忠誠と契約魔法
「ふむ。数が多いな。ここは一気に殲滅したいところじゃが、炎嵐などすれば敵は跡形も無くなってしまう。敵は素材になったりするから残したいのう。……ふむ。これじゃな」
レイアが持つ【多重複合魔法】で作られる魔法と言うのは階級がない。それは何故かと言うと、複合だけで威力が数倍に上がったり、とんでもない効果になったりと階級をつけるのが難しいのだ。複合魔法はどれも強力で特級並の威力、性能がある。
だが【多重複合魔法】の恐ろしいところは魔法の威力や攻撃範囲ではない。このスキルの恐ろしいところは新しい魔法を作成出来るところだ。
レイアが知らない魔法でも、その魔法を一目見れば理解し使える【魔法の神】と組み合わせればまさに無限の可能性を秘めているのだ。
レイアはゆっくりと中に浮く。敵のど真ん中の上に移動すると
「さぁいくぞ。雷、光複合魔法!百発百中の光矢!」
百発百中の光矢。これはまず雷魔法で自分の脳の処理能力、身体能力を向上させる。さらに微弱な電気を流し、敵の位置を全て把握し、狙いたい場所を決める。今回レイアが選んだ場所はすべての魔物の頭だ。
そしてすべての頭にロックオンをして、風よりも早い光の矢で、常人では何をしたか分からない素速い動作で、弓を引き放つ。という魔法なのだが、実際俺には何が起こったのか理解できてない。
俺が理解出来たのはレイアが百発百中の光矢と叫んだ次の瞬間、全ての魔物は倒れたり、膝から崩れ落ちたりする。ただ一瞬だけ俺の視界が真っ白になった事は覚えている。ほんの一瞬、真っ白になり次の瞬間には全ての魔物が倒れさる光景。レイアが百発百中の光矢と叫んで魔物が倒れるまで1秒すら経ってないだろう。
俺はレイアの産みの親だ。だからどんな魔法かも知っていた。だが説明と実際見るのは全然違う。俺は一瞬何が起こったのか理解が出来ない…いや理解が追いつかなかった。唖然としていた。俺が我に返ったきっかけは、俺以外に見てた仲間達の声だ。
「流石ですね。レイアは」
「ん。凄く早い動き。私じゃなきゃ見逃しちゃう…かも?」
「…我らでも見切るのは難しいだろうな」
「そうですね。あの速さは中々に骨が折れるでしょうね」
みんながが頷いてる。そこで俺は我に返り理解が追いついた。一瞬すぎて何をしたか分からなかったが、その一瞬で百発百中の光矢をレイアは撃ったんだと。
というか、今の会話は色々おかしいだろ。百発百中なのに見切るのは難しいとか、なんか避ける前提で話してないか?しかもそれを皆が否定をしない。俺はその会話には入れねぇよ。と思っているとレイアが降りてくる。
「何を言っている。お主らであれば簡単に対処してくるくせに減らず口を」
「あの速さだから、見切って対処するのは難しいですよ?」
「ん。多少は苦戦する」
「…我らでなければ確実に死ぬ」
「そうですよ。対処はできますが、難しいことですよ?わたくしはあの魔法は苦手ですね」
「それが減らず口と言っているのじゃ!百発百中なのに平然と対処しおって!名前が矛盾しているのじゃ!」
「まぁ実際、光の矢の軌道を反らしたりするのですから命中はしてると思うよ?」
「屁理屈じゃ!妾が狙いを定めた箇所に当たらなければ百発百中とは言えん!」
「まぁまぁ。わたくしらには百発百中とはいかないかもしれませんが、格下の魔物であれば、百発百中なのですから良いではないですか。そうでございますよね?ご主人様」
ここで俺に振ってくるかドラグ!俺なんか動くことすら出来ないぞ?そんな奴の意見を仰ぐんじゃないと言いたい。がまぁ振られた以上は答えるしかない。
「そ、そうだな。凄かったぞ?レイア」
「あれぐらい当然なのじゃ」
レイアは無い胸を張る。ここで俺が、俺も見切れるけどなぁ!などと王として強がりたいが、ここで強がっても惨めなだけだ。威厳が何だ!そんな物は魔物にでも食わしておけ!
