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レナルドさんの答え


「……ん」


俺は目を覚ます。今日もいい日差しが窓から入っている。今日はルーシーは来てないようだ。プリンは俺の横で気持ち良さそうに寝ている。ドラグはベットにいない。また朝の散歩か?と考えているとドアがノックされて開く。


「ご主人様おはようございます」


「おはようドラグ。今日も散歩か?」


「はい。まだこの王都全てを覚えていないので、散歩がてら何があるか色々まわっているのです。今お茶を入れますね」


ドラグは相変わらず出来る男だ。しかも毎回俺が起きるタイミングで帰ってくるんだよ。何故そのタイミングで戻ってこれるのかは謎だ。それとドラグの入れるお茶は美味いんだよ。


「どうぞ」


「ありがとう」


朝起きてお茶を飲みながらドラグと話していると、またドアがノックされる。誰だろうな?


「ル、ルークさん!ソーナです!」


そんな声がドアの向こうから聞こえる。ジーナさんの娘、ソーナだ。俺に何の用だろうか?


「開いているから入っていいよ」


そう言うとドアが開きソーナが入ってくる。まだプリンが寝ているが大丈夫だろう。


「最近あまり見なかったけど元気にしてた?」


「元気にしてました!私は冒険者学校に通っているので、宿屋にはあまりいないんです。夜も早く寝てしまうのであまり見かけなかったんだと思います」


「そうか。冒険者学校か。お母さんの影響で?」


「そうです!母に憧れてそれで」


なるほど。ジーナさんも名の知れた冒険者だったらしいから憧れるのは無理ないか。ソーナの成長には期待してしまう。


「そうか。俺も昨日冒険者になったから冒険者ギルドでいつか会うかもしれないな」


「そうなんですか!でしたら私の先輩です!その時はよろしくお願いします!」


先輩か…。良い響きだな。日本にいたときは先輩なんて呼ばれた事は無かったな。


「こちらこそ。それより何か用があってここに来たんじゃないか?」


「そうでした!下にレナルドさんが来てますよ!何でもルークさんに大事な話があると」


ようやく答えが出たか。


「そうか。すぐ行こう。ドラグ、プリンが起きてやるまで側にいてやってくれ。セレスとリルを連れて行く。多分起きてるだろ」


「畏まりました。行ってらっしゃいませ」


ドラグは頭を下げる。念話でセレス達に話すと起きていたので、部屋を出た廊下で合流する。何故この2人かと言うと、ずっと旅していた仲間だからな。ドラグもずっと旅していたが、流石にプリンを1人だけ残すのは可愛そうだからドラグには残ってもらう。それにレナルドさんも大勢で来られたら迷惑だろうし。


「おはようご主人様」


「おはようルークさん」


「おはようリル、セレス。レナルドさんが大事な話があると下で待っているからついてきてくれ」


「ええで!」


「わかったわぁ」


俺達は3人で下に行く。ちなみにセレスはソーナの前だからルークさんと呼んでいる。


1階に行き、周りを見渡すとレナルドさんとジーナさんが喋っている。近付くと少し話が聞こえてしまった。


「それがあんたの答えだね?」


「あぁ…」


「まぁあたいはあんたが後悔しなけりゃどっちでもいいさね」


なんか入りにくい。と考えているとジーナがこちらに向く。


「おや?あんたのお客が来たみたいだよ?」


「ん?あぁ。おはようございますルークさん」


「おはようございますレナルドさん。大事な話があると聞いたのですが」


まぁ大体検討はついている。2日前俺が誘った件だろう。もう少し考えるかと思っていたが、おもいのほか早かった。


「はい。ルークさんが私を誘った件です」


「なるほど。ここではアレなので場所を移しますか?」


「そうですね。そうしましょう。私の家でいいでしょうか?」


私の家…か。もう店とは呼ばないのか。確かに悪い事はしたが、俺達には必要な事だった。いつの日か正直に話して謝りたい。


「構いませんよ」


「では早速行きましょう」


俺達はレナルドさんの家に向かう。中央通りから東の通りにあるのでそこまで遠くない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


レナルドさんの家に到着し、中に入る。相変わらずいろいろな商品が置かれていた棚などには、空の瓶が置かれていた。恐らく前来た時から変わっていない。奥の生活スペースに俺達は通される。


