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転移門開通


中央通り東から入り組んだ道を進み、ようやく物置小屋に着いた。ミルハイムさんが言うように物置小屋はそこまで大きくない。というより小さい。それに人の通りも少ない。


「うん。いい場所だな」


「そうねぇ。ここなら大丈夫じゃないかしら」


「ようやくやなぁー!」


「長いようで早かったなのです!」


「そうですね。ですがまだやる事は多いですからね」


「そうだなー」


そんな事をみんなで話す。時間は恐らくお昼はもう過ぎているだろう。と考えているとフードがごそごそと動く。今日は少し遅い起床だ。


「……ルーク様おはよう」


「おはよう。今日は起きるのが少し遅いな」


「うん。セレス、リル、プリン、ドラグおはよう。ヴィーナはいないねー」


「おはようララちゃん」


「おはようやララ!」


「ララちゃんおはようなのです!」


「ララおはようございます」


「ヴィーナはいま違うとこにいるからな」


「そっかー!……ん?」


ララは何時もはいない顔を見つけ、興味深そうに見つめる。アルマもここに妖精がいるとは思っていなかったらしくかなり驚いているようだ。ララは俺の肩に座りながらアルマを見つめている。


「あなただれー?」


「……アルマです」


「ふーん。ララはララっていうのー!」


「はぁ」


「ララ、アルマは今日から仲間になったんだ。仲良くしてやれ」


「わかったー!」


アルマとララは話し出す。まぁララが好奇心旺盛だからアルマに色々と一方的に質問しているんだが。その間に


「俺は少し物置小屋の中を見てくる」


ララをドラグに預け、俺は物置小屋の中に入る。誰かが住み着いている形跡はないか。中は広くはない、少し狭いが大丈夫だろう。しかし汚い。埃が多い。セレスに頼むか。


「セレス、埃が少し多いから風魔法で巻き上げてくれ」


「分かったわぁ」


「その後にこの物置小屋に誰かが住み着かないように結界を張ってくれ」


頷いたセレスはまず風魔法で小屋の埃を巻き上げて外に出す。そして光の結界で光を屈折させ、外から見たら物置小屋がそこには無いように見える。セレスは光魔法も使えるから便利だな。それにセレスは仕事が早い。


「終わったわぁ」


「そうか。じゃあ一度ミルハイムさんの店に戻るか。ララ、アルマいくぞー!」


「はーい!」


「……」


ララとアルマを呼び戻す。アルマは返事をしなかったが、まぁ最初はこんな感じでもいいかと俺は勝手に納得して皆でミルハイムさんの店に戻る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「いらっしゃいま……これはルーク様。ミルハイムさんが、ルーク様が来たら奥に通すようにと言われています。ささ、奥にどうぞ」


ミルハイムさんの店に入るなり従業員が話しかけてくる。奥にと促されたので従業員の後に続く。従業員がドアをノックして「ルーク様をお連れしました。」と言うと中から「入っていいぞ」と返ってきたのでドアを開けて入る。


「ルーク様お待ちしておりました!そちらにお座りください」


「ありがとうございます」


俺はふわふわな椅子と言うよりソファーに座る。座るとすぐにお茶とお菓子が持ってこられる。そのお菓子の匂いに釣られてかは知らないが、フードの中からララが顔を出す。


「お菓子ー?」


そんな言葉を呟きながら、ふわふわと飛びながらテーブルの上に置いてあるお菓子の近くにちょこんと座る。これにはミルハイムさんも従業員さんもビックリしている。


「…こ、この娘は妖精ですか!?」


「あー…そうですね。旅仲間です」


「よ、妖精なんて初めて見ました!こんな近くで見れるなんて!」


商人が妖精を見ると商売繁盛などのご利益があると言われているので、商人からしたら一度は会いたい種族らしい。


「お菓子食べていいー?」


「えぇ!良いですとも!遠慮なく食べてください!」


「食べる前にミルハイムさんに自己紹介しなさい」


「うん!ララはララっていうのー!」


「これはご丁寧に。私はルーク様と取引をさせてもらっているミルハイムと言います。以後お見知りを」


「ミルハイムー!お菓子ありがとうー!」


「いえいえ」


ミルハイムさんはニコニコしながら話している。可愛いのかミルハイムさんデレデレだ。話を切り出さないといつまでもデレデレしてそうなので話を切り出す。


「ミルハイムさん、中央通り東の物置小屋の件ですが……」


「おやそうでした。これは失礼しました」


話を切り出した途端目つきや雰囲気が変わる。やはりさすができる商人だ。


「で、中央通り東の奥にある物置小屋は如何でしたか?」


「はい。問題ないです。あの場所を借りたいです」


「畏まりました。しかしあんな場所に物置小屋を借りるとは何をしようと……いえこの件には詮索しないでおきましょう」


商人の勘なのか知らないが、何かを察して深く詮索するのをやめてくれたミルハイムさん。詮索しないでくれるのは本当に助かるよ。


「助かります。物置小屋は購入ではなく借りたいです」


「畏まりました。ではこちらの書類にルーク様が目を通し大丈夫そうならサインをお願いします」


1枚の書類を渡される。内容は期日までにお金を払いに来ることや家や物置小屋を借りてる場合、家を破損してしまった時は借主が修繕する事の旨が記載されている。まぁ見たところ特に問題はないな。とサインをする。


