迷宮攻略
転移装置の部屋の扉から出ると階段の様になっていて、下に続いている。洞窟なので暗いが、光魔法1級の〈光玉〉をセレスが覚えているから問題はない。ライトが使えない冒険者は松明を持ってきている。
階段を少し降りると洞窟の広間に出る。驚いた事にこの洞窟の広間には冒険者以外の人間も多い。食料を売っていたり地図を売っていたりと商人もかなりいる。
色んな商人が店を出していて、祭りとかで出ていた出店みたいだなと1人懐かしむ。まぁだがいつも祭りを楽しむのではなく、仕事の帰りで通るので見るだけだった。えぇ、一緒に行く人なんていなかったですよ!ちくしょう!
感情をコロコロ変えながら皆で物色していると1つの屋台に辿り着く。
その屋台の看板にはデスストーンと書かれていた。これが受付が言ってた物だ。屋台のカウンターの上には赤い色で怪しく光る石がいくつも置かれている。
本当に大丈夫か?この石。明らかに禍々しい色をしている石なんだが…。と俺は思う。俺はガタイのいい店の人に話しかける。
「あのすいません」
「おっ?なんだい兄ちゃん?」
「このデスストーンって何ですか?」
「ふむ。さては兄ちゃん駆け出しの冒険者だな?」
「はぁ。まぁそうですが。何故分かったんですか?」
「そりゃ、デスストーンの事を知らないのは兄ちゃんみたいな駆け出し冒険者ぐらいだからな」
えっ。知ってて常識なんだこの石。まじかよ。
「そんなにこの石が必須なんですか?」
「あぁ。特に大事な家族や仲の良い友がいる奴らには」
「へぇ。一体どんな効果なのですか?」
「教えたら買ってくかい?」
む。この店主上手い。だが残念だったなぁ!俺には無属性魔法の〈鑑定〉があるんだよなぁ!ざまぁ!…とはならない。
そこまで高くないし教えてもらうか。ちなみに〈鑑定〉の魔法は素材に使う魔法だが、人に使うとステータスは見れないい。
勇者召喚された転移者が持っているスキル〈分析〉は素材には使えないが、相手のステータスをスキルまで見れる。ユニークスキルは見えない。
俺が持っている神眼は素材には使えないが、相手のスキル全てを見れる。ユニークもだ。という感じだったかな?
「いいですよ」
「はっはっ!兄ちゃんありがとうな!」
俺の背中をバンバン叩く。やめろいてぇ!…ったく。こういう筋肉ダルマの店員に限ってよく背中を叩くんだからなぁ。
「今なんか変なこと思わなかったか?」
「いえ…」
「そうか。まぁいい。デスストーンの効果を教えてやる。デスストーンってのはさっきも言った通り冒険者の必需品だ」
「そんなにですか?」
ポーションも必需品だがそれと同等だと!?