「どうぞ座ってください。今お茶を出します」


「ありがとうございます」


そう言って俺達は座る。レナルドさんがお茶を用意してレナルドさんも席に着く。俺達は出されたお茶を飲み一息つく。そして一息ついた後、レナルドさんが口を開く。


「先程も言いましたが大事な話とは、先日、ルークさんから店を任せたいので力を貸して欲しいと頼まれた件です」


レナルドさんは静かに話し出す。俺はその話を静かに聞く。


「あれから色々考えました。正直に話すと生きる希望さえ見失っていましたよ。職を失った話を、結婚前提で付き合っていた彼女に話すと、一度も怒った事が無い彼女が手の平を返したように怒鳴り散らし振られてしまいました。そこでようやく気付いたのです。彼女はお金目当てに近付いたのだと。自分で言うのも何ですが、私もこの王都ではそれなりに有名でしたからね。ですがこのザマです。ふふ。私も商人の端くれ。人の見る目は中々に自身があったのですが、一番身近にいた者すら分かっていなかったのです。皮肉なものです。自分には見る目が無いです。ですので生きる希望が無かったのです」


レナルドさんは自分に起きた事を話す。誰にも話せなかったからこそ、誰かに話したかった、誰かに聞いてほしかったのかもな。


アハハと笑うレナルドさん。だが俺は笑わない。むしろこんな優しいレナルドさんにつけ込むなんて!と怒りが湧く。


日本にいた頃から男の前で態度をころころ変える女性が嫌だった。だがあの時レナルドさんを誘っておいて正解だったかも。もし誘っていなかったらこの世にもういなかった可能性すらある。


「で、生きる希望を失ってる時にルークさんが来たのです。正直ルークさんの話は私にとって驚きでした。出会って間もない私にルークさんの店を任せたいと言ってきたのですからね。普通ならまずできないですよ、出会って間もない人に自分の店を任せたいって言うのは。ですが私の事を信用できる。そう言ってくれました。その言葉に私は感動しました。商人は信用が命と言われてます。ですので、その言葉は私にとって最高の褒め言葉です」


まぁ俺の守護王達もレナルドさんなら信用しても良いとお墨付きをもらったからという理由もある。


「ですがやはりすぐには答えは出せませんでした。このままルークさんを手伝うか。それか1からやり直すか。それとも私は……。2日間ずっと考えてようやく答えを出す事ができました。その答えを今ここでいいます」


俺は姿勢をもう一度直す。そしてレナルドさんの目を見つめ返す。どんな結果でも受け入れると。


「ルークさん。私はルークさんの手伝いを引き受けます!いえ、手伝いをさせてください!」


その言葉を聞いた瞬間俺は肩の荷が降りた。なんかめちゃくちゃドキドキしたよ!一瞬、静寂な間があり、俺の心臓の音が聞こえてくるのではないか?それぐらいドキドキした!


「本当ですか!?」


「はい!ルークさんが私を信用できると言ったのです。ですから私はそれに全力で答えるまでです!」


「ありがとうございます。レナルドさんこれからもよろしくお願いします!」


「こちらこそよろしく頼みます」


俺とレナルドさんは握手する。良かったよ。俺の店を任せるのはレナルドさんって決めてたし本当に良かった!


「レナルドさん」


「はい?」


「レナルドさんは先程、自分には見る目が無いと言ってましたがそれは違います。何故なら俺という人間を信用してくれたからです。実は俺もこうみえて見る目があるんですよ。ですから落ち込まないでくださいね。俺の事をあの時、信じてよかったと言わせてみせますから」


そうだ。レナルドさんはまだ年齢的には20半ばぐらいだろう。その内また良い人が見つかるだろう。そもそも金目当ての女と結婚しなくて良かった。と俺はレナルドさんを励ます。


