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周りのあれこれと盗賊


「…ん」


俺はゆっくり目を覚ます。レイアは俺の左腕をガッチリホールドしている。体を起こしてしまうとレイアも起きてしまう恐れがある。


どうするかなと考えたけど、取り敢えず起きるまで頭を撫でておこう。そもそもレイアがこういう事をするのは珍しいのでもう少し堪能する。べ、別に変な意味じゃないからな!


頭を撫でたりするが、すぐ飽きて頬を突いたりする。起きてるレイアならこういう事はやらしてくれないだろうなぁーと考えているとレイアは目を覚ます。俺も体を少し横に向けているのでレイアと目が合う。それもかなり近い。


「おはようレイア」


俺がそう言うがレイアは固まっている。俺とこんなに顔が近いのと、自分が俺の右腕をガッチリホールドしている事を理解してどんどん顔が真っ赤になっていく。そしてどこに顔を隠していいか分からなかったので俺の胸に顔を埋める。


「わ、忘れてくれなのじゃ…。誰にも言わないでほしいのじゃ…」


「大丈夫。誰にも言わないよ」


あぁ俺は誰にも言わない。だが忘れる気はないがなっ!こんなレアなレイアを忘れるわけがない!レイアは少しの間、俺の胸に顔を埋めてもう大丈夫なのか顔を離す。そして


「お、おはようなのじゃ…」


「おはよう」


相変わらず恥ずかしがって顔はこっちを向いてないが、ちゃんとおはようは言ってくれたので頭を撫でてやる。やっぱレイアも可愛いなぁと思いながらずっと撫でてると


「んーもぉー!いつまで撫でてるのじゃ!もう起きるのじゃー!」


怒って起きてしまった。レイアはずっと撫でられると恥ずかしがって怒るようだ。全くツンデレなんだから。


その後、イーリスとルーシーが起きてくる。ルーシーは起きると直ぐに俺の側にやってきて俺を見つめてくる。これは撫でてくれと言うサインだ。俺は撫でながら


「おはようルーシー」


「ん。おはよ」


「イーリスもおはよう」


「おはようございます!主様!」


俺は朝の挨拶をする。寝る時は順番だが起きてる時は皆平等だ。イーリスも撫でてあげる。これがいつもの日課になっている。さぁ今日も暇な時間を過ごしますか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


朝食、昼食を食べてのんびりしていると


『ルークさん聞こえますか?レナルドです!』


レナルドさんから念話が飛んでくる。一体どうしたんだろう?


『レナルドさん聞こえてるよ?どうしたんだ?』


『以前ルークさんが言っていた大樽を2つ買ったのですがどうしたらいいでしょうか?』


『用意できたか。では今日の夜に俺の代わりに取りに行かせるよ。俺の代わりに来ましたと言うと思うので、そう言ったら俺の代わりだと判断してくれて構わない。それ以外は俺ではないかもしれないので注意してくれ。まぁそんな事ないと思うが』


『分かりました』


『ではまた何かあれば連絡してくれ』


念話を切る。さて次にヴィーナに念話を飛ばす。


『ヴィーナ聞こえるか?』


『何でありんすかぇ?』


『トワイライト王国に来る時、何人か配下を連れてきただろ?その1人を使って頼みたい事があるんだ』


『そのぐらいお安いご用でありんす』


『助かる。いまレナルドさんの店に空の大樽が2つあるんだが、それを回収してトワイライト王国に持っていってくれ。その次にルビーかシーナに頼んで、その大樽に砂糖100キロと塩100キロずつ入れて、それをまたレナルドさんの店に持っていってくれ』


『それでしたらボックススライムを持っていったら楽そうでありんす』


ボックススライム。プリンの配下のスライムには色々な種類がいるのだが、その中の1体がボックススライムだ。


ボックススライムの戦闘能力は、ほぼ皆無と言っていいだろう。それ程非力なスライムなのだが、その代わりこのボックススライムは特殊なスキルを持っている。


名前の通りボックス、アイテムボックス持ちのスライムなのだ。プリンには劣るが異次元空間を持っており、それなりにアイテムを入れる事ができる。魔法アイテムにアイテムバックという物があるのだが、アイテムバックは、アイテムバック以上の物を入れる事が出来ないのだ。その点、ボックススライムは大きいアイテムでも体を大きくして、伸ばしアイテム包み込み収納してしまう。


