迷宮について
「……ん」
俺はゆっくり目を覚ます。今日もいい天気だ。日差しが眩しい。今日もいつも通りの朝だ。だが俺達は今日から迷宮に潜る予定だからすごく楽しみだ。
プリンはまだ横で寝ている。相変わらず可愛い顔をしているなぁと頭を撫でてやる。
「…ん……ルーク…様…」
寝言か?全く…なんて可愛らしい寝言なんだ!とそこにドアがノックされ、ドアが開く。
「おはようございますご主人様」
「おはようドラグ」
んーここもいつも通りだ。俺はいつもの様にドラグと雑談しながら、みんなが起きるのを待つ。最近は何故か、みんな起きたら俺の泊まっている部屋に集まってくるんだよ。
起きた者から続々と俺の部屋に集まってくる。既にイーリス、スサノオ、リル、セレス、トール、ヴィーナ、タナトスが集まっている。レイアとルーシーはまだ寝ている。まぁ年少組だからな。よく寝ないと育たない。
「主様」
「なんだイーリス?」
「昨日の年少組達を見てて思ったのですが、この世界には娯楽が少なくありませんか?」
娯楽か…。たしかにこの世界には娯楽が少ない。この世界の娯楽と言えば賭けぐらいしか聞いた事がない。
以前、冒険者ギルドに寄った時に少しだけ聞こえてきたのだが、冒険者ギルドで飲んでた2人組が、とある冒険者の依頼を達成出来るか出来ないかで賭けていた。
後はどこの街かは覚えてないが闘技場があるらしい。その闘技場で2人の闘士を闘わせてどちらが勝つか予想してお金を賭けるらしい。娯楽と言えばそれぐらいしか聞かない。
「まぁ確かにそうだな」
「暇な時に遊べる道具があれば少しは改善されると思うのです」
「つまりトランプなど作ればいいのかね?」
「トランプいいなぁ!ウチやったことないからやりたいわ!」
「私達は産まれたばかりですから色々な娯楽はしらないですもんねぇ」
そう。イーリスや守護王達は知識はあれど、実際にトランプ等では遊んだ事がない。
「…我は将棋と言う遊びをしてみたいな」
「ワシはリバーシだな」
「わっちはダーツとかでありんしょうか?」
「わたくしはビリヤードと言う遊びが気になっていますね」
「なるほど。娯楽なぁ…。作るのはいいんだが、トランプとか作り方がわからん。レイアなら分かりそうだがな。俺も植物の皮とか繊維とかで紙を作る事は分かるんだがな。拠点宝珠の紙は柔らかすぎるからトランプには向いてないとおもうんだよ」
こういう時、異世界へ飛ばされた主人公が知識チートでなんとかしちゃうんだろうけど。俺にはそんな事できん。
「なるほどです」
「リバーシなら作れるとおもうぞ?土魔法で形を整えて色塗ればいいんじゃないかのう?」
「まぁ確かに。いけそうだな」
くそぉ。こんな時に知識チートをしたいが俺の知識は宛にならん。まぁトランプの件はレイアに聞いてみるか。と考え皆と雑談していると年少組が起きてくる。さて朝食を食べて冒険者ギルドに行きますか。
俺達は冒険者ギルドに行く準備をして1階に降りる事にする。オークの肉の半分や、買い溜めしている野菜などをプリンの異次元の中に収納する。俺達王の盾パーティは俺が全ての荷物を持つ。セレス達王の剣のパーティはプリンが荷物を持つ。そして用意が出来たから1階に降りる。
朝食を皆で楽しく食べて、そのまま冒険者ギルドに向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
冒険者ギルドに着いたのでギルドの中に入る。やはり冒険者ギルドの中では俺達は目立つ様で遠目から睨む者、俺達に目を合わさない者もいる。
特にスサノオがいるので近付いてくるバカはいない。絡んでくる馬鹿がいたとしてもすぐに排除されると思うが。俺達はいつも通りサーシャの受付に並ぶ。少し経つと俺達の番になる。
「ようこそ冒険者ギルドへ!あっ!ルーク様!」
「今日はパーティの登録をしにきたのだが」
