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魔法の階級と戦争の状況


「…ん……朝か」


昨日は少し寝るのが遅かったから起きるのもいつもより少し遅い。相変わらず横にはプリンが寝ている。俺の右腕をガッチリと抱き締め、抱き枕にしている。くっ!可愛いっ!


…うーむ。俺の予想ではもうすぐ朝食の時間なんだが。ララは朝食までいつも寝ているから起こさないといけない。とそうこうしていると誰かがテントに入ってくる。


「ご主人様、起きておられましたか。おはようございます。朝食ができたのでお呼びに来ました」


「あぁ。ドラグおはよう。今いくよ。ララを連れて行って起こしてくれ。俺はプリンを連れて行くよ」


「畏まりました」


ドラグは寝ているララをそっと持ち上げ連れて行く。ふふふ。今日はちょっと変わった起こし方をプリンにしてやろう。俺はプリンをそっとお姫様抱っこする。そしてテントから出る。


テントの外にはレナルドさんそしてセレスとリルが既に朝食をテーブルに並べている。


「おやルークさんおはようございます。プリン君はまだ寝ているのですか」


「レナルドさんおはようございます。えぇ。昨日寝るのが少し遅かったみたいですね」


「あらおはよぉ。プリンちゃんはまだ寝てるの?それにしてもお姫様抱っこなんて羨ましいわぁ!私にもしてね!」


「セレスおはよう。あ、あぁ。いつかな」


「ご主人様おはようございます!お姫様抱っこする時はウチにもいってな!」


「リルおはよう。そ、そうするよ」


アハハと苦笑いで誤魔化す俺。いやプリンは男だから!男と女とではお姫様抱っこをする勇気が違いすぎるぞ!


「それよりいつまでお姫様抱っこしているの?早く起こしてあげなさい?」


「そうだな。おーい?プリン?朝だぞー?」


「……んー…おはよう…ございますなのです」


「おはようプリン」


プリンは目を擦りながら眠たそうに挨拶する。そして俺と目が合う。まだ眠いのか目は半開きだがずっとこちらを見つめてくる。んー…すき!とセレスが近付いてきてプリンを覗き込む。


「プリンちゃんおはよう。今日も可愛いわね!」


「セレス…お姉ちゃん?…おはようなのです」


プリンは今寝ぼけているからお姫様抱っこされている事に気が付いてない。そしてセレスが起こしにくる事があまりないので困惑しているのだろうか?なぜセレスお姉ちゃんがここにいるのかと。そしてリルもやってくる。


「プリンおはよう!早くご飯食べよう!」


「リルお姉ちゃんもおはよう。ご飯?」


ようやくプリンの頭は冴えてきたのか周りを確認する。そして自分がお姫様抱っこされている事にも気がついた。その瞬間プリンの顔は茹で蛸の様に真っ赤になる。


「ふぇ!?ル、ル、ルーク様!?一体何故…お、お姫様抱っこをしてるなのですか!?」


「いや起きたときお姫様抱っこだと嬉しいかなーと」


「あ、あぅ。か、顔洗ってくるのですぅー!」


プリンは俺のお姫様抱っこから自力で抜け出し全速力で顔を洗いにいった。


「ルークさん?プリンちゃんをあまり虐めたら駄目ですよ?」


「い、いや虐めてないんだけどなー…」


「全くー。ご主人様は乙女心を分かってないなぁー」


「全くですね」


いやプリンは男だからな?そしてプリンが戻ってきてララも起き、皆で朝食を食べる。プリンはまだ恥ずかしいのか顔がまだ赤い。


「プリンー。顔赤いけどどうしたのー?病気ー?」


「な、何でもないのです。大丈夫なのです!」


セレス、ドラグ、リル、レナルドはニコニコしながらプリンを見ていた。俺は顔を真っ赤にさせた本人だからニコニコは出来ないんだよな。ちょっと罪悪感が…。


朝食を食べ俺達は出発の準備をする。俺は少し皆から離れて近くの森に入る。


「ヴィーナいいぞ」


「おはようでありんす」


「おはようヴィーナ。昨日はどうだった?」


「ちゃんと情報は引き出したでありんす。(ぬし)達は…」


ヴィーナの話を要約すると尾行していたのはランス辺境伯の偵察部隊の精鋭5人。ランス辺境伯は妖精女王と話し合いたいらしいがその手段が無い。話し合いは十中八九まぁ結界の事だろう。


