幕間、その頃王都では
ルークが王都ファルシオンに着いた頃、トワイライト王国ではイーリスと守護王達がいつもの会議室に座っている。イーリスや守護王達はルークが知らない所で情報を共有しあっている。
それは全て大事な王であり、父であるルークの為である。なのでイーリスや守護王達は誰1人面倒くさいと投げ出す者はいない。むしろ皆は積極的に参加している。あのレイアやタナトスでさえだ。ちなみにルークが住む城の名前は〈黄昏の城〉という名前である。
イ「さて。いつもの様に会議を始めましょうか」
ト「今日は何について話すのかのぉ」
イ「そうですね。まず私が気になったのは主様の事を知ろうと、追跡者を放った者がいます。それがランス辺境伯ですね」
タ「ランス辺境伯と言えばこの迷いの森の領主なのだね」
レ「ふむ。何故その様な輩が我が主の素性を知りたがるのじゃ?」
イ「素性というか彼は妖精女王、つまりフリージアさんと知己を得るために様子を見ると言っていたようです。襲ったりとかは考えてなかったらしいですが、ヴィーナによって殺されましたけど」
ス「…仕方あるまい。…我等の国はまだ知られる訳にはいかないからな」
ル「ん。理由がどうであれ探る者殺す…」
イ「そうですね。それは仕方のない事です」
ここに心優しい人間がいれば何も殺すまでしなくてもいいのでは?と思うかもしれないが、イーリスや守護王達は、ルークや国の為ならば誰であろうと殺す事は躊躇わない。追跡者が子供だったとしてもだ。大人だろうと子供だろうと敵は敵という考えだ。
イ「それでランス辺境伯が治める街、アスカロンに密偵を送ろうと思っているんだけど」
何故イーリス達がランス辺境伯の治める街、アスカロンについて知っているかと言うと、以前ヴィーナがランス辺境伯に妖精女王フリージアの手紙を届ける為にアスカロンに向かったからだ。
だがルークはアスカロンという街の名は知らない。ルークはランス辺境伯に手紙を渡した後のランス辺境伯の行動しか興味が無かったから特に知る必要も無いと思っていたからだ。
手紙を渡せればそれでいいと思っていた為、ルークは未だにアスカロンと言う名は知らない。
ト「密偵ならやはりヴィーナの部下がいいと思うのじゃが勝手に部下を動かしてもいいのかのう?」
イ「それはヴィーナにも許可は得ています。ただ誰を向かわせたらいいのか」
タ「ヴィーナが不在ならヴィーナの部下を纏める者がいるはずなのだよ。その者に聞けばいいのだよ」
ス「…向かわせるのは人化できる者でないとダメだな」
イ「そうですね。そうしましょう。まぁ主様に情報収集で、ランス辺境伯が主様以外の事で動くとしても報告してもらう事にしましょう」
レ「そうじゃな。それがいい。妾達にちょっかいをかけてきたんじゃ。またいつ手を出してくるか分からんしのぉ」
ル「ん。それでいい」
ト「しかしランスとかいう奴も災難じゃな。迷いの森全域に強力な結界の魔道具を張る。結界を張った原因は人間が妖精の集落に攻め入り妖精女王が激怒したから。そしてランスは妖精女王の手紙を受け取るが、連絡手段が無い一方的な手紙。そしてそこにルークの旦那とその連れの妖精ララ。内情を探ろうと追跡者を出すもヴィーナに殺される。踏んだり蹴ったりじゃな」
タ「恐らく王に妖精女王とのランス辺境伯の仲介役になってほしかったのだよ。追跡者もバレないと思っていたのだよ」
ル「ん。自業自得」
イ「んー。自業自得とは少し違うかもですね。ランス辺境伯には妖精女王が激怒したからと伝わっているけど、フリージアさんに迷いの森全域に結界を張る力なんてないですからね。元々この迷いの森の領地を奪うために結界を張りましたし。いきなり迷いの森全域に結界を張ると揉め事になるかもしれませんが、丁度そこにラガン達が来ましたからね。フリージアさんには悲しい事件ではありましたが、利用させてもらったという感じでしょうか」
レ「ラガン達はカトラスの街から来たと言っておったな。普通であればカトラスの街に報復するのが筋なのじゃが、領地を奪う為にはランス辺境伯を巻き込まなければならなかった。つまりアクス男爵のとばっちりなのじゃ」
ル「それは災難」
そう。ランス辺境伯はただただ災難なだけだ。迷いの森の領地を持っているが故に狙われているだけなのだ。もちろんこの迷いの森の領地がアクス男爵領であれば狙われていたのはアクス男爵である。