「もし俺に撃ったとしたら俺は動くことさえ出来ないからな」
アハハと俺は笑う。俺の言葉の裏の意味は、その気になれば俺という存在を守護王達は簡単に殺せてしまうという事だ。それをレイアは察したのか
「何を言うておるのじゃ?妾と同じ力量を持っているから言うてはおるが、主は特別じゃ。主は妾の主であり親でもある。そんな主に攻撃などするものか。あと妾は自分に契約魔法をかけている」
「契約魔法?」
えっ?自分に契約魔法?大丈夫なのか?レイアちゃんまさかマゾなのか?
「そうじゃ。妾の主に攻撃意思があったとしても攻撃出来ない魔法じゃ。例えば、もし妾が誰かに洗脳されて操られても、主だけには攻撃出来ないよう、強力な契約魔法を掛けているのじゃ」
前言撤回。10秒前の心の汚い俺をぶん殴ってやりたい。
「レイア…お前そこまで…」
「か、勘違いするでないぞ?別に主の為に自分に魔法を掛けたのではなく、妾の忠誠を永劫不変のものとする為に妾自身に掛けたのじゃ。洗脳されても主だけは傷つけないとな。それが妾の守護王のありか……」
「レイアー!」
レイアが話してる最中にも関わらず抱きしめてしまった。いや抱きしめられずにはいられなかった。俺の為にそこまで…。ツンデレで一途なレイアちゃんほんとサイコー!
「な、何をするのじゃー!離すのじゃ!」
「レイアありがとうな?俺の為にそこまで」
「だ、だから主の為ではないと言うておろう…」
最後はなんて言ったか聞こえてはなかったが、まぁ何となくだが言いたい事は分かる。周りの皆も微笑ましそうに俺達を見てる。
「それでもありがとうな。レイア、おまえの忠誠は俺がしっかりと受け取った!」
「そ、そうか。ならいいんじゃが…」
恥ずかしそうにしているが可愛い。可愛くていつも傲慢だが、こうやって俺の事を思ってやってる事があるから可愛いんだよ。こんな可愛い子にここまでされたら可愛がっちゃうよなぁ!いやまぁ性格は俺が設定したんだが、この性格というかこの設定にした俺を褒めてやりたい!
「レイア、その契約魔法とやら私にも掛けれますか?」
「イーリス、奇遇ですね。わたくしも丁度それを聞こうとしてたのですよ」
「…うむ。…我にも掛けてほしい」
「ん。私も」
「掛けれるのは掛けれるが…」
お前達…!一切迷う事なくそんな事を言うなんて…。俺恥ずかしすぎて悶え死ぬよ?
「お前達…本当にいいのか?」
「主様!そんな魔法があるなら私も掛けてもらいたいです!」
「わたくしも、もしそんな契約魔法が使えるなら自分自身に掛けてますよ」
「…我もだな」
「ん。私も」
「お前達…。わかった。俺はもう何もいうまい」
イーリスや守護王達がここまで言うのだ。引き止めるのは無粋だな。というか涙が出そうだよ。全く。
「ではレイア、掛けてもらえる?」
「…今ここでか?」
「後になると忘れるかもしれません。この場でわたくしもお願いします」
「いやー…ここではその…何と言うか…」
「…ん?…ここでは出来ない条件でもあるのか?」
「魔法にデメリットある?」
レイアがやけに拒んでいる。…というか拒みながらこちらをチラチラ見ている?ん?なんだ?俺の許可が必要だと言うならいいのだぞー?
「いや何処でも出来るしデメリットもないのじゃが…ここではその…やりたくないと言うか…」
「後でやると忘れてしまう恐れがあるでしょう?」
「それともレイアだけが契約魔法を掛けてるから、イーリスや守護王達の中で一番忠誠心があると言いたいのですか?」
「独り占め?」
うーむ。守護王達の空気が怪しくなってきたぞ。喧嘩しそうなら止めるか。
「ち、違うのじゃ!そうじゃないのじゃ!お主らが妾と同じ契約魔法を掛けるというなら否やは無いのじゃ!」
「…なら、今ここで掛ければ良いだろう?」
「ぐぬぬ…わ、分かったのじゃ!掛けるのじゃ!ただし条件があるのじゃ」
「何ですか?」
イーリスは聞く。まぁイーリスや守護王達の話し合いなので、俺は聞きながら見守るだけだ。俺は話が終わるのを待っていたら急にレイアがこちらに顔を向けて
「主が耳を塞いでいる事が条件じゃ」
「えっ?」
いや…えっ?なぜ俺が耳を塞がなければならないんだ?いやまぁそれが条件ならやるんだが……必要か?