そこにカトラス街で妖精を連れた旅人の話を聞いて偵察に来たと言う訳だ。見つかったらすぐに逃げろと命じられていて戦闘をする意思は無かったようだ。


だが俺としてはまだ情報を与えたくないし、ランス辺境伯に妖精女王と対談させる訳にはいかない。残念だが殺すしか選択はなかった。目的の為なら殺すのも厭わず。第一に考えるのは当然国の民の事だ。


「なるほどな。恐らく当分はランス辺境伯から追加の偵察部隊は来ないだろう。その間に王都へ入りたいな」


「ランス辺境伯が気付くとしたら早くて3日ぐらいでありんしょうか?」


「そうだな。ここはカトラスの街から1日もあれば来れるからな。まぁ気付いたところで何も出来ないだろう。ヴィーナはまた俺の影に入っててくれ」


「わかったでありんす」


そしてヴィーナは俺の影に潜り込む。


「さて皆のところにもどるか」


俺は何事も無かったかの様に戻る。野営場所に戻ると既に出発の準備が終わり、何時でも出発出来る状態になっていた。


「おまたせしましたレナルドさん。もう出発出来ますか?」


「はい。大丈夫ですよ」


「では行きましょう!」


レナルドさんは御者に、俺達は馬車の荷台に乗り込み出発する。魔物はほとんど襲ってこないからまったりの旅になるだろうなと早速昼寝をしようとする俺であった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺達は昼食も食べ、旅は順調に進んでいる。俺は馬車の中で少し考え事をしていた。


「どうしたの?そんな難しい顔をして」


「セレスか。魔法について少し考えてたんだ」


「魔法ねぇ」


「魔法はよく分からんなぁー」


まぁリルは主に格闘で戦うからあまり参考にならないかも。魔法が得意なセレスに聞いてみるか。


「あぁ。俺は魔法についてよく知らないと思ってな。魔法には階級があるだろ?何を基準にしたのかなって。例えば火2級のファイアボールと火3級のファイアランスだが、威力は勿論ファイアランスのが上。だけどやろうとおもえばファイアボールの威力を高めることできるよね?もっと大雑把に言うとファイアボールで火5級、6級並の威力にできるんじゃないかなって」


「結論から言うとそれは可能よ」


やはりそうなのか。セレスやプリン、ドラグの2級魔法を見てて思ったのだが、明らかに2級の威力じゃない。


「じゃあ威力で階級は決めってないという事か」


「階級は威力で決まってる訳では無いと思うわ。魔法使いは魔法を覚える段階で魔力操作を覚えるのだけど、魔力操作を覚えないと魔法が使えても暴発したりするの。ファイアボールよりファイアランスの方が魔力の制御が難しいのよ。それで判断してるのではないかしら?」


なるほど。つまり目安という事か。火3級のファイアランスを覚えると言う事は3級までの魔力制御ができるという事。


「だが何故ファイアボールやファイアランスとかしか使わないんだ?他にも2級や3級の魔法はあるだろ?」


「この世界の者は恐らくそれしか知らないのじゃないかしら?7級は幻、8級以上はまず見たことないと思うわ。この世界の魔法のレベルはかなり低そうだし。もちろん他の火2級魔法もあるのだけど、新しい2級魔法を作るなんて事も出来るわ。でも新しい魔法を作ることはかなり難しいの。その分野はレイアが得意ね」


「なるほどな」


確かに一般的な魔法使いは2〜4級魔法しか使えないな。


「後はイメージがしやすいのじゃないかしら」


「イメージ?」


「えぇ。魔法は何も魔力制御ができるから魔法が使えるとは限らないわ。例えばファイアランスだけど、ランスとは槍、槍を知らない者がファイアランスを覚えるのは難しいとおもうの。この事から新しい魔法を作る事がどれだけ難しいか想像ができるわ。もちろんファイアアックスとかやろうとおもえばできるけど、ファイアランスがあるのだから皆そっちを使うでしょ?」