「ルークさん…。ありがとうございます」


「いえいえ」


男2人で和んでいる。傍から見たら気持ち悪いんだろうな…。チラッとセレスとリルを見るが無表情だった。せめて何か表情を変えてくれよと思った。


「それで私は何をすればいいでしょうか?」


「まずは俺の商会に登録してください」


「ルークさんは商会を立ち上げたのですか?」


「はい。もちろん年会費と税金はこちらで持ちます」


まぁこれぐらいは当然こちらが払わないと。年会費と税金はなかなか馬鹿に出来ないから額だ。


「それは助かります。本店はすでにあるのでしょうか?」


「本店はまだ無いですね。まぁいい場所があれば買えばいいと思っています」


「そうですか。…それでしたら私の店を使ってはいだだけませんか?」


「レナルドさんの店を?いやここは…」


ここはレナルドさんが長年使ってきた場所だ。思い入れもあると思うのだが…。


「何か問題でもありますか?」


「いやそうじゃないのですが。使えるのであればこれ程良い場所はありませんが…その…本当にいいのでしょうか?ここはレナルドさんの思い出の場所ですし」


「それは大丈夫です。むしろこんな良い立地の店を放置して置くのも勿体ないですからね。使ってやってください」


確かにこんな良い立地を放置するのは勿体ないが…。レナルドさんも本気みたいだな。ならお言葉に甘えるか。


「……分かりました。ありがたく使わせていただきます。と言ってもレナルドさんに任せると思いますがね」


「はは。それは私にとっては有り難いですね。それはそうと売る商品を決めなければなりませんね」


「売る商品は俺が目星をつけてあります。というか俺が用意します。それを売ってもらいたいのです」


「その商品とはいったい…?」


そうレナルドさんは聞いてきたので俺はアイテムボックスから小瓶を2つ取り出す。2つの小瓶には白い粉が入っている。危険な物じゃないよ?


レナルドさんはその小瓶を手に取り間近で見る。ちなみにレナルドさんはアイテムボックスの件は知ってるので目の前で普通に使っても大丈夫だ。


「これは…塩と砂糖ですか」


「流石ですねレナルドさん。そうです。これは塩と砂糖です。これを売ろうかと」


塩と砂糖は旅では必須なので小瓶に入れて持ち歩いている。まぁマヨネーズとかソースとかもあるんだが、これは恐らくこの世界にはまだ無いだろうからまだ伏せておく。


「なるほど。塩と砂糖を売るのですか。ですが塩と砂糖は高級ですし、塩と砂糖を専門に売る店もあるぐらいです」


不安顔になるレナルドさん。ふむ。まぁレナルドさんの反応は分かる。既に塩や砂糖を売ってる店があるのは分かっているし、その店と張り合うなら断然こちらは名が知れてないので不利だ。


まぁレナルドさんはある程度名がしれてるが。だが不利なのは同じ品質で売った場合だ。


「レナルドさんその塩と砂糖を手に取り舐めて貰っていいですか?」


「?分かりました」


レナルドさんはまずは塩を手にとって舐めてみる。ふふっ。驚くぞー?なんたってこちとら日本製の塩と砂糖なのだからな!


「ッ!?これは…何ですかこの塩は!?普通の塩ならばしょっぱいだけですが、この塩はしょっぱいのに旨味がある!じゃあこっちの砂糖は!……ッ!?こっちの砂糖は普通の砂糖よりかなり甘い!こんなに甘美のある砂糖は食べたことありません!」


「ふふっ。分かっていただけましたか。これなら売れるでしょう?」


「もちろんです!既存の塩や砂糖より倍で売れるんじゃないでしょうか!?しかしこんな品質の良い塩や砂糖をどこで?」


流石は日本製の塩と砂糖だ!あの商人がこの世界にある塩と砂糖より2倍で売れると確信しているのだからな!何処で手に入るかはまだ隠しておく。


「申し訳ありませんがそれはまだ言えないです。ただ裏で取引してるとか、あくどい手法で手に入れてるわけではないので安心してください」


「そうですか。いえ疑ってるわけではないのです。裏で取引していたとしても、ここまで美味しいなら必ず噂は出るはずです。ですがその噂も一切ない。恐らくルークさんが作っている、もしくはルークさんとしか取引してないってところですかね?」