イ「さて。次の報告だけどこれはまぁいい報告なんじゃないでしょうか?」
ス「…ほう。…それは楽しみだ」
ル「どんな報告?」
イ「王都ファルシオンに向かっている道中、ティタの村という場所に着いたのだけど、そのティタの村の近くの森にオークが出たらしいですね。それはオークキング率いる群れだったのですけど、それを殲滅したと言う報告ですね」
ト「んー?それの何処がいい報告なんじゃ?」
イ「えっとですね、オークの肉が凄く美味しいらしいみたいです。特にオークキングの肉が。だから主様はお土産の為に持って帰ると言ってくれているみたいですよ!」
タ「肉はあまり食べないのだがね」
イ「でもあのセレスが自分から食べてたらしいですよ?」
レ「なにっ!?あのセレスがか!」
イ「まぁセレスも肉は嫌いじゃないのですけれど、自分からはあまり食べないですからね。野菜の方を好んで食べてるみたいですけど、オークキングの肉は自分から食べてたみたいですね」
ス「…それは食べてみたいな」
ル「ん。私も」
タ「それは私も食べてみたいのだよ」
ト「しかし本当に女神様には感謝じゃわい」
レ「そうじゃな。妾達は少し前まで感情もなければ意思さえ無かったのじゃからな」
イ「そうですね。前はげーむ?という中にいて、食べ物を食べると言う事がなかったものですからね。だからこっちに来た時、お腹が空くと言う感覚は新鮮だったですよね」
タ「私達が本当に人間になったというのを初めて実感したのだからね」
ス「…うむ。…それに初めて食事をして驚いたものだ」
イ「ふふ。そうですね。人間はいつもこういう美味しい物を食べてたなんて少し嫉妬しちゃいました!」
ト「食事は人間からしたら当たり前の行為なのだが、儂等からしたらその当たり前に感動してたからのう。レイアはプリンというデザートに感動してたからな」
レ「あ…あれはそうじゃ!同じ守護王のプリンの名前がデザートにもあるって聞いたから気になっただけなのじゃ!」
ル「隠す必要ない。私もデザートに驚いた」
タ「食事をすると満足感が得られるとは知識にあったが、知っているとその満足感を実際得るのとでは全く違うものだよ」
ス「…初めて食事をした時は皆食べ過ぎていたな」
イ「まぁあれはしょうがないのではないでしょうか?産まれて初めての食事ですし」
ト「儂等は空腹は感じるが食べなくても当分は死にはしないからのう。じゃが食事という幸福を知れば食べなくてもいいが食べてしまうな」
食べなくても死にはしないというのは餓死しないと言う事だ。いや正確には餓死はするが、何年も食べていない場合だ。
最上位魔物と言うのは総じて生命力に溢れている。人間は3日飲まず食わずで死ぬと言われてるが、最上位魔物は3日程度の断食では何ともない。
空腹は感じるが無理して食べなくても全然大丈夫だ。そもそもタナトスに限ってはスケルトンだ。人化した場合食べ物を摂取出来るが、人化を解くと食べ物を摂取できない奇妙な生態をしている。
レ「トール。お主は食事というよりほとんど酒しか飲んでおらんじゃろ」
ト「そんな事はないぞ!儂だってつまみは食べてわい!」
ル「…酒臭かった」
ト「ドワーフにとって酒は水と同じだからのう」
タ「食事という幸福を知っているのにオークキングの肉は更に美味しいと言うわけなのだね。あのセレスが舌鼓を打ったぐらいだからね」
ス「…肉好きの私としては是非食べてみたいものだ」
イ「まぁスサノオはオーガの系統ですからね。でも私も食べてみたいです!」
レ「主が持って帰ってくるのじゃろ?なら待てばいいだけじゃ」
ル「イーリス。ルーク様いつ帰る?」
イ「そうですねー。いまさっき王都ファルシオンに着いたらしいからどうでしょうか。でも王都とトワイライト王国を転移門で繋ぐのでそこまで長い間ではないと思いますけど」
ト「では楽しみに待っておくかのう」
タ「イーリス。他に気になった報告はあるのかね?」
イ「んー…私が気になった報告は以上です。まぁ細々な報告はあるのですけどね。主様が錬金術を始めたとか」
レ「ほう。錬金術か。妾も錬金術は少し齧ってるだけだからのう」
ス「…錬金術は魔道具の分野じゃないのか?」
レ「まぁそうなんじゃが、錬金術といっても色んな分野がある。例えば妾が研究をしている魔道具。その他にポーション作成とか薬等の分野。武器に属性を付与したりするのも錬金術じゃ。この世界では魔物の魔石を使って魔法武器を作ったりできるらしいからのう。その点で言えば妾は魔道具にしか特化してないことになるのじゃ」