「パーティ登録ですね!ではこちらの書類にパーティ名とパーティメンバーを記入してください!」
「すまん。この紙をもう1枚くれ」
「あっそうでしたね!畏まりました!」
「セレス達のパーティは誰がリーダーなんだ?」
決めていなかったのか、今決めているようだ。結局セレスにパーティリーダーが決まったようだ。
まぁセレスはしっかりしてるからな。妥当だと俺も思う。そして俺とセレスは書類にパーティ名とパーティメンバーを記載して書類をサーシャに渡す。
「確認致しますね。ルーク様のパーティ名は王の盾。リーダーはルーク様、メンバーがイーリス様、スサノオ様、レイア様、ルーシー様、ドラグ様の6人パーティで宜しいですね?」
「あぁ。間違いない」
「では次に、セレス様のパーティ名は王の剣。リーダーはセレス様、メンバーがリル様、トール様、ヴィーナ様、タナトス様、プリン様の6人パーティで宜しいですね?」
「えぇ。いいわぁ」
「畏まりました。ではこのパーティ情報で登録させて頂きますね。それから今のパーティがあるから他のパーティと組めないと言う事はありません。仮パーティとして組めるので覚えててくだいね!」
「あぁ。ありがとう」
やはりパーティを組んだからと言って他のパーティと組んではいけないというのは無かった。
「あと、固定パーティがあるのに仮パーティや即席のパーティばかり組んでいる場合は、こちらから調査させていただきます。もちろん初心者の冒険者育成の為に等の理由があればいいのですが、たまに脅されたりして断れない者もいるので。正直、冒険者ギルドとしてはあまりそういうのには干渉したくないのですが、そういった理由でパーティが解散してしまう事もありますからね」
ふむ。確かに固定パーティ組んだのに他のパーティばっかと組んでたら怪しまれるか。合わなければ抜ければいいし。脅されたりして無理やり組まされているならば可能性もあるからギルドが仕方なく動く事もあるということだ。
「分かった。気を付ける。依頼の受付に行ってくるよ」
俺達は依頼の受付の列に並ぶ。依頼の受付は冒険者ギルドの入り口から見て一番左だ。と俺達の番になる。
「ようこそ冒険者ギルドへ!えーと…この受付は初めての方ですね?」
「あぁ。迷宮に入りたいのだがよく分からなくてな」
「畏まりました。ではまず私の自己紹介からさせて頂きます。私の名前はミーシャと申します。主にAランク以下の冒険者様の依頼受注や依頼完了などの手続きをさせて頂いてます」
「Aランク冒険者以下?」
俺はそう聞いたが、それよりも気になったのが名前だ。ミーシャの外見は髪型は金髪のツインテールで身長は小さそうだ。名前はミーシャでサーシャやナターシャと名前が似ている。まさか姉妹か?全然似てないけど…。
「はい。つまり私の受付はAランク以下の冒険者様、隣の受付はSランクの以上の冒険者様にしか対応してない受付でございます」
ふぅーん。これはあれだな?一般客とVIP客との違いみたいな事だな?
「なるほど」
「ルーク様は迷宮に入られたいとの事でしたが、迷宮は真ん中の通路の先の大きな扉から入れます。あの扉が開くのはもう少し掛かりそうですね。迷宮の扉の近くに砂とけいが置かれてますが、その砂が無くなった時に迷宮の扉が開かれます。迷宮に入る際の手続き等は特にありませんので、扉が開かれた時に直接入れば問題ありません」
そうなのか。何か手続きとかあるとか思ったのだがそういうのは一切ないらしい。まぁそういう面倒くさい手続きがないのはありがたい。
「あぁ。ありがとう」
「ルーク様は迷宮に初めて入られるとの事でしたが、冒険者ランクの上げ方は知っていますか?」
「ん?あぁ。それはサーシャから聞いたぞ?依頼をこなせばいいんだろ?」
「そうですね。ですがもう1つランクを上げる方法があります。これはこの王都ファルシオンでしか適応されていないランクの上げ方です」
なんだと!?そんなのあるのか!
