やはり家族はあったけぇ
転移門を潜り王都ファルシオンに戻ってくる。先にヴィーナが物置小屋から出て誰もいない事を確認してから外に出る。
「お前様。わっちは先に部下達に仕事を教えきなんす」
ヴィーナが選んだ部下は暗殺よりも偵察に特化した部下だ。なので他の守護王達の部下達よりもヴィーナの偵察部隊は人化の魔法を覚えるのが早い種族である。
まぁヴィーナの部下は吸血鬼族と夜魔族だから、比較的人間に近い部類だから人化を覚えるのが早い。
人化の魔法を覚えている部下は貴重だ。人に紛れさせて情報を得る、まぁスパイの様な事もできたりする。
王近辺の内情や、それこそ巨大な闇ギルドの内情を知りたい時に、一番情報を集めやすいやり方が、敵の組織に潜入することだ。精鋭ではないが、実力を見せれば幹部ぐらいまでは登れるのではないのだろうか。と俺は考えている。
「あぁ。頼む。お前達も適度に休んだりしてくれよ?それと何かあったらヴィーナにすぐ知らせるんだ」
「「「「「畏まりました!」」」」」
「では行きなんす」
ヴィーナと配下の5人は影の中に消える。んーそろそろお昼の時間ぐらいか?まぁ昼はレナルドさんの所で食べればいいか。
「セレスとリルはどうする?俺はこのままレナルドさんの店に行くけど他の守護王達みたいに自由行動してもいいぞ?」
「私はついていくわぁ」
「ウチもそうするわ」
「そうか。なら行くか」
俺達はレナルドさんの店に向かう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
レナルドさんの店に着き中に入る。
「レナルドさーん?」
俺はそう叫ぶと奥からレナルドさんが出てくる。
「ルークさんお帰りなさい。丁度良かった。見せたい物があるん出すよ」
「見せたい物?」
「えぇ。いいからこちらに来てください」
見せたい物ってなんだ?と店の奥へ促される。生活空間のある部屋のドアではなく、また違うドアだ。一体何だ?と思いながら奥へ行くと、そこは倉庫になっていて、そこには俺の腰ぐらいまである大きな樽が2つ置いてあったのだ。
よく映画とかで海賊が荷物を海賊船に詰め込む時に、樽も入れたりするが、その樽ぐらいの大きさはある。
「大きい樽だな」
「えぇ。ルークさんが塩と砂糖を取りに行ってる間に買ってきましてね」
「なぜ大きい樽を?」
「恐らく塩と砂糖を大量に持ってくると思い、この大きな樽を購入したのです。それにどうやって売るつもりですか?塩壺大を大量に用意しますか?それでは邪魔すぎると思いませんか?」
確かに邪魔だ。塩と砂糖が50キロずつだ。塩壺大と砂糖壺大は1キロ入るので壺大を50個ずつ用意するのはいいが、店の中に置くとなれば邪魔だ。
それに相手側は空の塩壺や砂糖壺を持ってくるんだ。もし新しく壺を用意したなら、壺大だけでも100個は店に残る事になる。まぁ控えめに言って邪魔だ。
「いや…すごい邪魔だ!」
「ですから大抵の塩や砂糖を売る店はこの大樽を使うのです。この中に塩と砂糖を入れて壺を持ってきたお客様にここから補充すると言う事です!」
「なるほどな。では早速この樽に塩と砂糖を入れていくか」
だから、その為の樽なのか。と俺はまず塩を50キロずつだす。
「おぉ!これがあの塩!……ん?これは何でしょうか?」
「あっ……やべ」
やっちまった!忘れてたよ!俺は激しく後悔し言い訳を考え始める。なにがやっちまったのかと言うと、拠点宝珠から塩と砂糖を1キロ買うのだが、その1キロの塩と砂糖はポリ袋に入ってるのだ。
なんで今まで気付かなかったんだ!くそっ!肝心な所で俺は詰めが甘い…。まぁやってしまったのは仕方ない。
恐らくこの世界でポリ袋なんて無いんじゃないか?現にレナルドさんもこれは何だ?と言ってるし。はぁー……どうしたもんか。
「ルークさん。この塩が入ってる物?は何でしょうか?」
まぁそうだよなぁ。気になって聞いてくるよなぁ。適当にはぐらかすか。
「あー……それは俺の生まれ故郷にある袋って言うんだけどな。まだ内緒にしてる物なんだ」
「袋?麻袋と似たような物なんでしょうか?」
「そうだな。この中に入れとけば破けないし湿ったりしないし埃が入ることはない」
「それは画期的ですね!是非広めましょう!」
まぁそういう流れになるか。だがこれは広める事は得策ではない。だってなぁ…。
「レナルドさん。これは俺の故郷でしか作れない物です。この袋がもし一般化されたとしても、俺の故郷でしか作られてないので需要と供給が追いつかないです」
「そうですか…。いや、それもそうですね。これは欲しがるものが多そうですが生産が少ないなら争いの種になりかねないですね」
俺はそれらしい嘘をついて広めるのを阻止する。まぁ料理ぐらいなら大丈夫だと思うが、この世界に日本の物を広めるのは危なすぎる。だから広めないって言う理由なのだが、実際はそんな理由ではない。そもそもポリ袋の作り方なんてわからんからな!そんな物を広めるつもりはない!