「あぁ。効果はこの迷宮内で死ぬと、その死体が迷宮出口に、強制的に転移させられるんだ」
「死体が強制的に転移?」
「そうだ。普通死ねば死体はそこに残るだろ?だがこいつを持って死ぬと強制的に迷宮の出口に飛ばされるって事だな。迷宮は広大だ。誰かが死んでも分からんだろ?分かったとしてもこんな広い迷宮内をどうやって探せばいいか分からん。だが、このデスストーンさえ持ってれば死体だけは戻ってくる事が出来るってこったぁ。生きてるか死んでるか分からないと親族にどうやって伝えたらいいかわからん。戦死したと分かってた方が親族も悩まずにすむ。まぁ冒険者という稼業だ。死と常に隣り合わせだから、冒険者の親族も覚悟は出来ている。名誉な戦死と伝えられるわけだ。親族も遺体が無いよりあったほうがいいと思うからな。だから皆デスストーンを1つ持ち歩いているんだ」
「確かに。こんな広大な迷宮で戦死すれば遺体なんてまず見つかりませんね。分かりました買いましょう。約束は約束ですからね」
恐らくだが、これも女神様が設定した事なんだろう。特にSSSランクの奴らが迷宮で戦死したら、遺体を回収しに行く奴らがいない。っていうかそんな奥深くまで行こうとしてもほとんどの者がいけない。
デスストーンは1つ銅貨5枚とやけに安い。俺は12人分のデスストーンを大銅貨6枚で買う。
「まいどあり。ちなみにそのデスストーンは迷宮の魔物ならどんな敵でも良く落とすからな」
やられた。だからこんなに安いのか。流石は商人だ。まぁ今回は俺の負けにしといてやるか。
「ありがとうな」
俺達はもう少しこの広間を探索してみる。この広間は迷宮入り口前の待機所という場所で、0階層とも言う。
ここで迷宮に挑む最終確認をするらしい。まぁある程度見たしそろそろ行くか?迷宮の入り口はあっちか?と俺達は歩き出す。
すると広間の1箇所に冒険者達が列で並んでる場所がある。なんだ?と俺達は近くの冒険者に聞いてみる。
「すいません」
「ん?なんだい?」
「冒険者になったばかりで分からない事が多いのですが、この冒険者の列は何ですか?」
「あぁ。この列はテレポート待ちなんだ」
「テレポート待ち?」
まぁた新しい言葉が出てきた。いやテレポートというのは分かるんだが…。覚えることが多い。
「そう。この冒険者達の先頭に少し大きな石碑が見えるのが分かるかい?」
確かに大きな石碑?みたいな石がある。
「あれはテレポートストーンと言うんだよ」
「テレポートストーン?」
「そう。あのテレポートストーンを触れて階層を叫ぶと、その階層にテレポート出来るって事なんだ。1人でもテレポート出来るんだけど、パーティ全員で触れると、パーティ全員でテレポート出来るよ。ちなみにパーティ同士ではなくても飛ぶ事が出来るよ。あのテレポートストーンは最大6人までテレポート可能だよ」
なるほど。6人までっていう所がまた女神様が作ったんだろうなというのを思わせる。まぁ実際に作ったんだろうが。しかしあれに触れて行きたい階層に飛べるなら俺も今すぐ使えたりするのか?
「へぇー。それは便利ですね!俺も使えるんですか?」
「あぁ。ただ注意してほしいんだが、行ったことのない階層には飛べないんだよ。それから、1人が5階層まで飛べて、他の冒険者が4階層までしか飛べないとすると、4階層までしか飛べないよ。その逆もそう。5人が5階層まで飛べても、もう1人が4階層までしか登録してないなら4階層までしか飛べないからね」
ですよねー。それと飛べる階層は行った階層までしか飛べないみたいだ。日本にあったダンジョンゲームに似ている。
「そうなんですか」
「あぁ。各階層の入り口にはあれと同じ大きさのテレポートストーンがあるんだよ。そのテレポートストーンに触れると、次からはその階層に飛べることが出来るようになっているよ。ちなみに最高到達階層は冒険者ギルドカードに登録されるらしく、嘘をついて10階層を到達したと言っても調べられてすぐに分かるからしないようにね」
ふむ。各階層の入り口には大きなテレポートストーンがあり、それに触れると最高到達階層が更新されると。指紋認証か?いやこんな時代に?女神様ならできそうなんだよ。