「いや悪い。それは知らないから教えてほしい」
「はい。もう1つのランクの上げ方とは迷宮の到達階層です」
「迷宮の到達階層?」
「はい。迷宮の到達階層で強制的にランクを上げる事ができます。迷宮10階層到達で強制的にCランクに冒険者ランクが上がります。20階層到達ではB、30階層ではA、40階層ではS、50階層ではSS、60階層以上ではSSSに、強制的にランクが上がります。ちなみにこの迷宮の最下層は未だに不明で、現在攻略されてる最下層は64階層です。もちろんこのパーティはSSSランクの冒険者パーティです」
そんなランクの上げ方があるのか。恐らくこのSSSランクの冒険者パーティはこの王都内で活動している2組いる内の1組だ。だが気になる事がある。
「なぜサーシャはこのランクの上げ方を教えなかったんだ?こんなランクの上げ方あるなら普通はみんな知りたいだろ」
「確かに聞いてみると簡単そうに見えますが、実際そうではありません。迷宮はかなり広大です。1階層から2階層に行く為には、最低3日は歩かないと着かないのです」
3日!?広大ってレベルじゃねぇだろ…。もしかして2階層から3階層もそれぐらいかかるのか?こりゃ改めて気合を入れ直さないと。
「ですので駆け出しの初心者は1、2階層で狩りをする事が多いですね。もっと奥に進みたいなら、最低でも安いアイテムバックの魔道具が無いと厳しいです。まぁ安いと言っても金貨10枚以上はしますから、駆け出し冒険者はお金を貯めるか、3日、4日分の食料を持って一気に下層を目指すかのどちらかですね」
そうなのか。それほど広いのか。女神様はなんて物を作っているんだ?
「サーシャが教えなかったのには理由があります。このランクの上げ方をする者はほとんどいないからです。先程も言いましたが駆け出し冒険者は1、2階層で依頼をこなしながら、狩りをしてお金を貯めるのが基本です。お金を貯めている内に自ずとEからD、DからCへと冒険者ランクが上がっていきます。ですので到達階層を目指さなくてもランクは上がっていきます。ただしCランクになれたとしても、Cランク以上からは階層を進めないとCランク以上の魔物は出てこないので、Bランク以上になりたければ奥に進むか、Cランクの依頼を迷宮ではなく外でこなすかどっちかになります」
なるほど。まぁ持てる量には限りがある。駆け出しからしたらそこまで持ち込めないだろう。あまり多すぎると邪魔になるし。
だから金を貯めてアイテムバックを買うか。安いものでも食料1週間分は入るんじゃないか?Cランク以上になる為には10階層より下に行かないといけないという事か。
浅い階層でいくら戦っても雑魚しか出ない。Cランク以上の魔物を倒すには、それなりの階層に行かなければならないという事だ。
それが面倒くさいなら迷宮外の依頼を受けろか。ただCランクならまだしも、Bランク以上の迷宮外の依頼はランクが上がるにつれて徐々に少なくなっている。
まぁBランクはまだ依頼はそこそこあるが、Sランクの以上の依頼が迷宮外でばんばん貼り出されていたら危険すぎる。
Sランク以上の依頼はそうそう貼り出されない。だから皆Bランク以上になる為に迷宮外ではなく迷宮の地下に進む訳だ。
「そういう理由があったんだな」
「ですからサーシャは教えなかったのかと思います」
「そうか」
「ルーク様、迷宮に入るんでしたら一緒に依頼も受けてみてはどうでしょうか?」
「依頼か。そうだな」
「依頼掲示板はあちらにあります。パーティ1組につき2つしか依頼を受けれないので注意してくださいね」
今の話を聞いて俺達は依頼をこなしてランクを上げるのではなく、迷宮到達階層でランクをあげようと思う。だが初めてなので依頼も受けておくか。
依頼掲示板は冒険者ギルド入り口から見て左にある。大きな掲示板が2つ並んでいる。なるほど。ちなみに依頼が2つしか受けれないのは1組のパーティが依頼を独占しない処置だ。
依頼掲示板は迷宮外と迷宮内に別れているのか。俺は迷宮内の依頼を見る。俺達は全員EランクだからDランクまで受けれる。さてどれにするか。