流石は商人。かなりいい線言ってるではないか。


「当たらずとも遠からずですかね。今はそれで我慢してください。時が来れば必ず教えます。それはそうと塩や砂糖はどうやって売られているんですか?」


「気になりますが分かりました。塩と砂糖を売る場合は塩壺と砂糖壺と言う物があります。塩壺と砂糖壺には大と小がありましてね、持ってきましょう」


レナルドさんは塩壺大を持ってくる。


「塩壺大と砂糖壺大は同じ大きさですので入る量も同じです。私も塩を補充したばかりですので、壺大は大体これぐらい入ります」


俺は塩壺を持ち上げて壺の重さを測ったり、大きさを確認したりする。んーやはりこれだけじゃどのぐらい入るか分からんな。異世界に行くチート野郎はこれだけで大体これぐらい入るだろうと分かるのに俺には分からなかった。仕方ない。別の方法を探すか。


「レナルドさん空の塩壺はあります?」


「いや無かったと思います。ですが砂糖壺の空きはありますよ。大と小がね。砂糖は高いのであまり手を出せないからよく空になるんですよ」


砂糖壺の大と小を持ってくる。本当に形は塩壺と全く一緒だ。だが、砂糖壺は塩壺より豪華だ。見分け方はこの違いだろう。実にシンプルだ。


俺はアイテムボックスから砂糖1キロを出す。旅で何かあった時用に砂糖と塩は1キロずつ持ってきている。


拠点宝珠で買う時は1キロで買える。もちろん拠点宝珠はこの世界の物ではない為、キロという概念はある。俺は砂糖1キロを砂糖壺小に入れてから大に移す。これで小も測れるって訳だ。


それを10回繰り返すとちょうど1キロの砂糖はなくなる。……これは偶然か?どうやら砂糖壺小は100g、砂糖壺大は1キロ入るようだ。だがピッタリではない。なので約1キロ入ると言う事だ。だがまぁ誤差の範囲だろう。


「ありがとうレナルドさん。この砂糖はあげますよ」


「えっ!?いやそれはいけません!こんな品質の良い砂糖を、砂糖壺大にいっぱいにして貰うなんて!」


「いいんですよ。世話になりましたし、これからも色々世話になるんですから」


まぁお近付きの印にってやつだ。正直拠点宝珠で買える砂糖はそこまで高くない。


「…分かりました。ありがたく受け取ります」


「で、塩と砂糖の売り方ですが…」


「あぁ。そうでしたね。塩壺大はほとんどの各家庭にあります。壺小は主に冒険者が持ち歩く時などに持っているのですが、その塩壺が空になった場合は店に持って行くのです。これは砂糖壺も同じで空になれば塩や砂糖など売っている専門の店に持って行き、店で補充するやり方で売っています。毎回壺ごと売られても壺が家に溜まっていき邪魔になるだけですからね。まぁ砂糖壺を持ってる家庭はそうそういません。貴族や裕福な商人の家の者ぐらいなもんですがね」


ちなみに塩壺大は2つ持つのが一般的で、1つが空になったら補充するやり方が。これは砂糖壺大でも同じだ。


なるほど。相手側は空の壺を持ってきて壺を満タンにして買うのか。ただ半分余っている時に持ってきたらどうなるんだろう?


「塩壺大で、塩が半分余ってる時に持ってきた場合はどうしてるんですか?」


「塩壺大の塩が半分余っている場合は塩を買わせてもらえません。何故かと言いますと、塩壺大をいっぱいにしての値段で売っていますから、それが半分となれば微妙な量の誤差で値段が変わってしまうから買わせて貰えないのです。本当に半分かは分かりませんので基本的に無くなってから買う仕組みになってますね」


つまり半分って言ってるけど、3分の1だとか3分の2の場合もあるから売り手としてはややこしいと言うわけだ。なので空に近いぐらいでしか塩を売らないのだ。これは砂糖も一緒らしい。


昔はそれで半分より少し多いからまけてくれとかで揉めた事があったのでこういう仕組みになったらしい。やはりキロと言う概念が無いとこういう問題も起こるか。


「なるほど。分かりました。まぁ他にも色々売れそうなのはあるが、少しずつ出していきましょう。今はレナルドさんしかいないからあまり商品を出しすぎると手が回らなくなりますからね」


「お気遣いありがとうございます」


「今は砂糖や塩の手持ちがないので後で持ってきますよ。その前に、一緒に商人ギルドに行きますか。この店を本店に、レナルドさんを俺の商会メンバーに登録したいので」


「そうですね。一緒に行きましょうか」


俺達は商人ギルドに向かおうとする。



読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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