正直いまの俺やプリンのパーティには必要ないのだが、こういう時は便利なんだよ。


『そうだな。大樽を回収する前にボックススライムを連れていってくれ。あと、レナルドさんの店に入る前は俺の代わりに来たと言ってくれ』


『了解でありんすぇ。すぐに伝えんす』


念話を切る。取り敢えずこれだけ砂糖と塩があれば当分は大丈夫だろう。さて連絡も終わったのでゆっくりするかと思ったら、次はエールから連絡がきた。忙しい。


『ルーク様ぁ!聞こえますでしょうか?』


『あぁ聞こえてるぞ?』


『ルビーやシーナから報告がありますぅ!拠点宝珠の商品が少し増えてました!』


おっ!そうだったな!すっかり忘れてたよ。


『そうか。なにが増えてたんだ?』


『はい。トランプとその他の娯楽。あとマッチに数種類の野菜の種が増えました!』


『なるほど。取り敢えず今はまだ何も買わないでくれ』


『畏まりましたぁ!』


『また連絡する』


俺は念話を切る。


トランプとその他の娯楽か。それにマッチね。これは売れそうだ。後は数種類の野菜。この世界には無い野菜なら売れるかも?いやそもそもこの世界の野菜ってそこまで美味くない。それは恐らく品質の問題ではないか?野菜を作るのに良い環境を揃えればそれなりには美味しくなると思うが。


俺はイーリスと話し合いトランプ等の娯楽はまだ買わない方針を決める。マッチは買ってもいい。種も買って育てて良い事をエールに伝える。ちなみにトランプは1つ5千ポイントとかなり高い。


今できる事を終えたので俺は錬金術の本を読み進める。錬金術をしたいのだが、初級とかってポーション作成の事しか書いてないんだよな。ポーション作成にしても材料がない。まぁでも読み進めるだけ読み進める。


俺が座って読んでいるとルーシーが俺の膝の上に頭を乗せてくる。俺は頭を撫でながら本を読み進める。


………………

…………

……


かなり時間が経ったか?ルーシーも俺の膝の上で寝てるし。すると外からスサノオの呼ぶ声が聞こえる。


「…主。次の階段が見えた」


「おっ!やっとか!」


俺はルーシーをベットに寝かせ外に出る。すると前方に下に続く階段が見える。その入り口は大きくゴーレム馬も普通に通れる。そして俺達は階段を降りてようやく地下2階層へ辿り着く。まずは石碑を触るか。地下2階層出口の近くにある石碑に向かう。


その石碑には俺達以外にも冒険者がいた。一応挨拶でもしておくか。


「こんにちは」


「ん?あぁこんにちは。うぉ!?君馬車を持ってるのかい?」


あーそうだった。馬車なんて迷宮に持ち運ぶ事なんて出来ないからそりゃビックリするか。


「即席ですが作りました」


「すごいねぇ!ただ気をつけた方がいいよ?」


「気をつける?」


「そう。ここには冒険者を襲う冒険者がいるんだ」


「冒険者を襲う冒険者?何ですかそれ?」


そもそも冒険者が冒険者襲うって意味がわからん。


「冒険者にも山賊や盗賊と似たような事をしてる者がいるんだよ。金品を持ってそうな冒険者や特に駆け出しを狙ったりするんだ。困ったもんだよ」


あー要するに初心者狩りね。


「それは迷惑ですね」


「あぁ。全くだよ」


「もし遭遇したらどうしたらいいのでしょうか?」


「もし遭遇したら逃げるか、自分に自信があるなら殺してもいいよ」


えっ!?殺してもいいのか?同じ冒険者なのに?


「殺してもいいのですか?」


「あぁ。そうしなければ自分が死んでしまうからね。それに殺したとしてもこんな広い迷宮だからね、誰が殺したか分からないんだよ。それにデスストーンを持ってたとしてもギルドの連中は魔物にやられたんだと判断すると思うよ?」


確かにそれなら誰が殺したか分からないか。はぁー…。注意するのは魔物だけではないのか。


「そうなんですか」


「Cランク以上の冒険者になる為には人を殺せるか殺せないかで決まる。山賊や盗賊の依頼も出てくるからね。襲ってくる冒険者は山賊や盗賊とみなしていい。結局信じられるのは自分だけだからね。だから君達も気をつけたほうがいいよ」


「ご忠告ありがとうございます」


「気にしないでいいよ。じゃ俺達はもう行くよ」


そう言ってテレポートストーンを使い冒険者達は消える。親切な冒険者だ。しかし冒険者を襲う輩がいるのか。それはもう冒険者ではなく山賊や盗賊と一緒だ。まぁ下の階層に行くのは時間がかかるから、冒険者を襲って盗んだ方が儲けになるとか考えているのか?


