冒険者パーティの名前
ようやく手続きが終わり冒険者登録と商人登録を済ませた。まぁ商人登録は今のところ俺だけなのだが。
冒険者ギルドと商人ギルドの登録手続きが思ったより長かったので日もかなり落ちている。昼は何も食ってないからお腹が空いた。さぁ宿屋に帰るか。
俺達は宿屋に向けて歩き出す。相変わらず傍から見たら異様な空気を出す集団に見られて誰も絡んでこようとはしない。まぁその方がいいのだが。
特に誰からも絡まれる事もなく宿屋に着いた。そして俺達は宿屋に入る。
「いらっしゃい!おっ!戻ってきたんだね?」
「はい。冒険者ギルドに行ってました」
あえて商人ギルドは伏せておく。特に理由はないが冒険者ギルドと商人ギルドを両方登録する者は珍しいので話が長くなりそうだと思ったからである。
「あんた達冒険者になるのかい!あんた達ならSSSランクなんてすぐになれそうだね!……おや?あんたは誰だい?」
ジーナはローブを着ているヴィーナに話しかける。フードを深く被っているので顔が見えない。怪しまれてるかもしれない。
「わっちはヴィーナと申しんす。ルークはんの旅仲間でありんす。少し理由があって顔は見せれないんでありんす」
一応旅仲間なので様はつけてない。お前様でもない。まぁ少し理由があるとは男受けするので面倒事にならない為に被っているのだ。
「ふーん。怪しいねぇー」
「ではジーナさんにだけ顔を見せますね」
俺はヴィーナにフードを取るように指示し、ジーナさんだけに顔を見せる。見せ終わるとすぐにフードを被る。
「なるほどねぇ。これはかなりの別嬪さんだねぇ。顔を隠す理由もわかるね」
ジーナはちらりと後ろにいる飲んでいる男達に目を向ける。
「まぁそういう事です。ヴィーナはイーリス達の部屋かセレス達の部屋に泊まらせます。取り敢えず1週間分のお金を渡しますね」
「あいよ!1週間だから銀貨1枚大銅貨5枚だよ!」
俺は銀貨と1枚と大銅貨5枚渡す。
「まいど!食事はどうすんだい?」
「昼から何も食べてないから頼みます」
「そうかい!じゃあ大盛りを持ってきてあげるよ!」
そう言ってジーナが厨房に戻る。俺達は座れるところに座る。するとジーナが料理を持ってくる。
「あいよ!たんと食べな!」
「ありがとう」
俺達は量が多めな食事を食べる。今日も美味いな!そう思いながら皆と楽しく喋りながら食べる。
「何だかんだこれが初めての皆で食べる外食でありんす」
「そうだな。ヴィーナはずっと影にいたからようやく皆揃っての食事だな」
「ふっ。妾のおかげじゃな」
「しかし、食事はまぁうまいが酒は微妙だわい。ワシ達の国の酒の方がうまいわい」
「酒の作り方があまり発展していないのだよ」
そう。この世界にもお酒はある。ビール、こちらの世界ではエールと言うのだが、俺も飲んだ事があるのだが美味しいと言えるほどの味ではない。
いやむしろ不味いかな?何せこっちのエールはキンキンに冷えてるわけではなく、生暖かいのだ。それにくどい。俺も飲んだ時はうっ…てなったな。酒の種類もエールだけだ。
如何にお酒が発展してないか分かる。生暖かいなら氷を入れればいいと思うかもしれないが、この世界での氷は、水を冷やして氷にするのではなく氷魔法でないと氷が作れないと思っている。
酒に関してはこの程度のレベルなので、俺の国のビール、ラガービールを飲んだら革命が起きそうだな。日本酒とかもあるし。でも酒に関しては、商売ではまだ触れないでおく。
「それは仕方ないですね。この世界の甘い物もあまり発展していないようですしね。というか売ってませんね」
まぁ発展してない理由は分かる。この世界には魔物がいるから、魔物がいるのに悠長に料理の研究なんて出来ない。
魔法もそうだが、魔物がいるからより強い魔法を研究する。それに洗濯機とかガスコンロとかも魔法があれば必要ない。そんな事を研究するなら魔物を如何に簡単に倒すかを研究するだろうな。
「確かに甘い物って売ってないやんなー」
「そうねぇ。料理自体があまり発展してないせいじゃないかしら?砂糖はこの世界でかなり高級らしいわぁ」
「甘いもの食べたいのです!」
「ん。私も」
「…我らの国に帰ってからにするんだ」
「そうですよプリン、ルーシー。それにこの世界で料理があまり発展してないのです。甘い物があったとしても、それ程美味しくないでしょう。この世界の食材の品質はかなり良いのですがね」