「まぁこの袋は俺が処分しとくよ。誰かにこんな物見られると大事になりそうだからな」
「少し残念ですが仕方ありませんね」
俺達はポリ袋を開けて塩を大樽に入れていく。50キロ入ったが大樽はまだ半分ぐらいしか入ってない。100キロは入りそうだ。ポリ袋はあとで燃やしておくか。ちなみにポリ袋は燃やしても大丈夫だ。
「んー。今度からはこの倍持ってくるか」
「そんなに塩があるのですか?」
「まぁな」
「まさか砂糖も?」
「あるよ?」
「…ほんと何者なんですか」
レナルドさんは乾いた声で笑う。まぁこの世界で砂糖は高級だからビックリするのも無理はないか。砂糖も同じようにポリ袋から開けて大樽に入れていく。ちなみにセレスとリルにも手伝ってもらっている。そして全ての塩と砂糖を入れ終わる。
「ふぅ。終わったな」
「はい」
「お腹が空いたから昼にするか」
「何か作りますよ」
「いや大丈夫だ。今回は俺達がご馳走しよう」
今回は簡単な料理にするか。ふっふっふっ。俺でもできる料理!いつもはセレスやリル、ヴィーナやドラグに止められているが、俺でも準備する事ができる!とその前に
「セレス、この倉庫に埃が入ったり湿ったりしないよう風魔法をかけてくれ」
「わかったわぁ」
セレスはこの倉庫全体に風魔法の防御結界を張る。腐らない為に掛けたのだが、いやほんと魔法って便利だよなぁ。
「おぉ!風魔法とはこういう事も出来るんだね!セレスさんは凄いですね!」
「ふふっ。ありがとう」
「レナルドさん部屋に行きましょう。お昼をご馳走しますよ?」
「ではお言葉に甘えて」
レナルドさんの店の中にあるリビングっぽいところにやってくる。俺はアイテムストレージから四角い鉄の箱みたいなのを出す。
ふふ。そう!これはいつでもどこでも使えるバーベキューセットだ!しかもこれは火魔法が使えなくても火が出てくる魔道具なのだ!しかも調節も出来る!レイアさんに作ってもらったのだ!