それとCランク冒険者になるには人を殺せるかの判断なのか。まぁ俺は既に人を殺してるからあまり気にしてないが。殺してもいいなら話が早い。襲ってきたら返り討ちだ。


俺達も石碑に触れてまた進みだす。相変わらず洞窟の中なので飽きた。敵もゴブリンだけではなくゴブリンアーチャー等も新しく出てきたが、まぁ苦戦するわけもなく進む。ゴブリンの素材はいらないので討伐証明の耳を取らずに捨てる。


倒した魔物はその場に置いても問題はない。他の魔物に食われるからである。


少し進むと夜光石が光るので夕食にする。皆で夕食を食べた後は寝る時間だ。今日はイーリスとだから一緒に寝る。この時、俺は気付いてなかったが、俺達のゴーレム馬の周りというか、少し離れたところに怪しい冒険者が何組かいた。ちなみにイーリスや守護王達は既に気付いていたが、俺の安眠を妨げない様に皆黙っている。


俺はイーリスのあたまを撫でながら深い眠りにつくのであった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺が寝て数時間後、冒険者達というか盗賊達が動き出す。それを見計らって2人の守護王達が動く。


盗賊達はゴーレム馬の左右に別れて挟むつもりらしい。左右10人ずつで合図をして動き出す。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


いまゴーレム馬は分かれ道のある通路に差し掛かっている。正面、右、左の三つの分かれ道があるのだが、ゴーレム馬は迷う事も無く地下3階へ続く道、正面の道を進もうとしている。その右側の通路の先では…。


「お前ら行くぞ。しくじるなよ!」


「お前もな!」


動き出した瞬間その声は届く。


「…止まれ」


その声はそこまで大きくはないが、威圧している声とはっきり分かり、盗賊達の足の動きを止める。


「…ッ!?何者!?」


「…我はスサノオ。…あの馬車に何用か?…返答次第では斬る」


その盗賊はスサノオの姿を見て怖じ気ついたのか盗賊のリーダーがとっさに嘘をつく。


「い、いやぁー道に迷ってよ!迷宮って広いだろ?だから石碑の場所を聞こうとしてな」


「…下手な嘘はつくな。…お主らが数時間前から馬車を監視しているのは知っている。…何故その時に来なかったのだ?」


「ちっ…気付いていたのかよ。お前はあの馬車の護衛か?」


「…そう解釈してもよい」


「だが俺達は10人いるんだ。引いたほうがいいとおもうぜ?」


「…笑止。…逃げるに及ばず」


「ならあの世で後悔しな!魔法を放て!」


男はニヤッと笑い勝利を確信したかのように後ろの魔法使いに号令を飛ばす。後ろですでに詠唱していた3人の魔法使いが魔法を放つ。


「〈火球(ファイアボール)〉!」


「〈岩弾(ストーンバレット)〉」


「〈火槍(フレイムランス)〉!」


3人が放った魔法がスサノオに迫る。だがスサノオはその魔法に対して一歩も動かず、ゆっくり自分の愛刀を抜き、軽く一振りする。その一振りは、この場に剣を教える教官が居れば間違いなく怒号が飛ぶような、やる気のないような緩い一振り。だがスサノオにはそれで充分であった。その一振りが魔法に当たった瞬間、その魔法が跡形もなく消える。そしてスサノオは刀を納める。


「馬鹿な!?何をした!?」


「…魔法を切った?」


「岩を切った…?ありえない!」


「…あの馬車には我が主が乗っている。…あの馬車に手をだそうとした事、万死に値する。…居合・神風(カミカゼ)


そう呟いた後、キンッ!という小高い音が聞こえ、数秒後に盗賊達の体を何故か洞窟にも関わらず風が撫でる。居合・神風(カミカゼ)。スサノオの剣技の中で最も速い剣技で、しかも飛ぶ斬撃。その一太刀は神の領域に足を踏みいれた者の一太刀。いつ剣の抜いたかさえ見えない速さ。


神速の刀は風をも追い越す刀。あまりの抜刀の速さ故に、刀を振るった後に生じる風圧。それは一陣の風になり、斬られた数秒後に体を撫でる。その風は死を告げる風。だが盗賊達は()()()()事に未だ気付いてない。


「な、何なんだよ!ビビらせやがって!お前らやっちま…アレ……?」


その者はようやく違和感に気付き、首を触ると首がズレ落ち絶命する。あまりの抜刀の速さに、斬られた事すら体が理解出来ていなかったのだ。だが理解した時には遅かった。既に9人の頭はズレ落ちていた。残りの1人は魔法が斬られた瞬間、尻餅をついて驚いた為、運が良く首を切られていなかった女の魔道士。いや、運が悪かったのかもしれない。その者に近付くスサノオ。