「ゴブリン10匹討伐か。最初はやはりこれかな?あと1つはDランクのウルフ5匹にするか。……ん?この依頼の右上に書いてある無制限ってなんだ?」
「なんでしょうかね?」
迷宮外のゴブリン討伐の依頼のにはついてないんだよ。
「受付で聞いてみるか。セレス達は決まったか?」
「はい。私達は銅鉱石5つ採取とランプ草5つ採取ですね」
「迷宮にも鉱石や草があるのか」
ちなみにランプ草は洞窟でも明かりになる草である。暗い所でも光っているのでちょっとした明かりには便利。だがランプの火よりは光らない為、インテリアぐらいだ。
しかしセレス達の採取依頼には無制限とは書いてない。なんだろな?これ。
「なら依頼受付に行こうか」
俺達は依頼受付のミーシャのところに戻る。
「依頼は決まりましたでしょうか?」
「俺達はこれだ」
「私達はこれよ」
「ルーク様のパーティがゴブリン10匹討伐とウルフ5匹討伐ですね。セレス様のパーティは銅鉱石5個とランプ草5つの採取ですね」
「あぁ。気になったんだが、この無制限とはなんだ?迷宮外のゴブリンには書いてなかったんだが」
「あぁ。これはですね、文字通り誰でも何回でも受けれますよって意味です」
「何回でも?」
「はい。迷宮外のゴブリンは倒すとそれまでですよね?でも迷宮の魔物は倒してもどんどん産まれてきます」
そういう事か。確かに迷宮の魔物は倒してもどんどん産まれてくる。
「なるほどな」
「それにこの王都の迷宮ではないですけど、迷宮は魔物が溜まりすぎると魔物大発生を起こしてしまうのです。ですから迷宮は魔引きをある程度しないといけないのです。この王都ではなる事はないと思いますが、全ての冒険者が魔物を狩らなくなったら、この王都でもスタンピードが起こる可能性がありますからね」
だから迷宮内の魔物の討伐依頼は無制限と書かれていたのか。納得。というか他の迷宮はスタンピードした事あるのか。それは怖い。ちなみにセレス達の採取系の依頼に無制限と書かれていないのは、その依頼が冒険者ギルドまたは一般人(商人など)の依頼だからである。
「では受注が完了致しました。もうすぐ迷宮の扉が開かれると思いますので」
「あぁ。ありがとう」
「それから迷宮に入る場合、デスストーンというアイテムを買う事をオススメします」
「デスストーン?」
なんだその不吉な名前の石は。絶対にヤバそうな石だ。
「はい。迷宮の扉の先の転移装置で飛んだ先に、デスストーンを売っている者がいます。その者からデスストーンを買えます」
「そうなのか。そのデスストーンの効果を…」
言った瞬間迷宮の扉が開かれた。おいおい!タイミング悪すぎだろ!
「効果は売っている者から聞いてくださいね。迷宮は1回で入れる人数が決まってますのでお急ぎを」
「あぁ。わかった。色々ありがとう」
俺達は迷宮の扉の先に急ぐ。迷宮の扉の先は大きな円形の広間になっており、その真ん中に装置らしき物がある。恐らくあれが転移装置だろう。
円形の広間がそれなりにいっぱいになれば男の冒険者ギルドの従業員らしき人が入ってきて転移装置を動かす。
「では迷宮に飛びます」
そう言って装置を動かすと俺たちの足元には広間と同じぐらいの魔法陣が展開される。
おぉ!これは俺達が国ごと異世界へ飛ばされた時と少し似てる。と考えていると魔法陣は一際光を放つ。そして光が収まった。ん?何も変わってないように見えるが……いや変わっている。
俺の背には冒険者ギルドの迷宮の扉があった筈だが無くなっている。逆に俺の目の前には扉が無かったのだが、俺の目の前に扉がある。転移は向きを変えるのか?と考えていると
「着きました。どうかお気をつけて」
目の前の扉が開かれる。その扉の先は冒険者ギルドでは無いのが分かる。何故なら扉の先の壁は土っぽい色の壁で洞窟になっている。
この光景に慣れてる者は何も無かったかの様に扉の先に進んでいくが、初めての者は驚いて固まっている。
どうやら迷宮初めては俺たち以外にも何組かいたようだ。と俺達も扉の先に続く。さてこの先はどうなっているのやらとワクワクする。
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