ル「難しい」
タ「つまり他の分野に関してはあまり詳しくは知らないのだね」
レ「そういうことじゃ」
なるほどー。と皆が頷く。
レ「まぁ妾の錬金術の事はよい。イーリス他に報告はないのじゃな?」
イ「そうですね。さっきも言ったように後は細々した報告ですね」
ト「ふむ。では今日はここまでじゃのう」
イ「はい。では今日はこれにて解散しましょう」
そうイーリスが言うと皆立ち上がり持ち場に戻っていく。ルークがいないのでわざわざ夜中に集まる事はしなくてもいいのだ。これから先もルークの知らない所でイーリスや守護王達がルークの為に話し合うのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここはトワイライト王国、トワイライト城の食堂。今はお昼の時間なのでメイド達が昼食を取る為、食堂はかなり賑やかになっている。だがその食堂で明らかに落ち込んでいるメイドがいる。
「はぁー…。ルーク様ー…」
「どうしたんだエール。また落ち込んでいるのか?」
そう。落ち込んでいたのはルークの専属メイドことエール。いつもドジを踏みミスばかりしているがルークに気に入られてるメイドの1人。
少し前までドジばかり踏み、捨てられるかもという悩みがあったが、同じメイド仲間のルビーとシーナに話を聞いてもらい、ルークから本音を聞いて悩みがなくなった最古参のメイドの1人だ。
「あっルビー。落ち込んでいますぅ…」
話しかけてきたのはエールの友人の1人ルビー。彼女も最古参のメイドの1人で、エールとは違いミス等はしない完璧なメイド長。もちろんルビーの主人であるルークは好きだが尊敬しているのはドラグニルである。
「何かあったのかい?」
「何かあったも何もルーク様がいないのですぅ!私のルーク様ぁー!」
「いやエール。あんたのルーク様じゃないだろ」
「煩いわね。また何かあったの?」
「あっシーナ」
次にエールに話しかけてきたのはエールのもう1人の友人で、最古参のメイドの1人シーナである。見た目はお嬢様っぽく少し棘のある話し方だが、友人思いでいつもエールの悩みを聞いてあげている。2人いるメイド長のもう1人がシーナである。
「いやぁエールがルーク様がいないと落ち込んでいるんだよね」
「仕方ないでしょう?ルーク様も忙しいのですわ」
「でもぉー…」
「エール、あんた最近ミスが多いと聞きますわ。その原因がこれね」
「えっ!?」
「あー私も聞くよ。あんた心ここに在らずって感じだよ」
「うぅ…」
「あっでも最近ルーク様が王都に着いたから、もう少ししたら帰ってくるかもって結構メイド達の中ではその話で持ちきりよ?」
「ほ、本当ですかぁ!?」
「急に元気になったな。でも私もその話は私も聞いたな」
「嬉しいですぅ!」
「そうでしょうね。ルーク様の布団の匂いを嗅いで寂しそうに泣いてたものね」
「ッ!?」
「あっそれ私も見た。泣いていたからそっとしておいたけど」
「〜〜〜ッ!?」
エールは声にならない声で叫ぶ。恥ずかしさのあまり茹で蛸の様に一瞬で顔が真っ赤になる。
「ど、ど、どうして知ってるんですかぁ!?」
「いや普通に聞こえてきたから何かなとおもったら」
「エール少し声が大きいわよ?1人で泣きながら慰めるにしても」
ちなみにトワイライト王国の人間は全員女神に種族をホムンクルスされているが、それでも性欲はもちろんある。タナトスにもある。
「な、何でもしますからルーク様には…」
「言わないよ」
「そんな事言われてもルーク様も困るわ」
「ありがとうございますぅ」
「エールが悲しんでたらルーク様も悲しむから元気出しなさい」
「そうよ。それにもう少ししたらルーク様も戻ってくるんだから」
「はいっ!」
「やっぱあんたには笑顔が似合うね」
「そうね。じゃそろそろ休憩が終わるから持ち場に戻るけどしっかりやるのよ?」
「ありがとうルビー!シーナ!」
そう言うとルビーとシーナ笑って持ち場に戻る。やっぱりいつも相談に乗ってくれるルビーとシーナは大好きだ。ルーク様ももう少しで帰ってくると思うから頑張らないと!
エールはルビーとシーナに励まされ今日も1日頑張るのであった。ルークの部屋で泣くのは自重すると誓って。
読んでいただきありがとうございます。