えっ?料理じゃないって?そんな異論は認めん。
「これは?」
「これは何処でも焼き肉ができる魔道具ですね!」
「焼き肉?それよりもこれは魔道具ですか!?」
「えぇ!じゃあオーク肉を出すか!」
オーク肉は50匹近く倒したから肉はまだかなりある。
「オーク肉ですか!私からすれば高級ですね」
「そうなのか?」
「冒険者なら頻繁に食べる事はあると思いますが、商人ではなかなか」
「そうか。なら今日はいっぱいあるから食べてくれ」
「ありがとうございます」
俺は魔道具のボタンを押すと火がつく。何処でも持ち運び可能なバーベキューセット!これは売れるぞ!いつか広めてやるか。
「おぉ!凄いですね!」
「肉を食べやすいように切り分けておいたわぁ」
簡単な料理と言いつつ、いつの間にか肉を切り分けていたセレスさんまじ有能っす。結局俺はバーベキューセットと肉を出しただけで何もしてない。
「肉や肉!食べるで!」
「美味しそうですね!」
「では焼いていこう!」
まぁ皆が楽しけりゃいいか。と俺達は焼いていく。ちなみに俺は自分の食べる肉だけを焼いて食べる派だ。
自分の好きな焼き加減というものがあって俺は結構拘る。たまに焼くだけ焼いて「ほらできたよー」と言って、勝手に俺の皿に入れてくる奴が日本にいたのだが、俺はイラッとした。大抵できたと言って皿に入れてくる肉は焦げているのだ。
だがそれはまだいい。一番腹立つのが俺が育てていた肉を横からかっさらっていく馬鹿がいるだが、その時は殺意が湧く。
1人で農業育成ゲームをして手塩に育ててようやく収穫できるとワクワクし、少し席を外し帰ってきたら、勝手に友達が収穫だけやってしまっていた気分だ。あの時は絶望だった。と話がそれてしまったが
「どんどん焼くからどんどん食べてね!」
セレスは俺が1人で育てるタイプとわかっているのか、俺の皿には入れてこない。出来る奴だ!ちなみに焼き鳥など、串系の焼き加減はどうでもいい。気にするのは焼き肉としゃぶしゃぶぐらいだ。
「セレスも食べろよ?」
「分かってるわぁ」
「ウチの皿にも入れてやセレス!」
「リルは食べるのが早いから待ちなさい。レナルドさんどうぞ」
「あぁ。ありがとう」
「レナルドさんこれ使ってください」
「これはさっきの塩?」
「そうですよ。あまりかけると辛いので程々に」
レナルドさんは塩をつけて食べる。タレもいいのだが俺はやはり肉は塩だ。
「美味しいです!肉も当然美味しいのですが、やはり塩がいいですね!肉の味は濃いのに塩はさっぱりして、丁度良い食べやすさ!この世界の塩ならまずここまではならないでしょう!」
レナルドさん絶賛だな!俺も食べるか。豚の霜降りは珍しいのだが、オークの肉には霜降りがある。それほど脂肪があるという事だ。こんなの不味い訳がない!俺もオークの肉をパクリ。んめぇ!やっぱ日本の肉より美味いとおもう。これはたまらんな!ご飯が食べたい!
俺達はある程度食べたら焼くスペースを落として雑談する。主に塩と砂糖の事でだ。
「塩と砂糖は普通に売るなら難しそうだな」
「そうですね。まぁ普通の塩や砂糖より品質は明らかに良いですからね」
「セレスやリルはどう思う?」
「そうですねぇ。確かに普通に売るのは難しいですが、貴族に売ればいいのではないでしょうか?」
「ウチはサービスとかつけたらええんちゃうかな?」
「確かに貴族達に売れば売れそうですね。サービスとはどんな物ですか?」
「サービスってのはな塩3キロ以上買えば少し割引とかって感じでやな!」
「ほう。それは良さそうですね!」
「そうだな。まぁまずは割引せずに様子見と言ったところか?」
「そうですね」
「後は宣伝するとかじゃないですか?」
「宣伝ですか。なるほど」
レナルドさんは何か納得したような顔をしている。何かいい案があるのか?
「この塩や砂糖の宣伝についてはお任せください。いい方法を思いついたので」
「それはなんだ?」
「簡単な話、私の知り合いの貴族に宣伝すればいいかと。美味しければ広まるだけですからね」
「なるほど。ではこの件は任せようか。それとレナルドさんの取り分は売上の3割はどうですか?」
「な!?何を言ってるんですか!!そんなの高すぎます!」
いや高いのか?まぁ俺からしてみればそれぐらいあげてもいいんだけど。だって拠点宝珠で買うだけだ。
「高いのか?俺は別にいいんだが」
「私が納得しません!塩や砂糖を全て用意して私はただ宣伝して売るだけ。それだけで売上の3割?ありえないです!1割です!」
「いやそれは少なすぎだろ」
「いえ、妥当です。1割でも多いと思いますよ?こんな仕事があれば誰でもやりたいぐらいです」
「いやレナルドさんだから高いだけであってだな。それにこれからも売ってもらうんだ」
「それでも高すぎます!」
