先を見据えて
俺は今レナルドさんと、もしポーションを売るならどういう売り方をするかで話し合っていた。とりあえず限定品として売り出す事は決めたのだが
『次に売る場所だな』
『私の店に置くのですか?』
『うーむ…。レナルドさんの店に置こうと考えたのだが、それはやめておこうかなと』
『理由をお聞きしても?』
『まず1つ目にポーションというのは置く場所に困るんだよな。限定品として売るにしても数百個は売ることになるだろうな。それも下級ポーションと魔力ポーションだ』
『魔力ポーションの最高品質も売るのですか!?』
『俺はそう考えてる』
『なるほど。そうなると確かに置き場所がかなり取られますね。それに数百個となれば大樽か何かに入れないといけなくなりますよね。私の倉庫はそこまで大きくないですし、塩と砂糖の大樽でいっぱいですからね』
『まぁそれがレナルドさんの店に置くのをやめた理由の1つだな』
ポーション数百個単位や、塩など数百キロ単位だとやっぱり大樽になってしまう。店といっても、レナルドさんの店そこまで大きくないから、塩や砂糖とポーションだけで倉庫を圧迫したくないんだよ。
それに倉庫を圧迫するのが嫌なら大樽ではなく、全てポーションの小瓶に入れれば良いのではないかと思うが、例えば300本売るなら、300本置ける場所を確保しなければならない。無くなったら誰かが届けに行けばいいと思うが、毎回誰かに頼むのも面倒だ。
『次にレナルドさんの店に置く事をやめた理由が、レナルドさんの店は出来るだけ貴族に向けて売り出したい店なんだよな。今は塩や砂糖だけだが、商品も追加する予定だ』
『客層を貴族に絞りたいと』
『客層を全て貴族にしたいとは思わんがな。もちろん狙い目は貴族だが、一般市民や冒険者も少し背伸びして買いに来る事だってある。だから貴族向けではあるが一般市民や冒険者も全然来てもいいんだがな。それに狙い目は貴族なのにポーションを置く意味があまりない』
『なるほど。つまりポーションを置いたところで貴族は買わないと』
『そういう事だな』
高級な塩と砂糖を売っているんだ。来るのは主に貴族だ。貴族がポーションを買うなんて滅多にないはずだ。何かあった時の為に買う貴族もいるかもしれないが、毎日のようには買わないだろう。買うのは主に冒険者だ。だったらレナルドさんの店に置くより冒険者向けの店を出した方が儲かるだろう。
『そしてレナルドさんの店に置かない理由の3つ目だが、主に俺が持ってくる物を売ってほしいんだよ』
『それは分かるのですが、どういう意味なのでしょうか?』
『要はまだ見せてない高級品があるという事だ』
『塩と砂糖以外にも?』
『あぁ。まだ見せてないがな』
『それはどんな物ですか?』
『それはまだお楽しみだ』
そう言って俺ははぐらかす。まぁ拠点宝珠に売られている物なんだが。明らかにこの世界では高級品だろう。
『ふふ。それは楽しみにしていますよ。ルークさんといると飽きる事が無いですよ』
『それはありがとう。まぁこう言った理由でレナルドさんの店にはポーションを置くのをやめた』
『なるほど。では話を戻しますが、私の店に置かないとなると新しく店を出すのですか?』
『それもありなんだが、レナルドさんみたいに店を任せる人がいないんだよな』
どうせ任せるなら道具屋に適任の人が良い。セレスはどちらかと言うと道具屋より植物の店のほうが似合いそうだ。
『それに雇うとしても本当に信用できる人がいい。そうだな。レナルドさんみたいに商人一筋の人がいいな』
『なるほど。商人一筋の人ですか…』
『別に雇わなくてもいい。レナルドさんみたいに商売をしたいが出来ない、もしくは店が繁盛してないところで商人一筋の店って何処か心当たりあるか?』
『商売がしたくても出来ない、もしくは繁盛してない店ですか…。1つだけ心当たりがあります』
『本当か!?』
『はい。王都ファルシオンの中央通りを東に進んで、そこから北に進み、奥の入り組んだ所に道具屋があります。今言った通り、立地は最悪で繁盛してません』
今聞いた話では恐らく王都ファルシオンの北西の奥にあるらしい。そりゃ繁盛しないだろう。冒険者ギルドからかなり遠い。わざわざそんな遠い所に買いに行くより近い方に買いに行く。店を出すならやはり冒険者ギルドの近くがいい。
『確かにそれは繁盛してなさそうだな。店主はどんな人か分かるか?』
『何度かお会いした事がありますが、誠実な方だと思います』
『なるほど。誠実な方か。迷宮から戻ったら一度会いに行ってくるよ』
まぁレナルドさんがそう言うのだから間違いないだろう。
『分かりました』
『あとは店の名前を決めたいかな?』
『店の名前ですか?』
『あぁ。トワイライト商会の店だけなら何屋さんかわからんだろ?』
『確かに。私の店はともかく、今後道具屋以外にも店を出すなら、トワイライト商会だけじゃちょっと分かりにくいですね』
『だよな。店の名前は登録できるのかな?』