それと最高到達階層は冒険者ギルドカードに登録されるらしい。どんな仕組みかは分からんが、テレポートストーンと冒険者ギルドカードは連動しているのかな?実際、ギルドカードを作る所を見ていないから特殊な作り方をしている可能性もある。
「なるほど。1つ質問なんですが、例えば5階層まで飛べるとします。ですが間違えて4階層に飛んだ場合、4階層のテレポートストーンから5階層に飛べますか?」
「あぁ。問題なく飛べるよ。間違えて飛んでしまっても大丈夫だよ。あと、もしここの階層に戻りたいなら0階層と言うとここに戻ってこられるよ。ちなみに地上に戻りたい場合は地上と叫べば出られるよ」
なるほど。間違えても大丈夫なのか。なかなか便利な石だ。この世界の技術では到底作る事ができないだろう。しかしこの冒険者はかなり親切な方だ。
「ありがとうございます!何かお礼をしないといけませんね」
「お礼なんていいよ。色々教えるのは先輩冒険者の努めだからね。それに冒険者は助け合いだよ。じゃあまた何かあったら聞いてくれ」
「ありがとうございました!」
先輩冒険者かっけぇ!俺も駆け出し冒険者がいたらああやって教えれる先輩になりたい。色々知れたからもういいだろ。俺達はそろそろ迷宮に潜ることにする。
ちなみに冒険者の挨拶には「また逢う日まで死ぬなよ」的な別れの挨拶があるのだが、それは迷宮内では言わないらしい。迷宮外で主に使われる言葉らしい。
さて、迷宮の入り口はどこだ?と探していると先程、転移装置の転移で驚いてた駆け出し冒険者を見つけた。
その駆け出し冒険者について行くと、地下1階層へ続く階段を見つけた。ここにあったのか。と思いながら俺達も階段を降りる。階段はやけに短く、すぐに地下1階層に着く。
地下1階層の入り口付近には先程冒険者が言っていたテレポートストーンがあるので触れておく。触れると微かに光った。守護王達仲間が、ギルドカードを持ちながら触ってたのだが、ギルドカードも光っていた。やはりギルドカードとテレポートストーンは連動しているのだろう。
俺達皆が触れたのでこれで地下1階層にはいつでも飛べる。
俺達がテレポートストーンに触れてたのを駆け出し冒険者が見ていて、俺達の真似してテレポートストーンに触れていた。ちなみに0階層のテレポートストーンは触れなくても最初から飛べるようになっている。
「俺達はこのまま下に目指すがセレス達はどうする?」
「私達は色々と見たいのでゆっくり行くわぁ。私も色々な植物とか気になるから」
セレス達のパーティーも全員頷いている。
「じゃあここで別れるか。共有できる情報は念話で共有しよう」
「えぇ。分かったわぁ」
俺はプリンに近づき抱きしめる。離れたくないが仕方ない。
「少しの間会えないけどいつでも念話してこいよ?」
「はいなのです!」
俺はめいいっぱいプリンの事を抱きしめて離す。プリンも満足したのか満面の笑みだ。
「じゃあまた連絡する」
俺は行こうとしたら誰かが俺の袖を引っ張ってくる。誰だ?と思ったらセレスだった。
「ルーク様。私達にはハグはないのぉ?」
「な、なんだよ急に。プリンは年少組だからしたんだ」
「そんなの関係ありませんっ!私達も寂しいのです!」
「せや!今回ばかりはプリンにだけずるいで!」
「お前様のハグがないとここから動けないでありんす!」
「お前ら……」
俺は呆れ顔になる。これじゃあどっちが年少なのか分からん。タナトスとトールもやれやれ。と言った顔で呆れている。まぁ仕方ない。
「分かった。分かったよ。1人ずつしてやるから来い」
ここは地下1階層の入り口だぞ?周りに何組かの冒険者がいるのにプリンはまだしも、セレス達にハグするとかどんな罰ゲームだよ。いや内心は嬉しいのだが。
俺がなんと言ってもずっとごねそうだから仕方なくやる。俺はセレス達1人ずつにハグをする。ハグをする度にセレス達の胸が押し当たる。リルもセレスやヴィーナよりはないが、それなりの物は持っている。
すごい弾力だ。いや何考えてるんだ俺は!ハグをされた後のセレス達は満面の笑みで満足している。