「この書類にも書かれていますが支払いの期日は月の初めの日にお願いします。借りてから一月(ひとつき)目はサービスで無料にしていますのでよろしくお願いします」


この世界には時間を計る時計などは無いが、カレンダーっぽいのはある。名前は聞いてないのでカレンダーか分からないが、恐らくこれも昔の勇者が広めたんじゃないのか?


カレンダーは量産が出来るみたいでほとんどの家庭はカレンダーを持っている。だが紙は高級なのでほとんどのカレンダーは羊皮紙で作られてたりしている。


ちなみにミルハイムさんの店から家を借りる場合、一月(ひとつき)目はサービスで無料にしているから、1ヶ月だけ借りて後は手続きを取り消すなどは当然できない。


最低でも半年、6ヶ月は借りないといけない。もしすぐに解約したい場合なら6ヶ月分のお金を支払うと手続きを取り消す事ができる。


「分かりました。中央通り東の物置小屋は銀貨5枚ですよね?」


「はい。銀貨5枚でお願いします」


「では6ヶ月分で金貨3枚でお願いします。もし6ヶ月以上借りるか、手続きを解約するかはまた言いにきます」


「畏まりました。鍵を渡しておきますね」


この世界では鍵もある。だが日本みたいな複雑な構造ではなく、鍵を入れて横に動かすだけの簡単な仕組みだ。昔は家に鍵はなく、誰でも入りたい放題だったので勇者が簡単な鍵だけどこの世界に広めたらしい。


まぁある方がありがたい。俺達は結界などあるけど一般人は結界など張れないし。


「ありがとうございます」


「こちらこそありがとうございます!いい取引が出来ました」


「では俺達はこれで」


「はい」


俺達はミルハイムさんの店から出る。ララもミルハイムさんと仲良くなったのか手を振っていた。さて少し面倒だがまた中央通り東の奥にある物置小屋に向かうか。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


先程ミルハイムさんの店から正式に借りる事になった物置小屋に戻ってきた。さてパパっと済ませますか。


「少し準備してくる。待っててくれ」


そう言いながら1人で俺は物置小屋に入る。傍から見たら俺が何もない場所に消えたと思うだろう。まぁ一応周りに誰もいない事を確認して入ってるから大丈夫だ。


しかし本当に狭い。まぁ物置小屋だからなんだが。畳で言うなら6畳ぐらいか?


俺はアイテムボックスから転移門(テレポータル)設置装置を出す。転移門(テレポータル)設置装置を起動すると、設置された時の映像が視覚化される。高さも大丈夫だな。まぁ真ん中で良いだろうと設置する。


