職業鑑定所
冒険者ギルドの受付嬢サーシャから冒険者カードの発行は少し時間が掛かる為、職業鑑定所に行ってはどうかと言われたので行くことにした。
職業鑑定所は冒険者ギルドの2階にあるらしい。俺はあまり興味がないんだけど。だって無属性魔法と剣しか扱えなさそうだし。まぁ剣も扱ったことがほとんど無いから使い方をあまり良くわかって無いが。
そして俺達は今、冒険者ギルド2階の職業鑑定所のドアの前にいる。あまり長居する事はないだろうし、話を聞くだけ聞いて早く出るか。俺はドアをノックする。
ん?留守か?ドアをノックしたが返事が返ってこない。もう1回ノックするがやはり返事が返ってこない。いないのか?と思ってドアを開けてみる。勝手に入ってもいいのか分からんが取り敢えず入ろう。
中に入るとそこには机と2つの椅子があり、その内の1つの椅子におばあさんが座っている。居るのかよ!
「すまないねぇ。この歳になると大きい声を出すのが出来なくてねぇ」
「あぁ。そういう事でしたか。それでしたら気にしないでください」
「ありがとうねぇ。それよりあんた達は職業を鑑定しに来たのかい?あんたの後ろの者達はどうもそうには見えないんだがねぇ」
この婆さんは何かを感じたのだろう、すぐに守護王達の異常さを察知した。すごいな婆さん。
「後ろの者達は既に職業は決まっているので大丈夫です。俺だけ鑑定してほしいです」
「そうかい。じゃあ見るとするかね」
「失礼ですが当たるのですか?」
本当に失礼だが聞いてみる。
「あたしの鑑定はスキルじゃからな。百発百中さね。じゃが自分が求めていた職業じゃない者はあたしが鑑定した職とは違う職を選ぶ事もあるんじゃ。例えば剣士になりたいのに弓を使う職業を薦められたり、その逆も然り。もっと言えば魔法使いになりたいのに戦士を薦められたりとな。まぁ自分の道だから好きに進めばよいので、あたしも止めはしないんじゃが。あたしが薦めるのはあくまで向いていると薦めるだけで、絶対にこの職業なれと言ってるわけじゃないのじゃ。なので剣士になりたいのに弓使いと言われたが剣士になる事も可能じゃ。努力すれば何にでもなれる。…があたしが薦めた職業にならなかった者が出世したなんて話は聞いたことがないのじゃがな」
まぁ魔法使いを目指してるのに剣士を薦められたら簡単に諦める事は出来ない。だけどこのおばあさんが薦めた職業ではなく他の職業を選んだ者が有名になった話は聞かないらしい。
「では逆に有名になった者もいるんですか?」
「そりゃそうじゃろ。何十年もこの職についてるんじゃ。有名になった者は数え切れん。ここのギルドマスターも元はSSSランクの冒険者だったのじゃ。ギルドマスターに職を薦めたのはあたしじゃからな」
「そうなんですか。それはすごいですね」
これは少し期待できそうか。いや内心ワクワクしているな!だが俺はそんな子供の一面を出さずに冷静に返事をする。
「ではそろそろ始めるとするかのう。右手を出すのじゃ」
「はい」
そして俺の右手をおばあさんが握る。すると俺とおばあさんの手が淡く光る。
「ふむふむ。なるほどな。お主は少し特殊な職業じゃな」
「そうなんですか?」
「うむ。なかなか珍しい職じゃな。あたしも職業鑑定を始めて50年は経つが、この職が出たのは2回目じゃな」
まじかよ!?50年で2回目とか…。一体どんな職なのかワクワクする!まさか賢者とか剣聖とか!?……いや剣聖はないな。だったら無属性しか使えない俺は賢者もないか。いやあるかもしれないか?夢見たっていいじゃないか!精霊使いとかもいいな!
「…で、その職業は何ですか?」
「ふむ。まぁ少し待て。もう少し鑑定するから」
それからおばあさんは数分黙る。まだか?