「確かに。わざわざ難しい魔法を使わずとも既存の魔法を使えばいいか。それによく使われている魔法の方がイメージしやすいか」


「それと最後に殲滅力よね」


「殲滅力か…」


「えぇ。殲滅力、または破壊力と言えばいいかしら?階級が高いほど広範囲、高威力となっているわ」


「まぁそれは一理あるな」


「だから魔法の階級は威力が高いだけでは無く、魔力制御そしてその魔法をイメージできるか、それを測るための階級ではないのかしら?私も特級までの魔法を使えるけどやはり階級があがるにつれて魔力制御も難しくなるわ。その分威力もあがるけど。後は、魔法を発動する際、その魔法に必要な魔力と詠唱が頭に浮かぶのだけど、これも階級が上がるにつれて必要魔力と詠唱が長くなるって事かしら」


なるほど。魔法の名前を知ったからと使えるわけでもない。魔法の階級が威力で決まるならファイアボールの威力を高めて大きくすればいいだけだ。


まぁそれはもはやファイアボールではないとおもうが。つまり魔法階級とは階級があがるにつれて魔力制御、イメージが難しくなるがその分、威力もそれ相応の威力になると。


後は魔法を発動する際に必要魔力とか詠唱とかも頭に浮かぶ。俺はそんな事気にしたことも無かった。そもそも俺が普段使っている無属性魔法は消費魔力が少ない物ばかりだからなぁ。というか俺には【詠唱破棄】があるから気にしたことが無かったんだ。まぁ魔法についてはこんなもんか?


「セレスありがとう。勉強になったよ」


「これぐらいの事ならいつでも聞いてね!」


魔法の事についてはまだ全て分かった訳じゃないが為になった。次はレナルドさんに話を聞くか。俺はレナルドさんの近くに行く。


「レナルドさん。少し聞きたいことがあるのですが」


「ん?なんですか?」


「今、この世界は戦争が起きてますか?」


「ふむ。2百年前は戦争が起きていたらしいですよ。でも今は起きていませんね。いや小競り合い程度なら今も起きてますが」


小競り合い程度か。だが女神様はそんな小競り合い程度の戦争を止めてと俺に依頼しないだろう。俺は戦争を止めてほしいとこちらの世界に呼ばれるぐらいなのだから大きい戦争の事を指してると思うんだが。


「ただ…これから起きるかもしれないですね」


「そうなんですか?」


「あぁ。私も詳しい事は分からないのですが、神聖ルナミール皇国がきな臭いとかって話を聞いたことがあります。神聖ルナミール皇国は魔王国残党とまだ小競り合いは続いてるらしいですからね。それにルナミール皇国はミール神を信仰して、何かある度に我々には神がついていると言い放っています。異種族に対しても奴隷としか見ていない人間至上主義な国ですね。冒険者大国ハルバードは戦争が起きそうな雰囲気は無いです。戦争が起きるならまず間違いなく神聖ルナミール皇国が仕掛けてくると思います。しかもそれは魔王国、冒険者大国、魔導大国のどれかに仕掛けてきてもおかしくはないと私は思っています」


獣王国が入ってないのはルナミール皇国が獣王国とかなり離れているからだ。だがルナミール皇国は獣人を蔑み奴隷のようにしている。ルナミール皇国の隣がもし獣王国ならば間違いなく先に攻められてるかもしれない。


「なるほどな」


「魔導大国エクセリオンと獣王国レオニールについては私も行った事がないので全くわかりません。特に獣王国レオニールはあまり人間を良いようには思ってませんからね」


「そうなのですか?それは何故です?」


「彼ら獣人は強い者こそ正義という考え方があります。人間はほとんどの者が戦える力を持っていないのです。私みたいにね。だから下に見る傾向があるのです。まぁ人間でも強い人はいるのですけどね。獣人は一般の民ですらそれなりの力を持っていますから」