この世界の料理の事について話す。この世界にケーキが出ようもんなら瞬く間に超有名なお菓子になるだろう。
ミルハイムさんの店でクッキーみたいなお菓子が出てたけど砂糖の味しかしなかった。それも日本で食べてた砂糖より甘くない。肉とかの魔物の素材の品質は良いが、調味料の品質はあまり良くないんだよなこの世界。
しかも普通のクッキーではない。クッキーが出来てから砂糖をまぶしている。それでいてクッキーには味がしないから砂糖の味しかしないのだ。色々と商売出来そうだが、今はそんな話は置いといてと。とまぁ、そんな話をしながら食事を食べ終わり俺達は部屋に戻る。
みんな部屋に戻る前に俺の泊まっている部屋に集まってもらう。少し話したいことがある。そして皆男部屋に集まり各々がゆっくりしながら寛いでる。プリンとルーシーは布団に寝転がってる。
「さてここに集まってもらったのは相談したい事がある」
「あれですね」
「そうだ。あれだ」
「あれとは?」
「トールは鈍いわねぇ。冒険者の件よ」
「そうだ。冒険者のパーティの振り分けとパーティ名の相談だ。冒険者パーティは6人しか登録できない。固定パーティを組まなくても良いんじゃないか?と思うかもしれないが、パーティで有名になるとより知名度が上がると思うんだよな。普通のルークよりも〇〇のルークの方が耳に残るだろうしな」
あとパーティ名があった方がかっこよくね?と言う考えもある。
「なるほど。それは一理ありますな」
「俺達は全員合わせて12人。俺とパーティになれない者が6人いるが、固定パーティを組んだからといって他の人とパーティを組んじゃいけないというルールはないからな」
「それやったらウチは今回我慢しよかなー!旅でも一緒やったからな!ホンマは一緒のパーティがええんやけど誰か譲るで?」
ほう。いつもなら「ウチもいくー!」と一番先に言いそうなのに待てを覚えたか?リルは偉いな。また今度頭を撫でてやるか。
「ルーク様といく」
「わ、妾も一緒に行ってやってもいいぞ?」
ルーシーとレイアか。片や研究を、片やゴロゴロして一緒に行動する機会が少ない年少組達だ。これは楽しみだ!年少組達は俺と一緒に行くか。これならプリンもついてくるか?
「じゃあルーシーだけな」
「な、何故妾は駄目なのじゃ!」
「えっ。仕方なく行ってやる感じが出てるからなー。仕方なくならいいかなー」
「ぐぬぬ…!行くのじゃ!行きたいのじゃー!」
「じゃあレイアも行くと」
おっとつい何時もの可愛いからいじめてしまいたい衝動が…!
「ルーク様。レイアが可愛いからとからかうのは仕方ありませんが、程々にしてあげてね?その内泣くわよ?」
「いや悪い。可愛いからついな」
謝るがレイアはまだ可愛いと言い過ぎなのじゃ!とプリプリ怒っている。まぁ気にせずに話をすすめるか。
「プリン、俺のパーティに入るか?」
「ボ、ボクも我慢するのです。旅も一緒で泊まる時もずっと一緒に寝てたのです。我慢するのです!」
俺は反射的にプリンを抱きしめてしまった。
「ふぇっ!?ル、ルーク様!?」
「えらいぞ!プリン!そんな事言えるなんて俺は嬉しいぞ!」
プリン!俺は絶対についてくると思ったんだがオレの知らないうちに大人になっていたんだなプリン!甘えたなところはまだ子供だけど俺は嬉しいぞ!とある程度抱きしめたところで
「王よ。私も遠慮するのだよ。ゆっくり魔物を観察したいのだよ」
「ワシもどっちでもええぞ」
「タナトス、トールいいのか?」
「私がいると迷宮を降りるペースが遅くなるのだよ。それに王とはいつでも喋れるのだよ」
「ルークの旦那と一緒に行きたい奴を優先すればええ。誰も行かないのならワシを誘ってくれればええ」
「すまんなお前たち」
本音を言うならばトールとタナトスとは一緒に行きたかった。まぁあんまり一緒になる事がないからだ。だが確かにその理由ならば遠慮するのも無理はないか。
まぁだがタナトスもトールもどちらでもいいと言うとは思ってたが。まぁトールは精神的にはかなり歳上の設定だ。流石に気恥ずかしいか?
「セレスとヴィーナはどうする?」
「私も今回は我慢するわぁ。ずっと旅は一緒だったしねぇ」
「わっちも今回は我慢するでありんす。ずっと離れるわけではないでありんすし」
ほう!セレスとヴィーナも我慢したか。この2人も付いてきそうなイメージだが我慢してくれた。偉いぞお前達!