「ふむ。分かったので伝えるぞ」
「お願いします!」
「あたしは魔法適性も見る事が出来るのじゃが、お主の魔法の適正はない。じゃが無属性魔法にはかなりの適性を持っているようじゃな。あたしも長年やってきてこんなに無属性の適性がある者は初めてじゃ」
「そうですか」
いや知ってますけどね。魔法適性が無属性しかないってのは。それで俺がどんだけ落ち込んだか。だがまぁいい。まだ俺にはレアな職業が確定しているからな!これも女神様の贈り物かな?いやぁー女神様には感謝だわー!と俺はワクワクしていた。
「次に薦める職業なのじゃが、こちらは相当珍しい職業じゃ」
分かっていますよ!いつまで焦らすんですか!もったいぶらずに早く教えて下さいよ!
「では薦める職業を言う。……モンスターテイマーじゃ」
「モンスターテイマー?」
…モンスターテイマー。いや確かに珍しいんだろうけど。俺の配下達はスライムやドラゴンに狼とか確かにモンスターテイマーっぽいけど。だがこんな職業が50年に2回?それ本当?もっと多いよね?
「そうじゃ。ただし普通のモンスターテイマーじゃないぞ?」
はいきましたー!確定演出!このおばあさんが50年で2回しか見たことないと言ってたから、かなり特殊なモンスターテイマーだろうな!ワクワクするぜ!
「で、その普通のモンスターテイマーじゃないとしたらどんなモンスターテイマーなのですか?」
「ふむ。これはプラントテイマーじゃな」
「プラントテイマー…」
「そうじゃ主に植物の魔物をテイムできるのじゃ」
いやプラントが植物ってのは知ってるよ?だけどプラントか…。おばあさんに話を聞くとこの世界のモンスターテイマーには色々種類があるらしいのだ。
普通のモンスターテイマーは主にそこら辺にいる魔物をテイムできる。ホーンラビットやジャイアントボア、スライムと言った魔物だ。もちろんゴブリン等もできる。
特殊なモンスターテイマーとはドラゴンテイマーとかアンデットテイマーなど普通ではテイム出来ない魔物をテイム出来るのだ。それだったらドラゴンテイマーとかが良かったなぁー。
「そうですか」
「何をそんなに落ち込んどるのじゃ?プラントテイマーはこの世界にほとんどいないぞ?」
「いやまぁそうかもしれませんがね…」
「ふむ。じゃが安心せい。お主にはもう1つ特殊なモンスターテイマーの素質があるのぉ」
「…えっ?マジですか?」
「マジじゃ」
はいきましたー!主人公補正かな!?まぁプラントテイマーなんてパッとしないテイマーよりやはりドラゴンテイマーとかデーモンテイマーとか期待したいな!
いやデーモンは怖そうだから少し考えるがプラントよりはいいな!強そうだし!ってか特殊なモンスターテイマーの素質を2つ持ってるとか凄いんじゃないか?
「特殊なモンスターテイマーの素質を2つ持ってるのは珍しいのですか?」
「珍しいぞ。じゃが過去には素質を3つ持っている者もいたな。それにモンスターテイマーの素質と特殊なモンスターテイマーの素質を持っている者もいた。まぁそこそこ珍しいな」
あっさいですか…。その話を聞いたら特別でない気がしてきた。まぁいいか!あと1つの特殊なモンスターテイマーはなんだろうな!