「獣人は力こそ正義ね」


全く想像してたとおりの性格だ。好戦的なんだろう。だけど全ての獣人が人間を下に見てるってことはないとおもう。カトラスの街にも少なからず獣人はいたし。


「レナルドさんありがとう。色々勉強になったよ」


「お安い御用です。また何か聞きたいことがあれば聞いてください」


「はい」


うーむ。女神様の言ってたことはどう言う意味なんだろうか?戦争を止めてくれと言っていた。俺はてっきり戦争はもう始まってると思っていたがそうじゃない。いや、まぁ小競り合い程度は今も続いているが。


恐らくこれから戦争が始まるかもしれないって事でその戦争を止めてくれって事なのか?


それとも未来は女神様でもさすがに見通せないか?この事を女神様に聞いてもあまり答えてくれなさそうなんだよ。というか、何でもかんでも聞いてたらやっぱ失礼だと思うし。まぉ本当に危険になれば慌てて知らせてくれるだろう。


とりあえずこれから起こるかもしれない戦争を止めろ。もし始まってしまったのなら力尽くでも止めていいって事で今は解釈しておこう。


そして俺はまた退屈なので馬車の中で寝ることにした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


カトラスの街から王都まで2つの村を経由する。その2つ目の村の名はティタの村。その昔、名のしれた冒険者ティタがこの村を作ったとか。それ以来この村はティタの村となっている。王都に近い事もありよく冒険者が足を運ぶ村だ。その村にようやく着いた。王都までもう少しだ。


「今日はこの村に泊まりましょう」


「わかりました」


俺達はいつものように宿を探していると


「旅のお方。もしよければこの村を助けていただけませんか?」


急に話しかけてきた男は周りの住民より少し裕福そうな男である。しかしいきなりなんだ?


「申し訳ありません。いきなり助けてと言われてもなんの事か分かりません」


「これはすみません。私はこの村の村長ミルドと申します」


村長なのか。だから周りの住民より少し裕福そうな服装なのか。


「これはご丁寧に。私は旅人兼護衛のルークと申します」


「私は商人のレナルドと言います。それで助けてほしいとは何があったのですか?」


「はい。実は最近この村の近くの森にオークが出るようになったのです。何度か村にも来たことがあり、村の住民はいつも怯えております。そのオークを退治してもらいたいのです」


豚頭(オーク)。異世界の小説ではかなりメジャーな魔物だ。頭は名前の通り豚の顔をしており、人間の雌を攫って苗床にし、繁殖する。


かなり性欲が強く、女を見ると下卑た笑いをして襲ってくる。異世界小説では大体がこんな感じで紹介されている。


「失礼ですがここは王都に近い村です。冒険者がきた時に依頼を出すか冒険者ギルドに依頼など出されては如何でしょうか?」


「私もそう思って冒険者ギルドに依頼を出したのです。冒険者が何組かは来てくれました。ですが森に入って1人たりとも帰ってこないのです」


「ちなみに冒険者が入ってからもうどれぐらい経ちましたか?」


「冒険者がこの森に入ってもう5日は出てきません」


村の近くの森に入って5日か。この森はそこまで広くないとは思うのだが…。まだ探索しているか恐らくは…。


「確かにそれはおかしいですね」


「旅のお方、もしよければ助けてください!お礼は必ずします!」


「うーん…」


レナルドは考えながらこちらの顔をチラチラと見てくる。俺に行けってか?まぁ別にいいけどさ。


「判りましたよレナルドさん。俺達が見てきますよ」


「申し訳ないです。あなた達しか頼る者がいないのです。それにここの村はよく来ますので他人事だとは思えなくて」


「まぁ急ぐ旅でもないし、いいのですが」


もちろん1週間も足止めは流石に断るが、そこまで森は広くないので探索もあまり時間が掛からないだろう。


「ありがとう」


「では今日は泊まって明日にでも森の調査をしてきます」


「分かった」


「ありがとう!ありがとう!」


宿はミルドさんが、お金は必要ないといってタダで泊まることになった。有り難いな。しかしオークか。オークはそれほど強い魔物ではないはずだがな。そんなことを考えながら1日ゆっくりする事にした。


読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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