『はい。登録できますよ。あと、シンボルと言うのも登録できます。まぁ私も詳しくは知りませんが』
『そうなのか?』
レナルドさんは知らないのか。商人なら知ってそうなんだけど。
『はい。そもそも多数の支店を持つ商会や大商会のほとんどの店は名前は決めません。何故かと言いますと、大商会と言えども、そこまで手広く商売をしてないからです』
『ん?どういう事だ?』
『ミルハイムさんの店は貴婦人の服など扱う店です。それにこの王都以外の他の街にも支店があるのです。支店は多いですが、どの店も服屋ですから店の名前をつけなくてもミルハイム大商会なら服屋とみんな理解してるのです』
なるほど。つまりほとんどの大商会は各街に支店があり、そこで同じ系統の店を出していると言う事だ。俺のようにレナルドさんのなんでも屋、道具屋さんみたいに色んな店を扱う事は珍しいのだ。
だから店の名前を決めなくても、服を買いたいならミルハイム商会、道具を買いたいなら○○商会みたいな、商会で判断してる客が多いらしい。
『そういう事か。なら俺の場合、名前を決めた方が尚更分かりやすいという事か』
『そうですね』
『なら、迷宮から帰ったら道具屋に行って商人ギルドに行くか。もしその道具屋さんの人が手伝ってくれるならだけどな』
『そうですね。上手く話が進むよう私も祈っておきましょう』
祈るだけかい!まぁレナルドさんも今は塩と砂糖で手一杯だから、気持ちだけ受け取っておこう。
『ありがとう。まぁ話はこんなところかな?』
『ですね』
『また報告してくれると助かる。塩と砂糖が無くなりそうになったら言ってくれ』
『分かりました。ではまた連絡します』
そしてレナルドさんと念話を切る。うむ。有意義な時間だった。迷宮を出たらやる事が増えたけどまぁいいだろう。
迷宮は最低でも10階までは進みたいがとりあえず進める所まで進もう。と俺達は迷宮を進む。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺達はあれから迷宮を攻略して今は迷宮の地下8階の石碑の近くにいる。
迷宮地下8階も草原エリアで特に変わったところはない。強いて言えば出てくる魔物ぐらいか?
鶏よりも3倍は大きいビックバードや、夜にしか活動しないエミューのような鳥、ナイトバード。二足歩行の犬、コボルトもいる。
俺達は石碑の近くで雑談している。
「そろそろ一度セレス達と合流するか」
「そうですね。迷宮に入って2週間以上は経っていますからね」
「…我も問題ない」
「そうじゃな。色々報告する事はお互いありそうじゃしな」
「ん。賛成」
「わたくしも問題ありません。久しぶりに顔を見たいですからね」
「そうか。じゃあ連絡してみるか」
俺はセレスに念話を飛ばす。
『セレス聞こえるか?』
『どうしましたか?』
『今地下何階にいるんだ?』
『今は地下7階に到着したところですよ?』
セレス達も色々見て回ると言っていたがそれなりに進んでいる。
『そうなのか。一度合流したいと思っているんだが無理そうなら…』
『すぐ行きますね!今何階にいるの!?』
かなり食い気味に言ってきた。まぁ2週間以上も会ってないんだ。寂しかったんだろう。
『今は地下8階の石碑の近くだ』
『分かりました!すぐ皆を説得して向かいますからねっ!』
一方的に念話を切られる。
「どうでしたか?」
「ん?あぁ。よっぽど会いたかったのか、すぐに来るって言っていたぞ?」
「まぁ致し方ありませんね」
「そうじゃな」
「…我らでも1階を突破するとなるとそれなりに時間はかかる。…1日はかからんが待つとしよう」
「ん。待つ」
俺達は石碑の近くで待つことにする。遠目から見てもまだ冒険者はちらほらいる。俺達以外に誰かいると少し安心する。
色んな冒険者を見てるがやはり4人パーティーが多いみたいだ。まぁ6人だと少し稼ぐ量を増やさないといけないから、6人はあまりいない。逆に稼ぎが多くなれば3、4人から6人パーティーにする者達が増える。
人数が増えれば単純に戦力が増すし、難易度の高いクエストも達成しやすくなる。難易度の高いクエストは報酬だけで6人パーティー全員が満足できるぐらいの報酬は手に入るし。
今はまだ朝なのだが、今日1日はここで待機だ。ほんと女神様はなんでこんなだだっ広いフロアにしたんだ?暇なんだよ。いや俺と言うよりも仲間が強すぎるから暇なんだろう。普通の冒険者ならこれぐらいが丁度いいのかもしれない。
ちなみにトワイライト王国の状況は毎日報告を聞いている。あと、エールの話も毎日寝る前だが聞いている。そうしないと落ち込むからなエール。
トワイライト王国は至って平和だ。アルマも仕事になれてきたのか、もう教える事はほとんど無いとルビーとシーナからエールを経由して聞いている。
今日もいつも通りのんびりした1日になりそうだなと、本を読んだりして暇な時間を潰す。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