そして門ができたら対になる門を選択できる。対になる門は今のところ1つしかない。トワイライト王国の城、黄昏城の2階にある東南の部屋に1つだけ既に門を設置している。


もしその部屋に2つ門があったら選択肢は2つになる。選択ができたら門が対となる門と繋がる。簡単だ。入り口はトワイライト王国の2階の部屋の景色が見える。


恐らくあちら側ではこっちの光景が見えているのだろうな。俺は物置小屋から出て


「設置できたから行くぞ」


俺が言うと皆頷き物置小屋に入って行く。アルマは何が何だか分からないような顔をしているが無理もない。でもいつまでもそこにいられては困る。


ちなみに状況を把握してないのはアルマ以外にもう1人、ララだ。だがララは肩に座っているだけだから今の状況が把握してなくても楽しそうな顔をしているだけだが。


「ほらアルマもいくぞ?」


「い、いくって何処にですか?」


「それは俺の国?まぁとりあえず物置小屋に入れよ」


俺はアルマの背中を押して物置小屋に入れる。門がちゃんと作動してるかはドラグ達が確かめてくれて、大丈夫そうだから既に門に入ってる。


小石や小物などを入れてあちら側に届いているかを、あちら側にいるイーリスに確かめてもらうというやり方だ。アルマは物置小屋に入るとまた驚いている。


「先程の方々は何処に行ったのですか!?それとこの門は何ですか!?」


「アルマ。お前あまり喋らない奴かと思ったら結構喋るんだな」


「っ!?」


驚き過ぎて素を出してしまったのか少し頬を赤らめている。アルマも可愛いところがあるじゃないか。まぁでも今は門に早く入ってほしい。


「アルマ。早くあの門に入れ」


「本当に大丈夫なのですか?」


「大丈夫だ。俺の側にいた者達もその中に入っていった」


「わ、分かりました」


意を決したのかアルマは恐る恐る門に近づく。あー…これはまた時間掛かりそうだなと俺は思ったのでアルマの背中を少し強めに押す。


「きゃっ!?」


可愛らしい声を出しながら門に入っていく。門からは向こうの光景が見えていて、アルマは転けている。少し強く押しすぎたか、と考えながら俺も入る。入った瞬間、ほんの一瞬だけ浮遊感があり次の瞬間には転移門の向こう側にいた。なるほどこんな感じか。と門を通った事に浸っていると


「なんで押したんですか!」


「…長そうだったから」


「私のタイミングというのがあるんですよ!」


プリプリと怒っている。すると俺の影からヴィーナが出てくる。


「この娘は煩いでありんすぇ」


「ヴィーナもずっと影の中ですまないな」


「気にしてないでありんすぇ」


ヴィーナは笑顔で言ってくる。ヴィーナがいきなり影から現れたのでアルマはかなりビックリしているが、まぁそんな事は放っといて周りを見渡すとイーリスがいた。なんかイーリスに会うのは久しぶりだなと考えながら近づく。


「主様!お待ちしておりました!」


大きなしっぽをゆらゆらと揺らしながら笑顔でそう言う。んーやはりイーリスは可愛い!と俺はイーリスの頭を撫でる。


「あっ…」


「ただいまイーリス。留守の間はありがとうな」


「はい…」


顔を俺の胸のあたりに埋める。寂しかったのだろう。頭を撫でるといつも思うのだが、イーリスのふわふわな耳が気持ちいいんだよ。


さて充分撫でてやったから話を進めようとしたが、もう1人撫でてやらないといけない娘がいる。壁側に立っておりイーリスとの再開を邪魔しないようにしているけど……


「エールもこっちにおいで」


「…ルーク様ぁー!」


走りながら抱きついてくる。エールの豊満な胸が当たってるんだが…。と頭を撫でてやる。


「さみじがったでずぅー!」


「わかったわかった」


そう言いながら撫でる。まぁエールは1人で抱え込むから、エールの事も少し心配ではあったんだよ。まぁこれは何か対策でも考えるか。そう考えているとイーリスが


「主様。この娘は誰でしょうか?」


「あー俺が言ってた女だよ」


「この娘がそうですか」


実はイーリスとは定期的に連絡のやり取りをしていたので秘書の事も伝えてある。イーリスとは連絡を取り合うだけでなく、少しやってほしい事があったからそちらもやってもらってる。エールの事も見てもらっていたのだ。メンタル的にも。


「さてアルマの事も皆に伝えたいからな。一度皆で集まりたいんだが…」


「主様。謁見の間にて伝えてはどうでしょうか?たまには王らしい事もしないとダメなのではないかと私は思うのです」


謁見の間かー。そう言えば最近は王らしい事は何もしてないか。やりたくないがやるしかないか。


「そうだなー。確かに最近は何か伝えると言っても会議室とか食事の席で皆が集まってる時とかだな。久しぶりにやるか。イーリス、他の守護王達を謁見の間に集合させてくれ。謁見は俺の準備が出来次第やる。今回はエール、ルビー、シーナの最古参のメイドとアルマも立ち会うように」


俺がそう言うとイーリスは「分かりました」と少し張り切っている。エールはまさか最古参が謁見に出るとは思ってなかったらしく驚いているが「畏まりました」と返事をしている。


アルマは俺が王と初めて知り驚いているというより唖然としている。口が開いたまま全く動かないがまぁ放っといていいか。


「俺は少し風呂に入りたいから風呂に行く。エールもついてこい。俺が風呂に入ってる間に皆の準備を勧めてくれ。イーリス、もし手放せない仕事がある者がいるなら連絡してくれ。少し時間をズラすからな。ドラグはメイドをアルマにつけてやれ。何をしていいかわからんだろうからな。それとルビーとシーナにも連絡忘れずにな」


「分かりました」


「畏まりました」


「か、畏まりましたぁ!」


「では…一度解散!」


そう言って皆部屋を出ていく。各々がやるべき事を理解しているからか、動きに迷いがない。まぁアルマはここに来たばっかりだからオロオロしているのは仕方ないが。そう考えながら俺はエールを連れて風呂に向かう。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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