「こ、これでいいんだろ?」
「あらあら。ルーク様照れちゃって可愛いわぁ!」
「やっぱご主人様のハグはええなぁ!今度は撫でながらしてもらお!」
「わっちの初めてのハグがお前様に奪われたでありんすぇ」
「こんな場所で誤解を招く発言はするんじゃない!」
俺は焦る。周りの冒険者、特に男からは恨めしい目で睨まれているのが分かる。早くここから立ち去ろう…。
「じゃあ俺達は行くから。また連絡する」
「はい。ではまた」
ようやく俺達はセレス達のパーティと別れて迷宮攻略に向かうのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
迷宮は洞窟の様になっているのだが、しかし不思議と俺達の周りは明るく、歩く程度は問題にならないぐらいの視界が確保されている。とは言っても、ほんの数メートル先からは真っ暗で、光玉を飛ばさないと、かなり先まで視界が確保できない。そんな迷宮を歩き始めて10分ぐらいで早速、ゴブリンが5匹が現れる。
「…主。…ここは我が」
「おう。頼んだ」
「…終わったぞ」
「早いな!」
ゴブリン5匹はスサノオのたった一太刀で全員首を斬られている。しかも飛ぶ斬撃だ。流石にここでは皆、特にスサノオは満足しないだろう。
討伐の依頼は、ターゲットの討伐証明が必要になる。討伐証明はどんな魔物でも魔石だ。どんな魔物にも、魔石という物が体内に生成されている。魔石は人間で言う心臓の様なものである。なので魔石さえ見せれば討伐したと証明される。耳とか尻尾だと、切っただけで生きてる可能性があるから、証明は魔石になる。ちなみに、魔石が無い者は人間という事になる。
「やっぱもっと地下に行きたいよな」
「…うむ。…我らではここの敵は肩慣らしにもならぬ」
「致し方ありません。まだ地下1階なのですから」
「じゃが退屈じゃのう」
「ん。ひま」
「まぁ今は先に進むしかありませんね」
「そうだ。俺の魔法で地下2階の階段を見つけよう。〈迷宮地図〉」
この迷宮地図は迷宮内にいる時に使用出来る魔法だ。この地下1階のフロア全てのマップを目の前に映してくれる。
ただこの迷宮地図は、この迷宮が何階層まであるのか、他の階層のマップは見れない。適用されるのは今いるフロアだけなのだ。地下2階でこの魔法を使えば、地下2階のマップが見れるという事だ。…しかし
「………うわぁ」
「ご主人様、いかがされましたか?」
「この迷宮まじで広いぞ。地図無かったら3日どころじゃすまないだろ。この広さ」
「どれ。妾も確認してやろう。〈迷宮地図〉」
流石レイアだ。知っていればどんな魔法でも使える【魔法の神】というユニークスキル持ってる。無属性も使えるという事だ。
「……何じゃこれは。本当にダンジョンなのか?どうしたらこんなバカでかいダンジョンになるのだ?」
「…そんなに?歩くのいや」
「妾は歩くのはそこまで嫌じゃないが、この広さが続くとなると移動手段を考えたほうがいいじゃろうな」
守護王のレイアですら歩くのが億劫になるぐらい広いのだ。歩くのが嫌なルーシーなら投げ出す。
「そこまで広いのですか」
「…早く地下に行きたいのに、それだけ広いとなるとかなり時間が掛かるな」
「私達が全力で走れば1日も経たずに地下へ行けると思うのだけど、ずっと走り続けるのは嫌ね」
いやまぁそうなんだが、俺はその走りについていける自信ないぞ?こんな広い迷宮を1日で踏破?俺は無理だろ。
「そ、そうか。まぁ走り続けるのは俺も嫌だな。それにダンジョンなんだ。俺達も下を目指すとは言ったが探索もしたい。どんな素材や鉱石、魔物がいるか少しワクワクしないか?」
「はいはい。夢中になりすぎて目的を忘れないでくださいね?主様」
「分かってるよ」
「だが主の言う通りどんなのがあるかは気になるのぅ」
「そうですね。先は長いですから歩きながらお話でも致しましょう」
そうだ。と俺は思い歩きながら皆で話す。まだ俺達の冒険は始まったばかりだ。と俺は胸を踊らすのであった。
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