「で、もう1つの特殊なモンスターテイマーは何なのですか?」
俺は興奮気味に婆さんに聞く。
「ふむ。これはインセクトテイマーじゃな」
「……ん?今なんて?聞き間違いではないなら今インセクトとか聞こえたんですが…」
「だからそう言ったんじゃよ。インセクトテイマー。つまり虫をテイム出来るのじゃ」
プラントテイマーはまだいい。いや食虫植物とかそういう植物はおれもあまり好きではないのだが百歩譲って虫よりはいい。
よりにもよってインセクトテイマーかよ…。まぁ最初に頭に浮かんできたのはもちろんGだ。あんなのを間違えてテイムした時にはと考え体がブルッと震える。
G以外にも嫌いな虫はいる。基本俺は虫が苦手なのだ。ムカデとかだ。ま、まぁテイムしなけりゃいいだけだ。まだ虫と言うよりGが仲間になるなんて決まってないんだ。
それにテイム出来たとしてもこちらからテイムを切り、逃がす事も出来るだろう。俺は確固たる意志を持ってGだけはテイムしないと心に刻む。
「なんじゃ?その落ち込んだ顔は。プラントテイマーもインセクトテイマーもかなりレアな職業じゃぞ?」
「そうですか…。いやそうですね。ありがとうございます」
そうだ。プラントテイマーもインセクトテイマーもレアなのだから喜ぶべきだ。そもそもテイマーに向いている事が分かっただけでありがたい。おばあさんには感謝しないと。
「感謝などよい。あたしはこれが仕事だからね」
「お金は取らないのですか?」
「そうじゃな。と言うよりお金は冒険者ギルドから出ているからな」
「そうなのですか。それとテイムはどうやったら出来るのですか?」
「そうじゃなー…。あたしはモンスターテイマーじゃないから確かな事は言えんが、魔物にも意志はある。お互いの合意の上でならテイム出来ると聞いたことがある。要は魔物側が従っても良いと思っているならテイム出来るという事じゃな。仲間にしたいならば無属性魔法の〈従魔契約〉を覚えないといけないのじゃが、そこまで難しい魔法じゃないのですぐ覚えられる。と言うよりこの魔法はモンスターテイマーじゃなくても使える冒険者は多い。簡単じゃからな。だがモンスターテイマーしか使わない魔法じゃ。この〈従魔契約〉はテイムしたい魔物に自分の魔力を少し流し込む魔法じゃ。もし魔物が従魔契約の魔法を受け入れるのであれば、魔物の魔力が今度は自分に流れ込んでくるのじゃ。そうして従魔との繋がりを作るのじゃ。もし失敗ならば魔力は流れては来ないから気を付けるのじゃぞ」
「丁寧にありがとうございます」
確かな事は言えんがと言いつつ、凄く詳しいなこのばあさん。まぁ長年この仕事をしてれば色んな職に詳しくなるんだろう。
「あたしはあんたが有名になると思うからな」
「何故そう思うのですか?」
「年寄りの感は良く当たるからのぉ」
「そうですか。ではおばあさんの期待に添えるよう頑張ります」
俺は席から立ち上がる。
「また何か聞きたいことがあれば聞きに来るとよい」
「はい。その時はお願いします」
最初はあまり興味がなかったが、なかなか有意義な時間になった。と俺達は職業鑑定所からでる。
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俺達は職業鑑定所から出て冒険者ギルドの受付、サーシャに会いに行く。そろそろ冒険者カードが出来ているかな?列に並び俺達の番になる。
「あっ!ルーク様!冒険者カードが出来ていますよ!これが冒険者カードです!どうぞ!」
そう言われながら冒険者カードを渡される。……ん?俺の冒険者カードというより俺達の冒険者カードの色が緑になっている。確かに一番下のランクはFで茶色だったはず。
「冒険者ランクはEからになっているが良いのか?」
「冒険者ランクFというのは、主に冒険者学校に通う冒険者見習いや、子供の冒険者だけです。冒険者ランクFは街の手伝いなどしか依頼は受けれなく、ゴブリン討伐の依頼は受けれません。ゴブリン討伐の依頼はEランクからです。つまり冒険者ランクFというのは冒険者学校に通う者、もしくは子供の冒険者だけで、討伐依頼が出来ないランクになりますね」
そうなのか。年少組の冒険者カードは緑だ。もしかしてアレが聞いたか?
「この子達の冒険者カードが緑なのはどうしてですか?」
「プリン様、レイア様、ルーシー様に関しては3級までの魔法を扱える。そして旅人という事が大きいので、冒険者ランクFではなくEからにしました」
やはりか。隠蔽魔法でイーリスや守護王達の魔法を3級まで使えるという事にしていた。良い方向になったな。これで皆冒険者だ。
「そういう事か。わかった」
「冒険者パーティの登録はどうしますか?」
「いやまだ考えてないから大丈夫だ。それにまだやる事があるから今日はこれで失礼する。次来たとき考えておくよ」
「分かりました!」
「また来る」
そう言って俺達は冒険者ギルドを後にする。次は商人ギルドだ。忙しい。と俺達は冒険者ギルドを出て商人ギルドを目指す。
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