「はっ?なぜ急にご主人様が出てくるですか?」
「そうですよ。主様は関係ないのじゃないの?」
「これが呑めないならもう掛けんのじゃ。どうするんじゃ?」
イーリスと守護王達は顔を見合わせてこちらに顔を向ける。
「主様。少しの間だけでいいので耳を塞いでくれないでしょうか?」
「わたくしも、どうしても契約魔法をを掛けて忠誠を誓いたいのです」
「…我からもお願いする」
「私からも」
「えぇ!?いやー…それぐらい別にいいけど…何で塞がないといけないんだ?」
そう。別にいいんだ。耳を塞ぐぐらい。だが理由だけでも教えてくれんかのぉ?レイアちゃん。
「いいから塞いでいるのじゃ!もし妾が詠唱途中に耳を塞ぐのをやめたら呪うから覚悟しておくのじゃ!」
「あっはい」
教えてくれないのなら契約魔法を掛けてる最中にこっそり聞いてやろうと思っていたが、もし聞いたら呪うと言われてしまった。耳を塞ぐ理由を探るどころからフルカウンターで呪われる宣言された俺。
何で俺がここまで攻められるのか分からんが、今のレイアは本気だったな。魔法的に呪うのではなく、個人的に呪われるという事だろう。リスクを犯してレイアに嫌われるのはもちろん嫌だ。怖いからちゃんと耳を塞いでおこ。と俺は耳を塞ぐ。
「これで掛けれますね?」
「う、うむ。お主らに言っておくが、これは妾が開発した魔法じゃ。だから名前も妾が決めた」
「それがどうかいたしましたか?」
「だから他言無用で頼む。特に主には」
「…?…他言無用は分かるが、特に主に話してはいけないというのが分からないが…それが条件なら呑もう」
「ん。私も」
イーリスとドラグも頷く。
「この契約魔法は相手の同意もいるから質問もする。ではいくぞ。…汝らは主に死する時まで心から忠誠を誓うか?」
レイアは自身の魔力を放出しながら詠唱をする。
「誓います」
「わたくしも誓います」
「…誓う」
「ん」
「であれば如何なる時も、主に牙を向く事は出来ない契約を結ぶ。この契約を結めば、汝らは永劫不変の忠誠を主に捧げる事は出来るが、解除はできない。それでも良いか?」
「はい」
「問題ありません」
「…承知」
「ん」
イーリスや守護王達は迷いもなく即答で返事をしてみせた。
「汝らの気持ちしかと受け止めた。では契約する。契約魔法〈主への想い〉。……終わったぞ」
レイアはそう言うのだが、その顔はルークが見れば熱でもあるのか?今の契約魔法はそこまで体に負担が掛かるものなのか?と疑ってしまうほどレイアの顔は真っ赤である。
「ありがとう。でも…ぷぷっ」
「笑ってはいけませんよ。イーリス」
「…そういうドラグもニヤニヤしているぞ」
「おや失礼。ですがこの場でやりたくないのも、ご主人様の耳を塞ぐのも納得ですね」
「レイア可愛い」
だが顔が真っ赤である原因は熱でもなく体に負担が掛かるわけでもなく、ただただ恥ずかしいからである。
「だからやりたくなかったのじゃ!妾が開発した魔法じゃから名付けももちろん妾。この魔法はお主らに使う予定はなかったのじゃ」
この時、俺はもちろん耳を塞いでいたので何を言ってるか分からないが、レイアは顔を赤らめてイーリスや守護王達が笑っている。もう終わったのか?とレイアから合図があったので耳を塞ぐのをやめる。
「終わったのか?」
「ま、まぁな」
「どうした顔が真っ赤だぞ?契約魔法はかなり力を使ったのか?」
「そ、そうじゃないが心配しなくても大丈夫じゃ!」
「そうか?ならいいんだが。さて契約魔法も終わったから死体を全てアイテムボックスに入れてから宝箱を確認。そうしたら地下10階層に降りるぞ」
俺がそう言って皆が頷く。宝箱は何が入ってるのか分からないが、ちょっとワクワクするな。俺は全ての死体をアイテムボックスに入れて中央に出た宝箱に向かうのであった。
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