「…運が悪いなお主。…痛みも感じず死ねたというのに」


「お、お願いします。私だけは助けてください!」


「…お主らが仕掛けてきたのだ。…我も無駄な殺生はしないが、仕掛けてきたとあれば切る」


「わ、私はもう戦う意志はありません!」


震える声で叫ぶ女性。だがスサノオは刀を振り上げる。


「…覚悟を決めて我に挑んできたのだ。…ならば殺される覚悟も決まっている筈だ。…己の危機になれば命乞いなど見苦しい」


「まっ……て……」


スサノオはその涙目になっている女を真っ二つにする。


「あっ…」


「…ふん。…我らは今、命のやり取りをしてるのだ。…真剣勝負に待ってなどない」


スサノオは刀に付着した血を振るい刀を納める。


「…命が軽い世界なのに覚悟の出来てない者が多いな。…この世界の者は」


スサノオは馬車に戻っていく。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


分かれ道の左側の通路の先では……


「お前らいくぞ!」


こちらも動き出すが、やはりこちらもすぐにその足を止めてしまう。


「…だれ?」


いつの間にか目の前に白と黒のツートンカラーの少女が立っていた。ルーシーだ。迷宮の洞窟は自分の周りが見えるぐらいには明るいが、それでも数メートル先は真っ暗だ。ルーシーは体の半分が黒である。なので迷宮洞窟の暗さにルーシーは同化している。そんな中で盗賊達は数メートル先にいるルーシーを見るが、盗賊達には今、体半分の白い人間と言うより幼女が暗闇から急に出てきた様に見えただろう。つまり…


「うわぁ!?化け物!」


「…失礼」


「落ち着け。よく見ろ」


盗賊が予め持っていた松明を近づけるとルーシーの全体が見える。驚いた男はホッと胸を撫でおろす。だが不気味なのには変わらない。その目は深い闇を覗き込んでいるかの様な、ずっと見つめていたら吸い込まれそうになる程の黒い目。感情がこもってない平坦な声。そして何故かここに1人でいる不気味さ。


「嬢ちゃんなんでここにいるんだ?」


「内緒。あなた達はどうしてここに?」


「内緒か。だったら俺達も教えられないな」


「そう。でも1つ忠告。あの馬車に近付くなら殺す」


「お前あの馬車の仲間か!だが俺達だけじゃないぜ?まだ他にも俺達の仲間がいるからな!」


「そう。でも残念。その仲間達の所にも私の仲間が行ってる」


「そうか。じゃあいつらの為に早く行かないとな!嬢ちゃんには恨みはないが痛い目見て貰うしかねぇな」


「それに中々体は綺麗だしな!」


「分かった」


ルーシーが両手を前に出すと、何も握っていない両手に、いつの間にか2対の剣が現れる。1つは人々を魅了するほど美しく、人々の希望と思えるほどの聖なる輝きを放つ光剣。1つは人の希望をたやすく打ち砕く、この洞窟の暗さよりも遥かに黒い絶望を体現したかのような禍々しい魔剣。


そして背中に3対6枚の白と黒の翼を広げ、およそ人間では捉えられないスピードで移動して右の剣で3人、左の剣で3人を瞬殺する。ルーシーが動いた場所に白と黒の軌跡を残しながら、それはまるで白と黒のコントラストが旋律を奏でるかの如く美しい。


「…えっ?」


「あと4人」


「ひぃーー!」


怯えながら弓を放とうとしている盗賊だが、当然目で追うことは出来ず先に切られてしまう。傍から見れば白と黒の「何か」が盗賊達に近付いただけで倒れるという光景が見れるだろうが、幸か不幸かここには誰もいない。こちらにも魔道士はいるのだが、あまりの恐怖で上手く詠唱ができない。それはそうだ。目で終えるのは白と黒の軌跡だけ。その白と黒がほんの数秒で仲間を何人も殺されたのだから。


残った者は…


「た、助けくれぇー!」


「ば、化け物くるなぁー!」


「ダメ」


ルーシーは淡々とルークの敵を殺す。ルーシーにとって敵の感情に意味は無く、ただルークの敵としか見ていない。ルークの敵ならば全て殺す。ルーシーは感情を顔には出さない。顔色1つ変えずに淡々と敵を殺す。普通の人が見れば怖いだろう。守護王の中では一番冷酷だろう。


「終わり」


そう呟いてルーシーは何事も無かったように馬車に戻る。ルークはこの事については全く知らないし知らされていない。イーリスや守護王達にとってはこの程度の事は取るに足らない事なのだ。なので今後もこの事はルークが知る事は無かった。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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