俺もレナルドさんも何方も引かない。塩も砂糖もポイントは掛かるが、1日でポイントは取り返せるから実質タダだ。それに店をレナルドさんに全部任せるんだ。それぐらいでも全然いいんだけど。と話していると
「ならば間を取って2割にしましょう」
「2割か。まぁ俺は別にいいが」
「2割も正直まだ高いですが、これ以上引かなそうですし、ここで手を打つしかありませんね」
さっきまで言い争っていたのが嘘のように解決した。原価が掛からないのだから3割でもいいのだが、まぁこの話はこれぐらいにしておこう。
「レナルドさん余裕があれば大樽をもう2つ用意してほしいのですが」
「それは構いませんが何をするのでしょうか?」
「俺は迷宮に潜ったりすると思うので塩と砂糖が切れてもすぐに持って行けない可能性があるのです。ですので違う者に持って行かせます」
本当は俺が持っていってやりたいが、どちらかというと冒険者稼業を優先させたい。
「なるほど。そう言う事なら用意しましょう」
「用意できたら俺に念話してください。塩と砂糖の値段はレナルドさんに任せます。既にある塩と砂糖の値段について俺はあまり詳しくないですからね」
「分かりました」
「では俺達はそろそろ行きますね」
「はい。何か進捗がありましたらご連絡しますね」
「お願いします」
そう言って俺達は店を出て空を見上げる。時間的に迷宮に潜るのは明日になりそうだ。と俺達は宿屋に戻る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宿屋に戻り自分の部屋に戻る。夕食までもう少し時間があるから今日はゆっくりする。俺とセレスとリル以外の皆はお出掛けしている。
たまには1人の時間を過ごすのもいいか。俺は以前気になった拠点宝珠の設定について女神様に聞こうとしたが、話すと長くなりそうだし、今はゆっくりしようと思って聞くのをやめた。
俺はベットに寝転ぶ。まだ日は落ちきっていないので窓から太陽の光が入る。その光は俺のベットに丁度当たっている。朝なら暑いのだが、今は3時ぐらいか?太陽の光が気持ちい。俺はウトウトしてしまい寝てしまう。
………………
…………
……
……ん?少し寝てしまったか。今日の夜寝れるか心配だ。そう言えばなんか周りが煩いなぁ…。と俺は起き上がる。
「あらぁ?ルーク様起きたのですか?」
セレスが声を掛けてきた。
「あぁ。…何だこれは?」
俺は周りを見渡したら、俺が泊まってる部屋にイーリスや守護王達が集まっている。なぜ俺の部屋に集まっているんだ?
「私含めて、みんなルーク様の事が好きなんだわぁ。言葉にはしないだけでね」
「…そうか」
俺はその言葉に嬉しくなった。そんなの言われたら照れるしかないじゃん!
「今は年少組達がルーク様の好きな所を言い合って、言えなくなったら負けと言うゲームをしてますよぉ」
何だその公開処刑なゲームは!俺しか被害が無いゲームじゃないか!と早く終わらせたいなと思った。見てみると今はレイアが答える番で合った。
「そ、そうじゃな…。妾の主はからかう時もあるが、妾の気持ちを察してくれる時もある。気持ちを察して撫でてくれた時もあった。撫でてくれる時が一番好きじゃな。妾の主は意地悪だが優しいのじゃ」
そうレイアが答える。なるほど。レイアは撫でられるのが好きなのか。そう考えていると周りの守護王達がクスクス笑っている。
「な、何じゃお前達。何故笑っているのじゃ?」
「なんでって…なぁ?」
「後ろを見てみるのだね」
トールとタナトスに言われたトレイアは後ろを振り返る。
「ありがとうなレイア。そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」
「……な、な、なんで起きてるんじゃー!」
俺はニコニコしながら答える。レイアは茹で蛸のように顔が真っ赤になる。いやぁーほんとうちの娘達は可愛いわぁ。
俺だけの公開処刑と思っていたが、年少組に言われると普通に嬉しいわ。
「俺もさっき起きたところでな」
「起きたなら妾に言うのじゃぁ!セレスも起きているの分かっていたなら知らせるのじゃ!」
「あらいいじゃない。ルーク様に気持ちを伝えられて良かったわねぇ」
「くぅー……!やっぱり主は意地悪なのじゃー!」
レイアは怒りながら叫んでいたが、周りの守護王達が笑っている。俺も笑っている。たまには1人で過ごすのもいいが、やっぱり家族といるのが俺にとって一番安心する。
そろそろ夕食の時間なので1階に行き夕食を食べる。夕食も終始楽しく雑談しながら食べ終わり、そして皆部屋に戻って寝る。ちなみにレイアはずっと拗ねていた。明日はようやく迷宮に行くのでワクワクする。
さっき寝たから寝れるか心配だったが俺はいつの間にか深い眠りについていた。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