「それにイーリスちゃんに行かせてあげたいわぁ」
「そうでありんすぇ」
「いいのですか?」
「その為にルーク様は秘書を雇ったんでしょう?」
「わっちらの事は気にしなくていいでありんすぇ」
「ありがとうございます」
イーリスは感謝するが少し嬉しそうだ。ふっくらな尻尾がゆらゆらと揺れている。セレスもヴィーナもそれを理解しているのかニコニコしているな。確かに俺もイーリスと冒険したいから秘書を雇った。何だかんだ一番お気に入りだ。
「スサノオとドラグはどうする?」
「…我はどちらでもいい。…それよりドラグは主についていくといい。…我達では主の周りのお世話をできないからな」
「…分かりました。ではわたくしがご主人様の周りのお世話を致します」
やはりスサノオはできる男だ。自分が付いて行きたいのかではなく、誰が付いていくべきかをちゃんと考えている。
「分かった。だが後1人空いてるがどうする?」
「スサノオ、お前さんがいけ。ワシはどちらでも良いと言ったが、この迷宮にある鉱石が気になるからな。ワシも下に降りるにはペースが遅くなるかもしれん」
「…うむ。…そういう事であれば我が主の剣となろう」
なるほど。メンバーは決まった。だがやはり、こうやって守護王達だけで話し合っているのはいつ見てもなんか楽しいし嬉しい。
「分かった。では決まったな。Aチームは俺、イーリス、スサノオ、レイア、ルーシー、ドラグ。Bチームはリル、セレス、トール、ヴィーナ、タナトス、プリンだ」
俺が言うと皆が頷く。まぁバランスは悪くないか?特にプリンがあちらに行ったからこそバランスはいい。
だがあの天使のプリンと離れるのは嫌なのだが…仕方ないか。プリンは俺のアイテムボックスの強化版みたいなスキルを持っている。どちらのチームも持っていく物や冒険での戦利品の回収は大丈夫そうだ。
「では両チームのパーティ名を決めたい。何かいい名前はないか?」
「はいはーい!」
「おっ!いいの頼むよリル!」
「任せとき!Aはルーク様と愉快な仲間達!Bはルーク様の愉快な配下達!」
リルが言うと周りから、おぉ!と言う声があがる。何がおぉ!だよ。これは絶対に阻止しなければ!
「いや待て!そのパーティ名は俺が恥ずかしいから!俺の主張が激しすぎるから!それに目立ちたくないからあまりそういう名前はよそう。だから却下だ!」
「えー駄目なんかー」
「駄目だ!」
「あ、あの。ボクもいいなのですか?」
おっ!天使プリンか!いや種族は天使ではないのだが、天使以上に天使の顔をしている。いやもう何言ってるか分からんが、プリンはいつも真面目だから良いアイデアを出してくれそうだな!
「あぁいいぞ!どんどん出してくれ!」
「Aチームはルーク様大好きパーティ1でBはルーク様大好きパーティ2なのです!」
プリン駄目だ。駄目だが俺は嬉しいぞ!と俺は頭を撫でる。
「プリン嬉しいんだけどそれも少し恥ずかしいかな?でもありがとうな」
「エヘヘ!」
あうっ!その笑顔に俺は何度救われたか…!と可愛いなーと撫でてると、俺の袖をくいくいっと引っ張る者がいる。振り向くとルーシーだ。
「Aルーク様愛してるパーティ1。Bルーク様愛してるパーティ2」
いやこの名前は絶対に撫でられたいからこういう名前にしたな…。だがまぁルーシーも可愛い!ルーシーも頭を撫でてやる。求めていた物を貰えたのでルーシーは無表情だがご機嫌が良いのが分かる。すると今度はレイアが近付いてくる。
「わ、我が主よ。妾も考えた」
「おっ!レイアもか。どんなのだ?」
この流れだとプリンとルーシーが撫でられて少し嫉妬したレイアが妾もと来たのだろう。
「Aは妾の主だいす…す……な、何でもないのじゃ」
まぁそうだよな。言えるはずがないが、あのツンデレレイアにしてはかなり頑張った。近くにいるレイアの頭を撫でてやる。
「な、何をするのじゃー!」
「気持ちは伝わったよ。ありがとうな」
プリンとルーシー、レイアを纏めて撫でてやる。プリンはニコニコしてルーシーは無表情だが何処となく嬉しそうだ。ずっと俺の目を見てるし。レイアは少し嫌そうな顔をしているが全く逃げない。
そんな俺と年少組のやり取りを見て他の守護王達はクスクスと笑っていたり、和んでいる。その後もイーリスや守護王達からパーティ名を考えて出してもらうがパッとしたパーティ名は出なかった。どうしようかなと考えていると
『ルーク様ぁー!定時連絡ですぅ!今何をしているんでしょうか?』
「おっエールか。丁度いい時に連絡してくれたな。今少し考え事をしていたんだ。一緒に考えてくれ」
