「すまない。今日は買いに来たんじゃなくてお話をしたくてきたんですよ」
「えー客じゃないのー?」
いや口調!客じゃないとすぐ礼儀を忘れるなこのお嬢ちゃんは…。
「リリナは黙ってなさい。…それで話とは私にでしょうか?」
「恐らく。マリナの道具屋の店主さんと話したいのです」
「はい。マリナとは私の事です」
「そうですか。俺はルークと言います。レナルドさんという方に紹介されてここに来たのですよ。知っていますか?」
「そうなんですか!?まだ私の事を覚えていたなんて」
するとここで俺のフェアリーローブのフードがゴソゴソする。ここで起きるのか好奇心天使。するとひょこっと顔を出す。
「おはよー…」
「おはようララ」
「ここどこー?」
「ここはマリナの道具屋というお店だよ」
フードから顔を出した者にマリナとその娘、リリナが大きな目を見開いて驚いている。まぁこう見えて幸運の象徴だ。招き猫より福があると思うぞ?
「ママみて!妖精さんだよ!」
「まぁ…!初めて見ました!」
「ララっていうのー!」
「ララ。リリナと遊んでくるか?」
こう言うのはアレだが、ララがいると話進まなそうだし。
「いいの!?」
「遊ぶ?」
「うん!」
「いいよー!」
「マリナさん、妖精は珍しいので出来れば外ではなく、家の中での方がいいのですが大丈夫でしょうか?」
「はい。大事な話ですのでマリナは奥で遊んできなさい?」
すいません。勝手に遊ぶと決めてしまって。
「プリンも一緒についてあげてくれるか?」
「はいなのです!」
「じゃあいこー!」
「いこー!」
リリナ、プリン、ララは店の奥に行く。ドラグも一緒に向かわせようと思ったが、やっぱりやめた。さてゆっくり話しますか。
「すいません。話を中断させてしまって」
「えぇ大丈夫ですよ。私も妖精を見れて凄く嬉しかったです」
商人なら一度は見てみたい種族No1だ。マリナさんにも幸福が訪れるのを神に祈っておくか。…いやあの神は少し抜けてそうだから、フリージアさんにでも祈っておく。
「そう言って頂けて助かります。マリナさんはレナルドさんとお知り合いなんですか?」
「はい。私も昔、レナルドさんの店に通っていましたから。そこでよく商人についてお話しましたよ。今は塩と砂糖を売られているとか」
「そうですね。もしよければですが、マリナさんが商人を始めた経緯や、何故この立地で商売を始めたのか聞かせてほしいのですが」
「それは……そうですね。少し長くなりますが大丈夫ですか?」
「はい」
「私が商売を始めたきっかけは…」
マリナさんが話し出す。子供の頃から感謝されるのが好きで商人がしたかった事。お金が無くて商人になれなかった事。そのあと、夫と出逢い結婚した事。子供が出来た事。夫が毒で死んだ事。そしていま経営が危なく店を売るか迷ってる事。
「…と言う事です」
「それは…大変でしたね。辛い事を思い出させてしまいました。すいません」
「気にしないでください。もう過ぎた事ですし…。今は仕入れするお金さえもありません。お金が底をつきかけています。どちらかというと、こちらの問題の方でいまは精一杯です」
「そうですか」
「…私の方こそ申し訳ありません。レナルドさんの知り合いだからと、さっき会ったばかりの人に関係ない話をしてしまって。商人をはじめたきっかけだけを話せばいいのに、今の店の状況を話しても迷惑なだけですよね」
笑っているマリナさんの笑顔はどこか悲しい笑顔であった。マリナさん…。さっき会ったばかりの俺にまでそこまで話すという事は、それほど追い詰められているのか…。とここで店のドアが開く。
「いらっしゃいませぇ。あっログルさん。今日もありがとうございます」
ログルと言われた男が入ってくる。ログルという男は冒険者っぽい格好をしている。
「あぁ。いいさ。いつもの普通の下級ポーションを3つくれ」
「はい。銅貨6枚です」
「これで頼む。…ん?今日は店に人がいるのか」
「えぇ、昔の商人仲間の知り合いでして商売などの話をしていました」
「…そうか。邪魔しちゃ悪いからまた来るよ!」
「はい。またお越しください」
ログルという男は出ていく。
「今の男は?」
「あぁ、あの人は夫と一緒に組んでた冒険者パーティの1人なんですよ。あの方は毎日来てくれて助かってるのです」
ほう、毎日か。やはり同じ冒険者パーティとして助けたいのか?なんにせよ良い奴ではないか?
「それと気になったのですが、普通の下級ポーションの相場は銅貨3枚じゃないのですか?」
「それは…こんな分かりにくて、迷宮から遠い場所まで買いに来てるのです。なので感謝して銅貨2枚で売ってます」
なるほど。迷宮から遠い場所なら近い道具屋に行く。だからこの店まで来てくれた事に少しでも感謝して、銅貨2枚か?実際2枚にしたらこっちの方が安いと思って来るかもしれないし、考えがあっての事だろう。この人も本物の商売人だ。
レナルドさんから紹介されたから、まぁ疑ってはいないが、自分の目でも確かめたかった。だが俺は道具屋を任せるのなら、このマリナさんが良いと思ったので勧誘する事にする。決して可愛いからではない!
どういう返答が返ってくるか少しドキドキだが、どうしてもマリナさんが欲しいから頑張るか。俺の人心掌握術を見せちゃうよぉ!
俺はマリナさんに提案する。
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