本来念話は心の中で念じれば話せるのだが、今は周りに俺達しかいないから口で喋っている。
『わ、分かりましたぁ!何について考えているのでしょうか?』
そう言われたので俺は冒険者に登録した事、冒険者パーティは6人しか固定パーティを組めない事、俺やイーリス、守護王達を含めて全員で12人いる事、6人ずつ別れてパーティを組む事、そしてその2つのパーティ名を何にするかに悩んでいる事を話した。
『近くにルビーやシーナがいますので一緒に考えてきますぅ!』
念話が切れる。エールはドジなところがあるからちゃんと話を理解してるのか心配だ。と数分待っていると。
『考えてきました!パーティ名は…』
エールからパーティ名を言われる。ふむふむ。悪くないんじゃないか?まぁ良いか分からんが俺達が考えたパーティ名よりはいいと思う。
「よし。その名前をみんなに聞いて見るから少し待っててくれ」
一旦エールと念話を切る。
「エール達最古参のメンバーにパーティ名を考えてもらったけどなかなか良いパーティ名が上がった」
「なになにー!?きになるなー!」
「早く教えてほしいなのです!」
「ん。きになる」
「分かった。では言うぞ。俺がいるパーティは王の盾。そして守護王達のパーティは王の剣だそうだ」
皆はそのパーティ名を頭の中で2〜3回反芻して頷いている。
「悪くねぇじゃねぇか」
「私も良いと思うのだがね」
「…主がいるパーティは王を守ると言う事で盾。…主がいないパーティは主の剣となるか。…我も良いと思う」
「私もそれでいいわぁ!」
「かっこいいんす!」
「わたくしも気に入りました」
「私もそれで大丈夫です」
「中々やるではないか。あの者たち」
皆から反対の意見は聞こえない。スサノオは考察までしていた。
「俺も良いと思う。それに王の盾や王の剣は何処かの国に仕えている者か、それとも亡国の生き残りの騎士なのかとか噂されるかもしれないが、まさか王がパーティにいるとは思わないだろうな。俺達の正体がバレなきゃそれでいい。噂でも何でもすればいいからな」
「そうですね。探ってくる者がいれば消せばいいだけですからね。私達なら証拠も無く消せるでしょう」
物騒だがその通りだ。イーリスさんもかなり殺る気ですね。
『エール聞こえるか?エール達が考えたパーティ名は採用された。考えてくれてありがとうな』
『えぇ!私達が考えたパーティ名になったんですかぁ!?凄く光栄なのですが、本当によいのでしょうか?』
『皆も納得してたからいいんだよ。その内何か褒美をやらんといけんな』
『褒美なんてとんでもないですぅ!』
『俺もまだ何も考えてないからまだ先になるかも知らんがな』
褒美をいらないと言われてもあげる。恐らくそれぐらいの事でって思うかもしれないが、それぐらいの事を疎かにするのは王としては失格だろう。気持ちは嬉しいんだがな。問題を解決した事への褒美は他の配下達への示しになるし。
『褒美は最古参全員だからルビーやシーナにも伝えてやってくれ』
『わ、分かりましたぁ!』
どうにかエールは分かってくれた。そしてエールから今日のトワイライト王国の状況を聞く。特に何も無い。
まぁ何も無いのが一番だが。頻繁に問題が起こっては王国の治安を疑ってしまう。トワイライト王国の状況を話して少しエールと話してから念話を切る。
「さて冒険者パーティの振り分けと冒険者パーティの名前が決まった。商売に関して今はレナルドさん待ちだからな」
俺の手持ちの金貨は38枚。イーリスに預けてる金貨もあるが商人ギルドを俺以外のメンバーにも登録させたいし、支店も出したい。今はお金が足りないのだが、商売の目処はたっているからまぁ大丈夫だろう。
「取り敢えず今日は寝よう。もう外はかなり更けっているからな」
俺の言葉にみんなが頷く。
「では解散。皆おやすみ」
そう俺は言う。他の皆も各々がお休みと挨拶しているのが中々に微笑ましい。ほんとみんな仲が良い。俺、プリン、ドラグ以外が部屋を出たので俺達は寝る準備をする。
ヴィーナはセレス達の部屋に泊まるらしい。俺はベットに入る。プリンは当然の様に俺の布団の中にいた。
プリンは俺がいないともう寝れないんじゃないか?と心配になるが、さっきは自分から我慢すると言ったんだ。大丈夫だろうなと思う。そんな事を考えていたらいつの間にか深い眠りにつく。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m




